国際協力におけるオープンソースソフトウェアの活用の可能性について(配布)PDF

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July 02, 24

スライド概要

第15回医療オープンソースソフトウェア協議会セミナーでJICA吉田友哉さんが発表されたオープンソースソフトウェアを通じた国際貢献活動についてのスライドです。代理投稿。

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医療分野でのオープンソースソフトウェア活動を行ってきました。 医療DXについてのセミナーなども開催してきており、研究者としての実績を積んできました。 医療分野のDXは難しいところもありますが、なるだけわかりやすくなるようにつとめています。 Slideshareから徐々に移行しつつあります。

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関連スライド

各ページのテキスト
1.

国際協⼒におけるオープンソースソフトウェアの 活⽤の可能性について 吉⽥ 友哉 ⼈間開発部次⻑兼保健第⼆グループ⻑ デジタルヘルスサブネットワーク⻑ [email protected]

2.

内容 • ⾃⼰紹介 • 途上国における保健分野の課題とデジタルヘルス • JICAの取り組む⺟⼦⼿帳の電⼦化について • 今後の展開予定(オープンソースソフトウェア、DPG化の構想)

3.

国際協力機構(JICA)とは? n日本の二国間援助を一元的に行う独立行政法人 【目的】 開発途上地域等の経済及び社会の開発もしくは復 興又は経済の安定に寄与することを通じて、国際 協力の促進並びに我が国及び国際経済社会の健全 な発展に寄与することを目的とする。 国内拠点 海外拠点 協⼒対象 15 96 13 9 カ所 ※海外拠点、国内拠点 2020年7⽉1⽇現在 カ所 ヵ国・ 地域

4.

ODA(政府開発援助)と JICAの業務 主にJICAが実施 研修員受⼊ 技術協⼒ ODA (政府開発 援助) ⼆国間 援助 有償資⾦協⼒ (円借款) 専⾨家派遣 機材供与 多国間 援助 技術協⼒専⾨家派遣・研修員受⼊ ボランティア派遣 有償資⾦協⼒(円借款) 無償資⾦協⼒ 移住者・⽇系⼈⽀援 市⺠参加協⼒・開発教育⽀援 ⺠間連携、中⼩企業海外展開⽀援 無償資⾦協⼒ ※ ※外交政策の遂⾏上の必要から 外務省が⾃ら実施するものを除 く。 国際緊急援助 その他の協⼒ 市⺠参加協⼒ ⺠間連携等 4

5.

⾃⼰紹介 • 1995年JICA⼊団:⻘年海外協⼒隊事 務局配属。 • 1999年JICAフィリピン事務所赴任: 保健医療分野担当。 • 2001年パキスタン「保健管理情報シ ステム整備計画調査」 • 2002年⽶国国際開発庁グローバルヘ ルス局出向 • 2006年ロンドン熱帯医学衛⽣学校留 学:「発展途上国の公衆衛⽣」プログ ラム修了。疫学と統計の基礎を学ぶ。

6.

⾃⼰紹介(続き) • 2011年ガーナ保健局専⾨家:地域保 健政策実施とDHIS2ベースの保健管理 情報システムの導⼊⽀援。 • 2019年⼈間開発部次⻑:デジタルヘ ルス担当。 • 2020年〜ブータン「政府のデジタル 技術及びデータ利活⽤能⼒強化プロ ジェクト」 • 2023年京都⼤学「社会変化メディカ ルデータサイエンティストトレーニ ングプログラム」履修。

7.

ガーナの経験

8.

病院での情報管理 病院における患者ファイル保管 の様子 • ファイル検索の困難 • 同一患者が複数ファイル • 集計の困難

9.

2009年DHIMS2導入決定 2012年4月に運用開始

10.

世界、そして開発途上国とは ※後発開発途上国と呼 ばれ、49カ国ある 世界の⼈⼝(約73億⼈)の約8割が開発途上国で暮らしている

11.

開発途上国における保健分野の課題 ⺟⼦の死亡数が多い ⼥性が妊娠や出産を原因として命を落としている数 5 歳を迎える前に亡くなっている⼦どもの数 上記が開発途上国で起こっている割合 約29.5万⼈ 約530万⼈ 99% 415 後発開発途上国 ⽇本 感染症だけでなく⾮感染症も増加 64 「三⼤感染症」と呼ばれるHIV/エイズ、結核および マラリアによる年間死亡数 約250万⼈ 多くの国で⾼齢化が進み、それに伴って⾮感染性 疾患(⽣活習慣病、がん等)が急増→多くの国 に財政負担の増⼤ 5 妊産婦死亡率 (出⽣10万件 あたり) 2 5歳未満死亡率 (出⽣1,000⼈ あたり)

12.

