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November 09, 21
スライド概要
最近のサービス提供基盤としての技術は急速に進歩している。特に、AIは単純な労働だけではなく、比較的高度な人的労働にも代わりうる能力を持ち出している。そこで、サービスへの影響が注目される。本稿はこのような問題に取組むため、AIを単に思考マシンとは見ずに、AIが習得すべき人間の能力と対比させる。人間が保有するインテリジェンスを、1)機械的インテリジェンス、2)分析的インテリジェンス、3)直感的インテリジェンス、4)共感的インテリジェンスとし、それぞれに対応するAI技術を設定する。次に、さまざまなサービス提供者をAIジョブに置き換える方法を検討する。そして、AIによる人間の代替、またはAIと人間の統合の形式を検討する。その中で発生した問題を検討するため、AIを組み込んだ(1)サービスマーケティング理論と(2)サービス戦略マップを論述する。ポイントは、a)顧客ニーズをさらに細分化できるパーソナライズ能力の強化と、b)顧客生涯価値の最適化を可能にする顧客との関係性の強化である。これらの結果から、サービス学がこのような傾向にどのように適応すべきかを検討する。
定年まで35年間あるIT企業に勤めていました。その後、大学教員を5年。定年になって、非常勤講師を少々と、ある標準化機関の顧問。そこも定年になって数年前にB-frontier研究所を立ち上げました。この名前で、IT関係の英語論文(経営学的視点のもの)をダウンロードし、その紹介と自分で考えた内容を取り交ぜて情報公開しています。幾つかの学会で学会発表なども。昔、ITバブル崩壊の直前、ダイヤモンド社からIT革命本「デジタル融合市場」を出版したこともあります。こんな経験が今に続く情報発信の原点です。
サービスのAIによる影響 分析 B-frontier研究所 高橋 浩
問題意識 • 従来、サービス関連の仕事はスキルの低い仕事 であっても文脈理解や自発的でインタラクティブ なコミュニケーションに大きく依存していることか ら、自動化は難しいのではないかと考えられてき た。 • しかし、AIの急激な進歩で、現在では、これは当 てはまらなくなっている。 • このようなAIによる人間労働の代替はサービス 基盤を大きく変革させる。 • そこで、AIによってサービスは今後どのような影 響を受けるのか探索する。
目次 1. 2. 3. 4. 5. 6. はじめに・・4つのインテリジェンス サービスのAIへの移行モデル AIによる人間の代替または統合 AIを組入れたサービス・マーケティング AIを組入れたサービス戦略マップ これからのサービス学への取組み
「サービスのAIによる影響分析」全体の図解 フェーズ1:①AIの把握方法 ②サービスのAIへの移行モデル 人間のインテリジェンスを4つに分類 それに対応して4つのAI技術を定義 【目的】AIを単に思考マシンとして見ずに 種々のタスクに対応する手段として把握 仕事(ジョブ)は一連のタスクで構成 4つのAIによるジョブの置換えは順序的 ⇒様々な人間ジョブのAIジョブへの移行 モデルを構築 ③AIによる人間の代替または統合 人間とAIの連携/統合は複数案あり(4種提示) タスクやサービスの性質、企業戦略他に依存 ⇒複数選択肢から何を選ぶべきかは新たな指 針が必要(マーケティング論、サービス戦略) フェーズ2:④サービスマーケティング 【微修正】4つのAI技術を3つに調整 3つのAIをマーケティング各段階に対応 AI組込みマーケティングのサイクル図 従来慣行と新たなAI組込み方式を比較 ⑤ サービス戦略マップ 【枠組み】標準化-パーソナライズ軸とトラ ンザクション‐リレーション軸を設定 4象限に対し技術と人間の役割の変化 を記述。象限間の移動の分析も ⑥ 今後について 基本的にサービスのAI化は推進が継続 (AI組込み課題やAI技術の制約はあるが) サービスのAIによる影響はサービスDX化の一環 今後について考察(サービス理論、人間労働)
フェーズ1: 1.はじめに・・4つのインテリジェンス AIは急激に社会に浸透 • 家庭、ヘルスケア、ホテル、レストラン向け サービスロボットの導入などは私たちの生 活の多くの部分を変えた。 • 仮想ボットなどは顧客サービスをセルフサー ビスに移行させた。 • ビックデータベースのAIアプリはポートフォ リオマネジャーなどを代替した。 • など・・ 1,2,3節は主に、Ming-Hui Huang and Roland T. Rust, Artificial Intelligence in Service, Journal of Service Research , 21 (2), 155-172 (2018)を参考に加筆、修正した。
そこで、AIによるサービスの変化を探索するため 基本的設問を設定する 1. AIは何時、どのように、またどの程度 サービスを提供するか? 2. AI使用により、サービス提供と従業員 の必要とするスキルはどのように変化す るか?
