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April 15, 16
スライド概要
IoT化も、今まで何回か発生してきたデジタル化の波の新たな要因と捉える。このような視点で先行デジタル化であるデジタル放送、モバイルの変化をサーベイし、これとの対比によるトータル視点からIoTによる変化を考えてみる。
定年まで35年間あるIT企業に勤めていました。その後、大学教員を5年。定年になって、非常勤講師を少々と、ある標準化機関の顧問。そこも定年になって数年前にB-frontier研究所を立ち上げました。この名前で、IT関係の英語論文(経営学的視点のもの)をダウンロードし、その紹介と自分で考えた内容を取り交ぜて情報公開しています。幾つかの学会で学会発表なども。昔、ITバブル崩壊の直前、ダイヤモンド社からIT革命本「デジタル融合市場」を出版したこともあります。こんな経験が今に続く情報発信の原点です。
デジタル化進展により変化する ビジネスモデルとサービス - 新たなデジタル化要因:IoTへの対応に向けて - 高橋 浩
IT企業(米国) デジタル化を制したIT 系プラットフォーマーが 新ビジネスモデル創出 で世界を支配している IT企業(中国) 通信会社 2
日本発ビジネスモデルの例 ・アスクル ・富山の薬売り ・コンビニのサービス・プラットフォーム化 ・i‐モード ・ファミコン ・JRのエキナカ ・私鉄の郊外住宅/デパート ・クロネコヤマト ・ゼネコン ・公文教育 ・デパチカ 日本発ビジネスモデルの特徴: ① 情報/インターネット産業系事例が少なく、 ② エコシステム(多様なパートナーとの役割を持った 連携)の事例が少なく、 ③ “無料化”などインターネット特有の課題を克服し、グ ローバルに“規模”拡大できたビジネスモデルは皆無 3
日本のビジネスモデルへの取組みの特徴 イノベーションや戦略を ①ビジネスモデル・デザインにマッピングさせ、 ②ビジネスモデルと戦略を対比させる、 ような系統的取組みは実施されてこなかった。 ビジネスモデルと戦略の適切な結合が無かったの で、 ①横並び企業の集約、そのためのM&A、 ②スピーディーな意思決定、 ③グローバルな市場拡大に向けた戦略推進、 も発生してこなかった。 4
問題意識 • 現在、盛んにイノベーション、新たなビジネ スモデル創出が叫ばれている。 • また、新たなデジタル化要因としてIoTが 登場して来た。 • しかし、新たなデジタル化進展で変化する ビジネス環境への取組み準備は整ってい るだろうか? • そもそも、我々は“新たなビジネスモデル創 出”に至るプロセスをどれほど理解している だろうか? 5
このような問題意識にアプローチするため 以下のプロセスで検討する 目次 1. 価値創造のための新たな環境 IoTとは何か? 2. デジタル化ステップアップへの適応 デジタル化とは何か? 3. ビジネスモデル論からの示唆 ビジネスモデルとは何か? ビジネスモデル論からの考察 6
1. 価値創造のための新たな環境 IoTとは何か? IoTとは❝モノが常にネットワークにつながる世界❞の創出のこと モノのIoT化: ①物理的要素:機械部品と電気部品 ②情報処理要素:センサー、マイクロプロセッサー、データ・スト レージ、制御装置、ソフトウェア、組み込みOS、ユーザー・ インターフェースなど ③接続機能:インターネット接続するためのポート、アンテナ、 プロトコルなど モノを・・・・・ 製品機器やクラウド 上の遠隔コマンド/ アルゴリズムによっ センサーと外部デー て制御可能 タを使って製品状 態、稼働状況、外部 制御 環境を監視可能 監視データを製品 の働きを制御する 機能と組み合わせ 最適化可能 + クラウド ビッグデータ 監視、制御、最適化を 結びつけて高レベル の自律化可能 自律化 最適化 監視 マイケル E. ポーター、ジェームズ E. ヘプルマン、“IoT時代の競争戦略”、 April 2015 Diamond Harvard Business Review.
