生成AI活用フレームワークの構築

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June 29, 24

スライド概要

生成AIの影響は、当初は、生成AIが人間を代替するか?あるいは人間を補完するか?の議論や、教育の現場で生成AI使用を許可すべきか?禁じるべきか?などがあった。しかし、昨今は、あらゆる分野、場面に幅広く生成AIが浸透することが殆ど不可避の状態になっている。・・このような段階に至ると、次の論点は、主要な価値創造の主体である企業の競争優位性に生成AIはどのような影響を与えるか?になってくるのではないかと考えられる。このような問題意識から、「生成AIによって企業は如何に競争優位を獲得するか?」についてまとめてみた。

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定年まで35年間あるIT企業に勤めていました。その後、大学教員を5年。定年になって、非常勤講師を少々と、ある標準化機関の顧問。そこも定年になって数年前にB-frontier研究所を立ち上げました。この名前で、IT関係の英語論文(経営学的視点のもの)をダウンロードし、その紹介と自分で考えた内容を取り交ぜて情報公開しています。幾つかの学会で学会発表なども。昔、ITバブル崩壊の直前、ダイヤモンド社からIT革命本「デジタル融合市場」を出版したこともあります。こんな経験が今に続く情報発信の原点です。

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各ページのテキスト
1.

生成AI活用フレームワークの構築 - 企業は如何にして競争優位を獲得するか?- B-frontier 研究所 高橋 浩 1

2.

目的 • 生成AI活用が各方面に広がりをみせている。 • そして、ChatGPT-4oはじめ、機能提供側の華々しいニュー スを目にする機会は多い。 • 他方、利用者側(特に企業側)の取組み状況を見ると、華々し い成功のニュースはあまり目立たない。 • 取り組んでから日が浅く、成功の評価にも課題があるからで あろうか? • しかし、今までと異なる機能の活用に戸惑い、不慣れ、不確 実性など、様々な壁にぶつかっている可能性もある。 • 本稿は、このような認識の下に、各種課題克服に有用と思わ れる内容を含む論文を探索し、内容紹介することで、生成AI 活用を手助けすることを目的としている。

3.

目次 1. 2. 3. 4. 5. はじめに-各種矛盾の存在 生成AI処理の基本視点より 既存学習理論の視点より 知識管理の視点より 競争優位の獲得に向けて 3

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1.はじめに-各種矛盾の存在 生成AI活用にあたって • 生成AI登場は興奮と不安を巻き起こしている。 • 生成AI関連市場は2030年までに1兆ドルに達すると予想され、 生成AIが急激に定着することが示唆されている。 • このような中で、各個人/各企業は何とか速やかに生成AI活 用に目途をつけたいと焦る。 • しかし、新テクノロジーは登場の初期には特に、逆説的、即 ち「それ単独では論理的に有用と思われるが、他と同居する と不合理、非合理的要素が含まれる」と謂われる。 • この逆説的性質により新テクノロジーは組織と個々の実践者 に様々な課題(矛盾)を突き付ける。 • その全体枠組みと対応戦略の例を次頁以降に示す。

5.

生成AI活用の矛盾 適応中と適応後の課題(矛盾)があり、性質が異なる。 生成AI適応中の矛盾 • • 生成AI適応後の心理的矛盾 矛盾1 矛盾2 矛盾3 矛盾4 仕事の促進か? 仕事の妨害か? 創造性か? 迎合(同一性)か? 効率性か? 非効率性か? 優越性か? 劣等性か? 支援を受けること で仕事が促進され る面はある。 他方、余分な作業 (事実確認など) や 不確実性を生み出 し仕事を妨害する 懸念がある。 • • 「目立たせる」創 造的仕事を支援す ることはある。 他方、群衆と類似 の(または同一の) コンテンツに繋が る懸念がある。 • • 日常的仕事を(部分 的or完全に)自動化 することで効率が向 上する。 他方、使用から生じ る問題修正のため必 要リソースや放棄リ ソースで非効率が生 じる懸念がある。 • • 実践者は、自分 が生成 AI活用に おいて優れてい ると認識し得る。 他方、同時に 劣っているかも しれないとも認 識する。 5

