トータルシステムとしてのサービス

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April 02, 20

スライド概要

今、MaaSが話題だ。携帯電話やNetflixで登場したサブスクリプションモデルがいよいよ運輸部門にも押し寄せてきた。フィンランド発のMaaS Global社のwhimだけでなく、ユーザー視点ということでは類似発想のスマートシティや自動運転車を含む自動車業界の大変革CASEとも共振して大きな影響を与えている。
そのような大きな変革の中で、新たなパラダイムに必ず登場するMaaSプラットフォームの分析も重要だ。但し、この点に関しては、まだあまり情報公開がないように感じている。そこで、この辺りに焦点を当ててMaaSの紹介を行う。

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定年まで35年間あるIT企業に勤めていました。その後、大学教員を5年。定年になって、非常勤講師を少々と、ある標準化機関の顧問。そこも定年になって数年前にB-frontier研究所を立ち上げました。この名前で、IT関係の英語論文(経営学的視点のもの)をダウンロードし、その紹介と自分で考えた内容を取り交ぜて情報公開しています。幾つかの学会で学会発表なども。昔、ITバブル崩壊の直前、ダイヤモンド社からIT革命本「デジタル融合市場」を出版したこともあります。こんな経験が今に続く情報発信の原点です。

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各ページのテキスト
1.

トータルシステムとしてのサービス ‐ MaaS(Mobility as a Service)を中心に ‐ B-frontier研究所 高橋 浩

2.

目次 • MaaSとは何か? • サービスとしてのMaaS • スマートシティがもたらす新しいモビリティ 社会 • プラットフォームが重要に • ライフスタイルの変化 2

4.

MaaSとは何か? MaaSという概念の「生みの親」 (Mobility as a Service) • フィンランドのベンチャー企業MaaS Globalを率いるSampo Hietanen氏 • 目標:「モビリティサービスを組み合わ せて、クルマを保有する生活よりも、 より良い生活を実現するサービスを 作り出す」(2014年) ⇒環境負荷軽減などのため「自家用車を保 有しない暮らし」の実現志向 ⇒自家用車以上の使い勝手の良さを、公 共交通とそれ以外の交通手段の組み合 わせで実現 Sampo Hietanen氏 MaaS Global CEO 4

5.

サービスの特徴 • 経路検索や予約・決済を一つのアプリでシーム レスに一括で行えるようにすることで、検索や支 払いの手間をなくす。 • 例えば、月額約5万円などで、公共交通機関、 タクシー、レンタカーなどが連携する全てのモ ビリティサービスを使い放題、乗り放題できる (サブスクリプションモデル)。 5

6.

MaaSとは何か? 移動の「所有から利用へ」を突き詰めた一体化サービス • 一つのインタフェースで様々な交通手段を一貫して利用可能 – 「検索」「選択」「予約」「支払い」「チケット」などに総合的に対応 – 統一的で利用しやすい料金体系 • 出発地から目的地まで、一人一人の利用者のための交通 サービスを提供 – 一人の快適さだけでなく都市の渋滞解消なども視野に入れた サービスを提供 6

7.

MaaSのビジョン 我々のソリューションは-輸送のNetflix もし、全ての交通機関が収 束されていて.. ..月額パッケージとしてあな たのニーズに合うように調整 されていたら? Netflixには ベーシックプラン、 スタンダードプラン、 プレミアムプランがある 7

8.

MaaS Global社のMaaS月額料金プラン例 ライト 89ユーロ/月 HSLヘルシンキの 公共交通乗り放題 + 1000 Whimポイント 例えば以下のような利 用が可能 タクシー 10km×2回 + • • • 公共交通 無制限 ミディアム プレミアム 249ユーロ/月 389ユーロ/月 HSLヘルシンキの 公共交通乗り放題 + 5,500 Whimポイント 例えば以下のような利 用が可能 HSLヘルシンキの 公共交通乗り放題 + 10,000Whimポイント 例えば以下のような利用が 可能 タクシー 公共交通 レンタカー 10km×8回 無制限 2日 + + タクシー 公共交通 10km×10回 無制限 + レンタカー 5日 + Whimには、月額料金のない「Whim to Go」もある。大半の利用者はこの利用者。 プレミアムは殆ど利用者がいない。(尚、ヘルシンキの人口は60万人) ヘルシンキの公共交通機関(ヘルシンキ区間内の14本の列車、11本のトラム、2 本の地下鉄、290路線のバス)は、HSL(ヘルシンキ地域交通局)がまとめ、独自 アプリも提供している。 8 上記の「公共交通 無制限」はHSL以外の一定範囲の公共交通を指す。

9.