検討のための基本的枠組み • HI(ヒューマンインタフェース)とAIの統合が必 要である。 • その際、出発点として、AIが習得すべき人間 のインテリジェンスの分類が有用である。 • AIにとっての難易度の順に人間のインテリ ジェンスを下記のように分類する。 • A:機械的インテリジェンス • B:分析的インテリジェンス • C:直感的インテリジェンス • D:共感的インテリジェンス
サービスのAIへの移行条件 • サービス提供は従業員と顧客の双方が関与す る。 • サービス提供には様々なインテリジェンスが必 要だが、4つのインテリジェンスは順序的、並列 的両方の可能性がある。 • 一部のHI(直感的、共感的)はAIによる模倣がよ り困難なのでAIアプリ開発には時間がかかる(順 序的)。 • 一方、AIが特定インテリジェンスに達すると下位 AIは共存してサービス提供できるので、これらは 並列化できる。
A:機械的インテリジェンス • 日常的な繰り返しタスクを自動的に実行する。 • このインテリジェンスは人間にとって何度も実 行しているので、余分な思考を必要とせず、 多くの創造性も必要としない。 • 例:コールセンターのエージェント、小売店の 販売員、ウェイター/ウェイトレス、タクシーの 運転手など
機械的AI • 例:サービスロボット • 定義:「物理的タスクを実行し、指示を必要と せずに自律的に動作し、人の助けを借りずにコ ンピュータによって指示される機械」 • 特徴:①ルールベース、②サービス環境の物 理的、時間的変動を観察して対応、③先験的 な知識と継続的なセンサーからの情報認識 などに依存している。
B:分析的インテリジェンス • 問題解決のために情報を処理し、そこから学ぶ 能力がある。 • ベースは情報処理、論理的推論、数学的ス キルなどによる。 • 例:コンピュータ関連労働者、データサイエン ティスト、数学者、会計士、金融アナリスト、自 動車サービス技術者など
分析的AI • 例:集合知を生かすネットワーク化された機 械 • 定義:「主にアルゴリズムを使用してデータから 繰り返し学習し、プログラミングせずに洞察に満 ちた情報を発見する機械」 • 特徴:①意識、心、主観などはない、②複雑 でありながら体系的で一貫性がある、③顧客 からのビッグデータに基づく大量のパーソナ ライズに適している。
C:直感的インテリジェンス • 創造的に考え、新しい状況に効果的に適応す る能力がある。 • 経験に基づく思考による知恵と見做せる。 • 例:マーケティングマネジャー、経営コンサル タント、弁護士、医師、営業マネジャー、上級 旅行代理店など
直感的AI • “理解”が分析的AIと区別する重要な要素と なる。 • 直感的AIには自己認識、感性、意識、HIの全 ての機能が含まれる可能性がある。 • 特徴:①経験から学ぶため、同じ間違いを2回 簡単には犯さない。 – システム例 • Google DeepMindのAlpha Go • IBM WatsonのJeopardy、など
D:共感的インテリジェンス • 他の人の感情を認識して理解し、適切に感情 的に反応し、他の人の感情に影響を与える能 力がある。 • スキルの例としては、コミュニケーション、リー ダーシップ、ワークライフバランス、チーム ワーク、カリスマ性など • 共感に熟練した専門家の例:政治家、交渉担 当者、精神科医、など
共感的AI • 感情を持っているかのように感じるか、少なく とも動作することができる機械 • サービスを提供するAIアプリはまだ少ない。 – システム例: • Replika – 消費者のコミュニケーションスタイルを模倣することで消費者 に感情的快適さを提供する(機械学習ベースのチャットボッ ト) • Affectiva、など – 感情分析に基づいてコマーシャルを見ている消費者を認識 する。 • 特徴:①物事を“体験”する能力がある。
4つのインテリジェンス インテリジェンス 共感的 直感的 分析的 機械的 最低限度で 学ぶか適応 する データに基 づいて体系 的に学び適 応する 理解に基づ いて直感的 に学び適応 する 経験に基づい て重点的に学 び適応する 時間
2.サービスのAIへの移行モデル AIの継続的進歩を最大限に活用するには・・ • 企業は、 1. 特定のインテリジェンスのAIを使用してサービ スを提供するかどうか? 2. 提供する際は、AIを何時から使用するか? を戦略的に決定する必要がある。 • それには、サービスのAIによる代替の移行モデ ル構築が期待される。
ジョブとタスク • ジョブとは標準職業分類に対応するようなも のである。 – 顧客サービス担当、営業担当、営業マネジャー、 など • ジョブは一連のタスクで構成される。 – 例:あるジョブはバックエンド操作(データサイエン ティストなど)とフロントエンド対応(最前線の従業 員など)のタスクで構成されている。⇒ タスク実行 には特定のスキルが必要である。 • 従って、タスクの性質は様々である。 – 例:顧客対応の各種サービスマネジャーは4つの インテリジェンス全てに関係する多様なタスクで 構成されている。 ⇒ 次頁表
様々なインテリジェンスタスクのスキル要件 ジョブ コールセンター 税理士 医師 精神科医 4つのインテリジェンス 顧客に共感する 顧客に共感する 患者に共感す (顧客を落ち着 (高額の税金を る(例:患者に 共感的インテリ かせる)。 支払わなければ 癌があることを ジェンス ならない顧客に 伝える)。 共感する)。 感情的支援と解 決策のために 患者に共感しコ ミュニケーション を取る。 顧客が不満を 言う理由を理解 直感的インテリ する(文脈理 ジェンス 解)。 高額税金の原 症状と診断を理 診断症状から 因を理解し税金 解する。 理解し患者のた を最小限に抑え めの解決策を 考え出す。 る方法を創造的 に見つける。 顧客の問題を 分析的インテリ 分析する。 ジェンス どの税法がどの 臨床意思決定 顧客の特定状 支援システムを 況に適用される 分析する。 かを把握する。 会話を分析する。 単純な顧客の 毎年および定期 心拍聴取、脈拍 会話のメモを残 す。 機械的インテリ 問題に対するス 的に納税申告 チェック、医療 ジェンス クリプトによる応 書を提出する。 記録読み取り/ 答など 書き込みなど 注:箱で囲んだ所はメイン・スキル要件の場所
