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September 27, 17
スライド概要
最近のIT動向をSMACIT=S(Social), M(Mobile), A(Analytics), C(Cloud), I(IoT)などと言う言い方もある。A(Analytics)=ビッグデータ+AIとすれば、クラウド、モバイル、ソーシャル、ビッグデータ、AI、IoTを全部網羅する。こうした多様な技術の組合せによって、技術よりは寧ろ、ビジネスモデル成否に重点が移ってくると、垂直統合・水平分散どちらに向かうのか?という設問も登場して来るように思う。従来の経済学では過去の経済が垂直統合と水平分散の間を大きくゆっくりと循環しているとする見方があるからだ。しかし、今回に限ってはどうも一筋縄の方向性は登場して来ないのかもしれない。こうした観察が妥当だとすると、今話題のエコシステム、プラットフォーム、シェアリングエコノミー、クラウドソーシングなどの議論もよほど注意すべきだと思われる。この辺を掘り下げてみた。
定年まで35年間あるIT企業に勤めていました。その後、大学教員を5年。定年になって、非常勤講師を少々と、ある標準化機関の顧問。そこも定年になって数年前にB-frontier研究所を立ち上げました。この名前で、IT関係の英語論文(経営学的視点のもの)をダウンロードし、その紹介と自分で考えた内容を取り交ぜて情報公開しています。幾つかの学会で学会発表なども。昔、ITバブル崩壊の直前、ダイヤモンド社からIT革命本「デジタル融合市場」を出版したこともあります。こんな経験が今に続く情報発信の原点です。
エコシステム形成による企業境界の変動 -クラウドソーシングほかによるビジネスモデル変革の趨勢は? - B-frontier研究所 高橋 浩
最近のIT動向:クラウド、モバイル、ソーシャル、ビッグデータ、ほか 1. クラウド:使用料課金。運用代行。 ➡所有から利用へ。 ~シェアリングエコノミー 2. モバイル:“どこでもドア”。顧客ニーズへの対応 がスピーディー化 ➡時間・場所の制約克服へ。 3. ソーシャル:インターラクティブ・クチコミ。 ➡ユーザー主導型経済へ。 4. ビッグデータ:顧客を分析対象としたデータ分析 がマーティング手法として成立。 ➡データに基づくサービス/商品訴求や改善へ。 変化のトレンドは“統合”/“分散”が混在か? 2
問題意識 企業境界は垂直統合・水平分散どちらに向かうのか? 垂直統合 提供側の視点 • クラウドコンピューティ ング – 特定企業、国に集中化 • モバイルエコシステム 水平分散 利用側の視点 • ビッグデータの活用 – ユーザー側からは多 様なサービスを選択 可能(AI、IoTの支援) – 新エコシステム初期の • クラウドソーシング 不確実性克服には垂直 – ビッグデータ分析の 適用も視野に 統合ビジネスモデルを 好む傾向も 3
企業境界の過去からの流れ 見 え な い 見 え る アダム・スミス 見えざる手 最初の大競争時代 アルフレッド・チャンドラー (水平分散) (垂直統合) 大企業モデル(Ex.IBMのメインフレーム) 見える手 リチャード・ラングロワ 消えゆく手 オープンシステム・モデル (水平分散) (Ex.PC,UNIXベースのマルチベンダー・システム) ・クラウドコンピューティング(究極の垂直統合の可能性も) ・各種エコシステム(拮抗する複数モバイルエコシステム登場) ・ユーザー視点の拡大(クラウドソーシングなども) 再び見える手? (新たな垂直統合?) 4
アプローチ方法 垂直統合(インターネット企業観察から) 最新IT変 化に対 応できる 理論 Web2.0の曖昧性をカバーし ようとしている論文 Bernd W. Wirtz, Oliver Schilke and Sebastian Ullrich, “Strategic Development of Business Models -Implications of the Web 2.0 for Creating Value on the Internet-” + 上記と相 性の良い 企業境界 理論 従来の企業境界理論をカ バーし、且つ補完しようとし ている論文 Michael G. Jacobides, Stephan Billinger, “Designing the Boundaries of the Firm: From “Make, Buy, or Ally” to the Dynamic Benefits of Vertical Architecture” + ビジネスモデル論 エコシステム論 水平分散(ビッグデータ活用から) ビッグデータ活用をユーザー企 業自身が自前ソリューション実 現の機会到来と見做して + “クラウドソーシング” を例題として Kaggle, Wikipedia・・・サービス・プラットフォーマー Dunnhumby, Wikipedia・・・データ・マイニング企業 + クラウド(群衆)活用の特性 Boudreau, K. J.,Lakhani, K. R., “Using the Crowd as an Innovation Partner” 多数あるユーザー主 導型現象の一例 5
