人々はどのように増税を受け入れているのか?

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September 18, 24

スライド概要

とかく嫌われがちな「増税」ですが、場合によっては納税者が受け入れることもあります。どのような要因が増税を受け入れやすく/にくくするのか、アンケート調査とコンジョイント分析によって分析しました。自民党総裁選でも大きなイシューとなっている増税について、新たな視点を提供することができれば幸いです。

本資料は、株式会社エコノミクスデザインの研究プロジェクトを下に、沖本竜義(慶應義塾大学)、上村一樹(甲南大学)
安田洋祐(大阪大学)、湯田道生(東北大学)が作成しました。会社の概要については以下のウェブサイトをご覧ください:
https://econ.news/

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各ページのテキスト
1.

⼈々はどのように増税を受け⼊れているのか︖ 増税の納得感に関するアンケート調査およびコンジョイント分析 沖本⻯義(慶應義塾⼤学) 上村⼀樹(甲南⼤学) 安⽥洋祐(⼤阪⼤学) 湯⽥道⽣(東北⼤学) 2024年9⽉18⽇ 本資料は株式会社エコノミクスデザインの研究プロジェクトの成果である。作成 にあたって有益な助⾔を頂いた、江⼝允崇⽒(駒澤⼤学)に感謝する。 1

2.

本調査の背景 今なぜ「増税」なのか︖ • 岸⽥政権は増税のイメージが強い • 増税メガネ、2023年の漢字「税」、⾃⺠党総裁選の⼤きなイシュー • 増税は⼈々から嫌われるが、受け⼊れられる場合もある ではどんな要因が増税の納得感を⾼めるのか︖ • ⼀般アンケート調査 • 増税に関する⼀般的な質問に対して4段階評価で答えてもらう • コンジョイント分析 • 仮想的な2つの増税案からより受け⼊れられる⽅を選んでもらう 2024年9⽉18⽇ ⇐ 2024年8⽉初旬に、 調査会社を通じて20代 〜70代の4224名に対し てオンライン調査を実施 (詳細は次のページ) 2

3.

回答者(4224名)の属性 性別 N % 男性 2,082 49.3 49.3 女性 2,124 50.3 99.6 18 0.4 100.0 4,224 100.0 答えたくない 計 累積% 昨年度世帯年収 N 婚姻 N % 結婚している 2,448 58.0 58.0 20代 537 12.7 12.7 結婚していない 1,776 42.1 100.0 30代 602 14.3 27.0 計 4,224 100.0 40代 768 18.2 45.2 50代 857 20.3 65.4 累積% 60代 709 16.8 82.2 70代 751 17.8 100.0 計 4,224 100.0 N % % なし 78 1.9 1.9 100万円未満 160 3.8 5.6 100万円以上200万円未満 286 6.8 12.4 200万円以上400万円未満 866 20.5 32.9 400万円以上600万円未満 739 17.5 50.4 600万円以上800万円未満 495 11.7 62.1 800万円以上1000万円未満 354 8.4 70.5 1000万円以上1200万円未満 184 4.4 74.9 1200万円以上1400万円未満 69 1.6 76.5 1400万円以上1800万円未満 80 1.9 78.4 1800万円以上 70 1.7 わからない/答えたくない 843 20.0 4,224 100.0 計 2024年9⽉18⽇ 累積% 年齢階層 学歴 N % 累積% 累積% 中学卒 76 1.8 1.8 高校卒 1,042 24.7 26.5 883 20.9 47.4 2,095 49.6 97.0 在学中 61 1.4 98.4 80.0 その他 16 0.4 98.8 100.0 答えたくない 51 1.2 100.0 4,224 100.0 短大・高専・専門学校卒 大学・大学院卒 計 3

4.

主な発⾒の要約 1. 増税の⽬的や内容の明確化は納得感を⾼める上で⾮常に有効 2. 増税に対する納得感は選挙の投票⾏動にも影響をおよぼし得る 3. 地⽅創⽣や財政再建と⽐べて防衛増税への納得感は有意に低い 4. 増税のプロセスの中でも特に議論の公開は納得感を⼤きく⾼める 2024年9⽉18⽇ 上の要約は少しふわっとしているので、以下で具体的な数字を⾒ていくことにしよう︕ 4

5.

⼀般アンケート調査 ⼈々の増税に対する⼀般的な態度について、ざっくりとした傾向が掴める︕ 2024年9⽉18⽇ 5

6.

Q1. あなたが増税を受け⼊れられるかどうかを判断する際、以下の項⽬はどの程度 重要ですか︖ 最も当てはまる選択肢を⼀つ選んでください。 とても重 やや重要 どちらで 重要だと 要だと思 だと思う もない 思わない 34.7 42.1 20.4 2.9 100.0 53.9 31.5 12.8 1.8 100.0 増税の内容が明確である(ステルス増税ではない) 54.8 30.6 13.1 1.6 100.0 増税以前に財政支出の削減が実施されている 47.9 33.0 16.9 2.3 100.0 増税の実施スケジュールが明確である 38.7 41.6 17.1 2.6 100.0 39.6 40.9 16.8 2.7 100.0 増税決定までの議論に費やした時間が十分である 36.7 38.9 20.3 4.2 100.0 増税議論が公開の場で行われている 46.5 36.9 14.4 2.2 100.0 複数のプランから実施計画を比較検討している 36.3 43.8 17.7 2.1 100.0 増税額が妥当である 44.2 32.7 17.3 5.8 100.0 増税が活用される政策の利益の享受者と増税の負担者が同じであ る(便益の大きさと負担の大きさが釣り合っている) 増税の目的が明確である(防衛、社会保障、環境改善、健康促 進、子育て対策の予算の確保など) 増税のタイミングが的確である(国民の公共性や逼迫度に対する 認識と一致しているか) 2024年9⽉18⽇ 計 6

7.

