ドイツの隠れたチャンピオンと日本の地域活性化 

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February 15, 18

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暫く前にドイツのハーマン・サイモンの著書「隠れたチャンピオン」が話題になっていた。ドイツ発Industrie4.0との関係性もあったかと思う。日本でも経産省が主催するGNT(グローバル・ニッチ・トップ)企業100選なども話題になった。当時、学会でも話題になっていたので、経産省官僚の細谷祐二氏の著書「グローバル・ニッチトップ企業論」なども参考にして、学会発表向けに資料をまとめてみた。
最近、改めて眺めてみると、当時と状況はあまり変わっていない印象も受ける。そこで、3年のものだが、殆ど修正せずに、アップしてみる。

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定年まで35年間あるIT企業に勤めていました。その後、大学教員を5年。定年になって、非常勤講師を少々と、ある標準化機関の顧問。そこも定年になって数年前にB-frontier研究所を立ち上げました。この名前で、IT関係の英語論文(経営学的視点のもの)をダウンロードし、その紹介と自分で考えた内容を取り交ぜて情報公開しています。幾つかの学会で学会発表なども。昔、ITバブル崩壊の直前、ダイヤモンド社からIT革命本「デジタル融合市場」を出版したこともあります。こんな経験が今に続く情報発信の原点です。

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各ページのテキスト
1.

中堅企業イノベーションによる地域活性化 -ドイツの“隠れたチャンピオン”を参考にして- B-frontier研究所 高橋 浩

2.

目次 I. ドイツの“隠れたチャンピオン”とは II. 中堅企業が注目される背景 III.分析の枠組みと事例分析 IV. ドイツに学ぶ V. まとめと今後の課題 2

3.

Ⅰ.ドイツの“隠れたチャンピオン”とは B to C市場 製造業B to B市場 非製造業B to B市場 観賞魚用飼料 世界最大級のリ チウム生産企業 商用食器洗浄システム 製造業界向け資源 犬のリード シガレット製造機 ホビー 高圧水洗浄剤 製造業、非製造業 双方向け部材 電子機器用特殊接着剤 風力発電システム 製造業界向け部材 医学理科学教材 非製造業界向けシステム 教育 ショッピングカート 空港手荷物カート 災害で被災した機 器、設備復旧サー ビス (ディザスターリカバ リー) サービス 製薬業界向け包装システム マイクロ電子機 器組立システム グミのお菓子 非製造業界向け製品 食品産業 製造業界向け各種システム 3

4.

ドイツの“隠れたチャンピオン”のプロフィール B to C市場 非製造業B to B市場 製造業B to B市場 ”隠れたチャンピオン”企業の平均売上高は約400億円、平均従業員数は2,000人位 4

5.

事例 Flexi 犬のリード マンフレッド・ボグダーン社長 5

6.

“隠れたチャンピオン”は過去10年間でドイツの輸出増加に大きく貢献 “隠れたチャンピオン”は最近10年で10%成長(10年間で2.5倍) 輸出額の変化(2000-2011) 輸出額/名目GDPの変化 50 1800 45 1600 40 1400 1200 30 10億USドル パーセント 35 25 20 1000 800 600 15 10 400 5 200 0 0 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 ドイツ:輸出/GDP*100 一人当たり輸出額(2011年)ドル 住民百万人当たり“隠れたチャ ンピオン”企業数 “隠れたチャンピオン”企業数 ドイツ:輸出(10億USドル) 日本:輸出/GDP*100 ドイツ 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 米国 日本 フランス 18,863 4,859 6,258 8,784 16 1.2 1.7 1.1 1316 372 215 69 日本:輸出(10億USドル) “隠れたチャンピオン”の定義 ①世界市場で業種上位3位 以内orその企業が位置して いる大陸でトップ ②売上高が50億ドル未満 ③一般にほとんど無名 6

7.

Ⅱ. 中堅企業が注目される背景 日本のイノベーションシステムの特性 • 大企業中心。研究開発に集中投資し、現在で も研究開発投資額では世界第2位を維持。し かし、変化のスピードに対応できていない。 • 原因は大企業の自前主義、本社至上主義等 による制約との指摘は以前から。それにも拘 わらず修正できない。 • 自前主義、本社至上主義などは日本の企業 文化に深く根差し簡単には修正できない。 7

8.

