計算生命科学の基礎10(河野 隆志)

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March 05, 24

スライド概要

5万例以上の進行固形がんの患者さんが保険診療で遺伝子パネル検査を受検され、同意のもと遺伝子変化と診療情報が集積されている。現在、50以上のグループ/施設が情報利活用審査会の承認のもと、このリアルワールド・ビッグデータの利活用を行っており、その状況や今後への期待を概説する。

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関連スライド

各ページのテキスト
1.

保険診療で行われるがん遺伝子パネル検査のビッグデータの利活用 6 万例の 日本人のがん患者 リアルワールドデータ(C-CATデータ)を使って研究しませんか? 国立がん研究センター がんゲノム情報管理センター (C-CAT) センター長 研究所 ゲノム生物学研究分野 分野長 河野隆志

2.

COI Disclosure Information Lead Presenter/Principal Researcher: Takashi Kohno I have the following financial relationships to disclose.     Patent royalties/gain from patent right transfer from: ThermoFisher, Chugai Honoraria (lecture fee) from: Eli Lilly Honoraria (manuscript fee) from: Eli Lilly Scholarship/research grants from: Chugai, Sysmex, Konika-Minolta, Guardant

4.

NCCオンコパネル: 124遺伝子の変化を一度に検査できる 変異・増幅 対象遺伝子 (124遺伝子) ABL1 ACTN4 AKT1 AKT2 AKT3 ALK APC ARAF ARID1A ARID2 ATM AXIN1 AXL B2M BAP1 BARD1 BCL2L11/BIM BRAF BRCA1 BRCA2 CCND1 CCNE1 CD274/PD-L1 CDK4 CDK6 CDK12 CDKN2A CHEK2 CREBBP CRKL CTNNB1 CUL3 DDR2 EGFR ENO1 EP300 ERBB2/HER2 ERBB3 ERBB4 ESR1/ER EZH2 FBXW7 FGFR1 FGFR2 FGFR3 FGFR4 FLT3 GNA11 GNAQ GNAS HRAS IDH1 IDH2 IGF1R IGF2 IL7R JAK1 JAK2 JAK3 KDM6A/UTX KEAP1 KIT KRAS MAP2K1/MEK1 MAP2K2/MEK2 MAP2K4 MAP3K1 MAP3K4 MDM2 MDM4 MEN1 MET MLH1 MSH2 MSH6 融合対象遺伝子 (13遺伝子) MTAP MTOR MYC MYCN NF1 NF2 NFE2L2/Nrf2 NOTCH1 NOTCH2 NOTCH3 NRAS NRG1 NT5C2 NTRK1 NTRK2 NTRK3 PALB2 PBRM1 PDGFRA PDGFRB PIK3CA PIK3R1 PIK3R2 PMS2 POLD1 POLE PRKCI PTCH1 PTEN RAC1 RAC2 RAD51C RAF1/CRAF RB1 RET RHOA ROS1 SETBP1 SETD2 SMAD4 SMARCA4/BRG1 SMARCB1 SMO STAT3 STK11/LKB1 TP53 TSC1 TSC2 VHL AKT2 ALK BRAF ERBB4 FGFR2 FGFR3 NRG1 NTRK1 NTRK2 NTRK3 PDGFRA RET ROS1 https://products.sysmex.co.jp/products/genetic/AK401170/OncoGuideNCC.pdf 変異 EGFR BRAF 融合 EML4-ALK KIF5B-RET CD74-ROS1 増幅 HER2/ERBB2 MYCN 4

6.

遺伝子パネル検査に基づくがんゲノム医療 令和元年6月より保険診療として開始 担当医による 遺伝子パネル検査の 試料の採取・選択 インフォームドコンセント 次世代シークエンサー による遺伝子の変化 を検出 遺伝子パネル検査(がん遺伝子パネル検査): エキスパートパネル 担当医による結果説明 (専門家会議) →治療 遺伝子変化情報の 意義付け エキスパートパネル: 1度に多数のがんにかかわる遺伝子の変異を調べる検 各分野の専門家が集まり、解析結果の意 査。全国のがんゲノム医療中核拠点・拠点・連携病 義づけと、治療法の提案を行う会議。担 院で、標準治療がない固形がん患者又は局所進行若 当医、がん治療の専門医、臨床検査を担 しくは転移が認められ標準治療が終了となった固形 当する医師、検体を見極める病理医、ゲ がん患者(終了が見込まれる者を含む)に対し、保険 ノムの専門家、臨床遺伝専門医や遺伝カ 診療として行うことができる。 ウンセラーらが参加する。 6

7.