つつなぐ先に新たな ビジネスモデル創 出を展望できる http://www.sapjp.com/blog/archives/10936
IoTによる変化はシステムの本質変化でもある IoTによる新たな価値の創造 デジタル化とIoT化が共振 IoT化促進 ・ 共振化 デジタル化 促進 IoT普及はデジタル化を促進 デジタル化はIoT化を促進 モノ単体の変化から❝システムの変化❞へ 9
「情報化社会」から「IoT社会」へ 大半はアナログの まま データは散在 利用はローカル ネットワーク内 デジタル⇔アナロ グ連係に物理的制 約 全てがデジタルへ 全データが集中的 に管理 利用が実世界の社 会規模で可能に 供給側ドリブンから ユーザー側ドリブン へ IoTによる技術革新 10
IoT化は全ての企業にチャンスと脅威を創出 これまでの「情報化社会」 これからの「IoT社会」 「コンテンツ」を集める機構 「コンテンツ」を集める機構 SNSなど SNSなど 「行動情報」を集める機構 「行動情報」を集める機構 パーソナライズなど パーソナライズなど 「モノの情報」を集める機構 「モノの機能」を訴求する機構 宣伝/HPなど 消費者向け、企業向けにギャップ モノとモノに関わるコンテンツ、顧 客行動情報間にギャップ デジタル化領域が局在 IoT化 チャンス 脅威 消費者向け/企業向け一体化 コンテンツ、顧客行動情報、モノ 情報一体化 遍くデジタル化した環境活用可 11
価値創造と新たな価値獲得のための再構成へ 製品やサービスが複雑化 それに連れて、それらを作成する関係性が重要 化 価値提供のための製品、サービスのエンジニア リングに加えて、・・・ バリューチェーン設計のエンジリアリングが必要に (エコシステム形成、ビジネスモデル最適形態の構築など)
2.デジタル化ステップアップへの適応 複数業界を比較 ① デジタル放送 ② モバイル端末 M.Pagani EMLyon ビジネススクール准教授 ③ IoT(予想) T.Hazlett George Mason 大学教授
デジタル化ステップアップへの適応 ①デジタル放送 • 欧州、米国放送業界(2000-2008年) • 3つの異なる技術世代(アナログTV、デジタ ルTV、マルチサイデッド・デジタルプラット フォーム) • 漸進的イノベーションと産業境界を超えた混 乱が発生していた。 • その結果は、タイプ1⇒タイプ2⇒タイプ3 の移行で捉えられる。(次ページ) • このプロセスは2重螺旋モデルで理解できると 断定(次々ページ) 14 M. Pagani, “DIGITAL BUSINESS STRATEGY AND VALUE CREATION: FRAMING THE DYNAMIC CYCLE OF CONTROL POINTS”, MIS Quarterly, Vol. 37 No. 2, pp. 617-632/June 2013.