垂直統合に向けたアプローチ インターネットでの価値創造へのWeb2.0の影響 • Web 2.0の動向とその特性が価値創造と価 値獲得のルールを変更 • 確立していたインターネット・ビジネスモデ ルの有効性が大幅に見直しに • どのような影響を及ぼしているかを、4つの ビジネスモデルタイプで描写➡4Cモデル* *:Bernd W. Wirtz, Oliver Schilke and Sebastian Ullrich, “Strategic Development of Business Models Implications of the Web 2.0 for Creating Value on the Internet-”, Long Range Planning 43 (2010) 272-290 6
4Cモデル:インターネットビジネスモデルの類型 価値提案: コンテンツ 定義: 企業がオンラインコンテンツを収集、選択、分 配、および/または提示 コマース 定義: 企業がオンライン取引を開始、交渉、およ び/または実行 コンテキスト 定義: 企業がオンラインで入手可能な情報をソート、 および/または集約 コネクション 定義: 企業が物理および/または仮想ネットワーク・ インフラストラクチャを提供 多種類のコンテンツへの便利でユーザーフレン ドリーなアクセスを提供 収益: 主にオンライン広告(しかし購読/加入や従量課 金が増加) 価値提案: 買い手と売り手のために商品やサービスのコスト 効率の良い交換場所を提供 収益: 売上高、手数料 価値提案: インターネットユーザーに非透明性と複雑性を軽 減するための構造とナビゲーションを提供 収益: 主にオンライン広告 価値提案: インターネット上で情報交換するための前提条件 を提供 収益: オンライン広告、加入料金、時間課金、ボリューム 課金 7 Bernd W. Wirtz, Oliver Schilke and Sebastian Ullrich, “Strategic Development of Business Models -Implications of the Web 2.0 for Creating Value on the Internet-”, Long Range Planning 43 (2010) 272-290
インターネットでの価値創造へのWeb2.0の影響(続) • 成功しているビジネスモデルは頻繁に新たな課 題に対して調整➡一種の“高速環境変換能力” – 重要な環境変化に直面し、それに適合できないビジ ネスモデルを持った多くの企業は致命的 • Web 2.0で成功する具体的ビジネスモデルは、 従来のインターネット・ビジネスモデルとは大きく 異なる可能性があり、企業は競争力を維持する ため、既存のビジネスモデル見直しを余儀なくさ れる。 ・・・D. J. Teece, “Business models, business strategy and innovation”, 2010 8
ビジネスモデル種別とWeb 2.0要因の相関度 ビジネス・ ソーシャ モデル Web 2.0 要因 コンテンツ コマース コンテキスト コネクション インタラク ユーザー カスタマイ 価値付与 ゼーション/ ル・ネット ション志 ワーキング 向 個人化 ++ + ++ ++: 極めて強い相関; + ++ + +: 強い相関; ++ o o o o: 中間的相関; + + + + -: 弱い相関 Bernd W. Wirtz, Oliver Schilke and Sebastian Ullrich, “Strategic Development of Business Models -Implications of the Web 2.0 for Creating 9 Value on the Internet-”, Long Range Planning 43 (2010) 272-290