現状とMaaSとの比較 9

10.

MaaSは今後の交通にとって何を意味するか? 一回払い 出発地から目的地まで完全一貫旅行・移動の提供 公共交通その他の移動手段の乗り回し 個人移動、個別移動、または小グループ移動でも大量輸送 の公共交通と同じ仕組み・サービスの提供 車の役割変化 車の所有者が減少し、将来は自動運転車が普及することを 前提に新サービスを企画・推進 マルチモーダル旅行・移動(各種シェアサービスの利用) 自転車シェア、e-バイク、スクーター、カーシェア、シャトルな ど各種の多様なシェアサービスの提供と利用促進 10

11.

MaaS導入にあたってのシステム的課題 データ共有 マルチモーダル旅行/移動を可能にする。 旅行代理店が新たな成功の機会を明確に認識する。 これが実施可能なデータ共有の仕組みを構築する。 サービスの一貫性 旅行代理店、公共交通および民間の各種輸送事業体、 および地域(都市、地方、スマートシティなど)全体が一 貫性を持つ。 運用・管理の統一的枠組み 輸送でカバーする範囲(都市内、都市間、国際間)の地 域または国境などを越えた相互運用性の管理の枠組みを 樹立する。 11

12.

日本版 MaaS 例1 小田急が「駅すぱあと」のヴァル研究所他と連携してい る共通データ基盤「MaaS Japan」 12

13.

日本版 MaaS 例2 トヨタ自動車と西日本鉄道が中心になって実 施している「my route」 13

14.

日本版 MaaS 例3 JR東日本、伊豆急、東急電鉄が推進している 観光型MaaS 「Izuko」 14

15.

MaaSの定義とは ① MaaSとは、ユーザー中心のインテリジェントな モビリティサービス提供モデルであり、 ② 全てのモビリティサービスプロバイダーのサービ スが唯一のモビリティプロバイダーである MaaSプロバイダーによって集約され、 ③ 単一のデジタルプラットフォームを通じてユー ザーに提供されるサービスのこと ⇒共同で相互接続された単一の輸送市場を実現 ⇒新しいプレイヤ、MaaSプロバイダーの参入が必要 M. Kamargianni and M. Matyas, “The Business Ecosystem of Mobility-as-a-Service” , The Business Ecosystem of MaaS. 96th Transportation Research Board (TRB) Annual Meeting, 2017. 15

16.

何故、MaaSによって“トータルシステムとして のサービス”が良くなると考えられるのか? 1. 各種の移動を一体的サービスとして提供する ものと考える。 2. これを全体として提供するMaaSによって移 動の自由度が上がる。 3. このことによって無駄なコストが削減されたり 自家用車用スペースが余ったりする。 4. その利益や資産を他分野に転用することで、 副次的効果を獲得したり環境対応などの良 い影響を生み出すことができる。 16

17.

サービスとしてのMaaS 自動運転車まで含めたスコープでの MaaS型サービス登場と発展の背景 • ICTの普及と発展(例:スマホ) • 自動運転技術の発展(例:Waymo,Uber他) MaaSの主要な要素 自動運転車 ICT MaaS 法規制 17

18.

① 自動運転技術 • 現在は運転手の確保や維持コストが公共 交通の大きな課題となっているが、これが 緩和される。 • 特に、公共交通が手薄な地方での移動、 地方の観光地での交通などに自動運転 車は大きく寄与することが期待されている。 • 無人運転技術は移動手段に次のような大 きな変化を与える。 ① 運転手不足問題の解消 ② 持続的・安定的交通・物流手段の確保 ③ 高齢者の移動、買い物手段の確保 18

19.

② ICT技術 • Uberなどのライドシェアサービス登場は、 – 1) – 2) – 3) – 4) 携帯通信網の拡充、 GPS位置情報精度の向上、 スマホ普及、 電子決済サービスなど の普及が大きな要因であった。 • その結果、下記などが可能になった。 – スマホによって個人間が低コストでマッチングで き、課金・決済もオンラインで可能 – 運転手や顧客の信用情報蓄積が行なえ、安全性 やセキュリティの保証も可能 – 各種交通機関の連携も容易になり、異なる交通 19 手段を同じIDや課金体系で利用可能

20.