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生成AI活用の対応戦略 フレームワーク1 生成AI適応中の矛盾 生成AI適応後の心理的矛盾 矛盾1 矛盾2 矛盾3 矛盾4 仕事の促進か? 仕事の妨害か? 創造性か? 迎合(同一性)か? 効率性か? 非効率性か? 優越性か? 劣等性か? 両利きアプローチ 状況適合(コンティンジェンシー)アプローチ :矛盾のプラス面を最大限に活用し、 マイナス面を最小限に抑える。 課題(矛盾)を乗り越えるための戦略 :実践者と生成 AI の 長所短所を統合し相乗 効果のあるパートナー シップを構築する。 vs 価値を維持する ための戦略 6

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状況適合(コンティンジェンシー)アプローチの例 • 適切な使用頻度、強度、複雑さを決定し導入する。 • 生成 AI の機能、制限、開発を予測/追跡する職務、あるいは 生成AI使用切り離し時期を設定する。 • 組織内で生成 AI使用に関する規制、ガイドラインを設定す る。 • 生成 AIの進歩を迅速に活用するために柔軟性を維持する。 • 生成 AI に焦点を当てたトレーニングを組織し、生成 AIを業 務に活用する方法について教育する。 • 社内で開発された (または共同開発した) 生成 AI、または公 開されている生成 AI有料版を使用する。 • など

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両利きアプローチの例 • 相乗効果が存在し有益であることを理解する。 • 実践者と生成AI ツール間の作業タスクの割り当てを再設計 し、より高い相乗効果を実現する。 例: • 従業員の強みに一致するタスクを特定し、従業員が得意としないタ スクを生成AI に委任する。 • ルーチンタスクや反復タスクなど、生成 AI に適したタスクを分離 し、スタッフがより満足度が高く有意義なタスクに集中できるよう にする。 • 従業員が、既存の独自スキルだけでなく、生成AI活用につい ての新しい熟練度 を開発できるように支援する。 • など

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2アプローチの比較 状況適合アプローチ • 特定の矛盾に対し反対のものと適切に組合わせる。 • その際、プラス面最大化、マイナス面最小化に注意を払う。 • 生成AIの急速な発展に遅れを取らないことに重点を置く。 • プロンプトエンジニアリングのトレーニングに重点を置く。 両利きアプローチ • 両方の極を統合化することを目指す。 • 矛盾する緊張が補完性に変わり、相乗効果と競争上の優位性をもたら す方向を目指す。 • この戦略は、心理的矛盾に対する柔軟化に特に有効である。 但し、これらのアプローチが便宜的であることは否めない。 そこで、次節以降でより深い検討を行う。

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次節以降の構成 • 生成AIが企業のどのような課題に貢献するかにつ いて検討する。 第2節 • 生成AIの代表的処理パターン(翻訳、要約、分類、増幅) の視点からの分析 • プロンプトエンジニアリングの中味、あるいはト レーニングについて検討する。 第3節 • 学習理論の実績を踏まえた効果的なプロンプトの構築 と返答の分析 • 知識創造、知識共有など知識管理の中でのAIと人 間の役割について検討する。 • 適切で効果的なモデル選択のため、モデルがどのよう に機能しプロンプトに関わっているか分析 第4節

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2.生成AI処理の基本視点より 生成AIの基本機能 • 生成AIが多くの分野で優れた一般知識を持っていることはよ く認識されている。 • しかし、ユーザーが1回限りの特定タスクを生成AIに要求す る場合のインターフェースは必ずしも整理されていない。 • そこで、本節では生成AIに対するインタフェースを翻訳、要 約、分類、増幅の4つに区分し検討する。 翻訳: 言語間の翻訳、形式の変更、トーンの切り替え 要約: テキストコーパスの要約(例:より短く、より充実したものにする) 分類: テキスト内のさまざまな種類のコンテンツを分類および識別 増幅: 特定の設定に合わせて調整されたさまざまな種類のコンテンツの反 応、生成、組み合わせ

12.