日本のがんゲノム医療を担う252の医療機関 がんゲノム医療拠点病院 (32施設) がんゲノム医療連携病院 (207施設) がんゲノム医療中核拠点病院 (13施設) 大阪大学医学部附属病院 京都大学医学部附属病院 岡山大学病院 九州大学病院 北海道大学病院 東北大学病院 国立がん研究センター東病院 国立がん研究センター中央病院 がん研究会有明病院 東京大学医学部附属病院 慶應義塾大学病院 名古屋大学医学部附属病院 静岡がんセンター (R5.9.1時点) 7

8.

FoundationOneCDx + NCCオンコパネル C-CAT登録数推移 FondationOne LiquidCDx G360CDx GenMineTOP 2,000 70,000 保険診療開始の2019年6月1日から 60,000 2023年8月31日まで 60,723人 50,000 40,000 1,000 30,000 総症例数 月症例数 1,500 20,000 500 10,000 0 6 12 1 2019 6 2020 12 1 6 2021 12 1 6 2022 12 1 6 2023 0 8

9.

遺伝子パネル検査後に遺伝子変異にマッチした治療をうけることで生存予後が延長する (OS) NCC中央病院で2019/6~2020/7までにEPを行った418例 遺伝子変異にマッチした 治療あり (N=51) 薬剤治療効果に結びつく は変異あるが、マッチし た治療なし 薬剤治療効果に結びつく 変異なし がんゲノム医療の出口: 大半[36例: 70.6%]が治験 P=0.03 9 Ida H et al, Cancer Sci. 2022

10.

遺伝子パネル検査を基盤とした日本のがんゲノム医療 5種類の 遺伝子パネル検査が 保険収載 13の中核拠点病院 32の拠点病院 207の連携病院 約6万例のゲノム・ 臨床データが集積 750以上の国内臨床試験情報 臨床医による定期的キュレーション Kohno et al, Cancer Discov, 2022 10

11.

難治性のがんのデータが集積されている 11

12.

FoundationOneCDx + NCCオンコパネル C-CAT登録数推移 FondationOne LiquidCDx G360CDx GenMineTOP 2,000 70,000 保険診療開始の2019年6月1日から 60,000 2023年8月31日まで 60,723人 50,000 40,000 1,000 30,000 総症例数 月症例数 1,500 20,000 500 10,000 0 6 12 1 2019 6 2020 12 1 6 2021 12 1 6 2022 12 1 6 2023 0 12

13.

遺伝子パネル検査を基盤とした日本のがんゲノム医療の体制 3種類の 遺伝子パネル検査が 保険収載 約6万例のゲノム・ 臨床データが集積 学術研究や 医薬品等の開発を目的に 製薬企業を含む約70の 施設・グループがデータを利用 データ 利活用 2021年10月 より開始 13の中核拠点病院 32の拠点病院 207の連携病院 https://for-patients.c-cat.ncc.go.jp/ 750以上の国内臨床試験情報 臨床医による定期的キュレーション 2023.9.1時点データ Kohno et al, Cancer Discov, 2022 13

14.

C-CATデータの研究・開発への利活用 登録件数検索 アカデミア・企業等 ⇒ 研究・治験立案 利活用検索ポータル 審査あり C-CAT集積データ 審査なし C-CAT 診療・遺伝子情報の組み合わせ自由検索 患者数、頻度の把握 診療・遺伝子情報の組み合わせ自由検索 各患者の個票の閲覧が可能 アカデミア・企業等 ⇒ 研究・治験立案 14

15.

所属、名前、e-mailの登録で がん種や遺伝子でのC-CATデータ検索を 行っていただけます 検索の1例:RET融合陽性149例の特徴と使用薬剤 https://www.ncc.go.jp/jp/c_cat/use/index.html

16.

C-CATデータの研究利用の申請 まずは所属機関で IRB承認を取得 利活用審査会と審議課題数 (利用許諾課題数: 68) https://www.ncc.go.jp/jp/c_cat/use/index.html 2021/11/8 2022/1/20 2022/3/17 2022/5/26 2022/7/27 2022/11/29 2023/3/6 2023/5/23 2023/7/27 2023/10/16 第1回 第2回 第3回 第4回 第5回 第6回 第7回 第8回 第9回 第10回 4課題 10課題 10課題 8課題 8課題 9課題 5課題 15課題 4課題 10課題 (企業1/アカデミア3) (企業1/アカデミア9) (企業2/アカデミア8) (企業1/アカデミア7) (アカデミア8) (企業2/アカデミア6) (アカデミア4) (企業3/アカデミア11) (企業1/アカデミア3) (アカデミ10) 16

17.

