機械回路の記号解析 その1

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November 05, 24

スライド概要

はじめに

1.機械系と電気系のアナロジー
1.1 機械系と電気系における相似
1.2 物理量の話
流通量と位差量
示量変量と示強変量
外延量と内包量

2.流通量と位差量
2.1 基礎方程式(流通量と位差量)
2.2 対応する変数と素子

3. アナロジーの検証
3.1 検証用の機械回路
3.2 検証用の電気回路
3.3 インパルス応答検証
3.4 初期値の対応関係
3.5 初期値の対応検証
機械回路のx0
機械回路のv0
機械回路のx0とv0
4.機械モデルを電気回路へ変換する方法
4.1 機械モデルを電気回路への変換手順
4.2 電気回路シミュレータでの解析
4.3 質量はグランド接地

5.双対性について
5.1 双対性:もう一つの電気回路
5.2 拡張系:対応する変数と素子

6 双対回路
6.1 双対回路の作り方
6.2 双対回路の検証
6.3 双対性がない非平面回路

つづく

補足:中田孝氏について

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これまでに主に,ロボティクス・メカトロニクス研究,特にロボットハンドと触覚センシングの研究を行ってきました。現在は、機械系の学部生向けのメカトロニクス講義資料、そしてロボティクス研究者向けの触覚技術のサーベイ資料の作成などをしております。最近自作センサの解説を動画で始めました。https://researchmap.jp/read0072509 電気通信大学 名誉教授 

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各ページのテキスト
1.

2024.11.5 機械回路の記号解析 その1 電気回路アナロジーによる解析手法 機械系のためのメカトロニクス 下 条 誠 電気通信大学名誉教授 https://researchmap.jp/read0072509/ https://www.docswell.com/user/m_shimojo The University of Electro-Communications Department of Mechanical Engineering and Intelligent System

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内 容 はじめに 1.機械系と電気系のアナロジー 1.1 機械系と電気系における相似 1.2 物理量の話 ①流通量と位差量 ②示量変量と示強変量 ③外延量と内包量 2.流通量と位差量 2.1 基礎方程式(流通量と位差量) 2.2 対応する変数と素子 3. アナロジーの検証 3.1 検証用の機械回路 3.2 検証用の電気回路 3.3 インパルス応答検証 3.4 初期値の対応関係 3.5 初期値の対応検証 ①機械回路のx0 ②機械回路のv0 2 ③機械回路のx0とv0 4.機械モデルを電気回路へ変換する方法 4.1 機械モデルを電気回路への変換手順 4.2 電気回路シミュレータでの解析 4.3 質量はグランド接地 5.双対性について 5.1 双対性:もう一つの電気回路 5.2 拡張系:対応する変数と素子 6 双対回路 6.1 双対回路の作り方 6.2 双対回路の検証 6.3 双対性がない非平面回路 つづく 補足:中田孝氏について

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はじめに 機械の振動系と電気回路が同じように取り扱えると、知ったのは中田孝氏の書籍「工 学解析」でした。同書は、Lagrange運動方程式、Fourie解析、変分法、テンソル解 析など物理学者の数学的道具を機械工学を学ぶ学生に分かり易く解説したものです。 その中に機械回路の記号解析がありました。これがアナロジーというものに関心を 持った始めでした。 機械系と電気系のアナロジーについて学ぶに従い、「物理量の捉え方」の一つとして 流通量と位差量があること、これにより機械と電気系の物理変数の対応関係ができる こと、さらに流体系、熱回路、音響工学など広い分野の物理現象の解析にアナロジー の考え方が使えることに興味を覚えたものです。また双対性の概念は、各種物理現象 への新たな視点を得るきっかけとなりました。 さて、機械系メカトロニクス講義の続きとして、新たに機械回路をはじめます。これ は機械振動系を電気回路理論で理解し、回路シミュレータにより解析を行います。電 気電子技術に馴染みがない機械系学生に少しでもエレクトロニクスへの興味,理解を 深める機会になれば幸いです。次回以降は、機械と電気混合システム、マトリクス解 析、線形連続体システムなどへと進みます。そして今回は、その端緒の機械ー電気回 路アナロジーについてです。 参考文献 中田孝:工学解析(技術者のための数学手法),オーム社,1972. 3

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1.機械系と電気系のアナロジー 機械振動系と電気回路のアナロジーとは何かについて話します 1. 共通の数学的構造はどうして? 2. 共通の基本的な法則はなに? 3. 物理量の種類の共通性とは? 1.機械系と電気系のアナロジー 1.1 機械系と電気系における相似 1.2 物理量の話 ①流通量と位差量 ②示量変量と示強変量 ③外延量と内包量 4

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1.機械系と電気系のアナロジー 機械系と電気系のアナロジーについて 話す概要を説明します 1. 機械振動系と電気回路のアナロ ジーとは何か、 2. なぜ機械振動系と電気回路の間 にはアナロジーが成り立つのか、 5 機械振動系 逆は完全 でない 力ー電流analogy F.A. Firestone,1933 力ー電圧analogy 電気回路 W. Thomson ,1853 3. 流通量と位差量という物理量の 観点から説明します 4. そして、力ー電流、力ー電圧の アナロジーを電気回路の双対性 から説明します 5. また、電気・機械系の物理変数 の対応関係を説明し、対称性と 保存則との関係をみます 6. 機械系、電気回路、流体系、熱 回路などへの展開について簡単 に示します 物理量の捉え方 ⚫ 流通量と位差量 電気回路の双対性 機械・電気系の物理変数 の対応関係 連続的な対称性と 保存則 機械系、電気回路、流体系、熱回路、磁気回路、 電磁波、音量工学などへの展開

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1.機械系と電気系のアナロジー 1自由度振動系 (a) L-R-C直列回路 (b) L-R-C並列回路 1自由度の振動系のアナロジーが図(a)の電気回路となることは以前から知られていまし た(W. Thomson ,1853)。これは力-電圧analogyの考え方で、機械を動かす力と回路を 動作さる電圧の対比は大変分かり易いです。ところが、1933 年にF.A. Firestoneは図 (b)が同じ形の方程式で記述できることを示し、再考を余儀なくされました。これは単に 方程式の形が同じからの理由ではなく、電流および力は要素をthroughする量であり、電 圧および速度はこれにacrossする量であるとしたことです。いわば機能的な根拠を持っ ていました。前者を流通量、後者を位差量とよび、ファイアストーンの量規定とよばれ ています。 参考:高橋利衛,アナロジーの論理,1974 年 77 巻 662 号 p. 21-28 6

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1.1 機械系と電気系における相似 この両方の系の方程式を作ってみると、 力の平衡方程式とキルヒホッフの電流保存則(KCL) は同じ形になります 機械系 v(t) 速度 f3 f f2 f1 電気系 k d 電圧 i3 L e(t) i2 R i i1 C m 𝑓 = 𝑓1 + 𝑓2 + 𝑓3 𝑑𝑣 𝑓=𝑚 + 𝑑𝑣 + 𝑘 න 𝑣 𝑑𝑡 𝑑𝑡 質量、ばね、ダンパの速度が同じ 𝑖 = 𝑖1 + 𝑖2 + 𝑖3 𝑖=𝐶 𝑑𝑒 1 1 + 𝑒 + න 𝑒 𝑑𝑡 𝑑𝑡 𝑅 𝐿 コンデンサ、コイル、抵抗の電圧が同じ 7

