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March 20, 15
スライド概要
定年まで35年間あるIT企業に勤めていました。その後、大学教員を5年。定年になって、非常勤講師を少々と、ある標準化機関の顧問。そこも定年になって数年前にB-frontier研究所を立ち上げました。この名前で、IT関係の英語論文(経営学的視点のもの)をダウンロードし、その紹介と自分で考えた内容を取り交ぜて情報公開しています。幾つかの学会で学会発表なども。昔、ITバブル崩壊の直前、ダイヤモンド社からIT革命本「デジタル融合市場」を出版したこともあります。こんな経験が今に続く情報発信の原点です。
ネットワーク深化に向けた情報システム適応 - IoT,CPS等を活用する組織アーキテクチャー変革に向けて-
目次 Ⅰ.ネットワーク化が深化する世界 Ⅱ.情報システムに求められる特性 Ⅲ.組織アーキテクチャ変革の課題 Ⅳ.対応策についての考察 Ⅴ.これからの取組みと課題 2
Ⅰ.ネットワーク化が深化する世界 3
ピエール・レビィ フランスの 情報哲学者 network 更に変化 Ross Mason http://www.slideshare.net/AllThingsOpen/ the second digital revolution is here are you ready for hyper connectivity
デジタル産業革命の発展段階 Hardware + Electronics 1995 これまでの デジタル産業 2000 革命 Windows95登場(本格的デジタル革命スタート) Hardware + Electronics + Software 2005 Software + Network + Service これからのデジ タル産業革命 (2nd Digital Revolution) アップルが典型(iPod) グーグルが典型(G-Search) IoT,CPS等を活用して、ネットワーク化が深化し た新たなビジネス環境でのデジタル産業革命 Hardware + Electronics + Software + Network + Service 方針は“良い製品から良い体験へ” 5
インテグレーテッド・インダストリーの世界 GEのインダストリアル・ インターネット ドイツのインダストリー4.0 6
Ⅱ.情報システムに求められる特性 7
現状認識 • 現在の情報システムがシームレスにカバーし ている範囲は案外狭い。 – 現在の工場の生産管理システムは、通常はサプ ライチェーンシステム、販売管理システムなどと 有機的に結合されていないかもしれない。 • また、経済の全プロセスが情報システムでカ バーされている段階ではない。 • しかし、ネットワーク化の深化は、全要素を ネットワークを介して包摂することを目標とす るハズ 8
問題認識 • 全要素の接続も課題ではあるが、物理的に接 続できたとしても、それと調和する組織変革 (組織アーキテクチャ変革)が達成できなけれ ば成功はおぼつかない! • 大抵の場合は全体像がよく見えない。 – GEの先進事例などは、自社内に閉じ、実施内容も 特定でき利益獲得も明瞭な特定例と推定される。 問題1)シビアに対象システム特性に合わせた効 率化、生産性などに配慮する取組みが必要 問題2)システム運用と共存/整合する組織課題へ の取組みが必要 9
問題1に 絡んで) 対象システムへの取組み姿勢が異 なる(IoTと比較した)CPSの特性 全ての物理コンポーネントにサイバー能力 多重・超巨大スケールでのネットワーク接続 多重で時間的空間的スケールでの複雑性 動的再編成/再構成あり 高度のオートメーション、制御ループが全て のスケールで閉じていなければならない。 操作の信頼性があり、幾つかのケースで認 証が必要 10
インダストリー4.0の底流にあるCPS思想 インダストリー4.0で重視しているスマートファクト リーは、個人の要求を満たすことを目標にし ている。 例え一個の商品でも利益を確保しながら製造を 可能なようにする。 Industryインダストリー4.0ではダイナミックなビジ ネス変化、エンジニアリング・プロセスの変化 に呼応し、最後の数分でも生産を変更できる ことを目標にしている。 供給の中断や失敗に柔軟に対応可能なようにす る。 11