サービスにとって重要なAIの2つの特性 • 自己学習:経験を積むことで自動的に自己改 善できる機械 – データから学習して予測を行うアルゴリズムベー スの機械学習 – 世界を観察し、感覚データに基づいて独自の内 部表現を生成する深層学習 • 接続性:AIの自己学習は個々の機械だけで なく、ネットワーク全体に拡大 – ネットワーク化されたAIは集合知という新たな現 象を惹起 • 例:IoTシステム、自動運転車(1台の間違い/トラブル から全ての自動運転車の学習が可能に)
AIは何時人間に取って代わるか? 予備的イメージアップ(Ⅰ) • 機械的タスクは均一的で反復的なので、AIに よって簡単かつ直接的に自動化できる可能 性がある。 • 分析サービスは体系的性質があるので、AIに よって実行できる均質な分析的タスクに分解 できる可能性がある。 • これらの傾向から、下記仮定が設定できる。 • 仮定1:サービスのAIによる置き換えは機械的 タスク、分析的タスク、直感的タスク、共感的 タスクの順に発生する。
AIは何時人間に取って代わるか? 予備的イメージアップ(Ⅱ) • AIによる人間の置き換えは下記のように進行 する。 – ATMは現金引き出し/預け入れの繰り返し処理に よって人間の出納係を代替する。 – レストランでのサービスロボットの使用は人間の ウェイター/ウェイトレスを代替する。 • これらの傾向から、下記仮定が設定できる。 • 仮定2:特定インテリジェンスのAIジョブによる 置き換えはAIタスクの置き換えに比例する。 (タスクの置き換えは従業員置き換えに直結する)
AIは何時人間に取って代わるか? 予備的イメージアップ(Ⅲ) • 人間の労働者が多い場合、代替の可能性は 高まる。 • これらの傾向から、下記仮定が設定できる。 • 仮定3:特定インテリジェンス内のAIジョブの 置き換え率はそのインテリジェンス内の人間労 働者の数に比例する。 仮定1,2,3に基づいて、4つのインテリジェンス に対応したAIジョブは次頁図のように人間労 働者を代替していく。
4つのAIインテリジェンスによる 様々なジョブのAIジョブへの移行モデル 人間向けサー ビスプロバイ ダーにとっての 相対的重要性 共感的 ステージ1 ステージ2 ステージ3 ステージ1~4を設定 ステージ4
ステージ1:AIが機械的ジョブを代替 • 機械的インテリジェンスの相対的重要性が低 下し、比較的練度の低い労働者が代替される。 • 労働者はスキルをアップグレードし、より高度 なインテリジェンスを使用する役割に移行する 必要がある。 • 例:マクドナルドのCreate Your Tasteタッチスクリーン 展開に連れ、最前線の労 働者は代替される。
ステージ2:AIが機械的ジョブ、分析的 ジョブを代替 • 機械的インテリジェンスが一層低下し、分析的イ ンテリジェンスの相対的重要性も低下する。 • AI分析スキルの比較優位性が登場し、分析はよ り高度のAIによって代替される可能性が増す。 • この段階では労働者は直感的スキルを強化す ることでAIとの分業が成立しやすい。 • 例:最近の自動車は構造が複雑になり、簡単に は修理できなくなっている。そのような場合、車 内のデータと情報に基づくAI分析は修理担当者 の意思決定を支援し車診断と修理を容易にする。
ステージ3:AIが機械的、分析的、直感的 ジョブを代替 • 機械的、分析的インテリジェンスの重要性は 低下し続け、直感的インテリジェンスの重要 性も低下し始める。 • AIは直感的インテリジェンスにおける人間の 優位性をも侵食し始める。 • 例:深層学習を使用した画像認識AIは皮膚ガ ンの分析において皮膚科医と同等あるいは それを上回る成果を上げている。
ステージ4:AIは機械的、分析的、直感的、 共感的ジョブを代替 • 全ての人間のジョブが減少するが、共感的イン テリジェンスは依然として重要なものとして残る。 • 共感的AIはフロントエンド、バックエンド両方の サービスの全ての側面で開発されている。 • 例1:チャットボットのReplikaは人と話すだけでな く、テキストメッセージのスタイルを学習して模倣 する(フロンドエンド)。 • 例2:Affectivaは人間の表情を測定し感情を分類 する。これらは顧客がどのように感じているかの 追跡にも使用できる(バックエンド)。
3. AIによる人間の代替または統合 AIによる人間の代替または統合 • AIはいずれは人間のように考え、感じること ができると思われるため、人間の全てのタス ク/ジョブを引き継ぐことができると思われる。 • 従って、人間と機械の最良のシナリオは、そ れらがシームレスに連携することだと思う。 • 連携/統合には複数の可能性がある。 • • • • a:デュアルサービスの提供 b:人間と機械の分業 c:人間に役立つ機械 d:機械で強化された人間
人間とAIの連携/統合例 a:デュアルサービスの提供 – 背景:一部の顧客は人間の対応/人間によるタッ チに割り増し料金を支払う可能性がある。 – この場合(人間によるサービスの質が落ちたとし ても)人間とAI両方のサービスが提供される。 b:人間と機械の分業 – 人間と機械が協力してサービスを提供する。 – 背景:人間はより全体論的方法で感じるとの認識が ある一方、AIは共感的AIなども含め論理的方法で感 じるとの認識(バイアス)があるため – この見方では、より良いAIは人間をより強力にするこ としかできない。
人間とAIの連携/統合例(続) c:人間に役立つ機械 – AIは人間がやりたがらないジョブ/タスクを行い、 人間はより良い生活の質を実現する。 – これは人間中心の見方であり、AIが人間より賢く なっても人間のニーズに答え続ける。 • ただ、人間は自分の人生を楽しむことだけに集中でき る存在なのかどうか? d:機械で強化された人間 – 人間は物理的または生物学的に機械と統合され、 AIは人間の技術的拡張になる。 – 例:麻痺した人間の脳をインプラントや脳モニター で機械と接続し、思考するだけで書いたり、動作 させたりできる世界、など
AIによるサービス代替の状況を把握するため 追加的設問を設定する 1. 企業は従業員をAIに置き換える必要が あるのかどうか? 2. 企業はどのように人間の労働をAIに置き 換えるべきか? 3. サービスの仕事はどうなるのか?