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等価な質量-ばね-ダンパ系 8 velocity 両者は同じ velocity f1 f m f3 k f2 d f ≡ f3 k f2 d f1 m 1. この両者が“等しい”ことに疑問を感じる方もいるかもしれません。そこで、この 質量、ばね、ダンパ系の速度が等しいことに注目して下さい 2. 質量は剛体で伸縮しないので質量の速度とバネ、ダンパの速度は同じとなります。 このことを明示的に示したのが右図です 3. 外力fが並列に3つに分れ流れて行きます 4. このことに注目したのが“力ー電流アナロジー”と呼ばれる考え方です 5. また、力-速度アナロジーの考え方もあります。これは後の双対性のところで話 します

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1.1 機械系と電気系における相似 機械系と電気回路の 数式モデルが同じ 電気回路シミュレータで 解析できる (analog computer項を参照のこと) なぜ? ⚫ 共通の数学的構造はどうして? ⚫ 共通の基本的な法則はなに? 物理量の種類の共通性? ➢ 流通量と位差量 電気回路では 電流(流通量) キルヒホッフの第1法則(KCL) 電圧(位差量) キルヒホッフの第2法則(KVL) 機械系では? アナロジーは形式的なもの?物理的意味はない? 9

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1.2 物理量の話し(物理量の種類) 共通の数学的構造を探るため、まずは物理量の種類の共通性を調べます 物理量の分類: 1. アナロジーで使われる分類として、 流通量(Through Quantity)と位差量(Across quantity ) 2. 熱力学や統計力学で使われる、 示量変量(Extensive Quantity)と示強変量(Intensive Quantity) 3. 論理学や哲学の概念として使われることが多い、 外延量(Extension) 、内包量(Intension) などがあります。(このほかもあります) 本解説では、主に流通量と位差量について話します 10

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1.2 物理量の話し 11 1.流通量と位差量 量 流通量 Through quantity 位差量 Across quantity 内 容 例 要素を通過する量 電流,流量,熱流量,力など 要素に加わる差の量 電圧,圧力,温度,速度など 2.示量変量と示強変量 量 内 容 例 示量変量 システムのサイズや物質 の量に依存する物理量 質量、体積、エネルギー、電荷、エ ントロピーなど システムのサイズや物質 の量に依存しない物理量 温度、圧力、密度、電位、濃度など Extensive quantity 示強変量 Intensive quantity 3.外延量と内包量 論理学や哲学の概念として使われることが多い。加法性が可能かの有無で分 類することもある

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1.2 物理量の話し(流通量と位差量) 量 流通量 Through quantity 位差量 Across quantity 内 容 例 要素を通過する量 電流,流量,熱流量,力など 要素に加わる差の量 電圧,圧力,温度,速度など ⚫ 「流通量と位差量」は、物理システム内の作用や流れに関する関係 を示します。位差(ポテンシャル差など)が原因で流れが発生する という視点です。 ⚫ 例えば、流通量は通常、位差量によって駆動されます。電圧(位差 量)は電流(流通量)を生じさせる要因となります。力(位差量) があると、変位(流通量)を生み出します。 ⚫ 流通量はシステム内で実際に「流れる」量、例えば電流や力です。 ⚫ 位差量は2点間に生じる「差」の量、例えば電圧や温度差です。 12

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1.2 物理量の話し(示量変量と示強変量) また、次のような分類もあります。示量変量はシステムの総量や全体的な広がりに依 存する量であり、システムを分割するとその量も減少します。示強変量はシステムの 局所的な性質や状態を示し、システムの大きさや分割には依存しない量です。 量 内 容 例 示量変量 システムのサイズや物質 の量に依存する物理量 質量、体積、エネルギー、電荷、エント ロピーなど システムのサイズや物質 の量に依存しない物理量 温度、圧力、密度、電位、濃度など Extensive quantity 示強変量 Intensive quantity ⚫ 「示量変量と示強変量」はシステムのサイズ依存性に基づく量の分類でシステム が小さくなっても変わらない量(示強)と、システムが大きくなると比例して増 加する量(示量)の違いを表します。 ⚫ 例えば、示強変量は、示量変量を示すための1つの基準となります。すなわち、 システムの全体のエネルギー(示容変量)は、単位質量あたりのエネルギー密度 (示強変量)とシステムの質量を掛け合わせて計算されます。 ⚫ このように、示量変量はシステム全体の「規模」や「広がり」に関する量であり、 示強変量はそのシステムの「状態」や「強度」を示す量です。 13

14.

外延量と内包量 14 「外延量」と「内包量」は、論理学や哲学の概念として使われることが多く、物 理学での「示量変量」と「示強変量」に似た対比的な概念です。 1960年代ごろから、数学教育協議会などで教育運動として量の理論が話題と なっていました。初等教育として、いろいろな量を内包量(加法性がない量、 濃度、密度、温度など)と外延量(加法性がある量、長さ、面積、体積、質 量など)に分けて教える立場です。賛同者も多く各種書籍も出版されている ようです。 そのなかで、速度は内包量としています。これは数学教育協議会では、その 量概念の定義のなかで、 (外延量)÷ (外延量)= (内包量) としています注。よって、速度は、速度=距離÷時間から、内包量になる理屈 だそうです。 しかしながら、工学では、速度はベクトル加算して求めています。当然加算 可能な量です。このため、私は速度は内包量だとする考えに非常に違和感を 感じています。このため、本解説ではこれ以上取り上げません。 注:高橋利衛:図説基礎工学対話、現代数学者、page.28,1979.

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2.流通量と位差量 流通量と位差量について、もう少し話します 2.流通量と位差量 2.1 基礎方程式(流通量と位差量) 2.2 対応する変数と素子 15

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2.流通量と位差量(流体系) 16 これを理解する例として、なじみやすいものとして流体系での流通量と位差量を 示します ⚫ 流通量はシステム内を「流れる」量→水流(流量) ⚫ 位差量は2点間に生じる「差」の量で→水圧(圧力) 水流 (流量) 流通量 抵抗 位差量 水圧 (圧力) ポンプ (圧力を発生する) 流体系での例 抵抗: 水流を流れ にくくする

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2.流通量と位差量(電気回路) 17 ⚫ 電圧(位差量):電子を流す圧力 ⚫ 電流(流通量):流れる電子の量 電流 電流 抵抗 電圧 抵抗 電圧 実際の回路 回路図 電気回路での例 抵抗: 電流を流れ にくくする

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2.電気回路と水流回路 18 電気回路と水流回路の相似 流量 電流 水圧 電圧 抵抗 ポ ン プ 抵抗 位差量: 電圧とは電荷を動かす力 水圧とは水を動かす力 流通量: 電流とは電荷の流れる量 流量とは水の流れる量

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2.流通量と位差量 19 流通量と位差量は、流体や電気回路のほか、機械系、熱回路、磁気回路、 音量工学、電磁波などでもあります 電気 機械 直進系 回転系 熱 流体 流通量 電流 i[A] 力 f[N] トルク τ[N・m] 熱流量 q[J/s] 流量 q[m3/s] 位差量 電圧 e[V] 速度 v[m/s] 角速度 ω[rad/s] 温度 θ[K] 圧力 p[Pa] この流通量と位差量の基本となる方程式は, 同じ形として記述できる ことが多くあります 次に電気回路を例に、流通量と位差量の基礎方程式を示します

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2.1 基礎方程式(流通量と位差量) 機械系と電気系のアナロジーの 共通の数学的構造となる共通の基本的な法則について 電気回路での ⚫ キルヒホッフの第1法則(KCL) 電流(流通量) ⚫ キルヒホッフの第2法則(KVL) 電圧(位差量) 20