中堅・中小企業のビジネス環境 ・・・・そうこうしている間に、大量生産形態の下 請け企業は国内では成り立たない経済環境 に! • 中堅・中小企業は新たな変化への適応を余 儀なくされている! – 国内外ニッチ市場に迅速に対応可能な企業へ – 主体的な企業経営者の力量発揮へ • 従来とは異なる変化対応の切り口を発見し、 そこから新たな実践を試みるべき時期に来て いる! 8

9.

中堅企業が注目される理由 新ビジネス環境適応には次のような取組みが重要 1. 企業組織変化の理解・適応が根本的に重要、 2. “ユーザー対応”が変化に関する重要な源…*1 • 先進中堅企業は新組織構造を実現し、新ビジネ ス環境に適合した組織ルーチンを蓄積させてい る。 – 新たな顧客や受託先を探さねばならない。 – 自前で幅広い展開をして行かねばならない。 – 経営資源不足を補完するため、「外部連携」に積極的に 取組んで行かねばならない ・・・・日本型オープンイノベーションの可能性! *1:Bernd W. Wirtz, Oliver Schilke and Sebastian Ullrich, “Strategic Development of Business Models -Implications of the Web 2.0 for 9 Creating Value on the Internet-”, Long Range Planning 43 (2010) 272-290

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着眼点 • 日本の企業文化特性に相性が良く….新ニー ズに的確に対応可能な…. 組織構造へ • 既存組織ルーチンの延長線上にあり….多様な 可能性を促進できるような…. 組織ルーチンの蓄積へ • 中堅企業のイノベーション促進に向けての基 本パスとしての…. 日本型オープンイノベーションの推進へ 10

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Ⅲ. 分析の枠組みと事例分析 分析の枠組みA:組織境界の透過性 組織化を可視化する組織境界の“透過性”の概念 • 透過的垂直アーキテクチャ:企業のバリュー チェーンに沿って、市場に部分的に統合され 、部分的に開放されている状態。 M.G.Jacobides LSE教授 • 透過性の増大は、資源と能力の活用をより高め、 より良い市場ニーズとのマッチングを進め、効率 を改善できる。 • 部分的統合は、よりダイナミックで、オープンなイ ノベーションを促進させ戦略的機能を強化できる。 Michael G. Jacobides, Stephan Billinger, “Designing the Boundaries of the Firm: From “Make, Buy, or Ally” to the Dynamic Benefits 11 of Vertical Architecture”, Organization Science, Vol. 17, No. 2, March–April 2006, pp. 249–261

12.

垂直アーキテクチャの組織面への影響要因 能力、資源、取引コスト 垂直アーキテクチャ 全体的企業スコープ、垂直透過性の性質、垂直的部門間リンク 運用効率性と有効性 ① ベンチ マーク、モ ニタリン グ・インセ ンティブに よる効率 性 戦略能力とイノベーション ② 能力や資 源活用、差 別能力の マッチング を通した効 率性 ③ 部分統合 による能 力開発と システミッ ク適応を サポートす る行動 ④ オープンイ ノベーショ ンを促進す るための市 場の部分 利用 成長と資源配分の動力学 ⑤ 分割された 関係やイン センティブ 構造改善 のための 透明性 ⑥ 資源のよ り効果的 な活用と 最も有望 な部門へ の移動 垂直アーキテクチャの動的メリット 企業境界の組織内と戦略の論理 ミクロレベル のメリット マクロレベル のメリット M. G. Jacobides, S. Billinger, “Designing the Boundaries of the Firm: From “Make, Buy, or Ally” to the Dynamic Benefits of Vertical Architecture”, OrganizationScience, Vol. 17, No. 2, March–April 2006, pp. 249–261

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分析の枠組みB:「メタ組織デザイン」 定義:雇用関係に基づいた権威によっては拘 束されないが、目標によって特徴づけられた、 企業または個人のネットワークから構成され る組織 メタ組織拡大の機構 • 顧客はより多くの情報とより多くの選択肢を Harvard Business 保有 • これが顧客ニーズへの俊敏な対応を要請 • このビジネス環境では、内部コストがしばしば 外部取引コストを超過 • 自前の事業単位より、より応答性の良い外部 パートナーを探索 R. Gulati School 教授 Gulati R., Puranam P., Tushman M., “Meta-organization Design: Rethinking Design in Interorganizational and Community Contexts”, Strategic Management journal, 33, pp.571-586, 2012.