ユースケース 4区分に基づいた典型的なユースケースを下表に示す。 タイプ 典型的なユースケースの例 翻訳 • • • • コンテンツ生成 自動翻訳サービス 教育資料を幅広い視聴者に提供 医師と患者などのコミュニケーションの改善 要約 • • カタログ作成とメタデータ生成 医学雑誌の自動要約 分類 • • • データの注釈付け(例:ML/DL モデルのトレーニング) ヘイトスピーチの検出 テキスト内の重要な特徴の特定(例:法的文書の条項) • • 強化されパーソナライズされたカスタマー サービス 統合されたスマート AI アシスタント 増幅 12

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生成AIのイノベーションフレームワーク • 次に、文脈認識とコンテンツ認識という新たな次元を導入す る。 文脈認識: 新しいデータに関する推論を行うため、ト レーニングデータに基づいて知識を活性化す るモデルの能力 コンテンツ 当面のタスクに適した形式に関連するデータ を変更および再パッケージ化するモデルの能 認識: 力 • この2次元で基本4機能を特徴付ける(次頁)。この延長で、 生成AI適応のメカニズムに転換する(次々頁)。

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イノベーションフレームワーク図 フレームワーク2-1 増幅 高い 低い コンテンツ認識 要約 高度なコンテンツ認 識が必要である。 特定の設定に基づいて 入力を精緻化する必要 があるため両方の高レ ベル認識が必要である。 翻訳 分類 どちらの次元も高レベ ルである必要がない。 文脈的認識は必要だが コンテンツ認識はそれ ほど重要ではない。 低い 高い 文脈認識 14

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実践的な生成AI適応の指針 • イノベーションフレームワーク図に基づいた生成AI適応のメ カニズムを以下に示す。 フレームワーク2-2 • • 翻訳 要約 分類 増幅 小さなことから 始める。 LLM を使用して組 織データを調査する。 統合により拡 張する。 即応性のある 人材を育成する。 小規模から始め、情 報コンテンツ、コー ドの翻訳など実践的 で明確に区切られた 目的に適用する。 AI 本格展開前に「サ ンドボックス」環境 でのテストも重要 • • LLM 使用を最適化 するため、組織の 保有するデータ セットの性質と形 式を要約する。 例:内部文書、イ ントラネット情報、 Slack データなど • • 感情分析によるラ ベル付けなどを通 じて、テキスト データを分類する。 AI システム機能の 責任者が誰かが重 要になるので担当 を定める。 • • • 技術的スキルだけで なく組織のビジネス 知識も必要になる。 言語の理解と共にコ ミュニケーション能 力も含まれる。 多様な分野に協力で きるチームを作成し 増幅する。

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3.既存学習理論の視点より 適切なプロンプト開発手順の開発 • 基本認識: • 生成AIに有意義に関与するためのプロンプトエンジニ アリングは単純なものではない。 • 各ユーザーのプロンプト作成に向けた学習プロセスを 最適化することが必要である。 • 取組み方法: • 構成主義の原則(右図)に基づいて検討する。 • 構成主義とは: • 【学習者は、彼ら自身による理解を組み立てるようなかたち で教育すべきである、あるいは学習者の中に既に存在してい る概念を前提に授業を組み立てる必要がある、というジャ ン・ピアジェが発達心理学をもとに考案した学習・教授理 論】。 構成主義の原則 1. 学習は能動的な プロセスである。 2. 事前知識は学習 に影響を与える。 3. 学習は文脈に 沿って行われる。 4. 学習は共同作 業である。 5. 振り返りは学 習を促進する。

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構成主義の原則によるプロンプトエンジニアリング • 生成AIをより知識のある他者と位置付ける。 • この他者はユーザーのスキルを拡張し、専門家の指導を受け て複雑なタスクを管理する際に必要な支援を供給する。 • 他者は複雑な形態を取ることが出来る。 • 例えば、人間のメンターであるだけでなく、書籍などの情報のリ ソース機能、あるいは生成AIベースの技術エージェントであること も含む。 • このような支援を受けつつ、学習者は自らの経験を通じて知 識を構築する。 • このビジョンによるプロンプト作成手順を次頁に示す。

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生成AIのためのプロンプト開発手順 • 生成AIに投稿する問題、機会、質問をどのように構築するか のプロセスを充分に考察する必要がある。 • 構成主義的視点ではプロンプトは3つの包括的次元と6ス テップで構成される反復プロセスと考えられる。 フレームワーク3-1 次元1: 次元2: 次元3: 文脈 構造 評価 1. 問題設定 or 質問 3. プロンプト作成 5. 検証と改良 2. 事前知識 4. 収集・整理と最適化 6. 適用 知識の共創 18