①事例:3タイプが発生しその間を遷移 タイプ1 クローズド垂直 統合モデル タイプ2 タイプ3 ルーズリー・カッ マルチサイデッド・ プルド・モデル プラットフォーム・モデル 巨大で強力な 相互依存性 分配、取引、検索コ 連結を通じて を通じて価値 スト削減を通じて価 を生成 値生成 価値生成 • TCIとマイクロ ソフトの提携 • Microsoftと NBCによる MSNBC設立 • 競合プラット • 新ビジネスモデル (Hulu,他)登場と伝 フォームと技 術(CATV、地 統的視聴習慣の変 上波、IP他) 化 間で複雑化
2重螺旋モデルによる適応 タイプ1 タイプ3 クローズド垂直 統合 マルチサイデッド・ プラットフォーム 集中制御型 垂直統合 漸進イノ ベーション オープンアーキテクチャ 型活気ある先端 活動主体の出現 先端活動主体の 不満/言い逃れ タイプ2 ルーズリー・ カップルド 政策の 乱闘 産業境界を跨 いだ業界混乱 イノベーターの 市場寡占力 オープン化/現状 破壊の圧力 優位に統合&囲 い込みの動機 ? 既存システム の採算性 巨大な要素/ソ リューションの出現
観察①:関係性知性の重要化 組織知性が新たな関係性知性に変換されていた。 クローズド垂直統合モデル:組織知性を最大化させ るのでなく、それを集中するように設計されており、も はや最良の組織構造ではない。 ルーズリー・カップルド・モデル:価値創造エコシステ ム中での連携プレーが価値ある状態に対応する。 マルチサイデッド・プラットフォーム・モデル:伝統的 な境界のある世界とは非常に異なった動作をする。 即ち、現代は、特定組織構造でいれば安泰とい う時代ではなくなった。
3タイプ間遷移で非線形変化が発生 • 3タイプは下記2種にも分類可能 1. クローズド垂直統合モデル、ルーズリー・カップ ルド・モデル ⇒線形システム 2. マルチサイデッド・プラットフォーム・モデル ⇒非線形性システム この進化パターンは複雑なシステムは途中 で非線形的ダイナミクスを示すことを示し ている。 即ち、3タイプ間遷移には断絶が介在している。
デジタル化ステップアップへの適応 ②モバイル端末 3タイプ間遷移はモバイル業界でも発生していた T.Hazlett George Mason大学教授 タイプ1 タイプ2 タイプ3 i-mode(ドコモ) BlackBerry( RIM ) Nokia+Vodafone iPhone( Apple) Android( Google ) クローズド垂直統合 モデル ルーズリー・カップルド・ モデル マルチサイデッド・ プラットフォーム・モデル サードパーティ製アプリを 厳しく管理し初歩的“塀に 囲まれた庭”作成で価値生 成 ネットワーク・イノベーション とアプリ/コンテンツ・イノ ベーションをグローバル/地 域/技術毎に調整/統合して 価値生成 アプリケーション・プラット フォーム(Appstoreなど)を確 立することで革新的“塀に囲 まれた庭”作成で価値生成 • • 統合(キャリア)の管理 機能は複雑化するが、 価値創造と価値獲得を 容易化 • キャリー、端末ベンダー共 • 存・連携の状態 ユーザーのアプリケー ション選択と無線インフ ラの希少性の重要性が • 拮抗している状態 統合(端末ベンダー)の管 理機能は複雑化するが、 価値創造と価値獲得を爆 発的に拡大可能 加えて、Apple等は“塀に 囲まれた庭”内でオープ ンイノベーション実施 Thomas Hazlett, David Teece, and Leonard Waverman,“Walled Garden Rivalry :The Creation of Mobile Network Ecosystems”, George Mason University Law and Economic Research Paper Series 11-50 (2011).