利活用検索ポータル: 自身のPCから二次利用同意した全登録患者のC-CATデータの閲覧ができる 利用施設 C-CAT 利用者のPC 検索・閲覧できる項目 ・臨床情報:施設名、年齢、性別、がん種、薬剤、治療ライン、 治療期間、腫瘍縮小効果、有害事象、転帰など ・保険検査で報告される遺伝子変化の情報: 体細胞・生殖細胞系列変異、MSI、TMBなど クライアント証明書を インポートしたPC端末 (台数制限なし) 成果・知財は利用者に帰属 がん種 インター ネット (TLS1.2通信) 検索例: KRAS G12C変異を持つ症例57,103件中665件がヒット グローバルIP アドレス登録 使用されている薬剤 腸 肺 膵臓 遺伝子変異、診療情報の詳細ページへ C-CAT利活用検索ポータルサイトページより 17

18.

米国 Project Genie データベースとの違い Project C-CAT Genie 国 日本 米国、その他 保険検査 Yes Yes & No 固形がん 固形がん 60k (18k/year) 167k (16k/year) 2021- 2017- 遺伝子パネル 遺伝子パネル 薬剤名 + - 治療効果 + - 有害事象 + - 治療期間 + - OS + + 転帰 + + アカデミアの利用 可(審査あり) 可(審査なし) 企業の利用 可(審査あり) 可(審査なし) いずれ可 不可 https://www.ncc.go.jp/jp/c_cat/ https://genie.cbioportal.org/login.jsp がん種 例数 (2023 Sept) 利活用の開始 ゲノム情報 診療情報 元データの利用 WEBサイト 18

19.

医療施設よりC-CATに提供される診療情報 診断 [5] 患者背景情報 5-1: 病理診断名 5-2: 診断日 5-3: 喫煙歴有無 5-4: 喫煙年数 5-5: 1日の本数 5-6: アルコール多飲の有無 5-7: ECOG PS 5-8: 重複がん有無(異なる臓器) 5-9: 重複がん部位第1-7階層 5-10: 重複がん部位(その 他) 5-11: 重複がん活動性 5-12: 多発がん有無(同一臓器) 5-13: 多発がん活動性 5-14: 家族歴有無 5-15:家族歴 – 続柄 5-16:家族歴 – がん種 5-17:家族歴 – 罹患年齢 登録/検査 [7] 薬物療法(EP前) 7-1: 薬物療法実施の有無 7-2: 治療方針 7-3: 承認薬併用治験への該当 7-4: 治療ライン 7-5: 実施目的 7-6: 実施施設 7-7: レジメン名 7-8: 薬剤名(一般名) 7-9: 文字列入力(一般名) 7-10: 薬剤名(商品名) 7-11: 文字列入力(商品名) 7-12: レジメン内容変更情報 7-13: 投与開始日 7-14: 投与終了日 7-15: 継続中 7-16: 終了理由 7-17: 最良総合効果 [8] 有害事象(EP前) 8-1: Grade3以上有害事象の有無 8-2: 発現日 8-3: CTCAEv5.0 名称英語 8-4: CTCAEv5.0 名称日本語 8-5: CTCAEv5.0 コード 8-6: CTCAEv5.0 最悪Grade 治療ライン毎に入力 Expert Panel (EP) 転帰 [4] 検体情報 4-1: 検査区分 4-2: 検査種別 4-3: 検査種別(その他) 4-4: 検体識別番号 4-5: 試験番号 4-6: 新規/再出検の識別 4-7: 再出検査前の検体識別番号 4-8: 検体種別 4-9: 検査種別(その他) 4-10:腫瘍細胞含有割合 4-11:検体採取日(腫瘍組織) 4-12:検体採取方法 4-13: 検体採取方法(その他) 4-14:検体採取部位 4-15: 具体的な採取部位 4-16: 具体的な採取部位(その 他) 4-17:検体採取日(非腫瘍組織) 4-18:解析不良の有無 4-19:解析不良の理由 [6] がん種情報 6-1: 登録時転移の有無 6-2: 登録時転移の部位 6-3-1~6-7-1: 肺/乳/消化器/肝/皮膚がんの分子 特性(例:ROS1,PDL1(IHC)) [9] 薬物療法(EP後) [11] 転帰情報 9-1: EP開催日 11-1:転帰 9-2: EPの結果治療薬の選択肢が提示された 11-2:最終生存確認日 9-3: レジメン実施の有無 11-3:死亡日 9-4: レジメン入力希望 11-4:死因 9-5: 提示された治療薬を投与した 9-6: 治療方針 9-7: 承認薬併用治験への該当 9-8: 治療ライン 9-9: 実施施設 9-10: レジメン名 9-11: 薬剤名(一般名) 9-12: 文字列入力(一般名) 9-13: 薬剤名(商品名) 9-14: 文字列入力(商品名) 9-15: (初回)投与量 9-16: 単位 9-17: 用法 9-18: レジメン内容変更情報 9-19: 投与開始日 9-20: 投与終了日 9-21: 継続中 9-22: 提示された治療薬を投与しなかった理 由 [10] 有害事象(EP後) 9-23: 身長 10-1: Grade3以上有害事象の有無 9-24: 体重 10-2: 発現日 9-25: 終了理由 10-3: CTCAEv5.0 名称英語 9-26: 最良総合効果 10-4: CTCAEv5.0 名称日本語 9-27: 増悪確認日 10-5: CTCAEv5.0 コード 10-6: CTCAEv5.0 最悪Grade 治療ライン毎に入力 項目はがんゲノム医療中核拠点会議で決定 19