③ 法規制 • 但し、新しい法規制が求められる。 • 現行法では、 – 自動運転車の公道での利用には道路交通法が 関わる。 – ライドシェアサービスでは道路運送法が関わる。 • MaaS型事業は現行法規や既存業界のルー ルに抵触する部分がある。 • 法規制側も新しい技術に対応した規制変更 や撤廃などが求められる。 20

21.

サービスとしてのMaaSは? • サービスとしてのMaaSは、上述の要素 に加えて、下記考慮も必要である。 • 対象エリアの社会的課題や事業特性、 各種交通手段の分担比率などの前 提条件や交通状況に応じた対応が必 要になる。 • 国や都市、エリア毎に適切な目標設定 を立てビジネス成立も含めたサービス 設計が必要になる。 21

22.

MaaSのスウェーデンとフィンランドの比較 重点の置き方、国情の違いなどで種々の違いが出てくる。 • スウェーデンでは主 に持続可能な交通 手段志向 • 特に公共交通の成 長目標を達成する サービス化された交 通ツールとして議論 • 公共サービス志向 型 • フィンランドではICT 活用での成長実現 志向 • 経済の低迷を相殺 する公共支出合理 化の手段としての新 しい輸送の枠組みと して議論 • 市場志向型 GÖRAN SMITH et al., “Mobility as a Service: Comparing Developments in Sweden and Finland”, ICoMaaS 2017 Proceedings. 22

23.

日本でもMaaSを取り込んだスマートシティ のモデル(15都市)が決定されている - 事例 • 【医療MaaS】茨城県つくば市:顔認証技術を活用 し、バスに乗るだけで病院受付が可能にする。 • 【観光MaaS】栃木県宇都宮市:観光地やイベント における人流データ分析、モビリティサービスの 導入による地域活性化を目指す。 • 【観光MaaS】静岡県:3次元点群データを用いた 仮想県土「VIRTUAL SHIZUOKA」と連携し、移動や 災害対応の効率化、迅速化を実現する。 23

24.

その全てがスマホさえあれば簡単に利用でき、 MaaSが都市/地域の抱える課題解決の要となる • MaaSによって新しい選択肢が提供されると、交 通情報が共有され渋滞が緩和されたり、地球環 境が改善される効果が期待できる。 • スマホを起点に、多様なサービスを利用、操作 できることが当たり前の時代になる。 • 電車やバス、自動車から自転車に至るまで、さ まざまな移動手段が統合され、新しいライフスタ イルが創出される。 • その際、MaaSは公共交通機関はもちろん、カー シェアやシェアサイクル、自動運転車、スローモ ビリティなども統合した役割を果たす。 24

25.

MaaSを移動の多様な価値から再考する 機能的移動 人の移動に 求める価値 ・通勤、通学など日常生活の移動 ・「安・早・楽」などの機能的価値 着地点に価値を感 じる体験的移動 ・バスの停車地点(風景、 店舗など)に価値がある バスツアーなど 観光MaaS 体験的移動 移動行動自体に価値 を感じる体験的移動 ・豪華客船、高級な 汽車などでの旅 25

26.

多様な価値の創出が可能に • 実際には、機能的価値、体験的価値の複雑 な組み合わせと、 • それに伴って創出されるサービス価値の企画 と提供が重要になる。 • 分野によって多様な可能性がある。 • 一例を観光MaaSで次頁次々頁に示す。 26

27.

観光MaaSの例 • 旅行者が目的に合わせて自ら検討していた計画 プロセスが容易になり、移動の自由度が増す。 • 従来はアクセスが困難であった場所にもアクセ スが可能になる。 – 例えば、Uberの普及によって、英語が話せなくてもス マホだけで、迎車、決済ができるので、行ける場所が 増える。 • 旅の目的地への移動だけでなく、旅の目的や目 的地を決定する段階を支援するサービスを提供で きる。 • 顧客起点での発想により、複数の交通機関を組 み合わせた目的地なども紹介できる。 27

28.

観光地では地域住民や同じく観光に来てい る旅行者とのコミュニケーションもできる。 • ドイツのbierbike(ビールバイク) • グループで自転車を漕ぎながら街中でビールを飲みつつ観光を体験 28

29.