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基礎方程式(流通量と位差量) 2.1 21 流通量:電気回路の基本法則(キルヒホッフの第1法則) 𝐼1 𝐼2 Kirchhoff's current law、KCL 𝐼𝑛 𝑛 ෍ 𝐼𝑖 = 0 𝐼𝑛−1 𝐼3 節点に電流が流れ込む量と、 流れ出る量の和はゼロとなる 𝑖=1 𝐼𝑖 電気回路では複数の配線が集まる点があり(節点)、 その点に流込む電流と流出す電流の和はゼロになる 例 𝐼1 𝐼2 𝐼3 𝐼4 流れ込む量と流れ出る量がゼロになる。でな れば内部に蓄積される。節点にはそのような 機能はない 𝐼1 + 𝐼2 + 𝐼3 − 𝐼4 = 0 節点 node

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2.1 基礎方程式(流通量と位差量) 22 位差量:電気回路の基本法則(キルヒホッフの第2法則) Kirchhoff's voltage law、KVL 𝑛 𝑉2 ෍ 𝑉𝑖 = 0 𝑉3 𝑉1 ループになっている回路の節点 間の電圧の和はゼロとなる 𝑖=1 𝑉𝑛 𝑉𝑖 電気回路では配線で閉回路(ループ)となる部分が あり,閉回路で一周した電圧の和はゼロになる 例 𝑉2 loopを回って加算した値がゼロでないと、そ の点の電圧が一意ではなくなる。 同一節点の電圧は2つ以上の値を持たない 𝐸1 loop 𝑉1 𝐸2 閉回路 loop 𝑉3 𝐸1 − 𝑉1 − 𝑉2 − 𝐸2 + 𝑉3 = 0 電圧方向がループ方向と一致すればプラス、 逆方向ならばマイナスとして加算する

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2.1 基礎方程式(流通量と位差量) 23 この基礎方程式は、流通量と位差量に対して基本的なもので、 電気回路、機械系、流体力学、熱回路に対応する法則があります 機械 電気 電流 流通量 ෍ 𝐼𝑛𝑒𝑡 = 0 熱 直進系 回転系 力 トルク ෍𝑓 = 0 ෍𝑀 = 0 熱流量 𝑑𝑇 𝐶 = 𝑞𝑛𝑒𝑡𝑖𝑛 𝑑𝑡 流体 𝑊𝑛𝑒𝑡𝑖𝑛 = 𝑑𝑚 𝑑𝑡 C:熱容量 位差量 電圧 速度 角速度 温度 圧力 ෍ 𝑉𝑙𝑜𝑜𝑝 = 0 ෍ 𝑣𝑙𝑜𝑜𝑝 = 0 ෍ 𝜔𝑙𝑜𝑜𝑝 = 0 ෍ 𝑇𝑙𝑜𝑜𝑝 = 0 ෍ 𝑃𝑙𝑜𝑜𝑝 = 0 次に、電気回路のコイルL、コンデンサC、抵抗R、に相当する素子を示します

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2.1 基礎方程式(流通量と位差量) 24 この基礎方程式に基づいて、電気回路のコイルL、コンデンサC、抵抗R、に 相当する機械系、流体力学、熱回路で対応する素子を示します 電気 コイル性 受動 1 න 𝑣 𝑑𝑡 𝐿 𝑖= 機械 直進系 回転系 𝑓 = 𝑘 න 𝑣𝑑𝑡 𝑀 = 𝑘 න 𝜔𝑑𝑡 バネ 捩じりバネ コイル 容量性 受動 𝑣= 1 න 𝑖 𝑑𝑡 𝐶 容量 𝑣= 1 න 𝑓 𝑑𝑡 𝑚 質量 𝜔= 1 න 𝑀 𝑑𝑡 𝐽 慣性質量 熱 流体 ⋯⋯ ⋯⋯ 𝐶:流体容器 𝑞𝑛𝑒𝑡 = 1 න 𝑖 𝑑𝑡 𝐶 C:熱容量 𝓌=𝐶 𝑑𝑝 𝑑𝑡 (gas strage) 𝓌=𝐶 𝑑ℎ 𝑑𝑡 (liquid strage) エネル ギー散逸 1 𝑖= 𝑅 抵抗 𝑓 =dv 粘性抵抗 𝑀 = 𝑑𝑟𝑜𝑡𝑎𝑡𝑖𝑜𝑛 ω 𝑞= 𝓌= 1 𝑇 − 𝑇2 𝑅 1 1 1 𝑝 − 𝑝2 𝛼 𝑅 1 熱抵抗 流体抵抗 このことは機械系の解析に電気系のアナロジーが利用できることを示しています。すなわち 機械系を電気回路系に置き換えることで、電気回路の特性から機械系の特性が推定できるこ とを示しています

25.

2.2 対応する変数と素子 25 この機械ー電気回路アナロジーで用いる、対応する変数と受動素子 (定数)を示します注 機械系 変数 定数 力 f [N] 電気系 電流 I [A] e [V] 速度 v [m/s] 電圧 質量 m [kg] キャパシタンス 粘性抵抗 ばね d [N・s/m] k [N/m] C [F] コンダクタンス R-1 [Ω-1] インダクタンスの逆 L-1 [H-1] この対応関係から「力ー電流analogy 」と言います 注:異なる対応付けについては後に述べる

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2.2 対応する変数と素子(力ー電流analogy) 力、速度のほかに変位、運動量の対応関係を求めた 機械系 変 数 定 数 運動量 電気系 力 f 電流 i 速度 v 電圧 e 変位 x 磁束  運動量 p 電荷 q 質量 m キャパシタンス C 粘性抵抗 d レジスタンスの逆 R-1 ばね k インダクタンスの逆 L-1 𝑝 = 𝑚𝑣 変位 𝑥 = න 𝑣 𝑑𝑡 速度 𝑣= 力 𝑓 = 𝑑𝑣 𝑑𝑥 𝑑𝑡 f f3 k f2 d f1 𝑞 = 𝐶e 𝑓=𝑚 𝑑𝑣 + 𝑑𝑣 + 𝑘 න 𝑣 𝑑𝑡 𝑑𝑡 電荷 𝜙 = න 𝑒 𝑑𝑡 磁束 𝑑𝜙 𝑑𝑡 電圧 𝑖 = 𝑅−1 𝑒 電流 𝑒= velocity 定 電 流 源 𝑖=𝐶 m i3 L voltage i2 R i i1 C 𝑑𝑣 1 1 + 𝑣 + න 𝑣 𝑑𝑡 𝑑𝑡 𝑅 𝐿 26

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2.2 対応する変数と素子 (対応関係図) 27 ⚫ 電気回路における基本の物理変数は、電圧e、電流i、 電荷q、および磁束φ の四つです。これら を相互に結ぶ関係は四面体の各辺に対応する六つでとなります。各辺にはそれぞれの変数を関係 づける受動素子を記入しました。参考文献では電荷と磁束を関係づける「第4の基本素子」につ いて話題にしています ⚫ 機械回路で対応する関係を左図に示します。機械回路での運動量と変位の関係は、ちょっと電気 回路での問題提起とはずれますが、𝐻𝑎𝑚𝑖𝑙𝑡𝑜𝑛𝑖𝑎𝑛で関係付けられます 対称性と 保存則 ⚫ 大変興味深い事に「電荷の保存法則」と「運動量の保存法則」が対応しています 注 力ー電流analogy 速度 𝑣 粘性抵抗 質量 𝑣 = 𝑑−1 𝑓 𝑝 = 𝑚𝑣 電圧 𝑒 𝑣 = 𝑑𝑥 Τ𝑑𝑡 力 𝑓 𝑒 = 𝑅𝑖 x 変位 𝑑𝑥 𝜕𝐻 𝑑𝑝 𝜕𝐻 = =− 𝑑𝑡 𝜕𝑝 𝑑𝑡 𝜕𝑝 𝑞 = 𝐶𝑒 電荷保存の法則 𝑒 = 𝑑∅Τ𝑑𝑡 電流 𝑖 ? 𝐻 𝐻𝑎𝑚𝑖𝑙𝑡𝑜𝑛𝑖𝑎𝑛 𝑥 = 𝑘 −1 𝑓 コンプライアンス 運動量 𝑝 𝑓 = 𝑑𝑝Τ𝑑𝑡 コンデンサ 電気抵抗 運動量保存の法則 電気回路の4変数の相互関係 電荷 𝑞 𝑖 = 𝑑𝑞 Τ𝑑𝑡 ∅ = 𝐿𝑖 コイル ∅ = 𝐾𝑞? ∅ 磁束 注:雨宮好仁,磁束と電荷を結ぶ新しいデバイスの探索,応用物理,vol.78,no.12,pp.1146-1149,2009