CPSとIoTの複雑性の比較 物理世界 サイバーフィジカル 製造過程 デジタル世界 組込みシステム インターネット 機械的振舞い サービス指向 シミュレーション 多数といっ ても10, 100, ・・から セマンティックス オートメーション ユニーク識別子 “閉(Closed)” システム 制御可能またはシミュレーションで部分的予 測可能な範囲にフォーカス CPS → ? モノ 多数のケタ がべらぼうに 多い 10000 ~ “開(Open)” システム べらぼうに多いので、制御やシステ ム挙動予測ができない ← IOT http://www.ima-zlw-ifu.rwth-aachen.de/fileadmin/user_upload/INSTITUTSCLUSTER/Publikation_Medien/Vortraege/download//VDI_Agents_7May2014.pdf 12
情報システムに求められる特性 適応対象に最適な採用技術の選択 目的に技術活用を最適化できる柔軟性 システム運用と整合する組織課題への適切 な対応 IT活用効果の向上には“IT投資/情報システム”と“組 織変革”の最適組合せがより重要化 最適条件は各国、各企業の産業蓄積、IT活用度、研 究動向、ナショナルイノベーション特性などにも依存 技術選択 、組織構造の組合せ分析が必要! ⇒ 問題2)の比重が大きい 13
Ⅲ.組織アーキテクチャ変革の課題 14
問題2に 絡んで) 組織改革に関わるIT特性再考 • ITは現実の輪郭を次のように本質的に 変えてしまう。 ① 仕事をより抽象化する。 ② 知性をプログラム化する。 ③ 組織に蓄えられた記憶や組織自体の“見 える化”(一目瞭然化)を徹底化する。 • 新しいITの可能性をどう活かすかについ て新たな熟慮が必要である。 • その際、 Shoshana Zuboff HBS教授 1988年出版 a. あらゆる事柄を自動化する能力 b. 一目瞭然化する能力(ability to informate) というITの持つ二面性が有用な視点を提 供する。 http://www.grupobcc.com/speakers/speaker/shoshana_zuboff 15
組織改革に関わるIT特性再考(続) • あらゆる事を一目瞭然化するには、新しい労 働形態を支える新しい学習が必要 • 知識が一目瞭然化された組織では、有用な 学習が全社員に促進される構造へ。知識へ のアクセスは平等が前提 • 作業が意味を創り出し、それらを伝達しあうよ うになると、関心事は、彼らを雇っている組織 だけの関心事ではなくなる。 • 自分、仲間、組織の目的に対し各自がどう感 じるかは、彼らの参加意欲ややる気の高さに 関わってくる。 16
技術/対象選択と情報システムの課題 • IoT/CPS活用の新たなビジネスモデルは・・・・ モバイル、クラウドソーシング、超高度自動化、実 時間物流など • これらの実現には自動化・一目瞭然化加速の活 動が必須 • しかし、自律分散(“現場おまかせ文化”)の組織 文化では、既存抽象度での知識が暗黙知化して おり柵となることが多い。 • そのため、トップダウンで無理強いしても暗黙知 部を一目瞭然化する活動が壁となる課題あり 日本文化特性と密接に関係しており、難度の高い 利益相反問題が発生しうる。 17
日本的取組みが産業沈滞に繋がった 過去の例 – 半導体産業 • 半導体(DRAMの例)の複 雑化が増していくにつれ、 半導体チップ製造も社会と 類似の問題を発生 • 旧来組織内/組織間のコ ミュニケーション構造を部 分的変更で対処しようとす る傾向 • それが、加速したテクノロ ジー/市場スピードについて 行けなくなり競争から脱落 した主因と推定 18 中馬 宏之、“サイエンス型産業における国際競争力低下要因を探る:半導体産業の事例から”、RIETI Policy Discussion Paper Series 10-P-015、2010.