14.

メタ組織デザインの2軸による分類 意思決定の成層度 低い 低い成層度 非階層的な意思決定 組 織 境 界 の 透 過 性 低 い 高 い 閉鎖的な組織境界 (クローズド・メンバーシッ プ) 開放的な組織境界 (オープン・メンバーシップ) (A) クローズド・コミュニティ: 下請け企業、 技術的標準機関 (C) オープン・コミュニティ: Wikipedia, オープンソース 高い 高い成層度 階層的な意思決定 (B) 拡張エンタープライズ: サプライヤー・ネットワーク、 フランチャイズ・ネットワーク 検討の 方向性 (D) マネージド・エコシステム: Android OS Gulati R., Puranam P., Tushman M., “Meta-organization Design: Rethinking Design in Interorganizational and Community Contexts”, Strategic Management journal, 33, pp.571-586, 2012. 14

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着目領域特定のための図式 顧客(起点)イノベーション・レベル 低い オ ー (組 プ 織ン イ 境ノ 界ベ のー 透シ 過ョ 性ン ・ ) レ ベ ル 高い 一般(平均) 企業 ミ ク ロ ・ レ ベ ル マ ク ロ ・ レ ベ ル 事業部 先端(リード)・特殊 消費者 企業 消費者 日本の大企業の領域 自社 日本の中堅企業の領域 分析の枠組A エコシステム 分析の枠組B 事業部 自社 エコシステム 大企業領域 中堅企業領域 大企業と中堅企業連携領域 15

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分析の方法 • Step1:注目中堅企業(先端・特殊顧客ニー ズ(横軸)×マクロレベル(縦軸)×自社)の組 織ルーチン抽出 企業名 A社 B社 運用効率性と有効性 ① 戦略能力とイノベーション ② ③ ④ 成長と資源配分の動力学 ⑤ ⑥ 分析の枠組みA C社 • Step2:中堅企業を中心とするコミュニティも 評価 分析の枠組みB 16

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事例分析の企業リスト 日本の企業 企業名 業種 本社 売上高 創業 キャステム 精密部品成形加工 福山市 45億円/200名 1970 インテリジェントセンサーテクノロジー 味覚センサー 厚木市 未公開/26名 2002 日本ミクロコーティング(Mipox) 磁気記録デバイス研磨 立川市 38億円/未公開 1925 東成エレクトロビーム 電子ビーム/レーザー加工 瑞穂町 未公開/80名 1977 野呂英作 多色混合毛糸 一宮市 未公開 1973 日本分析工業 分取液体クロマトグラフィー 瑞穂町 未公開 1965 電子制御国際 コイル試験機 羽村市 未公開/42名 1968 メトロール 旋盤用刃先位置決め センサー 立川市 未公開/118名 1976 東洋ボディー 中小型トラック据付荷台 武蔵村山市 未公開/97名 1952 シギヤ精機製作所 円筒研削盤 福山市 72億円/277名 1911 タカコ 精密油圧ポンプ 京都精華町 単独65億円 /1248名(海外含) 1973 新日本テック 超精密金型製造 大阪鶴見区 未公開/75名 1954 細谷祐二「グローバル・ニッチトップ企業論」白桃書房(2014)で調査した「優れ たNT型企業」40社中、インタビュー記事が充実している12社 17

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Step.1 中堅企業組織ルーチンの抽出 運用効率性と有効性 キャステム 開発成功時は 安価納入を前提 に開発費半額顧 客負担受注も 鋳造による精密 部品成形加工 ⑥資源利 用向け部 門移動 米国企業特許に抵触しない独自製 法開発。しかし、米国企業圧力で大 口顧客失う。そこで、小ロット顧客を 急激に開拓し、加工対象拡大 利用サードの別 会社を作成。そ のデータも踏まえ てリードユーザーイノ ベーションを誘発 インテリジェント センサーテクノ ロジー 味覚センサー 日本ミクロ コーティング 磁気記録デバイス研磨 電子ビーム/レー ザー加工 成長と資源配分の動力学 ①インセンティ ②マッチング ③部分統 ④オープンイ ⑤インセンティ ブによる効 を通した効 合とシステミッ ノベーション促 ブ構造改 率性 率性 ク適応 進策 変策 企業名 東成エレクト ロビーム 戦略能力とイノベーション 米欧日民間航 空機用国際認 証プログラム Nadcapなど国際 資格逸早く取得 :step2評価会社 ニーズを持つメー カーと密接に関わ り逸早く製品開 発しトップ継続 中小企業同士 が対等の立場で もっと協力/連携 し合い集まれれ ば大きな力にな ると認識 世界最新加工 機1号機を導入。 その装置で完成 品メーカーの試作 品加工を請け負 うビジネスモデル 18