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保存法則が生まれる理由 28 ネーターの定理:物理的な対象に特定の対称性があるとき、その対称性 に対応す保存量の存在が導かれる (対称性とは、点対称、鏡像対称だけでなく、並進、回転など連続的な対称性を意味します) 物理系が空間の並進対称性を持つことに対応しています。空間 の並進対称性とは、物理法則が空間の位置によらず同じ形で適 用されることを意味します。つまり、実験や物理現象がどの場 所で起こっても、物理法則が変わらないという性質です 運動量の保存法則 電荷保存の法則 (電束保存の法則) 電磁場のポテンシャルに対する特定の変換を行っても、電場や磁 場は変わらないという性質です(Maxwell方程式のゲージ変換に 対する不変性)。 電磁気学のスカラポテンシャルφとベクトルポテンシャルAは以 下のように変換できます 𝑑Λ , 𝑨 ⟶ 𝑨′ = 𝑨 + 𝛻𝛬 𝑑𝑡 𝜕𝜌 +∇∙𝒋=0 連続の方程式(電荷保存則) 𝜕𝑡 𝜑 ⟶ 𝜑′ = 𝜑 − https://ja.wikipedia.org/wiki/ネーターの定理 https://ja.wikipedia.org/wiki/電荷保存則

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3.アナロジーの検証 電気回路シミュレータを用いて機械回路と電気回路のアナロジー 検証実験を行ってみます 1. 本当に対応関係はあるのか? 2. インダクタンスの逆とはなに?どのように回路シミュレータに導入するの? 3. 機械系の初期値、例えばx0、v0は、電気回路ではどのようになるの? 3. アナロジーの検証 3.1 検証用の機械回路 3.2 検証用の電気回路 3.3 インパルス応答検証 3.4 初期値の対応関係 3.5 初期値の対応検証 ①機械回路のx0 ②機械回路のv0 ③機械回路のx0とv0 29

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3.アナロジーの検証 機械系 力 変 数 速度 v 変位 x 定 数 i 電圧 e 電荷 p m 粘性抵抗 ばね 電流 f3 f 磁束  運動量 質量 velocity 電気系 f k d q C レジスタンスの逆 R-1 インダクタンスの逆 L voltage i2 R i i1 C d m 定 電 流 源 L-1 機械系の方程式 電気系の方程式 𝑑 2 𝑥(𝑡) 𝑑𝑥(𝑡) 𝑚 + 𝑑 + 𝑘𝑥 𝑡 = 𝑓(𝑡) 𝑑𝑡 2 𝑑𝑡 𝑑 2 𝜙(𝑡) 1 𝑑𝜙(𝑡) 1 𝐶 + + 𝜙 𝑡 =𝑖 𝑡 𝑑𝑡 2 𝑅 𝑑𝑡 𝐿 𝑥 𝑡 = 𝑘 −1 𝑓3 𝑡 𝜙 𝑡 = 𝐿𝑖3 𝑡 𝑣 𝑡 = 𝑑 −1 𝑓2 𝑡 𝑒 𝑡 = 𝑅𝑖2 𝑡 𝑑𝑣 𝑡 = 𝛼 𝑡 = 𝑚−1 𝑓1 𝑡 𝑑𝑡 𝑑𝑒 𝑡 = 𝐶 −1 𝑖1 𝑡 𝑑𝑡 電気系の回路図LRCの値は C=m, R=1/d, L=1/k として回路を作ります 例) m=1kg, d=0.1N s/m, k=10N/m C=1F, R=10Ω, L=0.1H i3 k f2 f1 キャパシタンス 機械系と電気系の方程式を比較 すると各定数は上表になります 30

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3.1 検証用の機械回路 31 次の1自由度振動系を例とします k f 𝑑 2 𝑥(𝑡) 𝑑𝑥(𝑡) 𝑚 + 𝑑 + 𝑘𝑥(𝑡) = 𝑓(𝑡) 𝑑𝑡 2 𝑑𝑡 方程式 m d 初期条件: 𝑖𝑐 物理モデル 𝑑 2 𝑥(𝑡) 𝑑𝑡 2 微分方程式の解法はAnalog computerを使います 𝑑𝑡 2 = 1 𝑚 −𝑑 𝑑𝑥(𝑡) 𝑑𝑡 積分器 𝑖𝑐: 𝑣0 𝑥(𝑡) 積分器 𝑖𝑐: 𝑥0 analog computer 𝑑/𝑚 実際の回路は次頁で 𝑑 2 𝑥(𝑡) 𝑑𝑥(𝑡) ቉ = 𝑣0 , 𝑥(𝑡)ሿ𝑡=0 = 𝑥0 𝑑𝑡 𝑡=0 𝑑𝑥(𝑡) 𝑑𝑡 − 𝑘𝑥(𝑡) + 𝑓(𝑡) 参考:Analog Computer https://www.docswell.com/s/m_shimojo/5P9EN1-2024-06-17-094921 + 加算器 𝑘/𝑚 f 発振器

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3.1 検証用の機械回路 32 検証例:実験に用いる機械システム(1自由度振動系)は次の様です 𝑚 = 1𝑘𝑔, 𝑐 = 0.1 𝑁𝑠Τ𝑚 , 𝑘 = 10 𝑁Τ𝑚 𝑑2 𝑥(𝑡) 𝑑𝑥(𝑡) 𝑚 + 𝑑 + 𝑘𝑥(𝑡) = 𝑓(𝑡) 𝑑𝑡 2 𝑑𝑡 𝑑2 𝑥(𝑡) 𝑑𝑥(𝑡) + 0.1 + 10𝑥(𝑡) = 𝑓(𝑡) 𝑑𝑡 2 𝑑𝑡 その特性 参考 自由振動: 固有角振動数: 𝑑 2 𝑥(𝑡) 𝑑𝑥(𝑡) + 2𝜁𝜔 + 𝜔02 𝑥(𝑡) = 0 0 2 𝑑𝑡 𝑑𝑡 𝜔0 = 𝑘 = 𝑚 10 = 10 1 𝑓 = 𝜔0 Τ2𝜋 = 0.5035𝐻𝑧 振動peak比: 臨界粘性減衰係数: 減衰比: 𝑐𝑐 = 2 𝑚𝑘 = 2 10 𝜁= 𝑐 1Τ10 1 = = 𝑐𝑐 2 10 20 10 𝑒 −𝜁𝜔0 Δ𝑡 − 1 ∗ 10∗1.988 = 𝑒 20 10 0.905354903 =

33.

3.1 検証用の機械回路(LTspice) 積分器 加速度 積分器 速度 変位 初期値 初期値 10k/100K=0.1 𝑑 2 𝑥(𝑡) 𝑑𝑡 2 = 1 1 −0.1 𝑑𝑥(𝑡) 𝑑𝑡 − 10𝑥(𝑡) + 𝑓(𝑡) 10k/1K=10 パルス電圧(1V, 0.1s) 10k/10K=1 33

34.