スマートシティがもたらす新しいモビリティ社会 MaaSの将来/全体イメージ像 広義/将来のMaaS:様々な産業との融合・社会課題の解決 狭義のMaaS:移動の最適化 社会課 題解決 住宅 ユーザー スマートシ ティ実現 サービス提 供拠点 出 発 地 MaaSプロバイダー MaaSプラットフォーマー データ利活用 鉄道 バス タクシー など 目 的 地 コンパクトシ ティ実現 モノ移動 最適化 29

30.

住宅 「共同住宅」が「Uber」と提携:サンフランシスコ、Wired、2016年5月26日

31.

Car-Free-Living(自動車をもたない生活) • サンフランシスコの共同住宅複合施設「パー クマーセド」がUberと提携 • 自動車をもたない新しい住人にUberと公共交 通機関合計で毎月100ドルのサービスを補 助 ① 住人は、補助のうち30ドル以上をUberの乗車に使わな ければならない。 ② 家から近くの高速鉄道やサンフランシスコ市営鉄道の 駅までは、5ドルの均一料金で移動可能 ③ 100ドルからUber代金を引いた残りの額は、ベイエリア のほぼ全ての公共交通機関で使用可能な「クリッパー カード」に自動的にチャージ ④ 100ドルの補助は、「パークマーセド」が出し、賃貸関係 がある間(最長2年間)継続 31

32.

スマートシティの中核をMaaSが担うこと でもたらされる「新しいモビリティ社会」 • 都市まるごとをIoT化する「スマートシティ」 • さまざまなモノがインターネットでつながること は、利便性と生活の質の向上に繋げられる。 • 中心的な役割を担うのが、人間中心の新しい モビリティ社会を実現するMaaS 32

33.

スマートシティこそMaaSの本丸か? • • • • 生活の質の改善 通勤の利便性 都市の持続可能性の向上 • 公共交通の利便性向上や、 など • 高齢者の地域内移動手段の確保 • 余剰となった道路空間や駐車場用地 は・・ – – – – 公園、オープンスペースや、 避難場所確保による防災機能向上 緑地の充実 などへ 33

34.

スマートシティが注目されるようになった背景 • 2015年に、アメリカの交通省が「スマートシ ティ・チャレンジ」というコンペを開催 • 優勝したのは、オハイオ州コロンバス市 • 交通システムを改善することで、低所得者向 け医療・福祉サービスの充実を目指す。 – 医療機関の予約サービスと交通データシステムを統 合 – 診療日に、自動運転車が自宅まで迎えに来る。 – さらに信号や街灯なども含めたIoT化 – 誰もがモビリティの利用しやすい環境を整えるこ とで、経済的な格差の改善も目指す。 34

35.

優勝都市オハイオ州コロンバス市のスマートシティビジョン 安全 移動 機会のはしご 気候変動 35

36.

今、いちばんスマートシティ実現が進ん でいる都市はトロントか? アルファベット傘下のSidewalk Labs(グーグル)が推進中 36

37.

1. 公共交通(ライトレール:次世代路面電車) の延伸を加速させる。 2. 徒歩や自転車にやさしいエリアを構築する。 3. マイカーに代わる新しいモビリティを提供し、自 動車を保有しなくても生活できるようにする。 (=MaaS) 4. 地下空間を活用した配送ネットワークにより、 物流の効率化を図る。 5. 人やモノの流れをモニタリングし、MaaSを 通して交通を最適化する。 6. 人間優先の街路デザインを実現する。 37

38.

トロントにおけるMaaSの中身の例 • 地域住民や従業員を対象にした月270カナダ ドル(およそ2万2140円)の定額パッケージ で、トロントの公共交通、シェアサイクル、電 動スクーター、配車サービスなどが乗り放題 • マイカー1台を2人で保有し続けた場合と、マ イカーを保有せずにMaaSを利用した場合の 年間コストを試算 • MaaSに移行すると年間4000カナダドル(およ そ32万8000円)のコストが削減できる。【経済 的コスト試算】 38

39.

自動運転シェアカーを考える • 運転免許を持たない一般の利用者がスマホで自動 運転車を呼び出し、目的地への運転負担を負うこと なく移動できるカーシェアあるいはライドシェア – Shared-adus(automated driving for universal services)とも言われる。 • 自動運転技術とカーシェア、ライドシェアを組み 合わせた自動運転車によるシェア交通サービス • 将来のMaaSの重要な構成要素と想定されてい る。 39

40.