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次元1:文脈 • プロンプトを作成する際、問題設定の周辺の文脈を明確に定 義し、計画を立てる必要がある。 • 即ち、応答が誰に関係し、誰を対象とし、更に適切なトーン は何か、あるいはどの程度複雑さを持たせるべきか、などを 明確にする。 • 例:顧客の苦情に対応する生成AI利用なら、顧客に分かり易い回答 をすると同時に、顧客が直面している根本問題も含めて検討する必 要がある、など • 従って、文脈には問題設定(問い合わせ)に係わる多様な事 前知識が含まれる。 • ステップは、1.問題設定 or 質問、2.事前知識の2種

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次元2:構造 • プロンプト構造にはプロンプト形式、レイアウトが含まれる。 • ゼロショットプロンプト、例によるプロンプト、思考連鎖プロンプ ト、役割プロンプトなど様々な形式、レイアウトが提案されている。 • ユーザーは様々なアプローチとどのような構造が自分の問題 に最適かを理解する必要がある。 • 構造化されたプロンプトは、期待を明示的に定義することで 望ましい結果に合った応答生成が可能なように指示できる。 • 次に、プロンプトが正しく構築され、望ましい結果と一致し ていることを確認する目標指向アプローチが必要である。 • この間、ユーザーは自身の事前知識や元の質問の文脈と整合 性を評価しながら反復処理を行う。 • ステップは, 3.プロンプト作成, 4.収集・整理と最適化の2種

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次元3:評価 • AI応答の品質を定める重要な次元である。 • 生成された出力を元の目標に対してテストし、それが正確で 偏りがなく意図した用途に適合しているかを確認する。 • 更に、複雑な点を詳しく説明するか、あるいは情報を合理化 して明確さ、正確さを得るようにするかなどの改善を行う。 • また、応答を評価する際、AI側とユーザー側双方の潜在的バ イアスを考慮する必要がある。 • 人間とAIが絡んだ知識における潜在的バイアスを最小限に抑 えるための実践的セルフチェックガイドを次頁表に示す。 • ステップは, 5.検証と改良, 6.適用の2種

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次元3:評価(続) フレームワーク3-2 生成AIのための5段階の検証プロセス 質問1 質問2 質問3 質問4 質問5 検証のため の質問 生成AI モデルのト レーニングに使用 されるデータにつ いて基本的理解が あるか? 出力結果は検証 済みの統計パ ターンと比較で きるか? 出力結果を得る ために使用され た推論またはプ ロセスを検証で きるか? これは以前考えて いたことを裏付け るものか? もしそうなら、検 討できる別の視点 や見解はあるか? 当該プロンプトと その後のやり取り は、生成AI の応 答に影響を与えた 可能性があるか? 対処するバ イアス トレーニングデー タからのバイアス データバイアス 自動化バイアス 永続化への対処 確証バイアス フィードバック ループバイアス • 人間もバイアスを導入する可能性があることを認識することが重 要である。 • 自動化バイアス:ユーザーがAIの出力を常に正しいか優れていると思い込む。 • 確証バイアス:AIが生成した自分の先入観と一致した結果を過大評価する。 • フィードバックループバイアス:レコメンデーションシステムの蔓延に影響され てユーザーインタラクションが変化する。

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4.知識管理の視点より 知識管理(KM)と人工知能(AI) • AIの最近の進歩は組織の知識管理(KM)に大きな影響を与え ている。 • AIとKM間には相補的関係がある。 • 人間の知識と学習活動を模倣できる存在としての人工知能(AI) • 組織内の知識の管理に直接関与する知識管理(KM) • AIとKM間の潜在的関係について新しい洞察が必要である。 • 基本的には生成AIは組織のKM基盤としてシステム全体に浸透する 可能性がある。 • その際、人間とAIを対立させるのではなくパートナーシップ を重視する必要がある。