1.企業は従業員をAIに置き換える必要があるか? • 意思決定はジョブレベルではなくタスクレベル で行う必要がある。 • 即ち、企業はジョブのタスクポートフォリオを 検討し、人間労働者とAIの最適分業を行う必 要がある。 • その際の要因例は下記など • タスクの性質: – より低いインテリジェンスを必要とするタスクを最初に 置き換えるべきである。 – 背景:様々なインテリジェンスを必要とするタスクで構 成されるジョブは人間と機械の統合に向いているので
• サービスの性質: – 短期的にはトランザクション型サービスの置き換えが 向いているので、こちらから置き換えるべきである。 – 背景:リレーショナル型サービスは顧客の生涯価値を 高めるため、人間労働者の方がより向いている可能 性があるので • 企業の戦略: – コストリーダーシップ戦略を指向する企業はより多く AI製品を利用すると思われる。 – 一方、高品質リーダーシップ戦略を指向する企業は より人間労働を採用すると思われる。 – 但し、AIがより優れた機能を実現するに連れ、高品 質戦略でさえAI採用になると思われる。 幾つかの要因はあるが最終的には従業員をAIに置き換える ことは必要か
2.企業はどのように人間の労働をAIに置き換え るべきか?(複数案併記) • 市場を人間サービス、AIサービスのいずれが ① より優先するかのセグメントに分割する。 – 但し、消費者の好みの不均一性があるかどうか や、企業の比較優位性の可否がポイントになる。 • 人間と機械の両方でサービスを提供する。 ② – 但し、人間と機械のどちらが支配的役割を果たす か、および人間と機械の両方を含むサービスプロ セスをどれだけ合理化できるかの判断に依存す る。
• 機械に全てのサービスを提供させる。 ③ – 充分なコスト上の利点がある場合、充分な品質上 の利点がある場合、または両方の場合、完全自 動化が望ましいか?(例:Amazon Go)。 • 機械に労働力を強化させる。 ④ – これには、顧客または従業員の労働を強化する 可能性も含まれるかも ⑤ • 機械に集団的知性を働かせるための接続を 強化する。 – 従業員の知性をAIの集合知によって支援できる 場合があると思われる。 どのような案を選択すべきかの新たなマーケティング戦略 の指針の具体化が必要と思われる。(4節、5節)
3.サービスの仕事はどうなるのか? • 既に低インテリジェンスの仕事は機械に引き 継がれつつあり、今後一層進展する。 • 機械の一貫性と精度に比較して、人間は異 種コンテキストでの相互作用に優位性がある ので、既にサービス業にシフトの現象がある。 • この延長で、人間は一層直感的あるいは共 感的スキルにアップグレードする必要がある。 • 但し、AIは急激に進歩しているので、AIが更 に進展した場合、どのような取組みが必要か は、今後更に整理が必要である。 新たな視点からのサービス学の見直しが必要(6節)
フェーズ2: 4. AIを組入れたサービス・マーケティング 基本的枠組みを微調整する • マーケティング戦略へのAI組込みをガイドす るため複数AIを次のように微修正する。 • 機械的AI • 機械的AI • 直感的AI • 思考AI • 分析的AI • 共感的AI • 反復的マーケティング機能と活 動の自動化 • 意思決定に到達するための データ処理 • 感覚AI • 相互作用と人間の感情の分析 4節は主に、Ming-Hui Huang, Roland T. Rust, A strategic framework for artificial intelligence in marketing, Journal of the Academy of Marketing Science , 49 (1), 30-50(2021) を参考に加筆、修正した。
AI活用の先進的取組みが登場 • 機械的AI適応の例: – Amazon Prime Airはドローンを使用して配送を自 動化 – Dominoピザは自動運転車と配達ロボットを使用 してピザ配達を自動化(実験中) • 思考AI適応の例: – Macy On Callは自然言語処理を使用して店内の パーソナルアシスタントサービスを提供 • 感覚AI適応の例: – Affectivaは感情分析で消費者の感情を認識 – Replika(チャットボット)は消費者のコミュニケー ションを模倣して感情的快適さを提供
AI把握の仕方(再録) • AIを機械的タスク、思考、感情など、人間に固 有の機能をエミュレートする機械(機能)と捉 える。 • そして、複数AIインテリジェンスを想定するの で、(AIを単に思考マシンとして捉えるのでな く)AIを人間のように、様々なタスクに対して複 数インテリジェンスで対応するように構想する。 – AIにとっての難易度が機械的AI,思考AI、感覚AI の順であることを認識する。 – それと共に、それらが順序的、並列的の双方あり うることも考慮する。