インターネット・ビッグ4でマッピング Web2.0要因 (インターネットの価値) ビジネス・モデル種別 コンテンツ ユーザー価 値付与 企業* サービス モバイル Apple コマース コンテキ スト インタラク ション志向 ソーシャル・ ネットワーキ ング Amazon Google ビッグ データ ソーシャ ル Facebook コネクショ ン カスタマイ ゼーション/ 個人化 クラウド GAFA *:Googleには世界の全ての情報があり、Appleはエレガントなデザインの王様であり、 社会生活があるところにFacebookがあり、全てのものを買うところにAmazonがある。・・・ 10 Eric Schmidt, “Identifies the Big Four of the Internet”, (Forbes 2011,6,1)
相互に入り組んでおり、明確なテリトリー分けは無い インフラ/共 通基盤寄り コネクション(ソーシャ ル・ネットワーキング) クラウド Amazon Apple コマース(インタラク ション志向) コンテンツ(ユーザー価値付与、ソーシャ ル・ネットワーキング) Google ビッグデータ モバイル ソーシャル Facebook コンテキスト ユーザー価 値主導寄り 11
複数エコシステムの共存と拮抗 (嘗ての Microsoft と異なり)1社独占でなく、常に 競合状態。 1. Apple はGoogle の Android OS搭載スマホ群 に包囲 2. Amazon の Kindle タブレットは真っ向から iPad と対決 3. SNSでは、Google+ が Facebook と競合 4. Facebook と Apple は、Microsoft を巻き込みな がら、サーチ世界でGoogle 独占に挑戦 5. Googleはeビジネス参入やAWS対抗サービス でAmazonに本格競合開始 12
相互に重複した世界でエコシステムを強化・再構成 インフラ/共 通基盤寄り コネクション(ソーシャ ル・ネットワーキング) クラウド 5 Apple Amazon + 出版・新聞 コマース(インタラク 業界 ション志向) コンテンツ(ユーザー価値付与、ソーシャ + ル・ネットワーキング) Google ビッグデータ モバイル 4 ソーシャル Facebook + Microsoft コンテキスト Android搭載 企業 ユーザー価 値主導寄り
複雑化がエコシステムを形成 エコシステムの定義:『競合したり補完したりする多 数企業が一緒に動作して、新市場を創造し、顧 客へ価値ある商品やサービスを提供すること』 1. エコシステムには、新組織、イノベーション、新 知識、選択、開発などが存在し、居住者が共同 で進化 2. エコシステムの生存率は、クリティカルマス、生 産性、イノベーション、学習と協力などに依存 Iansiti, M., Levien, R., “The Keystone Advantage: What the New Dynamics of Business Ecosystems 14 Mean for Strategy, Innovation, and Sustainability”, Harvard Business School Press, 2004.
モバイル・エコシステムに見る 市場構造変化の駆動力 1. 競争が、効率化をもたらす垂直統合の高度化/ 精緻化/差別化に繋がった。 2. エコシステムが重要な手がかりとなった。 効率性は、単に“オープン”か“クローズ”かや、垂直 統合とプラットフォームの協調度合いによってもたら されるのではない。 システミック・イノベーションは垂直統合を必要とする ことが多い!➡本質的イノベーションの多くは、シス テミックである。 顧客に価値ある選択肢を提供し、選択が優れたモデ ルを浮かび上がらせた(≒顧客との共創)。 Thomas Hazlett, David Teece, and Leonard Waverman,“Walled Garden Rivalry:The Creation of Mobile Network Ecosystems”, George Mason University Law and Economic Research Paper Series 11-50 (2011). 15
モバイル・エコシステムによる 既存企業へのインパクト 1. キャリア:主導権を新エコシステム主導者に 奪われた。 2. モバイル機器メーカー:エコシステムの性格に 依存して業態が変動した。 ⇒コア機器からサービス享受の手段へ 3. コンテンツ開発者:顧客への直結ルートを確 保した。但し、門戸開放で競争は激化 Thomas Hazlett, David Teece, and Leonard Waverman,“Walled Garden Rivalry:The Creation of Mobile Network Ecosystems”, George Mason University Law and Economic Research Paper Series 11-50 (2011). 16