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潜在的なAI対応を具体化する人間とAIの共生 • 知識の生産と管理は本質的に人間中心の活動である。 • 従って、KMにおいて、AIに割り当てる最も効果的な役割は (人間を置き換えるのではなく)人間を強化することである。 • それによってAIと人間は互いの補完的長所を強化する知能を 実現しうる。 • そこで、KMにおける人間とAIのパートナーシップ構築の潜 在的シナリオおよび実践的方法を具体化することが重要にな る。 • 次頁表に人間とAIが最適なKMを構築するためのフレーム ワークを示す。

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AIの役割 KMにおける人間とAIの共生関係 パーソナル知性アシスタント • • • 情報過多を解消する。 認知帯域幅を向上させる。 情報リソースのフィルタリング、並べ替え、 ナビゲートを行う。 フレームワーク 4 人間の役割 パーソナル知識管理 • • 専門的な知能 • • 限定された環境での学習に特化したインテ リジェンスを提供する。 タスク中心の(異なるタスク間で簡単に転送 できない)インテリジェンスを提示する知識 コンテンツを管理する。 一般的な知能 • • • 知識の体系化 • • 低レベル、大量の知識プロセスを合理化 人々のつながりを促進し、ノウハウを生み 出す。 • (ビッグ)データ内の気づかれていないパター ンを発見する。 独自のルールを開発することで、現在の知 識リソースの外側にノウハウを拡張する。 知識を戦略レベルの思考に適用する。 知識をさまざまなコンテキストに翻訳する。 自己反省を通じて知識のコンテキストを識 別する。 知識のコラボレーション • • Know-How and Know-What • インテリジェントアシスタントをトレーニ ングして個別化する。 インテリジェントアシスタントのパフォー マンスを監視して批判的に評価する。 複雑で非定型的な知識プロセスを処理する。 ソーシャルなやりとりを通じて暗黙知を伝 達する。 Know-Why • • • 推論を説明し、推奨事項を正当化する。 新進の専門家を育成し、組織のサポートを 獲得する。 責任を負う。 25

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表の解説 パーソナル知性アシスタントとパーソナルKM • これらは生成AI技術によって提供される新しいジャンルのAIシステムである。 • 情報過負荷などへの対応だけでなく、知識労働者に期待される多様な処理を代 替あるいは効率化してくれる。 • 但し、多様なビジネスニーズに対応し続けるには継続的トレーニングが要る。 • これは人間とAIが互いに学習し共進化する相互学習プロセスを含む。 専門的な知能と一般的な知能 • AIは環境を感知し、経験から学習し、タスクに関する専門的知能を提供する。 • 但し、タスク中心に留まり、異なる文脈間では簡単に移行できない。 • 戦略レベルの意思決定は、先見の明、社会的/感性的知性、自己啓発、想像、 好奇心などが必要である。 • これらは人間特有の一般的知性であり、KMの文脈ではこのような知性と組み 合わせることが必要になる。

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表の解説(続) 知識の体系化と知識のコラボレーション • AIは人間の認知能力だけでは不可能な方法でコンテンツの収集、分類、 分析、提示など、日常的タスクを提供、代替、あるいは支援してくれる。 • このような支援に支えられて、人間は暗黙知の社会的相互作用を通じた 伝達など、依然として人間中心の実践的活動に取り組むことができる。 Know-How and Know-WhatとKnow-Why • 生成AIベースでは、Know-HowやKnow-Whatは自己学習機能の登場により自 動作成したり、新しいデータを活用して効果的に出力したりできる。 • 但し、生成AIは生成した出力の推論を説明できない。そのため、不透明なAI出 力に偽りの内容が隠れている可能性がある。 • 結果、AIベースの推論のKnow-Whyを策定する人間の役割は不可欠になる。

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フレームワークの活用法(まとめ) フレームワーク1: 課題の定性的傾向を把握する。 • 4矛盾の切り口をインデックスにした全体見直しに よって フレームワーク2: 実践的生成AI適応ステップを設計する。 • 4基本機能に集約した抽象化により課題の構造と ステップをクローズアップすることで フレームワーク3: 実践者の具体的プロンプト作成をガイドする。 • 担当者のスキルに応じたプロンプトエンジニアリン グ学習と体験の反復によって フレームワーク4: 人間とAIの共生関係を設計する。 • 人間とAIの4つの役割を確立することによって