20.

日本人の各種固形がんで用いられている抗がん薬 AXT, axitinib; BV, bevacizumab; BCL, bicalutamide; BLM, bleomycin hydrochloride; CBZ, cabazitaxel acetonate; CAP, capecitabine; CBDCA, carboplatin; Cmab, cetuximab; CDDP, cisplatin; CPA, cyclophosphamide hydrate; DEG, degarelix acetate; DTX, docetaxel hydrate; DXR, doxorubicin; EZ, enzalutamide; EPI, epirubicin hydrochloride; ERB, eribulin mesilate; VP-16, etoposide; 5-FU, fluorouracil; GEM, gemcitabine hydrochloride; IFM, ifosfamide; I/A, investigational agent; IPI, ipilimumab; CPT-11, irinotecan hydrochloride hydrate; LENV, lenvatinib mesilate; L-PAM, melphalan; MTX, methotrexate; LYS, mitotane; NIVO, nivolumab; L-OHP, oxaliplatin; PTX, paclitaxel; PZP, pazopanib hydrochloride; PMB, pembrolizumab; PEM, pemetrexed sodium hydrate; RAM, ramucirumab; SORA, sorafenib tosilate; SUN, sunitinib malate; TS-1, tegafur/gimeracil/oteracil potassium; TMZ, temozolomide; HER, trastuzumab; VCR, vincristine sulfate; VNR, vinorelbine ditartrate. B, Kohno et al, Cancer Discovery, 2022 20

21.

https://for-patients.c-cat.ncc.go.jp/system/provided/ 21

22.

Publication using C-CAT Data Head & Neck cancer Thymic cancer Pancreatic cancer Soft tissue sarcoma Endometrial cancer Salivary gland carcinoma Colorectal cancer 22

23.

Utility of molecular subtypes and genetic alterations for evaluating clinical outcomes in 1029 patients with endometrial cancer Asami et al, BJC, 2023 23

24.

Fig. 4: Patient outcomes and therapeutic targets in the C-CAT cohort. 国がんコホート C-CATコホート NSMP: no specific molecular profile C-CATコホート C-CATコホート Asami et al, BJC, 2023 24

25.

C-CATデータ利用施設

26.

腫瘍変異負荷が高い症例: 5,082例 遺伝子パネル検査後に免疫チェックポイント阻害薬が選ばれている 肺 腸 免疫チェックポイント阻害薬 C-CAT利活用検索ポータルで「TMB-high or TMB≧10」で検索 26

27.

免疫チェックポイント阻害治療に効果を示した患者1,407例のがん種、遺伝子変異 頭頚部 年齢 遺伝子変異 肺 がん種 50代 食道・胃 60代 性別 男性 70代 C-CAT利活用検索ポータルで薬剤名「ニボルマブ or ペンブロリズマブ」、治療効果「CR or PR」で検索 27

28.