新たなビジネス環境への適応・中間まとめ • 企業組織は技術変化の理解・向上に寄与でき るだけでなく、企業顧客もまた、ユーザー付加 価値や相互作用との相関拡大により、変化に 関する重要な情報源となる。 • 価値創造の手段として、“オープン・イノベー ション”の重要性が益々増大する。 • 企業は新しい構造を実現し、新ビジネス環境 に最も適合する組織ルーチンを確立する必要 がある。 Bernd W. Wirtz, Oliver Schilke and Sebastian Ullrich, “Strategic Development of Business Models -Implications of the Web 2.0 for Creating 17 Value on the Internet-”, Long Range Planning 43 (2010) 272-290
ビジネス環境変化に向けた 2方面からの検討 組織面からの検討 • ビジネス環境変化に適応できる組織構造と は何か? ユーザー面からの検討 • 新たなビジネス環境を使いこなしている例と してどんなものがあるか? 18
組織面からの検討 企業境界変動に向けた“透過性”の導入 • 透過的垂直アーキテクチャ:企業のバリュー チェーンに沿って、市場に部分的に統合され、 部分的に開放されている状態。 • 透過性の増大は、資源と能力の活用を より高め、より良い市場ニーズとのマッチング を進め、効率を改善する。 • 部分的統合は、よりダイナミックで、オープン なイノベーションを促進させ、バリューチェー ンの重要な部分とリンクすることで戦略的機 能を強化する。 M.G.Jacobides Michael G. Jacobides, Stephan Billinger, “Designing the Boundaries of the Firm: From “Make, Buy, or Ally” to the Dynamic Benefits 19 of Vertical Architecture”, OrganizationScience, Vol. 17, No. 2, March–April 2006, pp. 249–261
透過的垂直アーキテクチャは、行動を変 え、組織に3つの動的メリットを提供する 1. 自らの上流や補完者の下流能力とマッチさ せることで、自らの能力や資源使用を改善 することによるメリット 2. 戦略能力や企業スコープの関数としてイノ ベーション傾向を育成することによるメリット 3. 資源配分を誘導することによるメリット (どの部門がより多くの投資を必要とし、ど の部門が上手く管理されていたかについて の主観的評価を避けることで) 20
垂直アーキテクチャの組織面への影響要因 能力、資源、取引コスト 垂直アーキテクチャ 全体的企業スコープ、垂直透過性の性質、垂直的部門間リンク 運用効率性と有効性 ベンチ マーク、モ ニタリング、 インセン ティブによ る効率性 戦略能力とイノベーション 能力や資 源活用、差 別能力の マッチング を通した効 率性 部分統合 による能 力開発と システミッ クな適応 をサポート する行動 オープンイ ノベーショ ンを促進す るための市 場の部分 利用 成長と資源配分の動力学 分割された 関係やイン センティブ 構造を改 善するため の透明性 資源のよ り効果的 な活用と 最も有望 な部門へ の移動 垂直アーキテクチャの動的メリット 企業境界の組織内と戦略の論理 ミクロレベル のメリット マクロレベル のメリット M. G. Jacobides, S. Billinger, “Designing the Boundaries of the Firm: From “Make, Buy, or Ally” to the Dynamic Benefits of Vertical Architecture”, OrganizationScience, Vol. 17, No. 2, March–April 2006, pp. 249–261
垂直透過性の効用 • 付加価値プロセスにおける垂直透過性の管 理を通して、企業境界を巧みに選択したり変 更したりできる。 ➡企業は自らの見通しを改善するため 企業境界選択を利用できる。 • 透過性保有SBUは、透過性、移転価格システ ム、部門インセンティブを定義する垂直アー キテクチャを通じて互いに結束できる。 従来の企業境界の理論とは一致しない! 22