複数AIインテリジェンスを支えるAI技術 • 機械的AI: – リモートセンシング、機械翻訳、分解アルゴリズム、 クラスタリング、次元の削減、など • 思考AI: – テキストマイニング、音声認識、顔認証、など • 感覚AI: – 感情分析、自然言語処理(NLP)、テキスト読上げ 技術、リカレントニューラルネットワーク(RNN)、 人間の音声を模倣するチャットボット、人間との 相互作用のための仮想エージェント、感情信号を 感知するカスタマイズされたロボット、など
複数AIインテリジェンスの割当て • 特定インテリジェンスへのAIインテリジェンスの 割当ては、それらを使用する目的に基づく。 – 税関の顔認証AI利用はテロリストの識別 – 広告主は広告に対する消費者の反応を特定するた めに顔認証AIを利用、など • 但し、“本当のAI”に取組めていない部分がある。 – 現在の慣行では思考AIを使用して感情データと双方 向の相互作用(チャットボットなど)を分析したりする。 – しかし、感情データは本来個人固有で、通常はマルチ モーダル(音声、ジェスチャー、言語、など) – 本質的にはコンテキストおよび個人固有のデータは 個人の感情状態をモデル化して組込む必要がある。 現在はこれらに向けての発展途上であることも考 慮する必要がある。
複数AIインテリジェントのメリット例 各AIインテリジェントは独自の利点を保有 • 機械的AI: – 標準化に有用である(一貫性を保持できるため) • 思考AI: – パーソナライズに有用である(データからパターン を認識できるため) • 感覚AI: – 関係性のパーソナライズが可能である(感情を認 識して応答できるため) これらを元に各AIインテリジェンスをマーケティングの各 段階にマッピングする。 ⇒ 次頁
マーケティング各段階との対応 • A:マーケティング調査段階: – 機械的AI:データ収集に適応できる。 – 思考AI:市場分析に適応できる。 – 感覚AI:顧客理解に適応できる。 • B:マーケティング戦略段階: – 機械的AI:セグメンテーションに適応できる。 – 非構造化データからの新しい顧客パターンの発見 – 思考AI:ターゲティングに適応できる。 – 最適なセグメンテーションの推奨 – 感覚AI:ポジショニングに適応できる。 – 対象ターゲットとのコミュニケーション • C:マーケティングアクション段階: – 機械的AI:標準化に適応できる。 – 例:自動支払い、配達追跡、など – 思考AI:パーソナライズに適応できる。 – 様々なレコメンデーションシステムの提案、など – 感覚AI:関係性のパーソナライズに適応できる。 – 例:ソーシャルロボット、会話型AIによる顧客対応、など
AIインテリジェンスとマーケティング段階 との関係性(一覧) マーケティングアクション •標準化(機械的AI) •パーソナライズ(思考AI) •関係化(感覚AI) マーケティング調査 •データ収集(機械的AI) •市場分析(思考AI) •顧客の理解(感覚AI) マーケティング戦略 •セグメンテーション(機械的AI) •ターゲティング(思考AI) •ポジショニング(感覚AI)
A:マーケティング調査段階 • データ収集のための機械的AI – 製品やサービスの使用/経験をIoTで可視化 – 車内センサーによる運転行動の追跡 – ヒートアップ、ビデオ監視などによる買物客の認識 • 市場分析のための思考AI – 例:GAPはファーストファッションのトレンドを予想 – 例:Amazonは顧客の将来注文(予測的履行)を予 想 • 顧客理解のための感覚AI – 例:Harley Davidsonは顧客関係DBに基づいて潜在的 顧客を特定 – 例:FordはAffectivaを利用してドライバーの感情状態 を把握
B:マーケティング戦略段階 • セグメンテーションのための機械的AI – 個々の顧客を1セグメントとする分析が可能 – ロングテールを複数セグメントに集約(分布の先頭か ら学習し、それをデータの少ないテールに転送で) • ターゲティングのための思考AI – 例:マーケティングマネジャーに潜在的なターゲッ トを推奨するためのターゲットセグメントを予想す る予測モデリング、などで • ポジショニングのための感覚AI – 例:Appleの「Be different」、McDonaldの「I’m love it」は顧客の心に語りかけ製品/サービスと顧客の 利益を橋渡し(ポジショニング)した例
C:マーケティングアクション段階 • 標準化のための機械的AI – 例:ブランディングを機械学習のようなデシジョンツ リーで自動化(ロゴ、他:安価に実施可能) – 自働支払い、パッケージング、転送、など多数 • パーソナライズのための思考AI – 例:ターゲット顧客の好みにより正確に対応する サービスの革新や設計、および市場予測 – 例:自然言語処理チャットボットなどでより多彩な 顧客や特異な問題(多文化の顧客)を処理 • 関係性のパーソナライズのための感覚AI – 例:顧客をサービスの相互作用に引き込むことも可能 – 例:顧客との会話のペース調整や会話をより自然で魅 力的にすることも可能