“塀に囲まれた庭”競争の世界(タイプ3)への移行の図式 タイプ1 伝統的米国/日本ワイ ヤレス産業の市場構造 タイプ2 GSMモバイル主流時代 の市場構造 タイプ3 最近のワイヤレス産 業の市場構造 プラットフォーム 無線 Apps・ コンテンツ 端 末 Apps・ コンテンツ 端 末 無線 キ ャ リ ア ー インフラ 端末 キ ャ リ ア ー Apps・ コンテンツ クローズド 垂直統合 ユ ー ザ ー ユ ー ザ ー ユ ー ザ ー 無線 キ ャ リ ア ー インフラ ルーズリー・ カップルド インフラ 2重螺旋モデル マルチサイデッド・ プラットフォーム 20
観察②:ビジネス・エコシステム主導 • ライバルのエコシステム間競争から斬新な 製品やサービスが登場 • エコシステム内のビジネス戦略は、集合的 に調整され、水平方向の競争を改善 • ライバル間の競争は垂直統合によっても 堅牢化(特にApple陣営)。 • 従って、効率性は、“オープン”か“クロー ズ”かによるのではなく、垂直統合とプ ラットフォームの調整度合い等による。
デジタル化ステップアップへの適応 ③IoT 参考例:Cisco 「超スマート社会」 は更にSMART XX をつなぐビジョン 22
IoT現況を3タイプにマップングしてみると・・ タイプ1 タイプ2 ? ? タイプ3 GEのジェットエンジン コマツの建機 GE:Predix(各社相当品) 日本のコンソーシアム IVI 新サービス登場の兆し クローズド垂直統合 モデル ルーズリー・カップルド・ モデル マルチサイデッド・ プラットフォーム・モデル 断トツのハード商品特性を IoTで本質転換させ、サー ビス水準を高度化する垂 直統合モデル洗練化で価値 生成 共通プラットフォーム上に各 種イノベーション/アプリケー ションを共存・連携させて、 これらを調整/統合して価値 生成 IoT能力を活用して機器販売 ビジネスを機器機能のサービ ス・ビジネスに転換することで 価値生成 • • 統合(メーカー)の管理 • 機能は複雑化するが、 価値創造と価値獲得を 容易化 既存ハードの高シェア • を基盤に一層の寡占化 目指す勢い プラットフォームをコアと • したコンソーシアム(IICな ど)を形成し、多様な取 り組みを開始 タイプ1型の成功モデル • を多様な分野でも成立 させるのはどのようにす べきか挑戦中の状態 • 従量課金型サービスビジネ スが登場(LEXMARK(プリン ター)、ケーザー・コンプ レッサーetc) 新規ではあるが、マルチ サイデッド・プラットフォム 型では無い この延長線上に新サービ スの可能性
観察③:顧客との親密な関係性の重要化 • 新しいサービスの傾向は登場 – トータルでサポートするコンサルティングサービス、マ ネージド・プリント・サービス(MPS)など • 新たな複雑性を保有するシステムが登場か • トータルサービス化の要望の結果、特定プラット フォーム上への集積を通じてマルチサイデッド・ プラットフォーム型モデルが登場する可能性大 • 但し、IoT世界でもタイプ1⇒タイプ2⇒タイプ 3型遷移がメインストリームかは現時点で不明 24
3.ビジネスモデル論からの示唆 ビジネスモデルとは何か? ビジネスモデル論に関わる学術的業績を紐解くと・・ • 新しいタイプの・・技術相互作用を容易に したICTの急速な進歩が重要な偶発的 (コンティンジェンシー)要因となった。 ・・・Geoffrion and Krishnan, 2003 • ・・技術進歩は、企業、パートナー、顧客 間の組織的取り決め(≒ビジネスモデル)を 作成するための新たな機会をもたらした。 ・・・Geoffrion and Krishnan, 2003 Arthur M. Geoffrion カリフォルニア大学 25
ビジネスモデルは、財務モデルというよりは、 ビジネス概念モデル • 「ビジネスモデルは、ビジネスの組織的、財務 的アーキテクチャに他ならない」 ・・・H. Chesbrough and R. S. Rosenbloom,2002 (「オープン・イノベーション」で有名なチェスブローはビジネスモ デル論でも主要な論客) • ビジネスモデルの変化駆動要因は次々に発生 勃興してきた知識経済 インターネットや電子商取引の普及 事業活動のアウトソーシングやオフショアリング 世界的な金融サービスの再編 IoTの普及、・・・ David J. Teece,“Business Models, BusinessStrategy and Innovation”, Long Range Planning 43 (2010) 172-194 26
ビジネスモデル論の代表的論文著者/論客一覧 大御所 話題になった論文/ 著書の書き手 代表選手 オープン・ イノベーション Henry Chesbrough Joan Magretta C. Zott and R. Amit Jonathan D. Linton オタワ大学教授 ノーベル経済 学賞 プラットフォーム の経済学 Insead ペンシルベニア大 (フランス) ワートンスクール Jean Tirole ダイナミック・ ケーパビリティ アレックス・オスターワルダー 『ビジネスモデル・ジェネレーション』(2010)の著者 ビジネスモデル・キャンバス提唱者 David Teece