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運用効率性と有効性 戦略能力とイノベーション ①インセンティ ②マッチング ③部分統 ④オープンイ ⑤インセンティ ブによる効 を通した効 合とシステミッ ノベーション促 ブ構造改 率性 率性 ク適応 進策 変策 企業名 野呂英作 多色混合毛糸 代理店各国一 社。国内製造に 限定 実施義務無し試 験機(コイル試験) を不可欠検査に 電子制御 国際 コイル試験機 メトロール 旋盤用刃先位置決めセンサー 顧客要望に応じ た多品種生産を 垂直統合的に 新日本テッ ク 超精密金型製造 用途を絞った専 用機に特化 工作機械向に加 えB2Bインターネット 販売で世界へ トヨタとの共同開 発ノウハウを工作 機械分野他へ 伊藤園他大手ベ ンディングカーボディ を全量直接取引 工作機械中でも 円筒研削盤に特 化 円筒研削盤 精密油圧ポンプ 大手が手掛けな いニッチ市場目 指す 特許は存在せ ず模倣可能だが 市場小で旨味無 工作機械に標準 採用され世界トッ プシェアに 東洋ボ ディー 中小型トラック据付荷台 タカコ ⑥資源利 用向け部 門移動 手間コストが掛か り他企業が手を 出さない分野へ 日本分析 工業 分取液体クロマトグラフィー シギヤ精 機製作所 成長と資源配分の動力学 原理が公知で特許が取れないので 工法のノウハウと絶えざる工法改善で 対処 全てを投げ出して新型ポンフ開発゚に 没頭。現在、民生用で世界シェア75% 中小企業同士 の連携 大企業自身ニーズを提示できなくな り丸投げしてくるのに対応し、自立 19 的にソリューションを提案

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Step.2 企業名 (コミュニ ティ名) ゼネラルプ ロダクション (タカコ 主導) 中堅企業主導コミュニティの評価 運用効率性と有効性 戦略能力とイノベーショ ン 成長と資源配分の動 力学 ①インセン ティブによ る効率性 ③部分統 合とシステ ミック適応 ⑤インセン ティブ構造 改変策 ②マッチング を通した 効率性 ④オープンイ ノベーション 促進策 ⑥資源利 用向け部 門移動 コミュニティ 日本の特殊鋼 関連技術力は 高く、日系海 外進出企業や 現地地場企業 でも調達不可 との認識 共同受発注会 社 共通カタログ作 成、メディア広 報、展示会 共同出展な どに加え5社 間で株式持 ち合いまで 各社それぞれ のユーザーニーズ を持ち寄り共 同で新製品開 発。場合に よって量産は 共同出資新会 社設立で 広域強者連合 (地域と得意加 工サービスを異 にする5社から 構成) 中小企業経 営の共通課 題克服のた めの戦略的 協働関係樹 立 各社がニーズ を持ち寄って 新製品開発。 ニーズ持込み 企業は「主幹 企業」として責 任も負う 加工サービス提 供の企業集合 による新製品 開発 世界から高 度加工技術 を必要とする 部品量産を 受注。東大 阪地区中小 企業に発注 ファイブテッ クネット(東 成エレクト ロビーム 主導) 電子ビーム/レー ザー加工に、チ タン材、ダイヤモン ド材加工、超 精密切削加工、 セラミック材加工 を合体 大阪ケイ オス(新 日本テッ ク主導) 情報の発信の 仕方なども管 理し協働運用 人材育成に観 点を当てた経 営者密着のイ ンターンシップ事 業推進 (B)型 (A)型 (A→C)型 稲垣京輔,「中小製造業経営者にみる協働組織の形成と協働関係を構築する能力に関する研究」に基づく20

21.