日本人でも欧米人と同程度に生殖細胞系列遺伝子変異が検出される 乳がんの原因とされる11遺伝子について、 7,000人の日本人乳がんの血液DNAを解析 BRCA1/2遺伝子について、 634人の日本人卵巣がんの血液DNAを解析 BRCA1: 30% BRCA2: 40% Momozawa et al, Nat Comm, 2018 Enomoto et al, Int J Gyn Can, 2019 28

29.

BRCA1/BRCA2変異がんは、PARP阻害剤による治療に効果を示す Momozawa et al, JAMA Oncol, 2022 https://www.ncc.go.jp/jp/information/pr_release/2022/0415/index.html 29

30.

BRCA1/2病的変異症例: 2,339例 遺伝子パネル検査後にPARP阻害薬が選ばれている 前立腺 卵巣 胆道 腸 膵臓 乳房 PARP阻害薬 C-CAT利活用検索ポータルで「BRCA (部分一致) + エビデンスF変異」で検索 30

31.

C-CAT集積データからみえる「日本人特異的BRCA1/2変異」 31

32.

遺伝子パネル検査後に遺伝子変異にマッチした治療を受けた小児がん (n=71) NTRK阻害薬 (as of Sept 21, 2023) 32

33.

基礎的な研究への利用例 医療施設で入力いただく患者さんの診療情報 分類 項目* 患者基本情報 病院コード、性別、年齢、がん種区分等 遺伝子パネル検査、腫瘍細胞割合、採取部位 等 検体情報 患者背景 病理診断名、全身状態、家族歴、転移等 パネル検査前 後の治療情報 薬剤名、開始/終了日 最良総合効果、有害事象等 転帰 転帰、最終生存確認日、死亡日、死因 保険検査で報告される遺伝子の変化 申請機関の 倫理審査 情報利活用 審査会の審査 想定される利用機関 ・がんゲノム医療中核拠点病院等 (無償) ・アカデミア (公的研究費研究は無償) ・製薬企業等の企業 (有償) 検索項目 (組み合わせ可能) ・がん種 ・検査で報告される遺伝子変化 ・治療薬剤名 ・治療効果、有害事象 遺伝子変化と診療情報からなるビッグデータの解析 ↓ 今まで知られていない遺伝子変化と治療効果の結び付きの発見 ↓ 新しい治療標的の同定 治療薬剤の効きやすさを予測するバイオマーカーの開発 ビッグデータの解析により、治療薬に対する新しいバイオマーカーや治療標的の発見が促進される 33

34.

がんゲノム医療中核拠点病院等の臨床研究への利用例 医療施設で入力いただく患者さんの診療情報 分類 項目* 患者基本情報 病院コード、性別、年齢、がん種区分等 遺伝子パネル検査、腫瘍細胞割合、採取部位 等 検体情報 患者背景 病理診断名、全身状態、家族歴、転移等 パネル検査前 後の治療情報 薬剤名、開始/終了日 最良総合効果、有害事象等 転帰 転帰、最終生存確認日、死亡日、死因 申請機関の 倫理審査 情報利活用 審査会の審査 保険検査で報告される遺伝子の変化 がん種や遺伝子変化で検索 ↓ 対象がん種での遺伝子変化の頻度や病態の把握 (情報利活用審査会の許諾により施設IDや登録ID*の閲覧が可能) ↓ 特定の遺伝子変化が陽性の症例データの共有 臨床研究・臨床試験の立案・実施 想定される利用機関 ・がんゲノム医療中核拠点病院等 (無償) ・アカデミア (公的研究費研究は無償) ・製薬企業等の企業 (有償) 検索項目 (組み合わせ可能) ・がん種 ・検査で報告される遺伝子変化 ・治療薬剤名 ・治療効果、有害事象 *登録ID: C-CATへの患者データ登録時に 発番される匿名化コード (研究対象症例の登録IDの閲覧は 許諾されたがんゲノム医療中核 拠点病院等のみ可能となります) 疾患研究 グループ がんゲノム医療中核拠点病院等によるデータの共有により、臨床研究や臨床試験が活性化される 34

35.