Q2-1. 政府の増税案に対する納得感が⾼くなると、あなたは与党により投票しようと思いますか︖ ~200万 200~400万 400~600万 600万~ T otal とてもそう思う 6.7 7.7 9.6 10.0 8.8 ややそう思う 26.9 32.9 29.5 36.6 32.6 どちらでもない 45.6 34.5 39.7 34.0 37.2 そう思わない 20.8 24.8 21.2 19.4 21.4 T otal (% ) 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 33.6%/40.7% /39.1% /46.6% 与党への是認効果? Q2-2. 政府の増税案に対する納得感が低くなると、あなたは増税凍結や減税を掲げる政党により 投票しようと思いますか︖ ~200万 200~400万 400~600万 600万~ T otal とてもそう思う 12.8 15.4 16.0 17.1 15.7 ややそう思う 27.7 31.0 31.5 32.9 31.3 どちらでもない 47.5 39.6 38.3 36.4 39.4 そう思わない 12.0 14.1 14.2 13.6 13.6 T otal (% ) 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 2024年9⽉18⽇ 40.5%/46.3% /47.5% /50.0% 野党への離反効果? 7

8.

アンケート結果 Q1 のまとめ • すべての項⽬において「とても重要だと思う」「やや重要だと思う」の合計が75% (全体の4分の3)を超えている • 議論の仕⽅や議論に費やした時間といった増税のプロセスは重要︕ • 「とても重要だと思う」が50%を超える項⽬は • 増税の⽬的が明確である • 増税の内容が明確である の2つだけ ⇒ 増税の⽬的・内容の明確さは特に重視されている︕ • これらの影響を「コンジョイント分析」でより精緻に分析していく 2024年9⽉18⽇ 8

9.

アンケート結果 Q2 のまとめ • いずれの質問に対しても、世帯年収が増えるにつれて「とてもそう思う」「や やそう思う」の割合が上がる傾向が⾒られる • Q2-1︓増税の納得感が⾼くなると、世帯年収の⾼い有権者ほど与党により投 票しようとする • Q2-2︓増税の納得感が低くなると、世帯年収の⾼い有権者ほど増税凍結や 減税を掲げる野党により投票しようとする • 与党への「是認効果」(Q2-1)よりも野党への「離反効果」(Q2-2) の⽅が数値で⾒ると⼤きい ⇐ 「とてもそう思う」は2倍近い差が︕ • 損失回避(利得よりも損失を⼤きく評価する⼼理的傾向)の反映か︖ 2024年9⽉18⽇ 9

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コンジョイント分析 回答者の選択⾏動を通じて、納得感を⾼める要因を科学的・定量的に分析できる︕ 2024年9⽉18⽇ 10

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最初に回答者に⽰される状況説明 • 何らかの理由で、今後、2000億円規模の増税が⾏われるとします。 ※ご参考までに、令和5年度の⽇本の税収は約72兆円でした。 • これから、2つの異なる増税案を画⾯上に表⽰します。それぞれの増税案には、増税 の⽬的、増税の対象(どの税を増税するか)、そして、政府において増税が決定す るまでのプロセス(審議期間と審議内容)の4つの要素が書かれています。 • 画⾯上に表⽰される2つの増税案を⽐較して、あなたにとって、より受け⼊れられる増 税案をどちらか1つお選びください。 2024年9⽉18⽇ 11

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質問例 (みなさんもぜひ考えてみてください︕) 以下に表⽰するA案とB案を⽐較して、あなたにとって、より受け⼊れられる 増税案をどちらか1つお選びください。 増税の規模 2,000億円 増税の⽬的 増税の対象となる税⽬ A案 B案 防衛の強化 地⽅創⽣ 所得税 たばこ税 政府における増税の決定プロセス 増税が決まるまでに 審議された期間 増税が決まるまでの 審議内容 2024年9⽉18⽇ より受け⼊れられる 増税はどちらか 1年間 1ヶ⽉ ・利害関係者の ヒアリングは実施せず ・幅広い利害関係者の ヒアリングを実施 ・与党内で審議 ・与野党で審議 ・議論の内容は⾮公開 ・議論の内容は⾮公開 A案 B案 12