評価 • 分析の枠組みAによる結果 – ①~⑥の多様な組織ルーチンが存在 – 先進企業においてはより高レベル(⑥側)の組織 ルーチンが積みあがっている。 • 分析の枠組みBによる結果 – 「メタ組織」で多様な形態が存在 – 先進事例は「下請け」脱却から多様なステータス にステップアップしている。 21

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中堅企業変化の経緯 外部変化 大手メーカー・グローバル化 下請け 独立化 市場向け情報発信 客観性のあるベンチマーク (標準認定、標準化等) 中堅企業の 自主的変化 全企業 顧客ニーズ探 索能力向上 外部連携 産産連携 産学連携 大企業が果たしていた ハブ機能を一部代替 統合力を確保 多くの企業 コミュニティ主導企業など 自前技術を生かした初期 製品開発。高評価の延長 での後続製品開発時にユー ザー企業などと連携強化 有力中堅企業経営者の イニシアティブで多様な組織 形態のコミュニティ(企業連 合orプラットフォーム)が登場 資源配分を変えている例も あるがオンリーワン技術依存で 分野はかなり限定されている 地域中小企業群受注、 活性化の受け皿などに なっている

23.

中堅企業の共通項 • 下請性が低く独立性が高い。 • 初期製品は自前開発が多いが、第二、 第三の製品開発では、海外を含む大 手ユーザーからのニーズで開発して いる傾向が認められる。 • ユーザーおよび関連企業との有機的 ネットワークを構築し、一層拡大させ ている。 • 内部資源不足を外部資源活用で補う 積極的取組みを実施している。 • 企業経営者自らが中心課題に関与し、 強いリーダーシップを発揮している。 下請け からの脱 却 外部連携 23

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Ⅳ. ドイツに学ぶ ドイツの社会・産業構造 社会構造 第1回産業競争力会議への坂根委員提出資料より • 地方主権:16州による連邦国家 • 高齢化、人口(生産年齢人口)減を補う移民 • EU加盟、ユーロ導入→国を開く 産業構造 • 日本と同じモノづくりの国(アメリカ・英国との比較して) • 企業倒産法の大改正:経済規模はアメリカの 1/5 程度だが、年間の 倒産件数・会社を整理する件数はアメリカの倍以上、日本の 5,6 倍 • 労働改革:単位労働コスト切り下げ • 企業の社会保障負担減、派遣法改正 第一次産業の復活 • 食糧自給率:60 年代:日独 70% 現在:独-88%、日-40% • 林業:1000 万 ha(日本と同じ)だが木材供給量は日本の3倍(再生エ ネに占めるバイオマス比率は約半分[熱利用]) 立法・行政構造 • 連邦参議院は16州の人口比の議席数の代表者による制度 • 全体最適を図る連邦議会と部分最適を吸い上げる連邦参議院のバ ランス 24

25.

ドイツ型経営の特徴 • 第一次世界大戦以降「経営共同体」の概念 が重視されている。 – 利害関係者によって提供される「諸力の共同体」 • 他国に比べ多様なステークホルダーの存在 を前提とする傾向が強い。 – 経営陣に労働者の席がある(しばしば50%)。 • 上場企業が少ない。 – ドイツ900社、日本3500社 – 人口100万人あたり9個(ドイツ)、22.6個(日本) – また、家族経営が多い。 25

26.

flexi バルクテハイデ 出典:日本の「稼ぐ力」創出のための問題意識 事務局資料 平成26年4月25日 経産省 26

28.

ドイツの“隠れたチャンピオン”の戦略 主戦略 市場を意識的に狭く定義⇒絞った市場をグローバル化 で拡大【“フォーカス&グローバル”戦略】 目標と成 成長指向の高い目標設定と積極経営⇒選択市場への 果 執拗な拘り【最近10年10%成長。10年間で2.5倍】 イノベー ション 技術と市場をバランス良く統合⇒大企業を上回るイノ ベーション実現【一人当たり特許保有大企業の5倍以 上。特許あたりコスト大企業の5分の1】 顧客との近さを技術以上に重視⇒顧客コンタクト従業 組織構成 員比率を拡大【従業員の25~50%顧客コンタクト対 戦略 応(大企業は平均して5~10%)】 従業員モ 独自職業訓練システムと有能な従業員⇒高い忠誠心 ラル と低い離職率【離職率年2.7%(ドイツ平均7.3%)】 Hermann Simon, “Hidden Champions (1): what German companies can teach you about innovation” 28