AI組込みによるマーケティングの変化 A B 従来の慣行 新しいAI組込みによる対応 データ収集 調査と実験は論理主導的。 インタビュー、パネル、販売 データなどはある程度デー タ駆動型 IoT,SNS,モバイルアプリ、センサーア プリ、ウェアラブルなどで自動化。機 械的AIアプローチは発生時リアルタ イムにデータ追跡・取集が可能 市場分析 依然として統計分析に大きく 依存。また、3rdパーティー のデータと分析結果を購入 することも多い。 テキスト、画像、音声、ビデオが利 用可能。質問が明確な場合は教師 あり学習、明確でない場合は教師な し学習が適応可能 顧客理解 顧客の定性的洞察はフォー カスグループに大きく依存 SNS投稿、顧客とのやりとり音声記 録、チャット、AIとの対話などを分析 セグメン テーション マーケティング担当者の直 感に依存。顧客は個別では なく集合体と見做される。 教師なし学習がパターン自体を発見 できる上、事実上無制限に市場をス ライスできる。 ターゲティ ング リソース、企業の競争優位 性、企業にとってのセグメン ト価値により主観的に判断 より一般的に個々の顧客レベルで 判断可能。セグメント内に不均一が あった場合の分割や追跡も容易 ポジショニ ング 基本的に人間が担当してい る。 現在はまだ従来と同様だが、AIとの コラボレーションも期待できる。
AI組込みによるマーケティングの変化(続) アクション段階は4P理論の枠組みで記述する。 従来の慣行 C 新しいAI組込みによる対応 製品 (Product) コンジョイント分析による製 機械的AIによる生産とサービスの自 品属性レベルの決定やテス 動化、思考AIによる研究開発の促 トマーケティングの使用など 進、感覚AIによるフィードバックなど 価格(Price) 小売店、Webサイトなどで 価格表示。セグメントに基 づいて価格を区別し価格交 渉。価格変更は簡単でない。 場所(Place) 定期的な配送と労働集約 的な物流。それを支える未 熟練労働者に依存。 機械的AIにより価格設定と変更を自 動化。思考AIにより価格のパーソナ ライズを実施。感覚AIを価格交渉に 活用。価格変更は簡単。 流通、配送などは殆ど機械的AIで 自動化。思考AIは製品の受け取り 場所などで顧客を支援できる。 プロモー プロモーションはコンテンツ プロモーションの一部はタスクの反 ション 作成などを中心に人間の仕 復性で機械的AIで自動化。感覚AIで (Promotion) 事。 顧客の感情的反応に基づくプロ モーション調整などの可能性も
5.AIを組入れたサービス戦略マップ AIによるサービス戦略の見直し • AI普及がサービス戦略を根本的に変革させる ことになった。 • AIは、 – 顧客の需要の不均一への対応(次頁Ⅳ象限)や、 – 潜在的な顧客生涯価値への木目細かい対応(次頁 Ⅰ象限) のような、従来不可能と思われていた機能の 提供を可能にする。 • 結果、企業はサービス戦略の再構成を求めら れることになった。 • これをサービス戦略マップとして次頁に示す。 5節は主に、Ming-Hui Huang, Roland T. Rust, Technology-driven service strategy, Journal of the Academy of Marketing Science, 45 (6), 906-924 (2017) を参考に加筆、修正した。
サービス戦略マップ リレーショナル型(関係性維持で長期視点対応可能) Ⅱ象限 Ⅰ象限 生涯価値を育成するため の顧客との関係性作り (BD/CRM関連技術) 生涯価値最適化のための 動的パーソナライズ化 + (BD/クラウド関連技術) (思考AI,感覚AI関連技術) パーソナライズ化 標準化 最大効率化のための 標準化 ⇒ 自動化 + (データ関連技術) (機械的AI関連技術) 最適効率化のための 静的パーソナライズ化 + (データ関連技術) (思考AI関連技術) Ⅳ象限 Ⅲ象限 トランザクション型 (サービス化への自然な流れ1) 機械的AI ≒ 自動化技術、機械学習、ロボット、など 思考AI ≒ ビックデータ分析、機械学習、深層学習、コグニティブ技術、など 感覚AI ≒ 感情分析技術、IoT、スマート技術、など ( サ ー ビ ス 化 へ の 自 然 な 流 れ 2 )
サービス戦略マップの解説 • 4つの象限はそれぞれの役割を持って今後も 存続する。 • 但し、AIを中心とする各種技術の進捗によっ て、より【サービス化への自然な流れ(1/2)】 の方向へは進む。 • 特に、機械化AIを中心とする技術の成熟に よって、人間はよりⅠ象限の方向へのシフト を余儀なくされる。 • しかし、Ⅰ象限対応のAI技術も進歩する。 • この状況を、関連技術、人間の役割の変化を 含めて次頁、次々頁に示す。