ビジネスモデル論で著名なAmit & Zott論文一覧 次ページ以降に3部作の要点を記す。 著者 第 1 作 タイトル R. Amit, C. Value creation in e-business Zott C.Zott & R.Amit 第 C.Zott & 2 作 R.Amit SCOPUSの引用 出展 Strategic Management Journal, 22, (2001),pp. 493-520. 回数 1226 Business Model Design and the A working paper in the INSEAD Working Performance of Entrepreneurial Firms Paper Series, 5, (2005) Business model design and the performance of entrepreneurial firms Organization Science, 18:(2007), 181-199. C.Zott & The fit between product market strategy and business model: Implications for firm performance Strategic Management Journal, (2008), 29, 253 pp. 1-26. C.Zott & R.Amit Business model design: An activity system perspective Long Range Planning 43 (2010) 216-226 256 C.Zott ,R. Amit, L. Massa The business model: Recent developments and future research Journal of Management , Vol.37, Issue 4, (2011), Pages 1019-1042 335 MITSloan Management Review, Vol.53, No.3Vol.53, Issue 3, (2012), Pages 41-49 70 Strategic Organization, Vol.11, Issue 4, (2013), Pages 403-411. 8 第 3 R.Amit 作 R. Amit, C. Creating value through business Zott model C. Zott & R.Amit, The business model: A theoretically anchored robust construct for strategic analysis 184 28
第1作 (2001) ビジネスモデル・デザインの条件は4つ (4) 新奇性(Novelty):取引主体との関 係性や構造に変革を起こす(「イノベー ティブなビジネスモデル・デザイン」) 。 (1)効率性 (Efficiency) :従来よりも取 引上のコストを 抑えられる。 (3)囲い込み (Lock-in): 顧客を同業競 合他社の製品・ サービスに流出 しにくくする。 (2)補完性(Complementarity): 複数の取引主体を結びつけることで、 単体では得られない効果を得る。 Amit, R., Zott, C., “Value creation in e-business”, Strategic Management Journal , Vol. 22, Issue 6-7, June 2001, pp.493-520. 29
デジタル化ステップアップとビジネスモデル・デザイン は次のように対比できる デジタル化ステップ タイプ1クローズド垂直統合モデル タイプ2ルーズリー・カップルド・モデル タイプ3マルチサイデッド・プラットフォーム・モデル ビジネスモデル・デザイン (3)囲い込み(Lock-in):顧客を同業 競合他社の製品・サービスに流出しに くくする。 (2)補完性(Complementarity):複 数の取引主体を結びつけることで、単 体では得られない効果を得る。 (4) 新奇性(Novelty):取引主体との 関係性や構造に変革を起こす(「イノ ベーティブなビジネスモデル・デザイ ン」) 。 30
第2作 (2007) 企業価値を押し上げるビジネスモデルの要件 結果1:「効率性」の高いビジネスモデルを持 つ企業は、企業価値が高いこともあるがそうで ないこともある。 結果2:「補完性」と「囲い込み」は、企業価値 と有意な関係を持たない。 結果3:「新奇性」が高いビジネスモデルの企 業は、一貫して高い企業価値を実現する。 結果4:しかし「新奇性」と「効率性」の両方が 高いと、むしろ企業価値が低下する。 「新奇性」と「効率性」の二兎を追わず、メリハリ をつけた方が良い。 31 Zott, C., Amit, R., “Business model design and the performance of entrepreneurial firms ”, Organization Science, Volume 18, Issue 2, March 2007, pp.181-199.