組織アーキテクチャ変革の課題 加速したテクノロジー、 市場の複雑化スピード への追随性確保 ビジネス戦略/技術戦略 上の考察の幅と深さの 拡大への対応力保有 刻々変化する振る舞い を全体システム中で的 確に一目瞭然化できる 立ち位置の確保 組織変革の一般則 ①階層構造のフラット化 ②遠く離れた階層間に も跨る太いバイパス 経路の設置 ③詳細プロセスに関す る一目瞭然化情報の 階層内・階層間共有 ④階層内情報の正確な 抽象化と階層間情報 の明確・迅速な遡及 を促進する仕組みの 設置 19
Ⅳ.対応策についての考察 20
日本の取組み策についての考察(案) 案1:日本が大得意な精 緻な一品作り能力を活用 する取組み重視 従来手法の踏襲 案2:標準化。それを基盤に プラットフォーム化は不可避 を前提にした取組み重視 従来手法を変更 IoT,CPS等の新技術活用が眼目 組織変更は現行手直しの範囲で IoT,CPS等新技術活用を機に一目瞭然化 組織は“目的指向のメタ組織”に抜本変更 自社内または特定グルー プ内の閉じたシステム指 向・・・クローズ型 オープンシステムを基本とし、 その中で標準化主導、または エコシステム盟主か有力パー トナーのポジション確保を指 向・・・オープン型 例:GEの現行システムに 類似か? 例:Intel,Cisco等に類似か? 21
複雑性増大時に直面する日本文化の特性 新たな視点と抽象レベルで、知識・ノウハウを再統合し、それら を再活用するための深化・蓄積が不可避のはずなのだが・・・・ • 知識・ノウハウ再統合には,既 存の知識・ノウハウの再利用性 を高める仕組みが不可欠 • 抜本改革には抽象レベルを階層 的に整理し,共通言語化(モ ジュール化)しなければならない。 • その仕組みがあれば,より多く の人々に“ 部分と全体”の関係 が一目瞭然化。当事者間の共有 知識の幅と深さが増大し、再利 用をより自律的で広範囲なもの にできるかも • 手段はIT活用による一目瞭然化 • この試みは,しばしば,知識・ノ ウハウ再利用性向上に寄与する 人々の希少性を減少させる。 クローズ型 上記を目標としつつも日本 型のキメ細やかさ維持も合 わせて目指す • この傾向は,豊富な知識・ノウハ ウを体化した人々に当てはまり がち(日本は暗黙知化(属人化) 部分がとりわけ多い)だが鋭意 実施 オープン型 新環境に適合する組織変 革を優先させ、その上で付 22 加価値追加を目指す
クローズ型:先進的事例もある - コマツのスマートコンストラクションほか KOMTRAX スマートコンストラクション ドローンで建設現 場の現況把握実施 GPSを用いて車両の稼働・ 保守管理などを自動化 ICTブルドーザー コマツがロボットベンチャー のZMPに出資。 建設機械 の無人化などで協業 世界初の無人ダンプト ラック運行システム 23
オープン型取組み時の切り口例 • IoT/CPS適応分野は千差万別 – 共通性が求められる分野も、スマート・シティ、スマー ト・ホスピタル、スマート・ファクトリーなど環境差が大 きい分野も • 環境差が大きい分野でも、エコシステム形成に 向けた主導権確保の取組みは既に進行中 • 多くはB2B2C的世界なので、(B2C世界と異なり) 総取り傾向のシステムが席巻する分野もあるが、 かなりの分野は多様な個別システムも登場か • 個別システムも、新時代の特定領域ニーズには 適確にフィットしなければならないが、このような ニーズ取得やシステム展開に、日本的取組みの 特徴がヒットする場面があるかも…. 24
補足情報1 半導体産業の失敗を繰り返さないために • 半導体産業の難しさは、①不確実性が大きな 状況下で巨大投資しなければ成らない“待ち 戦略”と、②市場変化のスピードが極めて速 いため“今が旬戦略”(Time-To-Market)が命、 という矛盾性だった。 • このような場面にはリアル・オプション戦略が有用! 戦略を構成する各オプションを独立性の高いモ ジュールとして設定しておく。 そうすることで、想定内だけでなく想定外の転用も可 能にする。 更に、多くの人が現実に起きている事象から多様な 文脈化ができるようにする。 中馬宏之、「半導体産業における日本勢の盛衰要因を探る:システムアーキテクチャの視点から」、一橋大学イノベーション研究センター(IIR)Working 25 Paper WP#14-10.ページ26.
