Society5.0とシェアリングエコノミー

120 Views

November 11, 16

スライド概要

平成28年1月22日、科学技術基本法に基づき10年先を見通した5年間(平成28~32年度)の科学技術振興の総合計画:第5期科学技術基本計画が閣議決定された。 我が国を「世界で最もイノベーションに適した国」へ導くとの大方針が提示され、その中で世界に先駆けた「超スマート社会」実現に向けたイノベーション・技術開発加速化戦略「Society 5.0」が打ち出された。これは産業だけでなく芸術や教育も含めた新たな文化の創設まで視野に入れており、「モノ+サービス」一体化したプラットフォームの出現を見据えている。そこで、世界的不況をきっかけに現行消費パターン批判から登場した文化的側面もあり、また、「モノ+サービス」一体型のプラットフォームを出現させているUber、Airbnbなどのシェアリングエコノミーが一部の点で類似性があるので、これを取り上げて、「超スマート社会」へのプロセスを探索してみる。

profile-image

定年まで35年間あるIT企業に勤めていました。その後、大学教員を5年。定年になって、非常勤講師を少々と、ある標準化機関の顧問。そこも定年になって数年前にB-frontier研究所を立ち上げました。この名前で、IT関係の英語論文(経営学的視点のもの)をダウンロードし、その紹介と自分で考えた内容を取り交ぜて情報公開しています。幾つかの学会で学会発表なども。昔、ITバブル崩壊の直前、ダイヤモンド社からIT革命本「デジタル融合市場」を出版したこともあります。こんな経験が今に続く情報発信の原点です。

シェア

またはPlayer版

埋め込む »CMSなどでJSが使えない場合

関連スライド

各ページのテキスト
1.

Society5.0と シェアリングエコノミー B-frontier研究所 高橋 浩 (プラハ歴史地区)

2.

目次 1. Society5.0とは 2. シェアリングエコノミーによる「大変革」 3. ピア・ツー・ピア直接相互作用の効能 4. 社会の様々なニーズへの対応 5. 「超スマート社会」へのプロセス 2

3.

1.Society5.0とは • 科学技術基本法に基づき10年先を見通した5年 間(平成28~32年度)の科学技術振興に関する 総合計画:第5期科学技術基本計画が平成28年 1月22日閣議決定された。 • 我が国を「世界で最もイノベーションに適した 国」へ導く大方針が提示された。 • そして、世界に先駆けた「超スマート社会」実現 に向けたイノベーション・技術開発加速化の戦 略「Society 5.0」が打ち出された。 3

4.

超スマート社会を実現するサービス プラットフォーム構築への取組み 4

5.

「超スマート社会」構築のための サービスプラットフォームの構成要素 • • • • • • インタフェース、データフォーマット標準化 セキュリティの高度化・社会実装 標準的データの活用 情報通信基盤の開発強化 新サービス向け規制・制度改革 人材の育成 5

6.

「超スマート社会」を未来の姿として共有し、その 実現に向けた一連の取組を「Society 5.0」*とする。 *: 狩猟社会、農耕社会、工業社会、情報社会に続くような新たな社会を生み出す 変革を科学技術イノベーションが先導していくという意味 第4次産業革命に対応する社会で、ドイツ提唱のインダストリー4.0はこの産業部分 6

7.

サービスプラットフォーム構築の課題 • 産業だけでなく芸術や教育なども含めた新たな 文化の創設が必要 • 実空間とサイバー空間を連携・統合した複数シ ステムの統合システム形態の実現 • 「モノ+サービス」一体化したプラットフォームの 出現が必須 • 日本は強い産業をより強く しながら新たなシス テム・サービス産業を創出する戦略が必要 7

8.

Society5.0とシェアリングエコノミー • シェアリングエコノミーは世界的不況をきっかけ に現行消費パターン批判から登場した文化的 側面がある。 • 加えて、Uber、Airbnbなどの先行事例は「モノ +サービス」を実現したプラットフォーム • この成功は今後の方向性を示唆しており Uberizationという言葉も登場している。 • そこで、シェアリングエコノミー分析を通して超ス マート社会への到達プロセスの探索を試みる。 8

9.