製薬企業による研究・開発への利用例 医療施設で入力いただく患者さんの診療情報 分類 項目* 患者基本情報 病院コード、性別、年齢、がん種区分等 遺伝子パネル検査、腫瘍細胞割合、採取部位 等 検体情報 患者背景 病理診断名、全身状態、家族歴、転移等 パネル検査前 後の治療情報 薬剤名、開始/終了日 最良総合効果、有害事象等 転帰 転帰、最終生存確認日、死亡日、死因 申請機関の 倫理審査 情報利活用 審査会の審査 保険検査で報告される遺伝子の変化 想定される利用機関 ・がんゲノム医療中核拠点病院等 (無償) ・アカデミア (公的研究費研究は無償) ・製薬企業等の企業 (有償) 検索項目 (組み合わせ可能) ・がん種 ・検査で報告される遺伝子変化 ・治療薬剤名 ・治療効果、有害事象 開発中の薬剤の標的となる遺伝子変化で検索 ↓ 各がん種での遺伝子変化の頻度や患者数の把握 (情報利活用審査会の許諾により施設IDの閲覧が可能) ↓ 治験の立案 がんゲノム医療中核拠点病院等へのコンタクトなど H H (立案やコンタクトにC-CATは関与しません) 特定の遺伝子変化が陽性の患者さんの把握が容易になり、治験が盛んにおこなわれるようになる 35 35

36.

企業によるC-CATデータの利活用 https://for-patients.c-cat.ncc.go.jp/system/provided/ 36

37.

C-CATデータの研究・開発への利活用 登録件数検索 審査なし C-CAT 診療・遺伝子情報の組み合わせ自由検索 患者数、頻度の把握 アカデミア・企業等 ⇒ 研究・治験立案 利活用検索ポータル 診療・遺伝子情報の組み合わせ自由検索 各患者の個票の閲覧が可能 審査あり C-CAT集積データ アカデミア・企業等 ⇒ 研究・治験立案 利活用クラウド(R5-6に開始予定) インターネットアクセス 各利用者の固有スペース 診療/ゲノムデータの関連解析 ゲノム元データ情報解析 37 37

38.

C-CATの提供する利活用クラウド (R5-6開始予定) 利活用で収集した遺伝子パネル検査のゲノム元情報や変異情報(*)を解析するための仮想デスク トップ環境を、がんゲノム医療中核拠点病院・拠点病院・連携病院、企業、アカデミア向けに提供 (*)C-CATによる独自パイプラインで生成したもの 中核拠点・拠点・連携病院 企業・アカデミア 等 テキストデータ、 解析ツールの 持ち込み 利活用クラウド ダウン ロード リモート接続 利用できるデータ ・ ゲノム元情報 (BAM, CRAM)(*) ・ 変異情報 (VCF)(*) ・ 症例情報 (CSV) 利用できる解析ツール (Singularityイメージ) 利用者 解析結果の 持ち出し C-CAT独自のデータ 仮想デスクトップ環境 (Amazon WorkSpaces) 仮想デスクトップ環境内にゲノム元情報や変異情報をダウンロードし、C-CATが準備した解析ツー ルを使って、解析を行うことができます。 利用者自身が準備したテキストデータや解析ツールを持ち込んで、ゲノム元情報や変異情報を解析 する仕組みも用意されています。

39.

ジーノ C-CAT 間野博行 小芦尚人 高阪真路 大熊裕介 白石友一 温川恭至 柴田太朗 沖田南都子 中田はる佳 クロモ 吉田輝彦 鈴木達也 玉井郁夫 加藤護 田尾佳代子 福田博政 大江裕一郎 土原一哉 河野隆志 本発表に際し、以下の方々に一同深く感謝申し上げます。 • C-CATへのデータ登録、利活用にご同意いただいた患者さん • 診療情報等のデータ登録にご協力いただいたがんゲノム医療病院の方々 • 遺伝子パネル検査のデータを登録くださった検査企業の方々 39

40.

保険診療で行われるがん遺伝子パネル検査のビッグデータの利活用 6 万例の 日本人のがん患者 リアルワールドデータ(C-CATデータ)を使って研究しませんか? 国立がん研究センター がんゲノム情報管理センター (C-CAT) センター長 研究所 ゲノム生物学研究分野 分野長 河野隆志

41.

遺伝子パネル検査を基盤とした日本のがんゲノム医療 5種類の 遺伝子パネル検査が 保険収載 13の中核拠点病院 32の拠点病院 203の連携病院 約6万例のゲノム・ 臨床データが集積 750以上の国内臨床試験情報 臨床医による定期的キュレーション Kohno et al, Cancer Discov, 2022 41

42.