3.2 機械系 力 変 数 v 変位 x 定 数 電圧 e 電荷 p m 粘性抵抗 ばね i f 磁束  運動量 質量 電流 f3 d q C レジスタンスの逆 R-1 インダクタンスの逆 k i3 L voltage i2 R i i1 C k f2 f1 キャパシタンス 34 変換 velocity 電気系 f 速度 検証用の電気回路 d 定 電 流 源 m L-1 機械系 電気系 ←方程式が同じ→ 電気系の回路図LRCの値は、「 C=m, R=1/d, L=1/k 」として回路を作ります ←同じ係数の方程式にするため 数値として同じになるようにする! 𝑚 = 1𝑘𝑔, 𝑑 = 0.1 𝑁𝑠Τ𝑚 , 𝑘 = 10 𝑁Τ𝑚 定 電 流 源 C = 1 𝐹, 𝑅 = 10W, 𝐿 = 0.1 𝐻 磁束→変位 電圧→速度 𝜙 𝑡 = 𝐿𝑖L 𝑡 𝑒 𝑡 = 𝑅𝑖R 𝑡 𝒊𝑳 L R 𝒊𝑹 𝒊𝑪 C 電流→力 𝑖C 𝑡 機械回路を電気回路へ変換

35.

3.2 検証用の電気回路(LTspice) 35 機械回路を電気 回路へ変換 機械回路のm,d,kを電気 回路のC,R,Lに変換 m=1kg, d=0.1N s/m, k=10N/m C=1F, R=10Ω, L=0.1H パルス電流(1A, 0.1s) 磁束Φ 変位 𝜙 𝑡 = 𝐿𝑖L 𝑡 速度 𝑒 𝑡 = 𝑅𝑖R 𝑡 力 𝑖C 𝑡 機械回路と電気回路 の変数対応付け 変位 磁束 速度 電圧 力 電流 電圧で表示するためビヘイビア電圧源 を利用

36.

3.3 インパル ス応答比較 1.0 力(加速度) 速度 変位 質量mに加わる力 (加速度)を表す 0.0 Impulse:1V,0.1sec -0.4 10 磁束 1.0 𝜙 𝑡 = 𝐿𝑖L 𝑡 電流 電圧 電圧 𝑒 𝑡 = 𝑅𝑖R 𝑡 磁束 Impulse:1A,0.1sec 電流 𝑖C 𝑡 0.0 数値の比較のため 図は全て電圧とし てある 36 -0.4

37.

3.4 初期値の対応関係 37 「機械回路の初期値」と「電気回路の初期値」の対応付けをどうする? k f 𝑑 2 𝑥(𝑡) 𝑑𝑥(𝑡) 𝑚 +𝑑 + 𝑘𝑥(𝑡) = 𝑓(𝑡) 𝑑𝑡 2 𝑑𝑡 方程式 m d 物理モデル 初期値: この初期値の物理的意味から考えてみます 𝑑𝑥(𝑡) ቉ = 𝑣0 , 𝑥(𝑡)ሿ𝑡=0 = 𝑥0 𝑑𝑡 𝑡=0 これ 初期速度は、質量mのt=0における速度です。すなわち、運動エネルギーですね。また 初期変位は、バネkのt=0における変位です。すなわち、ポテンシャルエネルギーですね 1 𝑣0 ⟹ 𝑚𝑣02 2 1 𝑥0 ⟹ 𝑘𝑥02 2 初期値は機械系の内部エネルギー 状態を表している? 今回の振動系のみからの考察です

38.

3.4 初期値の対応関係 38 そこで、電気回路のエネルギ蓄積素子との対応付けをしてみます 𝑖0 iL L 𝑒0 voltage iR R 定 電 流 源 i iC C 機械回路 電気回路 初期値 1 𝑣0 ⟹ 𝑚𝑣02 2 = 1 2 初期値 𝐶𝑒0 ⟹ 𝑒0 2 = 1 2 初期値 𝐿𝑖0 ⟹ 𝑖0 2 初期値 1 𝑥0 ⟹ 𝑘𝑥02 2 上図の電気回路でエネルギ蓄積可能素子は、コイルLとコンデンサCです。 エネルギ値が等しいとすると、各初期条件は次のようになります 初期速度: 𝑚𝑣02 = 𝐶𝑒02 ⇒ 𝑣02 =𝑒02 𝑒0 = 𝑣0 初期変位: 𝑘𝑥02 = 𝐿𝑖02 = 1Τ𝑘 𝑖02 ⇒ 𝑘𝑥0 2 = 𝑖02 𝑖0 = 𝑘𝑥0 バネ定数 数値のみあわせます

39.

3.5 𝑣0 , 𝑒0 f 初期値の対応検証 𝑒0 k d 𝑖0 𝒊𝑳 定 電 流 源 m L 力ー電流analogy 例題: 𝑚 = 1𝑘𝑔, 𝑑 = 0.1 𝑁𝑠Τ𝑚 , 𝑘 = 10 𝑁Τ𝑚 初期条件: 39 𝑑𝑥(𝑡) ቉ = 𝑣0 , 𝑥(𝑡)ሿ𝑡=0 = 𝑥0 𝑑𝑡 𝑡=0 (機械回路の外力f=0) 回路シミュレータで検証 ① : (v0=0, x0=1) → (e0=0, i0=10) ② : (v0=1, x0=0) → (e0=1, i0=0) ③ : (v0=1, x0=1) → (e0=1, i0=10) R 𝒊𝑹 𝒊𝑪 C C = 1 𝐹, 𝑅 = 10W, 𝐿 = 0.1 𝐻 初期条件: 𝑒0 = 𝑣0 𝑖0 = 𝑘𝑥0 (電気回路の定電流源i=0) ✓ e0:初期条件として接続線の 電圧をe0とする ✓ i0:初期条件としてコイルL に流れている電流をi0とする

40.

①機械系x0を設定 10 𝑖0 = 𝑘𝑥0 x0=1 𝑘 = 10 impulse=0 力 速度 x0=1 i0=10 変位 -10 10 10 i0=10 impulse=0 電流 -10 電圧 数値の比較のため図は全て 電圧としてある 磁束 10 40

41.

②機械系v0を設定 v0=1 10 𝑒0 = 𝑣0 v0=1 e0=1 impulse=0 力 速度 変位 -10 10 10 e0=1 impulse=0 電流 -10 電圧 数値の比較のため図は全て 電圧としてある 磁束 10 41

42.

③機械系x0 ,v0を設定 10 𝑖0 = 𝑘𝑥0 𝑒0 = 𝑣0 𝑘 = 10 impulse=0 力 速度 変位 -10 x0=1 i0=10 10 v0=1 e0=1 10 impulse=0 電流 -10 電圧 磁束 10 42

43.

4.機械モデルを電気回路へ変換する方法 機械モデルを電気回路に変換する方法を図を用いて説明します。機械回路から 電気回路への変換は難しそうにみえますが、コツを知ってしまえば非常に簡単 にできます。ここではその変換方法について説明します 4.機械モデルを電気回路へ変換する方法 4.1 機械モデルを電気回路への変換手順 4.2 電気回路シミュレータでの解析 4.3 質量はグランド接地 43

44.