2.シェアリングエコノミーによる「大変革」 Q.何故シェアリングエコノミーは活発化したか? 1 クラウドの普及でプラットフォーム構築が 容易化している Airbnb プラットフォーム ホスト Uber プラットフォーム ゲスト 運転手 AMAZON AWS 乗客

10.

2 プラットフォームの機能と型が変化している プラットフォームの型 トランザクション型 プ ラ ッ ト フ ォ ー ム の 機 能 マッチング 代 相互作用 Uber,Airbnb など 表 的 インテグレーション型 相 エコシステム 関 性 Google, Appleなど 時 代 の 潮 流 イノベーション型 補完性 Microsoft, Intelなど Peter C. Evans, Annabelle Gawer,” The Rise of the Platform Enterprise A Global Survey” http://thecge.net/wpcontent/uploads/2016/01/PDF-WEB-Platform-Survey_01_12.pdf を参考にして作成 Peter Evans 10 Center for Global Enterprise 副社長

11.

3 企業タイプとプラットフォーム型の相関も 多様化し、資産小でも立上げが可能に 企業構造 垂直統合(VI) +資産規模 プラットフォーム・ エコシステム GE Daimler 資産が大きい 企 業 タ イ プ 事例 企業名とプラットフォーム Predix Moovel 広域エコシステム 混在(中間) 資産が小さい Apple App store Amazon App store Google Map, Search Facebook SNS Google Google Play Uber Uber app Airbnb Airbnb app 広域エコシステム&トランザクション型 時 代 の 潮 流

12.

プラットフォームとエコシステムの 新たな関係性が登場している プ ラ ッ ト フ ォ ー ム の 変 化 1 ステップ 2 ステップ プラットフォー ム提供機能が シフト デジタルプラッ トフォーム構築 が容易化 3 ステップ プラットフォー マーと専門サー ビス提供者が分 離し多様化 プラットフォーム所有者 クラウド (AWS) エ コ シ ス テ ム の 変 化 マッチング 相互作用 資産小でスピーディー な取組み 多数の専門サービス提供者 資産or労働提供と サービスレベル高度化 12

13.

シェアリングエコノミーのカバー範囲は広い PiperJaffray, 2015. Sharing Economy: An In-depth Look at its Evolution and Trajectory across Industries 13 <http://collaborativeeconomy.com/wp/wpcontent/uploads/2015/04/Sharing-Economy-An-In-Depth-Look-At-Its-Evolution-and-Trajectory-Across-Industries-.pdf>.

14.

日本においても事情は同じ 総務省第1回 シェアリングエコノミー検討会議【資料1-6】一般社団法人 シェアリングエコノミー協会 提出資料から 14

15.

3.ピア・ツー・ピア直接相互作用の効能 シェアリングエコノミーの枠組み プラットフォーム所有者 例:Airbnb (Uber) プラットフォーム 専門サービス提供者 ホスト (運転手) 消費者 ゲスト (乗客) 専門サービス提供者と利用者間の ピア・ツー・ピア型直接相互作用を可能 にする新たなプラットフォーム 15

16.

直接相互作用レベルは格段に向上 古典的事例 最近の事例 シェアリング・エコノミー領域 eBay • モノ(中古品)の 売買 • 信頼性:モノの受 け取りによって確 認できる。 Airbnb,Uber • サービスの提供/授 受 • 信頼性:現場での サービス享受を事 前に判断しなけれ ばならない。 最近の事例では相互作用レベルが急激に上昇 16

17.