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5.競争優位の獲得に向けて 生成AIによる競争優位性 • 生成AIを競合他社より巧みに、より速く活用することは優位に繋がる。 • しかし、本質的には生成AIをカスタマイズするためのデータをどれほど 保有しているか、継続的に獲得できるかがポイントになる。 • そこで、この視点から3つのレベルを設定する。 • レベル1:公開されているツールの活用 • レベル2:公開ツールを自前保有データでカスタマイズして活用 • レベル3:自動かつ継続的なフィードバックループを構築して活用 レベル1:公開ツールの活用 • フレームワークを当該環境で適切に活用すれば優位性を獲得できる。 • この延長線上で根本的にビジネスプロセスを見直せばより一層の優 位性を得られる。 • しかし、誰もがアクセスできる既製生成AIツールにのみ依存してい る場合、生成AIはスキルの低い従業員をより効率的にスキルアップ できるので、長期的には先行優位を維持できない危険性がある。

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レベル2:公開ツールの自前データによるカスタマイズ • 生成AIツールと内部(自前)データを組み合わせて、より直観的ユー ザーインタフェースやパーソナライズされたサービスを提供する。 • 顧客エクスペリエンスを向上させ、競争優位性を向上させる。 • 但し、内部データの有用性(希少性)が他社より高く、かつデータ蓄 積が将来的に可能なことが条件になる。 レベル3:自動かつ継続的なフィードバックループの構築 • 顧客が製品やサービスを使用するプロセスで自然に信頼性の高いデー タが生成され、自動的にフィードバックされれば、競争優位は持続性 を獲得できる。 • これが実現されれば、製品/サービス使用がデータを生成し、そのデー タを学習することで生成AIツールが改善される正のスパイラルを確立 できる(最終目標)。 • しかし、この目標実現には、一般にはビジネスモデルの根本的見直し、 大規模な組織変革、膨大な投資など、非常にハードな課題解決が伴う。

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競争優位獲得のまとめ 全体を下表にまとめる。 レベル1 レベル2 レベル3 推進指針 競争優位性の評価 コスト&投資負担 主な課題 全フレーム ワークの実施 短期的には優位差が生 じるが長期的な維持は 困難大 低度のコスト/投資額 公開ツール(有償含 め)購入+多様な教育 /活性化負担 ・初動の優位性確保 ・長期的優位性維持 ・人材育成 ・組織変革(人材再配 置含め) 全フレーム ワークの実施 +カスタマイ ズ 所有データの希少性に 依存して評価が変動す るが、一定の競争優位 性獲得が可能 中度のコスト/投資額 所有データに基づくカ スタマイズ費用 +固有システムの有効 性確保+組織変革負担 ・特定データの発掘/ 整理/調整 ・有効性を高めるため の企画/設計 ・有効性維持の実施 全フレーム ワークの実施 +フィード バックループ 究極の競争優位性の獲 高度のコスト/投資額 得が可能な戦略である。 長期的にフィードバッ しかし、多くの課題克 クを持続できるループ 服が必要で実現の難易 の確保と実現のための 度は高い。 抜本的変革/高額投資 ・投資コストとのバラ ンス ・組織変革とのバラン ス ・最適な実現プロセス の設計

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競争優位の獲得に向けて • 結局、生成AIは極めて斬新なツールではあるが、特に企業の競争優位 性の視点で見ると、本質的差別化のカギをにぎるのはデータである。 • そして、このデータを製品、サービス使用の自然なプロセスの中で、 顧客とのプライバシーや権利問題の訴訟リスク無しに獲得できるかど うかが重要なポイントになる。 • この課題をクリアした上で継続的にデータを収集し、それを元に生成 AIをトレーニングし改善した製品、サービスを提供できるサイクルが 確立されれば、かなり強い競争優位性を維持できる。 • しかし、この段階に到達するまでには多くの壁が存在するのが一般企 業の実態である。 • この分野の分析は現在不充分なため、各企業は自分のビジョンや期待 度に基づいて、実践しながらノウハウを蓄積し最終目標に向けて一歩 一歩進めてゆくことが必要になる。

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文献