第3作 (2008) ビジネスモデルと競争戦略 • 競争戦略とは業界内で企業がどのようなポジ ショニングをとるかの行動パターン 結果1:ビジネスモデルの「新奇性」が高い企業 は、企業価値が高い。 結果2:差別化戦略は一貫して企業価値を高め、 その効果は、ビジネスモデルの「新奇性」が高 い時にさらに強まる。 結果3:コスト優位戦略は、企業価値と有意な関 係を持たない。 結果4:但し、ビジネスモデルの「新奇性」が高 いときに限り、コスト優位戦略も企業価値を押し 上げる可能性がある。 「新奇性」が最も重要 32 Zott, C., Amit, R., “The fit between product market strategy and business model: Implications for firm performance ”, Strategic Management Journal , Vol. 29, Issue 1, January 2008, pp.1-26.
デジタル化進展についての論文の知見 ビジネスモデルはデジタル化ステップアップ(タ イプ1⇒タイプ2⇒タイプ3)と強く関係している。 即ち、ビジネスモデルは組織デザインと強く関係 しており、新たなデジタル化要因対応には組織 デザイン・アプローチが求められる。 ビジネスモデル・デザイン中では「新奇性」が最 も重要で様々な製品市場戦略と正の相関が ある。 ビジネスモデルと製品市場戦略が共同で企業 パフォーマンスに影響を与えることをよく理解 しておく必要がある。 33
3. ビジネスモデル論からの示唆 ビジネスモデル論からの考察 ー3事例の比較からー IoTは次のデジタル化要因であり、・・ • 技術的進歩は一層進展し、 • 偶発的要因は一層複雑化し、 • デジタル化ステップアップとビジネスモデ ル・デザイン相関の視点が一層重要になる。 • デジタル化ステップアップ調査事例とビジネ スモデル・デザインの対比一覧図(次ペー ジ)と・・ • 変化の図式(次々ページ)を以下に示す。 34
3事例3タイプにビジネスモデル論をマッピング デジタル 化事例 タイプ1 タイプ2 タイプ3 クローズド垂直統合モ デル ルーズリー・カップルド・モ デル マルチサイデッド・ プラットフォーム・モデル ①デジタ 巨大で強力な 相互依存性を通じ 分配、取引、検 索コスト削減で価 ル放送 連結を通じて価 て価値を生成 値生成 値生成 外部アプリを厳 ②モバイ しく管理し初歩 ル端末 的“塀に囲まれ た庭”作成 各イノベーション をグローバル/地 域/技術毎に調整 /統合で価値生成 断トツハード商 ③IoT(予 品のサービス 想) 水準高度化で 価値生成 各種イノベーショ ンを共存・連携さ せ調整/統合して 価値生成 ビジネスモデル・ デザイン No.1 「補完性」 No.2 「新奇性」or「効率性」? No.1 「囲い込み」 No.2 「効率性」 Appstoreなどを 確立することで革 新的“塀に囲まれ た庭”作成 IoT活用で機器機 能をサービス・ビジ ネスに転換させて 価値生成 No.1 「新奇性」 35
デジタル化進展による変化の図式 タイプ1 タイプ2 タイプ3 クローズド 垂直統合 ルーズリー・ カップルド マルチサイデッド・ プラットフォーム 価値創 No.1 囲い込 No.1補完性 No.2 新奇性 造要因 み 担い手 アイディア No.1新奇性 No.2効率性 &効率性? 既存ビジネス の覇者 資金力 多くの企業のア 既存業界秩序 イディア を破壊の名分 連携を主導する 強力な企業家 コーディネータ 精神 「拡散」の過程 「縮小」の過程 断絶 新サー ビス インパクトが 最も大きい 但し、最初か ら考えること はできない 顧客が望ん でいる 新しいサービス 登場の形態