補足情報2 生物学の世界に思いを致す • Survival of the Fittest (プラットフォームの盟主総 取り) • IoTで新プラットフォーム、新 ビジネスモデル、組織変革 の組合せ • Survival of the flattest (あるグループが一定シェ ア確保) • IoT/CPSで着実な技術 改革、対象分野のニー ズ・フィット、組織変革の 組合せ 26 Adam S. Lauring, Judith Frydman ,Raul Andino,”The role of mutational robustness in RNA virus evolution”,Nature Reviews Microbiology 11, 327–336 (2013)
Ⅴ.これからの取組みと課題 27
目的達成のための手法 • “目的/目標によって特徴づけられ、ネットワー クから構成される企業または個人からなる組 織”の重要性が増す。また目的達成のための 精緻度も高度化する。 • その際、①組織を一定枠に絞り込み教育訓練 の練度向上で高度目標達成狙いと、②目標達 成の旗を掲げそのためには組織をフラットにし て組織もオープンにする分化が発生する。 • どちらが優れていると言うのではなく、対象に 応じて共存しながら顧客ニーズ達成に対して 競争する関係になると思われる。 28
ITによって生産・流通・販売を統合化した新 たな「ものづくり」などに求められる特性例 生産システムの柔軟性を高めるため、“ 生産状 況の見える化”、“ 原価の見える化”が不可欠 2 つの“ 見える化”を活かすには,複雑なモ ジュール間の相互依存状況をモデル(理論)化 し、不具合発生原因を素早く追尾できる生産シ ステムが不可欠 生産システムの複雑性が増すに伴って難しくな るモデル探索・構築に対応するには,既存の知 識・ノウハウの再利用性を向上させる新たな抽 象レベルでの知識・ノウハウの整理が不可欠 29
組織変革の変革と推進課題例 ① メタ組織デザイナーは如何に部門を特定す るか、如何に仕事を分割し、仕事を割り当 てるか? ② 日本で根強い“購買交渉力権威”が、専門 知識・カリスマ性主導権威を上回って、分業 パターンをこれからも主導できるか? ③ 権威の性質が、システム統合メカニズムの 選択にどのような影響を与えるか?
補足情報3 Minsky のOrganization Principle “The Organization Principle: When a system evolves to become more complex, this always involves a compromise: if its parts become too separate, then the system’s abilities will be limited — but, if there are too many interconnections, then each change in one part will disrupt many others.” ・・・・・・・・・・・・・・(Minsky, 2006, p.104) マービン・ミンスキー Minsky, L. M. (2006). The Emotion Machine: Commonsense Thinking, Artificial Intelligence, and the Future of the Human Mind. New York: Simon & Schuster. 31
まとめ 1. 計画値と実現値のズレを迅速かつ正確に認 識し、直前まで生産システムの柔軟性を向上 させられる環境整備が必要である。 2. その環境はIoTの複雑性や生産管理の複雑 性に追随可能なメンテナビリティ保持が必要 がある。 3. このような適確な環境整備の上に日本流価 値を付加する挑戦を行うべきである。 4. 複雑な相互依存性が一層顕著になり、非常 にデリケートなシステムになる。関係者の労 働意欲や自己実現意欲との関係性も考慮し た柔軟な適応性を担保する必要がある。 32