Kotlin Multiplatform の SKIE を導入したら iOS アプリのビルド時間を増やしてしまったので減らしたい話

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April 26, 24

スライド概要

potatotips #87 で発表したスライドです。
https://potatotips.connpass.com/event/313875/

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Android Engineer at Kyash Inc.

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関連スライド

各ページのテキスト
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Kotlin Multiplatform の SKIE を 導入したら iOS アプリのビルド時間を 増やしてしまったので減らしたい話 potatotips #87 ©2024 Kyash Inc. ©2024 Kyash Inc.

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自己紹介 自己紹介 ● 高田 晴彦 ● @tfandkusu ○ Qiita/Zenn/note/GitHub/X ● 株式会社Kyash ● Androidエンジニア ● スプラトゥーンが好き ©2024 Kyash Inc. 2

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Visaプリペイドカードアプリ「Kyash」 ©2024 Kyash Inc. 3

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Kyash の使用技術 SwiftUI / Jetpack Compose Kyash アプリは Kotlin Multiplatform で開発 ● 見た目(Swift UI/Jetpack Compose) 以外を Kotlin 言語で共通 Kotlin Multiplatform UI 操作 見た目情報 見た目制御 化 ● iOS/Android らしい UI/UX と iOS/Android 間の仕様差違を仕組みで 防ぐことを両立 ©2024 Kyash Inc. API、データ保存、メモリキャッシュ等 4

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Kyash の使用技術 SKIE (スカイ) も導入済み ● SKIE - Swift Kotlin Interface Enhancer ● Kotlin Foundation のメンバーである Touchlab 社が2023年9月にオープンソースで公開 したツール ● Kotlin Multiplatform で作られた Swift 向け API は Swift 言語が本来持つ記述力、安全 性を活かせない問題があるが SKIE を導入することで解決できる ©2024 Kyash Inc. 5

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Kyash の使用技術 SKIE の紹介記事 ● Kotlin Multiplatform は iOS エンジニアの開発者体験が良くないのではと思っていたが、 SKIE を使えば良いと思った。 - Qiita ○ Kotlin の sealed class は SKIE を使うと Swift では Enums with associated values になることを紹介 ● Kotlin Multiplatform の SKIE (スカイ)を導入して、iOS エンジニアの開発者体験を改善しま した。 - Kyash Product Blog ○ ©2024 Kyash Inc. Kyash アプリへの導入事例 6

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SKIE 導入のデメリット ©2024 Kyash Inc. 7

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SKIE 導入のデメリット ビルド時間が延びる 公式ガイド https://skie.touchlab.co/ の Known issues and limitations > Slow compilation というページで解説している SKIE はその性質上 Objective-C フレームワークを構築する Kotlin タスクにオーバーヘッドを追加 します。 ©2024 Kyash Inc. 8

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計測してみた ©2024 Kyash Inc. 9

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計測してみた アプリの規模 ● 397画面 ● 内102画面が Kotlin Multiplatform で開発されている ©2024 Kyash Inc. 10

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計測してみた ビルド時間計測方法 ● 10回フルビルドして平均と標準偏差を算出 ○ ビルド時間は多いときで10秒ほど前後するため ○ そのための Python スクリプトを作成 ■ ©2024 Kyash Inc. https://github.com/tfandkusu/build_time_script 11

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計測結果 ©2024 Kyash Inc. 12

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計測結果 ビルド時間が増えた 161.5 秒(±3.0) → 193.6 +32.1 ©2024 Kyash Inc. 秒(±3.2) 秒 13

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計測結果 3ヶ月経ち、画面や機能が増えた 193.6 秒(±3.2) →206.3 +12.7 ©2024 Kyash Inc. 秒(±4.2) 秒 14

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ビルド時間を減らしたい ©2024 Kyash Inc. 15

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ビルド時間を減らしたい 公式ページ Slow compilation の記述 コンパイル時間とバイナリサイズに悪影響を与えるため、エクスポートされるクラスの数を制限することを 強くお勧めします。これは SKIE がなくても当てはまりますが、SKIE ではエクスポートされた宣言のみ を処理するため、SKIE を使用すると効果がさらに顕著になります。 https://skie.touchlab.co/known-issues/slow-compilation ©2024 Kyash Inc. 16

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ビルド時間を減らしたい Swift 向けにエクスポートされているクラスを減らした 4000 →3612 個 個 -9.6% ● ● ちょうどマルチモジュール構成の見直しが行われ、その実行に取りかかっていたので、その副産物 数字は Objective-C の @interface の数 ○ 詳細はスライドの終わりに添付 ©2024 Kyash Inc. 17

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Swift 向けにエクスポートさ れているクラスを減らす方法 ©2024 Kyash Inc. 18

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Swift 向けにエクスポートされているクラスを減らす方法 非公開クラスに internal を付ける // インターフェースは公開 interface GetSomeUseCase { suspend operator fun invoke(): SomeData } // インスタンスは DI から取得するので実装クラスは非公開 internal class GetSome( private val someRepository: SomeRepository, ) : GetSomeUseCase { override suspend fun invoke(): SomeData { return someRepository.getSomeData() } } ©2024 Kyash Inc. 19

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Swift 向けにエクスポートされているクラスを減らす方法 マルチモジュール構成で Swift 向け ライブラリモジュールの build.gradle.kts で公開モジュー ルのみ export する kotlin { sourceSets { listOf( iosX64(), iosArm64(), iosSimulatorArm64() ).forEach { it.binaries.framework { baseName = "shared" // Swift 向けに公開 export(project(":feature:wallet")) export(project(":model")) } } commonMain.dependencies { api(project(":feature:wallet")) api(project(":model")) // Swift 向けに非公開 implementation(project(":data")) } } } ※ 実際の Kyash のコードでは無いです ©2024 Kyash Inc. 20

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Swift 向けにエクスポートされているクラスを減らす方法 エクスポートされているクラスを減らした結果 206.3 秒(±4.2) →198.5 -7.8 ©2024 Kyash Inc. 秒(±3.2) 秒 21

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まとめ まとめ ● SKIE を導入すると Kotlin で作られた Swift 向け API は、記述力が高く安全なものになる ● デメリットとして、iOS アプリのビルド時間は約400画面中100画面が Kotlin Multiplatform で作られているアプリで約30秒伸びる ● Swift 向けにエクスポートされているクラス数もビルド時間に関係するので、それが最小になるよ うに設計する ©2024 Kyash Inc. 22

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ありがとうございました。 付録は次のスライドです。 ©2024 Kyash Inc. 23

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付録 使用PC バージョン ビルド時間計測方法 MacBook Pro 16インチ Gradle 8.6 毎回 Xcode プロジェクトと 2021 Kotlin 1.9.10 Kotlin プロジェクトに対して Apple M1 Max SKIE 0.5.3 clean を行う。 64GB その後デバッグビルドの開始 から完了までの時間を記録す る。 ©2024 Kyash Inc. 24

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付録 Swift 向けに公開されているクラスを確認する Xcode で Kotlin Multiplatform によって作られたクラスで右クリック → Jump to Definition Objective-C のヘッダファイルを確認できる。 ©2024 Kyash Inc. 25

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謝辞 謝辞 このプレゼンテーションの準備にあたり、様々なアドバイスを頂いた Kyash 社モバイルチームの皆様に 心から感謝申し上げます。 ©2024 Kyash Inc. 26