4.機械モデルを電気回路へ変換する方法 物理モデルとしての対応関係 機械系 変 数 定 数 計算モデルとの対応関係 電気系 力 f 電流 i 速度 v 電圧 e 質量 m キャパシタンス C 粘性抵抗 d レジスタンスの逆 R-1 ばね k インダクタンスの逆 L-1 この数式モデルを 表す機械系 𝑑 2 𝑥(𝑡) 𝑑𝑥(𝑡) 𝑚 + 𝑑 + 𝑘𝑥 𝑡 = 𝑓(𝑡) 𝑑𝑡 2 𝑑𝑡 𝐶 𝑑 2 𝜙(𝑡) 1 𝑑𝜙(𝑡) 1 + + 𝜙 𝑡 =𝑖 𝑡 𝑑𝑡 2 𝑅 𝑑𝑡 𝐿 この数式モデルを 表す電気回路 方程式係数の数値が同じなら 計算結果の数値も同じ 電気系の回路図LRCの値は C=m, R=1/d, L=1/k となります 「 L-1 」素子が電気回路の コイルになるわけではない 例 m=1kg, d=0.1N s/m, k=10N/m C=1F, R=10Ω, L=0.1H 44

45.

4.1 機械モデルを電気回路への変換手順 45 機械モデルを電気回路に変換する方法 f 機械系 変 数 定 数 電気系 力 f 電流 i 速度 v 電圧 e 質量 m キャパシタンス C 粘性抵抗 d レジスタンスの逆 R-1 ばね k インダクタンスの逆 L-1 a k m d 定 電 流 源 1. 質量m をキャパシタンスC に置き換え配置を行う L R C 2. キャパシタンスC の一方の端子はグランドに接続する 3. キャパシタンスC の他の端子はノード記号を付ける(a,b,c... など) 4. バネ要素k,粘性抵抗要素dをそれぞれ,インダクタンスL,抵抗Rに変更する 5. バネ要素,粘性抵抗要素は,上記ノード間,ノードとグランド間を接続しているか ら,それらを結ぶように配置する 6. 外力(もしくは強制変位速度) は接続するノードに,力(もしくは速度)に対応する 電流源(もしくは電圧源) を接続する

46.

4.1 例その1 f 機械モデルを電気回路への変換手順 a k m d a C ノード node 例 電気系の回路図LRCの値は C=m, R=1/d, L=1/k となります a m=1kg, d=0.1N s/m, k=10N/m C=1F, R=10Ω, L=0.1H a グランド ground f C 1. 質量m をキャパシ タンスC に置き換 え配置を行う 2. キャパシタンスC の一方の端子はグ ランドに接続する 3. キャパシタンスC の他の端子はノー ド記号を付ける (a,b,c... など) L 46 R C L R 7. 粘性抵抗要素は,ノード間,また はノードとグランド間を接続して いるから,それらを結ぶように配 5. バネ要素は,ノード間、 置する またはノードとグラン 8. 外力(もしくは強制変位速度) は接 ド間を接続しているか 続するノードに,力(もしくは速 ら,それらを結ぶよう 度)に対応する電流源(もしくは電 に配置する 圧源) を接続する 6. 粘性抵抗要素dを抵抗 Rに変更する 4. バネ要素kをインダク タンスLに変更する

47.

4.1 機械モデルを電気回路への変換手順 例その2 f k2 k1 a d1 a b a b m1 L2 d2 b k3 m2 L3 L2 a f C1 C2 L1 C1 C2 1. 質量m をキャパシタンスC に置き換え配置を行う 4. バネ要素kをインダクタ ンスLに変更する 2. キャパシタンスC の一方の 端子はグランドに接続する 5. バネ要素は,ノード間、 またはノードとグランド 間を接続しているから, それらを結ぶように配置 する 3. キャパシタンスC の他の端 子はノード記号を付ける (a,b,c... など) 47 b L3 R2 L1 C1 R1 C2 6. 粘性抵抗要素dを抵抗Rに変更する 7. 粘性抵抗要素は,ノード間,また はノードとグランド間を接続して いるから,それらを結ぶように配 置する 8. 外力(もしくは強制変位速度) は接 続するノードに,力(もしくは速 度)に対応する電流源(もしくは電 圧源) を接続する

48.

4.1 機械モデルを電気回路への変換手順 例その3 1. 質量m をキャパシタンスC に置き換え配置を行う a C1 2. キャパシタンスC の一方の端子はグランドに接続する 3. キャパシタンスC の他の端子はノード記号を付ける (a,b,c... など) 4. バネ要素k,粘性抵抗要素dをそれぞれ,インダクタン スL,抵抗Rに変更する 5. バネ要素,粘性抵抗要素は,上記ノード間,ノードと グランド間を接続しているから,それらを結ぶように 配置する 6. 外力(もしくは強制変位速度) は接続するノードに,力 (もしくは速度)に対応する電流源(もしくは電圧源) を接続する b f7 C2 L12 L5 R23 R13 C3 c R4 R6 48

49.

4.1 機械モデルを電気回路への変換手順 49 例その3 a a C1 b a C1 b C2 b C2 L12 f7 C2 L12 L5 C3 c C1 C3 c L5 R23 R13 C3 c R4 R6 1. 質量m をキャパシタンス C に置き換え配置を行う 4. バネ要素kをインダクタ ンスLに変更する 2. キャパシタンスC の一方 の端子はグランドに接続 する 5. バネ要素は,ノード間、 またはノードとグランド 間を接続しているから, それらを結ぶように配置 する 3. キャパシタンスC の他の 端子はノード記号を付け る(a,b,c... など) 6. 粘性抵抗要素dを抵抗Rに変更する 7. 粘性抵抗要素は,ノード間,また はノードとグランド間を接続して いるから,それらを結ぶように配 置する 8. 外力(もしくは強制変位速度) は接 続するノードに,力(もしくは速 度)に対応する電流源(もしくは電 圧源) を接続する

50.

4.2 電気回路シミュレータでの解析 「例その2」の変換結果を用いて特性をシミュレートしてみます 1. 時間応答 インパルス応答結果を求める 例その2 2. 周波数応答 BODE線図を求める f k2 k1 d1 a b m1 d2 L2 a f k3 m2 b R2 L1 C1 R1 C2 L3 50

51.

例その2 変位(L1) 電気回路シミュレー タで時間応答、 BODE線図など各種 の情報がわかります ここ 時間応答 ⚫ 変位(L2) ⚫ L1,L2,L3の電流を 表示しています 機械系ではバネに かかる力ですので 変位ですね 変位(L3) BODE線図 18dB 周波数応答 ここ ⚫ 0dB ⚫ m2 m2の電圧を表示 しています 機械系では質量m 2の速度ですね -36dB 振幅 位相 0.1Hz 1Hz 10Hz 51

52.

4.3 質量はグランド接地 52 質量は剛体とすると、質量に入力端と出力端のもつ2端子素子と考えることはできません。 質量の出力端の速度v2=0、一応出力端は地球(Ground)であると考えてよいでしょう。 v1 v2 v1 v2 v1 v1 m k 直列接続 d v0 Ground コンデンサの直列接続では合成容量は小さくなります。これを質量に当て はめて考えると、質量を上手くつなぎ合わせれば軽くなることに相当しま C1 す。このようなことができれば貨物輸送は楽になり、宇宙への進出も簡単 でしょう。電気回路では容量の直列接続で合成容量は減少します。同様に、 C.2 機械回路で直列接続するとトータルの質量が軽くなるとするのは一寸違う と思います(次回以降へ) 合成容量は接続す るほど小さくなる 1 1 1 1 = + +⋯+ 𝐶 𝐶1 𝐶2 𝐶𝑛 接続するほど1/Cは増大、よってCは減少する。 但し、合成容量ではということですね

53.

5.双対性(duality) 電気回路において双対性(duality) と呼ばれる性質があります。これは電 圧で成立している関係が、電流においても成立することなどを表します。 この双対は数学や物理学をはじめとする多くの分野に表れます。 ここでは、この電気回路の双対性を使って、力ー電流analogyから、 力ー電圧analogyへ変換できることを示します 5.双対性について 5.1 双対性:もう一つの電気回路 5.2 拡張系:対応する変数と素子 53

54.