AI浸透と人間の役割の変化 Ⅱ象限 リレーショナル・標準 • 特徴:顧客ニーズは比較的均一だ が、潜在的顧客生涯価値が高いよ うな領域。顧客をセグメント化する コストが報われる。競合他社がいる ので、コアサービスとカスタマー サービスを如何に巧みに組み合わ せて提供するかが問われる領域 • 技術:顧客価値分析のバックエンド サービス、顧客対応のフロントサー ビスの最適組合せを実現できる CRM技術、など • 人間:人間が本領域向けの一部を こなすスキルに特化することは可 能。しかし、絶えずスキルのアップ デートや独自の分析能力開発が求 められる。 Ⅰ象限 リレーショナル・パーソナライズ • 特徴:顧客は受動的または能動的 にサービス生産プロセスに参加し、 自分のニーズに合わせたサービス を調整できる(≒SDL的ビュー) • 技術:通常、1対1の非標準的な相 互作用と親密な交換が必要になる。 – 動的パーソナライズ – 感覚AI,思考AI、など • 人間:機械と顧客をつなぎ、顧客の 潜在的要望をクローズアップする 役割を担う。 – 将来に渡って人間に有望な領 域だが、機械との連携はかなり 困難なプロセスになるかもしれ ない。
AI浸透と人間の役割の変化(続) Ⅲ象限 トランザクション・標準 Ⅳ象限 トランザクション・パーソナライズ • 特徴:顧客ニーズが均一化してお り、且つサービスもコモディティー 化している領域。競合他社も同様 のサービスを提供するので、如何 に効率的にサービスを提供するか がポイントで自動化必須の領域 • 特徴:顧客の需要はバラバラだが、 個人の好み収集にコストをかけて も見合わないリスクがあり、パーソ ナライズを効率的かつ安価に実現 するバランス確保が重要になる領 域 • 技術:ロボット、各種自動化技術を 含む機械化AI、など • 技術:ビッグデータとクラウドにより トランザクションをパーソナライズす る環境は改善されている。これに 思考AIなどの付加でバランス確保 を精緻化 • 人間:未熟練の人間労働力は退出 を余儀なくされる。人間の役割は 何を自動化すべきかなど自動化そ のもののデザインなどが残される が、問題発見能力が問われる高度 なスキル保有が必要条件になる。 • 人間:この領域にデータサイエン ティストは対応可能ではあるが、AI の進歩は人間データ分析の役割を AIに代替されるリスクがある。
象限間の移動は一般的 • 技術が象限の境界を設定しているので、技術が 変化すれば象限間移動は起きる。 • 技術の活用法の工夫、人間サービス労働のAI への置き換え具体化でも移動は起きる。 Ⅱ象限 リレーショナル型 Ⅰ象限 Ⅱ象限の顧客セグメントの粒度を高め、時間の経 過とともに学習を深めて、個々の異質な要求に適 合する新たなサービス開発が出来た場合など 標準化 生涯価値の低い顧客を価値の高 い顧客に変更できる策を講じた場 合など(自動化装置を付加機能 付き自動化装置にレベルアップし、 そこからのデータ活用などで) 顧客関係を促進する感覚AI技 術の活用などで、フロントエンド の顧客との相互作用を強化し、 潜在的生涯価値提供を強化で きた場合など パーソナライズ化 Ⅲ象限では無視していた個人の不均一な好み収集が 技術の進歩で安価に対応できるようになった場合など (標準サービスに個人的タッチ・サービス追加などで) Ⅲ象限 トランザクション型 Ⅳ象限
AIによる影響分析(中間まとめ) • AIを代表とする先端技術はサービス提供の強 力なバックボーンになっている。 • そして、技術が進歩すればサービス内容も変 化する状況が一般化している。 • 技術は多様で、人間の各種インテリジェンス (機械的、思考、感覚など)に対応する技術も 存在しており、且つ、異なるペースで進歩して いる。 • 従って、これらを前提とした、動的対応が行え る知見の整理と、マーケティング、サービス戦 略の基礎となる理論構築が求められる。
6.これからのサービス学への取組み 今後についてのまとめ方 • 人間インテリジェンスの分類から出発して、人 間の各種ジョブをAIジョブに移行する移行モ デルを提示した。 • このビジョンを元にAIによる人間の代替また は人間/AIの統合の可能性を述べた。 • これらを元にAIを組入れたサービスマーケ ティング、サービス戦略の概要を述べた。 • 今後については次の視点で検討する。 – Step1 マーケティングの各段階の枠組みで課題抽出 Step2–各AIインテリジェンスの制約事項抽出 Step3 – サービス学のこれからの検討の方向性を検討
Step1 マーケティング調査段階から • データ収集にAIを使用すると、競争と顧客双 方の透明性が高まり、① プライバシー問題が 中心的課題に浮上する。 • 市場分析にAIを使用すると、従来の理論主 導をデータ主導に変え、② 理論アプローチと データアプローチのどちらをどのように採用すべ きかの議論(課題)を生む。 • 顧客理解にAIを使用すると、我々がまだ真に 感情を理解する機械を持っていない時に、③ AIは本当は(ある程度でも)感情を理解でき るのかとの疑念(課題)を生む。
マーケティング戦略段階から • セグメンテーションにAIを使用すると、事実上 無制限の数(1個人1セグメント)に市場を細 分化できる。 • ターゲティングにAIを使用すると、このような 状況に対してもターゲットセグメントを推奨す ることが可能になる。 • しかし、ポジショニングはAIを使用するだけで は消費者の心に触れる創造的ポジショニングは 難しく、人間との協力が必要になる。 • ④ このような状況に対して総合的に如何に 対処すべきかが大きな課題になる。