垂直透過性の活用 • 企業スコープ、企業インセンティブ、移転価格を 評価する。 • モジュール化との関係を調整する。 – 垂直統合は、製造プロセスの全てのステップを所有 しているという意味で、モジュール化を妨げない。 • SBUレベルと企業レベルの双方で明瞭な根拠と 垂直透過性構造を有するハイブリット構造も可 能である。 • 適切に設計された企業境界を、企業自らの業務、 戦略的かつ生産的能力、イノベーションの可能 性、資源配分プロセスの変更と改善の機会とす ることができる。 ⇄最適なエコシステム構築と強 い相関 23
ユーザー面からの検討 水平分散に向けたアプローチ “複雑化するシステム”の見直しと個 別経営課題深堀りの他の側面 • 個別経営課題の深耕手段のオープン化 ➡ ビッグデータ – 究極の価値は“データそのもの”へのパラダイム 転換 – これを廉価&効率的に分析可能な手法の登場 – ビッグデータによって“ソリューションの民主化”の 可能性 造語 ⇒水平分散型システム 24
事例:クラウドソーシングによるビッグデータ処理 Kaggleのデータ・サイエンティスト・ネットワーク • 2010年、A. Goldbloomがオーストラリアで設立。 (2011年、サンフランシスコに移転) • 約10万人以上のデータ・サイエンティスト を繋ぐ世界最大のコミュニティ • ビジネスの方法 – – – – – スポンサー企業がデータ提供と課題を設定 Kaggleが必要な支援を実施 適当な賞金を設定しアルゴリズムのコンペを実施 勝利チームにはスポンサー企業と対話する機会を付与 コンペ終了後、勝利チームはレポートを執筆 – スポンサー企業は、勝利チームのソリューションを独占 25 /オープンソース化/共有の何れかから選択
従来の課題設定例 • 人は映画をどのように評価するか・・賞金100万 ドル • 小売店の商品販売促進法 • 銀行の不正摘発支援法 • 自動車保険料の査定方法の改善・・・賞金1万ド ル • 注意深いドライバーと疲労ドライバーを区別する 方法・・・賞金たったの950ドル • 1年以内にどういう患者が入院するかを正確に 予測する方法・・賞金300万ドル “Kaggle’s Contests: Crunching Numbers for Fame and Glory”,Bloomberg Businessweek 26
英テスコの顧客分析を成功に導いた dunnhumbyがクラウドソーシング利用 • テスコが世界で最も進んだポイント カード活用戦略を推進 • dunnhumbyが推進役(データベース・ マーケティングのスペシャリスト集団。 従業員2000人。現在テスコの子会社) Dunnhumby設立者 • dunnhumbyの米国展開で、 dunnhamby USAは世界第5位の流通 企業Krogerと合弁会社設立。 • Krogerの業績向上に貢献 Dunnhumby USA dunnhumby Wikipedia Simon Hay27
クラウドソーシング利用のハイライト • クラウドソーシングは、“ビッグデータ”で対処の 問題に有効に対応する機会を提供 • 異なる技術に堪能な多数参加者に問題を公開 することで、非常に迅速に技術的フロンティアを 進展可能 • 例: dunnhumbyが実施したケースでは、短期間 に2000通りものアルゴリズム提案があり、データ マイニングのプロの会社に取っても有益であった。 • 但し、内部、外部双方の動機は異なることが多 いので、慎重に計画されていないと適正な結果 が得られないリスクがある。(次頁図参照) 28
スポンサー企業の基本能力も極めて重要 自前 ソリューション Dunnhumby の場合の事例 組織 問題 自前 専門知識 自前 ベンチマーク ソリューション 外部 パートナー ソリューション 特別の 専門知識 ベンチマーク ソリューション の改良 非公式 コンペ 招待 データ・サイ エンティスト ベンチマーク ソリューション の改良 公開 コンペ 全登録 データ・サイ エンティスト 最適 ソリューション データ KAGGLE 29
ビッグデータによる自前経営の可能性 • “データサイエンスはスキルというよりは新しいパラダイム” • マーケティング活動をマス対象では無く、個別顧客対応にするとの 明確な識見が必須 • マーケティング効果が似通った小規模グループに分類。自前でも 個別ビジネスそれぞれへアプローチ • これの実施には顧客の適切な分割が必須 – 性別や年齢だけでなく、商品の性質やキャンペーン時間帯、更にもっ と細かい様々な要素に対して • データから本当の価値を引き出すには分析ツールだけでは不十分 – 知りたいことに関係する必須のデータを収集 – 得られたデータが正しいか、また、目的とする価値を創造できそうかの 評価と判断が必要 • それにはデータから引き出す価値の理解が必須 – これはビジネスの目的そのもの – 従って、ビジネスモデル構築アプローチと裏腹の関係! 柴田里程、「データサイエンスはスキルではなく新しいパラダイムである」、 IT Leaders, 2013.6.12 30