自動運転シェアカー普及の影響 • 自動運転シェアカーの普及は都市構造にも影響 を与える。 – 嘗て自動車の登場も「都市の郊外化」を引き起こした。 • 免許保有の有無に関わらず自由に移動できる 社会になれば、より自動車中心の社会を加速さ せる可能性もある。 • 将来、自動運転シェアカーが普及し、より自由に 移動できるようになれば、居住地はさらに郊外に 拡散し、都市機能の集約が目指すべき唯一の 都市構造ではなくなる可能性もある。 • MaaSを取り込んだスマートシティのビジョン(効 率化、環境対応、質の改善など)にも影響を与え る可能性がある。 40

41.

望ましい方向性 • 過度な自家用車利用の抑制 • 既存公共交通の活性化 • 都市のコンパクト化などにも貢献できる新し い交通サービス体系の提供 考慮すべき事項 • 利用者層(例:現在の公共交通を不便と感じ、消 極的理由で自家用車を利用している層)の想定 • 想定サービス加入者の手段別利用パターン • 各交通サービスの利便性に応じた使い分けを動 機づける料金体系 41

42.

関連する動向の例 • 2019年、米国のGMはアメリカの複数の都市 で無人タクシーサービスの開始を発表した。 • 日本でも同じく2019年、DeNAがEasyMile社と 共同で完全自動運転車によるラストワンマイ ルサービスの開始を目指している。 • このような動向を踏まえ、プラットフォーム理 論の立場も含めて次節で論述する。 42

43.

プラットフォームが重要に MaaSプラットフォームの全体像 顧客 MaaSプロバイダー 集約 輸送関連プロバイダー ICTベンダー 保険会社 サービスおよびデータ関連プロバイダー 規制機関 大学・研究機関 43

44.

一番重要なMaaSプロバイダーの考慮点 • 誰がMaaSプロバイダーになるかが重要! • 典型的候補者は公共交通機関または民間企 業。どちらも長所と短所がある。 長所 短所 例 公共交通 機関 • 都市/地域の全て • 役割の見直し(例:他都市、 の公共交通と連 他路線との接続)や拡大 携し易い。 が困難か遅い可能性があ る。 • MaaSサービス への参加を勧誘 • 非営利団体の場合、体験 し保護し易い。 移動等への動機が低いか もしれない。 医療MaaS 地域課題対応 MaaS MaaS Japan 民間企業 • MaaS市場がよ • 公共交通がMaaSスキー り速く開拓される ムに参加するまで時間が と期待される。 かかる可能性がある。 • サービス設計に多 • 公共交通機関が交通イン 大の努力を払う テグレータとしての評判を 可能性がある。 失うと受け取る懸念がある。 my route MaaS Japan MaaS Global(Whim) 観光MaaS 44

45.

輸送プロバイダーの考慮点 • 輸送プロバイダーは、自分の能力をMaaSプロ バーダーに販売し、安全なAPIを介して自前デー タへのアクセスを提供する必要がある。 • MaaSの概念を完全に有効にするには輸送プロ バイダーはスマホからの情報読み取り依頼に対応 する仕組みを搭載する必要がある(駐車場、料金 所、EV充電などリアルタイム情報も含めて)。 • その一方、MaaSプロバイダー経由で顧客の ニーズを聞いて顧客満足度を向上させる機会も 活用する必要がある。 • また、MaaSプロバイダーは輸送プロバイダーを 競争させてモビリティサービスの向上を図ること もできるので、それも考慮する必要がある。 45

46.

データプロバイダーの考慮点 • MaaSは相互運用可能なデータの可用性に大きく 依存している。 • データプロバイダーはMaaSプロバイダーにデータ および分析機能を提供する必要がある。 ① 輸送プロバイダーのデータを処理し各種ソース (例:顧客のスマホ)からもデータを収集する。 ② 大規模なデータの収集、保存、分析のためにビッ グデータを活用する。 ③ これらを効率的に実施するためクラウドコンピュー タを効率的に利用する。 ④ MaaSスキーム内のMaaSエコシステム全体で相 互運用可能なように、データ形式の統一、機能パッ ケージングなどを行う必要がある。 46

47.