肺がんにおける治療標的”RET融合遺伝子” RETタンパク質 KIF5Bタンパク質 RET遺伝子 KIF5B遺伝子 正常な細胞の10番染色体 ひっくり返る(逆位) KIF5B-RETタンパク質 (細胞を増殖させるシグナルを 出しつづける) 肺腺がん細胞の 10番染色体 42 KIF5BとRETの配列がつながった遺伝子 42

43.

肺腺がんにおけるRET融合遺伝子の同定→セルペルカチニブの開発・実装  野生型KIF5BおよびRETタンパク質の概略図、ならびに Kohnoらの研究で同定された4つの融合体の概略図1) In 2012, Breakpoints for variant: KIF5B RET 1 2 Motor Cadherin repeat T M 4 1) 4 963 Kinase 1,114 1-3 KIF5B-RET fusion variants 2) 3 CC 1 Motor Kinase 2 Motor 3 Motor CC 4 Motor CC CC Kinase CC 977 1,040 Kinase T M 1,250 Kinase 1,527 CC:コイルドコイル、TM:膜貫通  RT-PCRによる肺腺癌におけるKIF5B-RET融合の検出1) 3) 4) 43 <方法> 日本人肺腺癌患者30例の全RNA解析を行い、1例にRET遺伝子とKIF5B遺伝子の融合が生じて いることを発見した。さらに289例を加え、計319例の肺腺癌サンプルを対象にRT-PCRおよ びサンガーシークエンスを行い、6例(1.9%)にKIF5B-RET融合遺伝子を同定した。 GAPDH:コントロール BR0019:融合陰性の肺腺癌 BR0020, BR1001, BR1002, BR0030, BR1003, BR1004:融合陽性の肺腺癌 NTC:テンプレートのないコントロール T: KIF5B-RET融合 N:対応する非癌性肺組織 1)Kohno T, et al. Nat Med. 2)Takeuchi K, et al. Nat Med. 3)Lipson D, et al. Nat Med. 4)Ju YS, et al. Genome Res. 2012; 2012; 2012; 2012; 18: 18: 18: 22: 375-377. 378-381. 382-384. 436-445. 43

44.

RET融合遺伝子のがん化活性と阻害薬による抑制 RET融合陽性肺腺がん 細胞株の増殖抑制 NIH3T3細胞の軟寒天中 増殖の抑制 Vector C C Growth Survival 44 Tumor volume (mm3) Tyrosine kinase 40 Colony formation (% of control) C C KRASV12 KIF5B-RET 150 100 Vandetanib (µM) 50 0 KRASV12 KIF5B-RET control vandetanib 35 30 25 20 15 10 5 0 44 0 2 4 6 8 10 12 14 Time (day) Kohno, Ichikawa et al, Nat Med, 2012; Suzuki et al, Cancer Sci, 2013

45.

RETキナーゼたんぱく質を強力に阻害する阻害薬セルパカチニブ Drilon et al, NEJM, 2020 45

46.

Arakawa A, Ichikawa H, Kubo T, Motoi N, Kumamoto T, Nakajima M, Yonemori K, Noguchi E, Sunami K, Shiraishi K, Kakishima H, Yoshida H, Hishiki T, Kawakubo N, Kuroda T, Kiyokawa T, Yamada K, Yanaihara N, Takahashi K, Okamoto A, Hirabayashi S, Hasegawa D, Manabe A, Ono K, Matsuoka M, Arai Y, Togashi Y, Shibata T, Nishikawa H, Aoki K, Yamamoto N, Kohno T, Ogawa C. Vaginal Transmission of Cancer from Mothers with Cervical Cancer to Infants. N Engl J Med. 2021 Jan 7;384(1):42-50. Copyright © 2020 Massachusetts Medical Society. Reprinted with permission.

47.

Pan-cancerの治療標的としてのRET遺伝子融合 乳がんでの奏効 膵臓がんでの奏効 Watanabe et al, JCO Prec Oncol, 2021 Subbiah et al, AACR, 2021 47

48.

Pan-cancerの治療標的としてのRET遺伝子融合 Selpercatinib Pralsetinib ORR=44% ORR=57% Subbiah et al, Nat Med, 2022 Subbiah et al, Lancet Oncol, 2022

49.

RETキナーゼ阻害薬セルパカチニブ/レットヴィモが保険収載された https://gantaisaku.net/libretto-001_1l/ 49

50.