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“隠れたチャンピオン”の強さの源 (1) No.1になりうる市場・製品領域を絞り込む • 営業やサービスの業務効率化の面で、圧倒的な No.1シェアと品質を目指す。 • 市場をどう定義すればNo.1シェアを目指すこと ができるかをよくよく考え実践する。 • 顧客へ提供すべき価値は何で、それを提供する ためには何が必要かを徹底的に考察する。 – No.1シェアを目指すことで、さまざまな相乗効果が生 まれる(全社員の一体感など)。 – 顧客群と商品群が絞り込まれることで、全社員が目標 を共有しやすくなる。 – 海外の事業現場と経営者の情報伝達経路が短くなり、 29 意思決定のスピードやトップ営業の効率が増す。

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(2) ハードとサービスを組み合わせる • 物理的な製品(ハード)とサービスやソフトを 一体化して顧客の信頼を維持する。 • サービス自体の質の高さを強みにすることで、 顧客ニーズを製品開発に反映することができ、 それが後発企業の参入を許さないポイントと できる。 • ソフトウェアとしてのノウハウを製品に反映す ることで、他社の追随を困難にする。 30

31.

(3) 外部リソースの活用 • コアとなる技術は徹底して自社開発を行う一 方、その他の周辺技術については、積極的に 社外の技術を活用する。 • 顧客の課題を自社で解決できなければ、世 界のどこにでも出掛けて可能性を探る柔軟性 を持つ。 • 課題解決のためには技術を統合する能力こ そが重要だと認識し、社外から要素技術を導 入することに抵抗を持たない。 31

32.

ドイツの“隠れたチャンピオン”の強み ビジネスサービス重視! ドイツの “隠れたチャンピオン” 経済性 重 要 性 定刻の配送 アドバイス 顧客との密接さ サービス 配送の柔軟性 システム統合性 価格 流通 ベンダーとの協力 特許 通常の 多国籍企業 生産ネットワーク ボリューム市場 新製品 製品品質 製品専門化 顧客「ニッチ」市場 商品サービス ドイツ製 広告 競争パフォーマンス ハーマン・サイモン,「グローバルビジネスの隠れたチャンピオン企業」より32

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Ⅴ. まとめと今後の課題 ドイツの“隠れたチャンピオン”との比較 焦点の絞り込み 外部連携 挑戦的 目標と リーダー シップ 競争優位 下請け からの脱 却 グローバル指向 日本の中堅企業 高度に有能な従業員 顧客への近さ 日本とドイツの相違は“新しいニーズ収集とソリューション提供の段階の相違”か? 1. 2. 3. トップクラスの顧客から「課題、難題」が潜在ニーズとして持ち込まれる。 世界トップ顧客の潜在ニーズを「嗅ぎ取り」、他のトップ企業で確認。挑戦目標を立てる。 トップクラス企業へのソリューション/新技術を提案。次世代製品に搭載し世界に訴求。世 界デファクトスタンダードに影響力を行使する(標準化への発信力)。 日本は1.レベルの段階か? 33

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日本とドイツの大企業/中堅企業比較 ドイツ 自動車 大 企 業 中 堅 企 業 鉄鋼 化学 機械 カメラ ホビー 教育 製造業 フォルクスワーゲン BMW ティッセンクルップ BASF シーメンス ライカ Tetra, flexi,… 3B,… DELO,Uhlmann,KARCHER, GROHMANN,… Chemetall,… 資源 BELFOR,… サービス 各種システム ENERCON,Winterhalter, Wanzl,HAUNI,… 食品産業 HARIBO,… 日本 トヨタ ホンダ JFEスチール 三菱化学 日立製作所 ニコン 製造業である程度類似企業が存 在(ハイテック寄り、規模小) ? 住民百万人当たり“隠れ たチャンピオン”企業数 ドイツ 日本 16 1.7 34

35.

顧客特性の相違 日本の中堅企業の主要顧客 の8 割は製造業 ドイツでは対製造業の中堅企 業(製造業向けBtoB)は4 割。 対非製造業の中堅企業(業務 用BtoB)が4 割 非製造業とは、農林水産業、住 宅・建設業、輸送業、飲食業、 医療・研究機関など そうした企業に各業務に使用す る設備・機器などの最終製品を 提供している。 さらに、スポーツ用品、楽器、ア ウトドア用品など、消費者を顧 客とするBtoC 型の中堅企業も2 割弱存在する。 35

36.