各種サービスプロバイダーの考慮点 ① 市場に存在する旅行プランナー絡みの各種検 索エンジン(駅すぱーと、NAVITIMEなど)は高 度なMaaSサービス提供に必要な様々な機能 追加とネットワーク大容量化などへの対応が必 要になる。 ② 各種サービスプロバイダーはMaaSサービス購 入時、顧客が希望する方式でサービス購入・支 払いができるように、MaaSプロバイダーと協 力する必要がある。 ③ そして、これらの機能は全てスマホから決済他 が可能なようにする必要がある。 47

48.

MaaSプラットフォームの特徴 既存プラットフォームとはやや異なる MSPモデル 両面市場/MSPモデル 顧客 ゲーム ソフト ベンダー ゲーム機プラットフォーム 相互作用 顧客 顧客 サービスプロ バイダー (運転手) Uberプラットフォーム サービスプロバイダーの統合化 MaaS プロバイ ダー 輸送プ ロバイ ダー データプ ロバイ ダー MaaSプラットフォーム スマホの普及 • ファミコン利用者vsファミ コン用ゲームソフトベン ダー • 間接的ネットワーク 効果が顕著に働く。 • 一方が優遇される (顧客側が優遇) • 乗客とUberの運転手 • 両者の相互作用(例: 評判)で信頼性を担保 • プラットフォームはマッチン グに特化 • 資産(車)は運転手が 負担する。そのため、プ ラットフォームの大規模化が 容易 • MaaSプラットフォームは顧客 へのインターフェースを一本化 することで価値を提供 • MaaSプロバイダーがどれだ け統合できるかで価値が 変動 • 公共交通などは基本イン フラ活用が前提でバランス 48 の確保が必要

49.

MaaSプラットフォームの特徴から推測される MaaSで想定される課題 • MaaSモデルは、典型的プラットフォームモデルで ある両面市場/MSPモデルとは少し異なっており、 サービス普及方法も異なると想定される。 • 優れたMaaSサービスを提供するには既存モビリ ティサービスの統合だけでは不十分で、各種関連 サービスプロバイダー間のかなり本格的な再構築 (双方向の連携)を求められる可能性が高い。 • これを本格的に実施すると費用も時間もかかる。 • しかし、既存機能活用のみに固執すると顧客に 評価される斬新なサービス提供に至らない危険 が高まる。 49

50.

その他(1):自動運転シェアカーの位置づけ • 自動運転車は最新技術を実装した新製品で あり、最初はかなり高額と予想される。 • 最初の導入はかなりの費用が掛かる。その 負担は事業者が担うと予想される。 – それと比較して、Uberのシェアカーは活用されて いなかった資産の新たな活用法に特徴があり、ビ ジネス構造は根本的に異なる。 • 自動運転シェアカーの想定されるビジネス形 態は既存のレンタカービジネスに類似する。 – 特別のネットワーク効果は醸成され難い。 50

51.

その他(2):Uberシェアカーの特徴 • 2012年から、金曜と土曜の夜間に需要供給 の不均衡を解決する動的価格決定方式が導 入された。 – 週末に高い価格を設定しドライバにより多くのお 金を提供する。⇒ドライバーの供給量を増やす。 – 価格上昇により意図的に需要減退を起こす。 • このような仕組みの結果、シェアリングエコノ ミーの登場と称賛された面があった。 価値創造が短期的・リアルタイム的 51

52.

MaaSの価値創造の根幹を見直すと・・ 分類名 価値創造の概要 事例 狭義のMaaS • 複数移動サービスの組み合わせと Whim, my route (個別交通手段 一元アクセスで主に公共交通の利 など の統合) 便性を高め、効率化を実現する。 広義/将来 のMaaS サービスの高 度化 • 自動運転の技術が発展したり、 データ連携が進むことで、従来の 領域を超えた「サービス」領域で新た な付加価値を提供する。 • 移動データ分析などから交通体系 の再構築、スマートシティでの移動 最適化などで、渋滞緩和や環境対 応、コスト削減などを生み出す。 自動運転車の 活用 従来不可能で あった広域デー タやIoTデータの 分析などによる 新たなソリュー ションの提供 付帯的関連 サービス • 新しい技術の普及に伴い高度化が 進んだ移動の中で新たな価値が創 造される。 • 地域課題(医療、観光など)を取り 込み体験移動にも絡めた新たな サービス構築で新市場を開拓する。 車関連:駐車場、 セキュリティ、メンテナ ンス、保険 その他:都市全 体、環境 52

53.