RET阻害剤セルパカチニブとRET遺伝子変異 LIBRETTO試験 (C634Rなど) Wirth et al, NEJM, 2020 https://www.accessdata.fda.gov/drugsatfda_docs/nda/2020/213246Orig1s000TOC.cfm がんゲノム医療現場では意義不明変異(VUS)を主体とする遺伝子変異が検出される →VUSを効率よく意義付けする仕組みが必要 →インシリコ解析の導入が必要 50

51.

各種がんでRET遺伝子に生じる変異の8割以上は意義不明 (GENIE DB) がんゲノム医療現場では遺伝子パネル検査で様々なRET変異が報告されている 90%のがん患者で見つかる RET変異は意義不明 →さらなる活性型変異を見つけられれば RET阻害薬の恩恵を受ける患者が増える? Kohno et al, Carcinogenesis, 2020 51

52.

発がん過程でPositive selectionされたRET遺伝子変異群の同定 OncodriveCLUSTLプログラム解析 A total of 71,756 variants obtained from GENIE cohorts (version 7; 79,720 tumors) were tested against a background mutation rate model based on the mutational trinucleotide context generated from 9,104 samples from TCGA. CaLM: Calmodulin like motif CCM: Cysteine core motif

53.

Calmodulin Like Motif (CaLM) 変異は3次元的にクラスターしている Ca2+結合領域(Calmodulin like motif) 正常型 分子動力学シミュレーション D567Y 変異体 Co-receptor Ligand RET Cadherin-like domain T557 – I584 RET CRD PDB ID: 6Q2N 53

54.

MDシミュレーション: タンパク質ドメインの可動性増大をもたらす変異の同定 RETキナーゼのCa結合モチーフ (CaLM) の意義不明変異は 可動性上昇をもたらすことをMDシミュレーションで推定 正常型 D567Y RMSD(構造ずれの平均二乗偏差) SASA: Solvent Accessible Surface Area (溶媒露出表面積 ) 54

55.

MDシミュレーション: タンパク質ドメインの可動性増大をもたらす変異の同定 Ca2+結合領域(Calmodulin like motif) Co-receptor Ligand RET Cadherin-like domain T557 – I584 RET CRD PDB ID: 6Q2N SASA: Solvent Accessible Surface Area (溶媒露出表面積 ) 55

56.

CaLM変異は異常な分子間S-S結合を介したRETの恒常的二量体化を促す 分子間S-S結合により、恒常的二量体化 (活性化) が生じる 変異体はがん原性を持ち、既存のRET阻害薬 で 増殖抑制できることを証明 NIH3T3細胞の形質転換能 Empt C634 WT D567Y y R Dimer Monomer D567Y変異体発現3T3細胞 をマウスに移植 Tumor volume (mm3) 4000 3000 No drug 2000 1000 0 *** **** * 0 5 **** **** **** **** 10 Selpercatinib Pralsetinib Days Tabata, Nakaoku et al, Cancer Res, 2022 56

57.

MDシミュレーション条件の検証:人工Ala変異体 シグナル 伝達能 NIH3T3細胞の 形質転換能 人工的Ala置換体 Paren t Empt y WT C634 R M918 T D567 Y D567 A D571 A E574 A D584 A 57

58.

キナーゼ活性化、既存薬に対する 治療応答性の評価 異常なS-S結合に よるRETタンパク 質の2量体化 AACR-GENIE がんゲノム データベース (7万種類の変 異) OncodriveCLUSTLプログラム解析 がん進化の際に 正に選択された RET遺伝子の変異 群 がん化能、RET阻害への応答性の評価 正常型 分子動力学シミュレーション タンパク質の 可動性の増加 Caイオンと結合 するアミノ酸に 変異が集積 (CaLM変異) 既知変異 CaLM変異 がん化能 マウスで の腫瘍造 成の抑制 腫瘍体積 (mm3) In silico解析を用いた VUSの 意義付けストラテジー インシリコ解析による 意義不明変異の意義推定 4000 RET阻害薬の投与で 腫瘍の発育が抑制 3000 2000 1000 0 *** **** * 0 5 薬剤投与後の日数 **** **** **** **** 10 58

59.

所属、名前、e-mailの登録で がん種や遺伝子でのC-CATデータ検索を 行っていただけます 検索の1例:RET融合陽性128例の特徴と使用薬剤 https://www.ncc.go.jp/jp/c_cat/use/index.html