5.双対性について 物理における双対性(duality)とは、ある物理的な理論やシステムが、異な る理論やシステムと数学的・概念的に対応していることを指します。双対性 により、異なる物理的現象や法則が、実は同じ構造を持っていたり、同じ原 理に基づいていることが明らかになります。 例えば、本解説で述べたように、電気回路と機械系との間には双対性があり ます。この双対性に基づいて、機械系の運動方程式を電気回路の形式で記述 することができます。双対性は、物理の多くの分野で深い意味を持ち、異な る物理理論が実は一つの統一された構造の別の表現に過ぎないことを示唆し ています。 例として、図形の双対性、グラフ理論での双対性、理論における双対性、線 形計画法にける双対原理など数多くの例があります。双対性については下記 の書物に詳しい、興味のある方は読んで見えください。 グラフ理論における**双対性(duality)**は、平面的グラフに関連する概念 です。平面的グラフ(つまり、交差することなく平面上に描けるグラフ)に は、そのグラフに対する「双対グラフ」というものが存在します。これは後 で電気回路の変換で利用します。 参考:高橋秀俊:数理と現象,岩波書店 54

55.

5.1 双対性:もう一つの電気回路 55 これらは同じ形の方程式で記述できます 𝑒 1自由度振動系 1自由度振動系 𝑓 𝑡 =𝑚 𝑑𝑣 + 𝑑𝑣 + 𝑘 න 𝑣 𝑑𝑡 𝑑𝑡 𝑑2𝑥 𝑑𝑥 𝑓 𝑡 =𝑚 2 +𝑑 + 𝑘𝑥 𝑑𝑡 𝑑𝑡 (a) L-R-C直列回路 (b) L-R-C並列回路 力ー電圧analogy 力ー電流analogy 𝑣 𝑡 =𝐿 𝑑𝑖 1 + 𝑅𝑖 + න 𝑖 𝑑𝑡 𝑑𝑡 𝐶 𝑑2𝑞 𝑑𝑞 1 𝑒 𝑡 =𝐿 2 +𝑅 + 𝑞 𝑑𝑡 𝑑𝑡 𝐶 𝑖 𝑡 =𝐶 𝑑𝑒 1 1 + 𝑒 + න 𝑒 𝑑𝑡 𝑑𝑡 𝑅 𝐿 𝑑 2 ∅ 1 𝑑∅ 1 𝑖 𝑡 =𝐶 2+ + ∅ 𝑑𝑡 𝑅 𝑑𝑡 𝐿

56.

5.1 双対性:もう一つの電気回路 電気回路 analogy 𝑒 voltage 定 電 流 源 i L il ir 機械系:質量、 ばね、ダンパの 速度は等しい (1)力ー電流analogy C R ic 等 し い 力 f 電流 i 速度 v 電圧 e 素子に加わる電圧が等しい 𝑖 𝑡 =𝐶 vl 定 電 圧 源 𝑑𝑒 1 1 + 𝑒 + න 𝑒 𝑑𝑡 𝑑𝑡 𝑅 𝐿 vr L vc R (2)力ー電圧analogy C 力 f 電圧 e 速度 v 電流 i 素子に流れる電流が等しい 𝑑𝑖 1 + 𝑅𝑖 + න 𝑖 𝑑𝑡 𝑑𝑡 𝐶 velocity k f2 d f1 等しい 𝑣 𝑡 =𝐿 f3 f 𝑖 𝑡 = 𝑖𝑙 + 𝑖𝑟 + 𝑖𝑐 56 𝑣 𝑡 = 𝑣𝑙 + 𝑣𝑟 + 𝑣𝑐 m

57.

5.2 拡張系:対応する変数と素子 機械系 変 数 定 数 電気系 力 f 電流 i 速度 v 電圧 e 変位 x 磁束 f 運動量 p 機械系 力 速度 電気系 力 f 電圧 e 速度 v 電流 i 変位 x 電荷 q 電荷 q 運動量 p 磁束 f 質量 m キャパシタンス C 質量 m インダクタンス L 粘性抵抗 d レジスタンスの逆 R-1 粘性抵抗 d レジスタンス R ばね k インダクタンスの逆 L-1 ばね k キャパシタンスの逆 C-1 変 数 定 数 力ー電流analogy 運動量 57 𝑝 = 𝑚𝑣 𝑑𝑝 𝑓= 𝑑𝑡 𝑑𝑥 𝑣= 𝑑𝑡 変位 𝑥 = න 𝑣 𝑑𝑡 抵抗 𝑓 = 𝑑𝑣 力ー電圧analogy 𝑞 = 𝐶e 𝑑𝑞 𝑖= 𝑑𝑡 𝑑𝜙 𝑒= 𝑑𝑡 電荷 運動量 電流 力 電圧 速度 𝜙 = න 𝑒 𝑑𝑡 磁束 変位 𝑥 = න 𝑣 𝑑𝑡 𝑖 = 𝑅−1 𝑒 抵抗-1 抵抗 𝑓 = 𝑑𝑣 𝑝 = 𝑚𝑣 𝑑𝑝 𝑓= 𝑑𝑡 𝑑𝑥 𝑣= 𝑑𝑡 𝜙 = 𝐿𝑖 𝑑𝜙 𝑒= 𝑑𝑡 𝑑𝑞 𝑖= 𝑑𝑡 磁束 𝑞 = න 𝑖 𝑑𝑡 電荷 𝑒 = 𝑅𝑖 抵抗 電圧 電流

58.

速度 𝑣 質量 粘性抵抗 𝑝 = 𝑚𝑣 𝑣 = 𝑑−1 𝑓 𝑣 = 𝑑𝑥 Τ𝑑𝑡 力 𝑓 速度 質量 𝑝 電荷 𝑞 𝑖 = 𝑑𝑞 Τ𝑑𝑡 ∅ = 𝐿𝑖 𝑥 = 𝑘 −1 𝑓 コイル ∅ = 𝐾𝑞? ∅ 磁束 変位 x 𝑝 = 𝑚𝑣 𝑒 = 𝑑∅Τ𝑑𝑡 電流 コンプライアンス 𝑣 = 𝑑𝑥 Τ𝑑𝑡 𝑞 = 𝐶𝑒 電荷保存の法則 𝑖 𝑓 = 𝑑𝑝Τ𝑑𝑡 コンデンサ 𝑒 = 𝑅𝑖 力ー電圧analogy 𝑓 𝑒 電気抵抗 x 変位 粘性抵抗 𝑓 = 𝑑𝑣 電圧 ? 𝐻 𝐻𝑎𝑚𝑖𝑙𝑡𝑜𝑛𝑖𝑎𝑛 コンプライアンス 力 運動量 𝑝 𝑓 = 𝑑𝑝Τ𝑑𝑡 𝑥 = 𝑘 −1 𝑓 𝑣 機械回路と電気回路の アナロジー対応関係図 力ー電流analogy 磁束保存の法則 電気回路の4変数の相互関係 ? 𝐻 𝐻𝑎𝑚𝑖𝑙𝑡𝑜𝑛𝑖𝑎𝑛 運動量 58

59.

6.双対回路 双対回路に変換する方法を図を用いて説明します。双対回路への変換は難しそ うにみえますが、コツを知ってしまえば非常に簡単にできます。ここではその 変換方法について説明します 6 双対回路 6.1 双対回路の作り方 6.2 双対回路の検証 6.3 双対性がない非平面回路 59

60.