ライフスタイルの変化 サービス利便性によって社会が変化 • Uber/Lyftの台頭によって、ニューヨークの地 下鉄/バスから車への移動が発生した。 ⇒自動車走行量が増大してしまった。 • 一方、MaaSの重要な目標には、自動運転 車+電気自動車+カーシェアリングによって、 自動車交通量、Co2排出量の削減、車両交 通コストの削減が期待されている。 53

54.

スマートシティとライフスタイル • 持続可能で暮らしやすいまちづくり • より使いやすい公共交通システムづくり • 街路空間の“人間中心のみち空間” 化 • スマートシティで開発される機能やサー ビスが生活の質の向上に直接結び付く ため、これを利用するユーザーの関与が 不可欠に • それを醸成する環境が整備されてきた。 • 公共セクターの政策策定や意思決定に も市民の関与が求められてきた。 54

55.

ライフスタイルの変化への期待(例) • スマートシティ、そしてMaaSの実現により、利 便性が向上し移動コストが低下することで、 高齢者をはじめ多くの人々が今まで以上に気 軽に外出できるようになる。 • 高齢化社会が進むなか、シニア層の行動範 囲が拡大すれば、シニアをターゲットとした新 たな市場や消費も生まれる。 • 街に人の往来が増えれば、商業施設は自然 と潤い、消費も増加するという好循環が生ま れ、街はさらににぎわい、活性化する。 55

56.

スマートシティは社会課題を 解決できるか? • 世界の都市は現在、さまざまな問題を抱えて いる。 – 交通渋滞、環境汚染、エネルギー消費の増加、 高齢化など • スマートシティは個(個々の市民は勿論)だけ でなく、社会全体に寄与する仕組みとして期 待されている。 56

57.

定額制で高齢者は自家用車中心の生 活からの転換が可能だろうか? 57 藤垣洋平、「MaaS概念の現状と捉え方に関する提案並びに都市・交通計画と業界構造への影響に関する考察」、都市と地方の新たなモビリティサー ビス懇談会資料、平成30年11月6日

58.

本質的な(ビジネスモデルが成立する)MaaS登場の条件 • 日本では自動車への依存が増した結果、①地 方/地域では公共交通が衰退し、多くの交通弱 者が生まれた。 • また、②高齢ドライバーによる自動車事故も増 加し、③東京などの大都市でもバスの運転手が 不足し赤字でない路線でもダイヤの削減を余儀 なくされている。 • 勿論、これらの社会的課題の解決も重要だが、 • それに加えて、本質的に新しいMaaSサービスの 登場は、自動運転カーシェアや新たな連携の組 み合わせで、従来にはなかったような、より効率 的モビリティサービスや、驚きの(ニッチ)モビリティ サービスが開発された時ではないだろうか。 58

59.

トータルシステムとしてのサービス(暫定まとめ) • MaaS GlobalがUberのような意味でのビジネス的成 功に到達した訳ではない。 • 但し、ITによって一貫した交通サービスという“トー タルシステムとしてのサービス”を開始した。 • このアイデアは類似発想を持つスマートシティや自 動車産業の大変革CASEと共振して現在大きな影響 を与えている。 • そして適当なプラットフォームとエコシステム構築に よって大きな成功を得られるのではないかとの期 待がある(MaaSプラットフォームの覇権競争か?)。 • 他方、プラットフォーム乱立の結果、断片化してビ ジネス的には成立せず信頼を失う危険性もある。 • 真に顧客価値を創造するサービス提供とビジネスモデ 59 ル両立を目指す試練の時を迎えている。

60.

縦割りが日本のMaaSをダメにする 西成活裕東大教授 • MaaSは、一部を切り取っての単体での成功は難 しい。 • 公共交通機関、タクシー、レンタカー、カーシェア リング、物流、ホテル、そして決済の流れ。こう いったもの全てを包含するプラットフォームを協 力して作っていかないと、結局使われないサー ビスになってしまう。 • だから、競っている場合ではない。まとまるしか ない。 • ライバル企業が協調するのは難しいが、協調に よってメリットが生まれるビジネスモデルを考え ることだ。 60 西成活裕、「アリが自動運転技術を前進させ、縦割りが日本のMaaSをダメにする」、Smart Drive Magagine,2019年9月3日