ピア・ツー・ピア交換プラットフォームは交換されるモノに依存して分類可能 シェアリング・エコノミー領域 プラットフォーム P to Pファ P to P イル共有 商品取引 P to P 商品共有 P to Pサ ービス共有 交換の目的 物理的モノ 有形財 有形財 無形の出会 い タイミング No 要件 ミーティング No 要件 事例 Napster 必ずしも必 要無い No 必ずしも必 要無い 必ずしも必 要無い AirBnb Yes eBay 所有権 移転無し Yes Avego、 例:Ridesharing (車の相乗り) リアルな人間同士の対話 M. Andersson, A. Hjalmarsson and M. Avital, “Peer-to-Peer Service Sharing Platforms: Driving Share and Share Alike on a Mass-Scale”, Thirty Fourth International Conference on Information Systems, Milan 2013.

18.

これを実現する信頼性レベルの向上 Airbnbのアルゴリズムビッグデータモデル クレジットカード パスポート Facebook,LinkedIn 顔写真 過去のクチコミ情報 ゲスト、ホスト相互評 価 ホストサービス評価 ”SuperHost” 総合的背景チェック など 18

19.

• リアルな人間同士が地理的制約を超え て直接相互作用することで切り拓かれる 新領域は大きい。 (嘗ての小売業と比較したe-business立上げの場合を想起して) Society5.0世界 • 企業境界見直しが発生 • 新たな企業形態が登場 • 新たな働き方が可能に • 新たなサービス価値提供の拡大 19

20.

4.社会の様々なニーズへの対応 シェアリングエコノミー&プラットフォームは・・ サイバー空間とフィジカル空間の融合による新た な価値を創造でき、・・ アルゴリズムビッグデータモデルによって新たな 価値を創造でき、・・ リアルな人間同士が地理的制約を超えて直接相 互作用が可能な新たなタイプの信頼性醸成をデ ザインできる。 この結果、革新的ビジネスモデルを創造する段 階に到達できる。 20

21.

ホテル産業としてのAirbnb • 2015 年、Airbnb は世界最大のホテル・グループ以上 の貸し出し部屋数を確保するに至った。 • Airbnbの宿泊コストは平均してホテルの半値 • 2015年、Airbnb の正社員は 800 人。ヒルトングルー プの正社員は 132,000 人で、宿泊者数はこの 5 年で 353 倍伸びた。 21

22.

タクシー産業としてのUber,Didi • 世界中のタクシー業界の現状を破壊しつつあ るとの評価・・サンフランシスコ市営交通庁ほ か • また、ニューヨークでは7月8月限定で「通勤 時間帯uberPOOL乗り放題プラン」も登場 – タクシー通勤が電車通勤より安価の例も • 新興国での普及も顕著 – 中国では2012年に設立されたばかりの中国最大 のライドシェアリング企業Didiが既に1日あたり 「1100万乗車」の規模 – Uberの10倍もの規模を誇り、Uberもタジタジ(結 局、Uberは撤退) 22

23.

ピア・ツー・ピア・サービス共有の典型の Ridesharingとは・・ • 乗車地点から目的地へと走行する際、ドライ バ(ピア・プロバイダ)と一緒になって、車を共 有し、一人以上の乗客(ピア・コンシューマー) の参加を伴う行為 • サービス前またはサービス中に、乗車・降車 位置、待機時間、音楽再生、禁煙政策、補償 など様々な要素について合意が必要 • 活動は短命で、各個別サービスのパフォーマ ンス期間中、ピア・プロバイダとピア・コン シューマーの同乗を必要とする。 ~~純粋サービスの要件にかなり近い~~ 無形性、同時性、異質性、消滅性など

24.

ridesharingサービス共有プラットフォームは 3タイプが登場していた(探索的情報分析技術による) Robert K. Yin “Case Study Research” P to Pサービス 共有タイプ 遅延型 再発型 即時型 計画の視点 全てのサービスを 最初のサービスを 全てのサービスを 共有するための 共有するための 共有するための 長い計画期間 長い計画期間 短い計画期間 サービス共有の 特徴 各サービスの共 有インスタンスは 一意で、新しいイ ンスタンス配置 用プラットフォー ムを必要とする 最初のサービス 共有が成功した 後、プラット フォームはピア にとってもはや 必要でない 事例 Zimride, Blablacar Rideshare.c SideCar, om Lyft, Uber 各サービスの共 有インスタンスは 一意で、新しいイ ンスタンス配置 用プラットフォー ムを必要とする M. Andersson, A. Hjalmarsson and M. Avital, “Peer-to-Peer Service Sharing Platforms: Driving Share and Share Alike on a Mass-Scale”, 24 Thirty Fourth International Conference on Information Systems, Milan 2013.