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回答者に提⽰する仮想的な増税案(A案とB案)は 以下の属性から⼀つずつ⽔準を選んで作成する ・増税の⽬的︓4通り ・対象の税⽬︓6通り ・審議期間︓2通り ・審議内容︓6通り ⇒ 4×6×2×6 = 288 通りからランダムに⽣成︕ A案かB案かの選択結果から各⽔準の影響を調べる (選択型コンジョイント分析) 増税の⽬的︓4通り 防衛の強化 地⽅創⽣ 喫煙スペースの維持・拡充 財政⾚字解消(ベンチマーク) 増税の対象となる税⽬︓6 所得税 通り 法⼈税 社会保険料 酒税 たばこ税 消費税(ベンチマーク) 増税が決まるまでに審議さ 1ヶ⽉ または 1年 れた期間︓2通り 2024年9⽉18⽇ 増税が決まるまでの 1) ・利害関係者のヒアリングは実施せず 審議内容︓6通り ・与党内で審議 ・議論の内容は⾮公開 2) ・利害関係者のヒアリングは実施せず ・与野党で審議 ・議論の内容は⾮公開 3) ・⼀部の利害関係者のヒアリングを実施 ・与野党で審議 ・議論の内容は⾮公開 4) ・幅広い利害関係者のヒアリングを実施 ・与野党で審議 ・議論の内容は⾮公開 5) ・⼀部の利害関係者のヒアリングを実施 ・与野党で審議 ・議論の内容を国⺠に公開 6) ・幅広い利害関係者のヒアリングを実施 ・与野党で審議 ・議論の内容を国⺠に公開 13

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C1. 財政⾚字解消(ベンチマーク)と⽐べた場合の選ばれやすさ -19.6% -17.2% -18.7% -14.3% 目的:喫煙スペース 2.1% 目的:地方創生 -6.4% -3.8% -7.3% -2.9% 目的:防衛 -25% 2024年9⽉18⽇ 600万以上 -20% -15% 400~600万 -10% 200~400万 -5% 0% 200万未満 5% 14

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C2. 消費税(ベンチマーク)と⽐べた場合の選ばれやすさ 22.3% 24.3% 27.1% 24.1% 対象:たばこ税 13.5% 12.7% 対象:酒税 対象:社会保険料 -2.2% 19.0% 20.4% 22.7% 21.5% 対象:法人税 6.6% 8.5% 8.0% 対象:所得税 -5% 2024年9⽉18⽇ 17.8% 20.9% 600万以上 0% 5% 400~600万 10% 15% 200~400万 20% 25% 200万未満 30% 15

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C3. 増税プロセスによる選ばれやすさ 4.5% 4.9% 議論:公開 審議:野党も 3.4% 4.8% 5.6% 5.2% ヒアリング:多数 4.5% ヒアリング:一部 1.8% 議論:1年間 0% 2024年9⽉18⽇ 8.3% 7.7% 1% 600万以上 2% 5.4% 2.7% 3.0% 3% 400~600万 4% 5% 200~400万 6% 7% 200万未満 8% 9% 16

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注)グラフの数値について • 基準になっている項⽬(例えばC2の消費税増税)と⽐べて、どれくらい 選ばれやすくなるかを表している ⇒ あくまで相対評価に過ぎない点に注意︕ • 例︓「法⼈税」の数値が「X%」 ⇒ 「消費税を増税する場合と⽐べて、法⼈税を増税する⽅が、好ましい 増税案として選ばれる確率がX%⾼くなる」 • 棒グラフが空欄の場合は、「統計的に有意な違いはなかった」 (10%の 有意⽔準)ことを意味する 2024年9⽉18⽇ 17

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コンジョイント分析 C1&C2 のまとめ • C1︓増税⽬的において財政⾚字解消と同程度に選ばれやすい(受け ⼊れられやすい)ものは地⽅創⽣だけ • 防衛費の増額は財政再建や地⽅創⽣と⽐べて受け⼊れられていない • 岸⽥政権の掲げる「防衛増税」に対する⼈々の納得感は⾼くない • C2︓対象税⽬において消費税と同程度に選ばれにくい(受け⼊れられ にくい)ものは社会保険料だけ • 世帯年収が600万円以上の世帯では所得税も選ばれにくい • ⼀部の⼈や組織に負担が偏る税⽬ほど選ばれやすい傾向がある ⇒ 酒税やたばこ税が政治的に狙われやすく、公平性が損なわれる危険性… 2024年9⽉18⽇ 18

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コンジョイント分析 C3 のまとめ • C3︓すべての世帯年収において(統計的に有意に)選ばれやすくなる 効果が⾒られたのは「議論の公開」だけ • 納税者が増税を受け⼊れるためには議論の公開が⾮常に有効 • 世帯年収が低くなるにつれて納得感を⾼める効果は⼤きくなる • C3︓ヒアリングの有無は世帯年収400万円以上、与野党での審議は 400万円未満の世帯にしか有意な効果が⾒られなかった • C3︓議論の期間についてもおおむね効果が⾒られた • 時間をとってしっかり増税の審議を⾏えば納得感は得られやすくなる 2024年9⽉18⽇ 19

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おまけ)こちらの資料もぜひご参考ください👇 スライド資料は以下のサイトから閲覧&DLできます︓ https://www.docswell.com/s/232247380 5/Z3GG9J-2024-09-09-124116 2024年9月18日 20