「変化の図式」視点からの示唆 • タイプ2、タイプ3間に断絶があり、この克服 過程が特に重要だが・・・ 1. インパクトが最も大きいタイプ3は、最初か ら考えることができない。タイプ2の混乱を つぶさに観察し、それを解決するところから登 場する。 2. タイプ3の覇者は多くの競争相手を蹴落と す必要があり、その際の名分は「顧客が望 んでいる」などと、それを押し通せる辣腕(強 力な企業家精神など)が求められる。 37
IoTアプリケーション領域のこれからは長く広い(公開ロードマップの例) プラグインプレイのスマートオブジェクト ア プ リ ケ ー シ ョ ン 領 域 トランスポーテーション ユーティリティ スマート製販(エンタープライズ) スマートホーム(ホーム&パーソナル) 2010 ・グローバル・アドレス ・相互接続性標準 ・低消費電力、薄 型電池 ・クラウド基盤 ・RFID/クラウド・セ キュリティ ・ヘルスケア用センサー ・データセンター ・WSNテストベット J.Gubbi, R. Buyya, S.Marusic,M. Palaniswamia, “Internet of Things (IoT): A Vision, Architectural Elements, and Future Directions”, Journal Future Generation Computer Systems, Vol.29 Issue 7, Sep., 2013, pp.1645-1660. 2015 2020 2025&それ以降 ・グローバル・アドレス ・ネットワーク型センサー ・高水準セキュリティ ・小型化リーダー ・RFID,WSN間相互 接続性 ・クラウドコンピューティング ・環境発電 ・インテリジェント分析 ・無線能力 ・環境発電とリサイクル ・大規模無線セン サー・ネットワーク ・超高水準セキュリティ ・Deploy and Forget センサー・ネットワーク ・自己適応システム ・クラウド/オンライン解析 ・生分解性材料とナ ノパワー装置 ・製販用RFID ・産業エコシステム ・低コストSCADAシステム ・超感度インフラ監視 ・スマートグリッドと家庭 用計量計 ・物流、車管理用 スマートタグ ・インフラ整合の車 ・システム・レベル分析 ・IoTサービス使用の 自律的車 ・他サブネットワークと インタラクションを持つ 異種システム ・スマート・トラフィック ・自動駆動車 ・インテリジェ゙ント交通 38 と物流
IoT領域では必ずしも公式的な3タイプ遷移が発生せず、 モノに依存して多様化・共存化が発生するかもしれない タイプ2 タイプ1 タイプ3 Caas (グーグル) 風車 predix Akippa Airbnb 建機 (コマツ) ジェットエンジン (GE) ロボット (ファナック) クローズド 垂直統合 ビジネスモデル・ デザイン No.1囲い込み No.2効率性 自動運転 (車) ルーズリー・ カップルド No.1補完性 No.2新奇性or効率性? Uber (空き駐車場) (空き家) (空き車と 運転手) マルチサイデッド・ プラットフォーム No.1新奇性 39
IoTによるデジタル化進展の変化は複雑化 経営のスコープ 顧客 企業 複雑性の増大 顧客の顧 客 社会/公共 「顧客を知る」範囲 デ ジ タ ル 化 の 進 展 企業 顧客 企業 企業 顧客 顧客の顧 客 ビジネスモデルの重要性 顧客 顧客の顧 客 顧客の顧 客 社会/公共 社会/公共 社会/公共 IoTアプリケーション領域の拡大 企業 顧客 40
今後の取組みと課題 組織構造のダイナミックな変革に挑戦す べき!(ベンチャー活性化も含めて) 新ビジネスモデル創出に向けて、非線形 的ダイナミズム発動の準備・意識を考慮 すべき! 複雑性(≃システム化)に対するダイナ ミズム許容と実践スキルの保持も希求す べき! MVEとは 画期的新サービスは上記ダイナミズム 発動と連動した行動の延長線上に登場 する。 ⇒新しい取組み、例えばMVE(Minimum Viable Ecosystem)への圧倒的シフトなども 41