25.

社会の様々なニーズへの対応 • ピア・ツー・ピア相互作用形態が多様化 • サービス共有形態の複雑性が新たなサービス実 現の可能性を内在 • 資産負担に対するプラットフォーム立上げ者とサービス提 供者間の補完性も重要 • その結果、今後の社会・経済の「大変革」のキッカケにな る可能性が拡大 • プラットフォームとサービス高度化アルゴリズムの組合せで 多様な分野で常識を超えるビジネスモデル構築が可能に 25

26.

5.「超スマート社会」へのプロセス Society5.0とシェアリングエコノミー • 必要なもの・サービスを、 • 必要な人に、必要な時に、必要なだけ提供し、 • 社会の様々なニーズにきめ細かに対応でき、 ⇒シェアリングエコノミーを実現しているサービス共 有形態の複雑性が多様なサービス実現の可能性 を内在している*(次ページ)。 • あらゆる人が質の高いサービスを受けられ、 • 年齢、性別、地域、言語といった様々な違い を乗り越え、 • 活き活きと快適に暮らすことのできる社会 ⇒更なる仕組みの提案と挑戦が必要である。 26

27.

*:シェアリングエコノミーを実現して いるサービス共有形態の可能性 1. プラットフォーマーが「顧客の将来の新たなサービ ス体験」デザインのアイディアを出発点に少ない 資産でプロジェクト立上げが可能 2. 専門サービス提供者によるサービス提供によって 多様なサービスニーズに適合するポテンシャルを保 有 3. その結果、柔軟なプラットフォームエコシステム構 築による多様な業態構築が可能に シェアリングエコノミーはサービスプラットフォー ム生成の強力な駆動力を保有 27

28.

「超スマート社会」への示唆 • Uberは車とクラウドのCPSで、自動運転本格 化に向けた通過点 • Airbnbは消費財の投資財への転換の流れ を加速させる社会変革を誘導 • 日常雑務代替のTaskRabbit、ANYTIMES は高齢化社会ニーズにヒット 先行してデータを捕捉した者は「超スマート社 会」構築への良い切符を得る。 物理(部屋、車)と論理(アルゴリズムビッグ データモデル)の早期からの連携が重要になる。 特定ビジネスモデル実現に向けた洗練期間を確 保する必要がある。 28

29.

「超スマート社会」へのパスの一案 1. ピア・ツー・ピア相互作用の取引コストを削減 するプラットフォームを構築 2. 資産/スキル保有サービス提供者の参画を誘 導 3. サービス提供者、利用者双方に新サービス参 加を訴求しネットワーク効果を醸成 4. 同時に、利用急増に対するサービス基盤の備 え補強(クラウド、アルゴリズムほか) 5. 運用状況の素早い把握と要望への的確な フィードバック(IoT,ビッグデータ、アルゴリズ ム、AIほかの活用 ) 29

30.

「超スマート社会」へのプロセス:まとめと課題 • 「モノ+サービス」のプラットフォームはサービ ス毎に細分化される。~プラットフォームのカテゴリー化 • 超スマート社会ビジョンに向けたサービスプ ラットフォーム実現競争は始まっている。 – 例:自動運転車社会に向けたUberと自動車会社 の連携、GMとLyftの連携など • 日本グループも「Society 5.0」取組みの一環と して積極的にプラットフォーム獲得に乗り出さ ねばならない。 • 課題:従来この種の取組みは日本ではあまり 成功例がなく、これを克服する新たな取組み が必要になる。 30