マーケティングアクション段階から • 実際の行動は、4P戦略の4項目に沿って述 べる。 • 製品(Product):AIは革新的で創造的ではあ るが、⑤ 新製品/新サービスが顧客のニーズ や要望を真に満たしているのかどうかの判断は 簡単ではない(ニーズや要望の多くは明示的 ではなく、暗黙的だから)。 – 但し、製品/サービス・ライフサイクルの初期段階 ではAIがより大きな役割を果たす可能性があり、 後期段階では人間がより大きな役割を果たすか もしれない。
• 価格(Price):AIの普及により価格パーソナライ ズの一般化が予想され、AIベースの価格交渉プ ロセスは動的でリアルタイムになるとみられる。 – 但し、⑥ このような方法の適用範囲、価格設定の新 しいメカニズムは不明確である。 • 場所(Place):場所の決定の目標は顧客に利便 性のメリットを提供することにある。 – ところが、場所の自動化で人と人との接触が無くなる ため、顧客はブランドに関与しなくなる可能性がある。 ⑦ このような状況への対応は不明確である。 • プロモーション(Promotion):AIを使用することで、 ⑧ 顧客との強力な関係性の構築は質的に変化 する可能性がある。 – 顧客はより“感じる”にシフトするかもしれないが、こ のような状況への対応は不明確である。
Step2 現在のAIの制約条件 • 機械的AIの制約: – 複数のデータソースから自律的にデータ収集して統 合する機能はあるが、a) データのコンテキストが失わ れることも多い。 – これは特に、b)感情データのモデリングで大きな問 題になる。 – また、c) データ収集を自動化する過程で顧客との親 密さが実現できなくなるリスクがある。 • 思考AIの制約: – 現在のAIは認知的推論ではなくマッピングによる。そ こで、この結果は「何故か?」の質問に答えられない。 – そこで、d) AIの結果は中立的あるいは透明的でない 可能性があり、推奨事項に偏りが生じているかもしれ ない。
現在のAIの制約条件(続) • 感覚AIの制約: – 感覚AIを使用する場面は増えているが、現在、人間 の感情を適切に認識し、行動し、反応できる真の感 情的機械は無い。 – そして、e) 感覚AIの代替として機械的AI、思考AIを 使用すると意図しない結果が生じる可能性がある。 – また、f) 顧客は感覚AIと対話する準備ができていな い。例えば、ボットと話ししていることに気が付くと多く の顧客は電話を切ることが知られている。
Step3 AIによるサービスへの影響 • AIの進展により、Ⅰ象限(リレーショナル型・パーソナ ライズ化)領域などで顧客へのより高度な対応が実現 可能になった。 • 将にこの領域はSDL論が主張してきたサービスの関係 性ベースのビューに最も合致する領域である。 • そして、この領域は長期的にAIが人間と一体になって 連携あるいは統合する領域である。 • そこで、サービス論の方向性と人間の側面を分けて、 1)AIのサービスへの浸透モデル 2)その元での人間が獲得すべきスキル、 3)また、人間が担う新たな役割 などにつき、指針の具体化が望まれる。 • このような方向に向けた、AIの動的進化を組込んだ新 たなサービス理論と人間のスキルアップデートの切り 口の一端を次頁、次々頁に示す。
サービス理論の視点から サービス・マーケティング サービス戦略マップ サービスサイエ ンス 機械的AI,思考AI,感覚AIなどを人間の多様なインテリジェンス に対応させた新たなサービス理論が必要か? サービスデザイ ン サービスデザイナーやサービスエンジニアの役割をAIが行うこ とになるので、AIがサービスデザインを分担する新たな理論が 必要か? サービスイノ ベーション 日常のインクリメンタルイノベーションはAIが行ってしまう。AIが イノベーションを動的に行ってしまうことに対応する新たな理論 が必要か?
人間労働の視点から AIジョブへの移行モデル 人間とAIの連携 からの選択 スキル開発 ・デザイン思考のAI時代に向けたアップデート ・コミュニケーション、リーダーシップ、チームワーク向けスキル 開発 ・何を自動化すべきかなどの問題発見能力、など 人材育成 ・上記のような必要スキル獲得に向けた人材の育成策、など ・企業が従業員をどのような環境ではどのような配転、教育、 人間視点から 他を行うべきかなどの基準の策定 のサービス戦略 ・このような流れを企業が実現しやすくするための社会変革の 実施(人材の流動性、なども)、など
暫定的結論 • AIの進歩によって、人間はますます機械に追い 込まれて行くことが予想される。 • しかし、サービスの基盤であるAI等の先端技術 の進歩を止める手立てはないし、サービス化へ の進化は顧客の要望にも沿っている。 • 現状は、この方向に向けて人間に期待される新 たなスキルの内容やそれを獲得する努力が報 われる確証はあまりない。 • これは企業側、従業員側にとって由々しき問題 と考えられる。 • 状況は急速に変化しているので、変化のペース を意識しながら、暫定改善に向けて、まずは進 みながら探索する取組みが必要と思われる。