まとめ:エコシステムの形成と企業境界 エコシステムの盟主 パートナー企業B パートナー企業A 垂直統合 型SBU 垂直統合 型SBU 垂直統合型 SBU 垂直統合 型SBU 垂直統合 型SBU 垂直統合型 SBU 垂直統合型 SBU 垂直統合 型SBU ユーザー企 業X ユーザー企 業Y 垂直統合 型SBU ユーザー企 業Z 31
エコシステムの形成と企業境界(続) • Web2.0以降のビジネス環境変化に対応した 勝組企業はシステミック・イノベーションを達 成 • その際、リスク回避のため垂直統合を進めた 企業もあるが、水平分散のままの企業も存在 • どちらも自前組織が透過型で、且つパート ナー企業群とエコシステムを形成 • また、ユーザーとのコラボレーションに向け ユーザー主導型の環境変化へ対応 32
企業境界の変動 • 垂直統合に進んだ部分と水平分散に進んだ部 分が同居 – 提供側が垂直統合、利用側が水平分散の類似傾向 – 垂直統合はスキル・スケール規模拡大の傾向も(例: スマホにおけるハード、ソフト、特許の全てを確保) • 各エコシステムによって上記の度合いは異なっ ており、差別化と優位性確保の要因にも • 但し、ユーザー主導型の拡大もあり、差別化/優 位性は絶えずレベルアップにさらされている。 – ビッグデータ活用のチャンス到来で“ソリューションの 民主化”拡大などにより 33
換言すれば 1)“ソリューションの民主化”が可能な環境に 2)但し、実施は主体者の力量次第。実質的には “ソリューションの民主化”で2極分化が発生 3)課題がより情報(データ)中心になり、対応が需 用側から出発するため、解の細分化が限りなく 進行 ➡ ソリューションのロングテール化 4)テール部分のソリューションは究極の差別化に なる場合もあるし、ニッチに埋没する場合も 5)目的の把握(ビジネス目標)と的確な範囲設定、 領域に合致した仮設設定の良否が生命線 34
注意事項と今後の課題 垂直統合(インターネット企業観察から) 米国 Facebook,Wi kipedia等の 詳細インタ ビュー他に基 づく(2010年) Web2.0の曖昧性をカバーし ようとしている論文 Bernd W. Wirtz, Oliver Schilke and Sebastian Ullrich, “Strategic Development of Business Models -Implications of the Web 2.0 for Creating Value on the Internet-” + 英国Fashion 社(アパレル大 手)等の事例 に基づく (2006年) 従来の企業境界理論をカ バーし、且つ補完しようとし ている論文 Michael G. Jacobides, Stephan Billinger, “Designing the Boundaries of the Firm: From “Make, Buy, or Ally” to the Dynamic Benefits of Vertical Architecture” + ビジネスモデル論 エコシステム論 水平分散(ビッグデータ活用から) ビッグデータ活用をユーザー企 業自身が自前ソリューション実 現の機会到来と見做して + “クラウド・ソーシング”を実 際の例として Kaggle, Wikipedia・・・サービス・プラットフォーマー Dunnhumby, Wikipedia・・・データ・マイニング企業 + クラウド(群衆)活用の特性 Boudreau, K. J.,Lakhani, K. R., “Using the Crowd as an Innovation Partner” Kaggle,Dunnhumby,最近 のクラウド・ビジネス状 況などに基づく(2013年) 日本の実態とはかなり違うのではないかとの懸念がある 35
日本企業の観察と今後への示唆 • 日本には、GAFAのような企業が無いだけでなく、 Kaggle, Dunnhumbyのような企業も、クラウドソー シングへの積極的取組みも顕著で無い。 • 最新IT環境への取り組みの遅れはITソリューショ ン提供側、利用側双方で見られるが、特に利用 側での遅延が目立つ。 • その結果、新規取り組みはまたもや既存SI企業 による支援のような形態から始まり、遅延はます ます広がる。➡一部先進ユーザーは登場してい るが、グローバル視点で実施されており、国内市 場の全般的底上げには繋がっていない。 • 結局、国内大手SI企業が身を挺して実施が期待 される、何時ものパターンが見え隠れする。 • このような状態では共倒れになる懸念があり、そ うならないための施策が必要である。 36