6.1 双対回路の作り方 60 ある電気回路に対して、電圧と電流を入れ変えた電気回路も存在し、このような2つの 回路を互いに双対な回路といいます。主に、抵抗、インダクタンス、キャパシタンスな どの回路要素と、それらの接続関係を入れ替えることで、元の回路と双対の関係を持つ 回路が作れます。 双対性(duality) の関係 双対にある素子など 電流 I ⇔ 電圧源 E 電流源 J ⇔ インピーダンス Z ⇔ アドミッタンス Y リアクタンス X ⇔ サセプタンス B インダクタ L ⇔ キャパシタ C 抵抗 R ⇔ コンダクタンス G 電圧 V 双対にある接続関係など 並列接続 短絡 閉路(loop) Y型接続 T型回路 KCL法則 ⇔ ⇔ ⇔ ⇔ ⇔ ⇔ 直列接続 開放 接点(node) Δ型接続 型回路 KVL法則

61.

6.1 双対回路の作り方 61 大部分の電気回路には双対回路が存在し、この双対回路は回路方程式から求める方法と、 図式的に求める方法があります。ここでは図式的に求める方法について示します。この 回路例では、独立な回路ループは1つであり、ループ内の点aと、ループ外の点bを選ぶこ ととします。そして、つぎに示す手順で回路を構成します。 1. 独立な回路ループの中に点a、点b を 取る.これらの点が双対回路のノー ドとなる ループ外の点 2. a~b 間を結ぶ線(図では点線)が回路 要素を通過するように結ぶ 3. このときa、b 間を結ぶ線(図では点 線)が変換後の配線となる 4. また点線と交差する要素を表4.1 に示 す対応する要素に変換する 5. 素子の数値は変えない 6. 要素の変換で電圧源は電流源となり、 電流源はと電圧源なる ループ内の点

62.

6.1 (1) 双対回路の作り方(例1) a (2) 独立な回路ループ の中に点a,b を 取る b v(t) (3) a C 1/R a~b 間を結ぶ線 (図では点線)が回 路要素を通過する ように結ぶ b v(t) (4) a 62 点線が変換後の 配線となる a L i(t) i(t) b b 配線を書き直し 完成 L→C, R → 1/R, C → L v(t) → >i(t) 点線と交差する要 素を対応する要素 に変換する

63.

6.1 (1) 双対回路の作り方(例2) c 独立な回路ループ の中に点a,b を ループ外に点cを 取る a (2) 63 c a~c 間を結 ぶ線(図では 点線)が回路 要素を通過す るように結ぶ b a b (独立な回路ループは2つ) (4) (3) a 点線が変換後の 配線となる c b 配線を書き 直し完成 a b L→C, R → 1/R, C → L, v(t) → >i(t) 点線と交差 する要素を 対応する要 素に変換す る

64.

6.1 双対回路の作り方(素子・値) 64 対応 2mH 10Ω 5μF 2mF 5μH 0.1Ω 結局、次の変換のこと インピーダンス Z⇔アドミッタンス Y 元の回路 素子のイ ンピーダ ンス jω𝐿 L→C 1 jω𝐿 1 jω𝐶 C→L jω𝐶 R→G 1 R 𝑅 Z Y

65.

6.2 双対回路の検証 65 対応 回路シミュレータを用い て検証する 対応 対応 10Ω 2mH 5μF 2mF 5μH 0.1Ω 𝑣𝑙 ⇆ 𝑖𝑐 vl vr vc 左図の電圧と右図の電流は対応 関係があり、同じ数値になる 𝑣𝑟 ⇆ 𝑖𝑟 𝑣𝑐 ⇆ 𝑖𝑙 対応 il ir ic

66.

6.2 双対回路の検証 66 対応する 𝑣𝑙 ⇆ 𝑖𝑐 𝑣𝑟 ⇆ 𝑖𝑟 𝑣𝑐 ⇆ 𝑖𝑙 LTspice LTspice 3V 3A 電圧C 電流L 𝑣𝑐 𝑖𝑙 電圧R 電圧L 𝑣𝑙 𝑣𝑟 電流R 電流C 𝑖𝑐 数値は一致。もち ろん単位は違う 𝑖𝑟

67.

6.3 双対性がない非平面回路 大部分の回路(平面回路)はその双対回路を有しますが、時として有しない ものもあります(非平面回路)。この非平面(非平面回路)とは、回路やグ ラフが平面上に描けない構造を指します。 具体的には、回路図の中で、ワイヤや回路要素が交差する場合、それを平面 に収めることができず、他の要素と交差せずに配置することが不可能になり ます。このような回路は非平面回路と呼ばれ、通常の平面回路とは異なり、 双対性(対応する別の回路への変換)が成り立たない場合があります。 2つの配線が交差 している 非平面回路例 67

68.

つづく ⚫ 機械系と電気系のアナロジーのことは多くの解説があり、形式として美しくまとめ られています。但し、実際に使う場合、素子の置換、数値の与え方、初期条件の変 換法について述べた資料は私は見つけることができませんでした ⚫ 例えば、“インダクタンスの逆”という表現があります。抵抗の逆数がコンダクタ ンスとよばれる様な素子なのか、コイルのインピーダンス”jωLの逆数”で”1/ jωL”となりコンデンサを表すのか、ただ単に数値だけの話しか、混乱した覚えが あります。 ⚫ 初期条件でも、機械系の初速度v0や初期変位x0は、電気系でどのようにすれば良い のか、分かりませんでした。 ⚫ 今回これらの点を確認してみました。また検証としてLTspiceを用いて実験を行っ てみました。皆様の参考になれば幸いです ⚫ 今後、機械回路の電気回路による解析、機械ー電気混合システムの回路解析、伝達 マトリクスによる解析、線形連続体の伝達マトリクスなど解説する予定です ⚫ アナロジーは形式的なもので、物理的意味はない、という意見もあります。どうな のでしょうか、私も知りたいところです 68

69.

補足:中田孝氏について 中田 孝(1908- 2000):日本の機械工学者。東京工業大学名誉教授。 元日本機械学会会長。元計測自動制御学会会長。元日本学士院会員。日本 学士院賞受賞。 https://ja.wikipedia.org/wiki/中田孝 中田孝先生は、大学院時代に私が所属した研究室の前教授でした。著書「転位歯車」は 修論では大変お世話になりました。しかし、いろいろな逸話などは聞くことはありまし たが、中田先生にはお会いしたことは残念ながらありませんでした。先日、同期で研究 室を引き継いだ北條さん(東工大名誉教授)に会った時、その話をしたところ、中田先 生の講義ビデオを送って頂き、初めてその肉声に触れることができました。感謝します。 そのビデオを見ながら、中田先生は、歯車の研究で日本学士院賞を45歳で受賞したのを はじめ、自動制御、NC工作機などの分野も手掛けた非常にエンジニアリングセンスの高 い方であり、また数学や電気電子工学に対する造詣も大変深い方だと認識を新たにしま した。またビデオの中で“歯型理論にはあまり手を付けたくなかったが電気回路理論の 応用に興味を持っていたので研究を進めた”とのあたりは、非常に親近感を感じました。 私は卒業研究では電通大の梶谷誠先生の研究室で歯車を加工するホブ盤の制御回路を作成しました。但し、ホブ盤は東工大石川研にあり実 験はそこで行っていました。その後就職していろいろありましたが、東工大石川研へ進学することになりました。石川二郎先生は中田先生 の研究室を引き継がれた方です。私は、修論では自動歯車精度測定機の研究を行い、測定機の歯形計算回路と制御回路を作成しました。 69

70.

参考文献 70 中田孝:工学解析(技術者のための数学手法),オーム社,1972、総頁572.