提供価値(商品)特性の相違 日本の中堅企業で頻繁にみら れる業種として、製造装置、検 査装置、材料、部材がある。こ の4 種で日本では約7 割 ドイツの中堅企業について、4 種に該当する企業は約1割 ドイツの中堅企業は、モノよりもソフトウェアを強みとしている企業が多い(ソフト ウェアを起点として、機器とソフトを一体的に販売する)。 日本の中堅企業は、材料技術・加工技術を強みにしているものが多い。 一方、ドイツにおいては、機器にデータやノウハウを組み込んでいる点に強み を発揮している例が多い。 こうした企業は、ユーザーとのコミュニケーションを密にし、ノウハウを累積的に 蓄積し、他社の追随を許さないポジションに至っている。 36 吉村哲哉、「グローバルニッチトップ企業の企業戦略の特性の類型化の試み」、研究・技術計画学会秋季大会,2014

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日本とドイツの類似点と相違点 • 「転職経験なし」が、ドイツは56.4%。日本の54.2%とほ ぼ同じ。米国の27.3%よりもはるかに高く、日本と同じく 結果として「終身雇用」的傾向がある。 • 大企業と中小企業の企業構成比率はほぼ同じ – ドイツの中小企業数比率は99.6%。日本は99.7% – 被雇用者数は日独それぞれ61%、62.8% – 付加価値は日独それぞれ52%、49.3% • 但し、ドイツの中小企業は、日本でいう中堅企業に近く、 Mittelstand と言われる中堅企業が、ドイツ経済を支 えている。 • Mittelstand は、価格競争を行わず、製品の品質で勝負。 輸出や海外進出を積極的に行うことで、特化した市場で ビジネス規模を確保している。 • ドイツは、地方分権的であり、多極分散的に各地に個性 ある都市が育成。均衡ある発展が達成されている。 37

38.

中堅企業のグローバル化推進の方向性 挑戦的 目標と リーダー シップ 競争優位 戦略の重層化 と基盤整備 グローバル指向 焦点の絞り込み 高度に有能な従業員 下請け からの脱 却 コアのレベ ルアップ 顧客への近さ 外部連携 38

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中堅企業のイノベーション戦略のパス マーケット指向 グローバルな顧客ニーズを察 知し思い切って資源を集中 グローバル展開をわずかな差 の連続変革として実施 分析の枠組みB横軸 マクロレベル のメリット ミクロレベル のメリット 小 組織境界の透過性 大 分析の枠組みA,B縦軸 下請けだった企 業が独立を決意 →オンリーワン技術 指向で成就 技術指向 不足経営資源をカ バーするため産学連 携他に挑戦(オープンイノ ベーションを包含) 39

40.

日本型の特性を生かしたグローバル化推進 • ドイツの“隠れたチャンピオン”の経済成長・黒 字積み上げへの貢献は驚くほど大きい。 • “隠れたチャンピオン”の3大特性は、①直接 取引重視、②顧客重視、③環境適応能力重 視で、この戦略は驚異的効果を上げている。 • 日本の中堅企業にも潜在的能力はあるが、 文化的壁も立ちはだかる。 • 文化的特性を意識しつつ海外進出への圧倒 的貪欲さを身に付け、“隠れたチャンピオン” キャッチアップを目指すのが得策と思われる。 40

41.

中堅企業イノベーションによる地域活性化 日本の中小企業の多くは、隠れたグローバル・チャンピオン 企業になる社内的能力と技術力を持ちあわせている。 しかし、ドイツの隠れたチャンピオン企業のように、精力的、 迅速にグローバル化を進めないため、潜在力を十分に活か せていない。 部分的には日本文化に根ざしている。言語も含め、①外国に 対する消極性、②大企業への依存性、③起業家でなく従業 員として働くことを好む傾向、などに起因している。 海外進出への圧倒的貪欲さを身に付け、また業務用B to B 分野もターゲットに加え、本来得意とするビジネスサービス重 視路線に転換すれば、“隠れたチャンピオン”へのキャッチ アップは充分可能と考えられる。 41