持続可能な開発⽬標(SDGs) ターゲット3.8 すべての⼈々に対する財政保障、質の⾼い基礎的なヘルスケ ア・サービスへのアクセス、および安全で効果的、かつ質が⾼ く安価な必須医薬品とワクチンのアクセス提供を含む、ユニ バーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)を達成する。 ※UHCとは、「すべての⼈が、⼗分な質の保健医療サービスを、必要に応じて、経済 的困難をこうむることなく受けられる」ようにすること。

13.

保健システムの現状・課題とデジタル化による課題解決の可能性 Ø デジタルヘルスの介⼊による保健システムの課題解決が強靭なUHC達成に貢献する可能性がある デジタルヘルスが介⼊できる可能性 AFFORDABILITY 負担可能な費⽤である QUALITY 満⾜のいく⺟⼦保健サービスを受けられる DEMAND 継続的な⺟⼦保健サービスを受けられる 医療施設・医療従事者にコンタクトできる SUPPLY 医療施設・医薬品/機材・⼈材の⼗分な供給がある ACCOUNTABILITY 保健システムに登録できる ターゲットのカバー⼈⼝ (出所)WHO digital health guideline 2019 を参考に作成 デジタルヘルスに よる介⼊可能性 ! " # $ % & ' & ( ) # * + ,

14.

⽇本で⽣まれた⺟⼦⼿帳 • 正式名称は「⺟⼦健康⼿帳」。⽇本では、1942年に妊産婦⼿帳(⺟ 親側のみの記録)誕⽣後、1948年に⺟⼦⼿帳、1966年に⺟⼦健 康⼿帳となった。 • 「⺟親⼿帳」「⼦供⼿帳」「予防接種カード」などが分かれて存在する国 は多数あるが、出産・分娩時を含め、⺟⼦⼿帳では、切れ⽬なく⺟と⼦ をケアできることが特徴。(CoC︓Continuum of Care) • ⽇本の⺟⼦保健指標改善に貢献(乳児死亡率では、1960年代に 当時の主要な先進国である⽶・英・仏等を逆転) <世界初の妊婦登録制度> 昭和17年(1942) 妊産婦手帳規定公布 妊産婦の心得、妊産婦・新生児の健康状態、 分娩記事、出産申告等で構成され、妊婦健診 が推奨。妊婦届と引き換えに公布。 手帳の保持により、米などの配増、出産用 脱脂綿、ミルク、砂糖などの育児食などの 特別配給を受けることができた 14

15.

世界中で使⽤される⺟⼦健康⼿帳 世界50ヵ国で導⼊(■)うち34か国以上でJICAの何らかの協⼒あり(■) 年間およそ2,000万冊発⾏ アフリカ ケニア、ニジェール、チュニジア、コートジボワール、セネガル、ブルキナファソ、ガボン、 ガーナ、マダガスカル、カメルーン、ベナン、ジブチ、ウガンダ、アンゴラ、ブルンジ、ザンビ ア、シェラレオネ、モザンビーク、ルワンダ 東・東南アジア・⼤洋州 ⽇本、韓国、中国、タイ、インドネシア、ラオス、東ティモール、カンボジア、ミャンマー、ベ トナム、フィリピン、モンゴル、バヌアツ、ミクロネシア 南アジア・中東 バングラデシュ、ブータン、インド、アフガニスタン、タジキスタン、パレスチナ、ネパール 欧⽶ オランダ、フランス、ロシア、ユタ州(⽶国)、ブラジル、ドミニカ共和国、ペルー、ホンジュ ラス、エルサルバドル、グアテマラ、メキシコ 免責)地図上の表記は図 示目的であり、いずれの 国と地域の法的地位もし くは国境線に関しJICA の立場を示すものではあ りません。 15

16.

JICAのこれまでの⺟⼦⼿帳開発への協⼒実績 Ø 約50ヵ国・地域で使⽤実績、34ヵ国で⽀援実績 Ø 年間約2,000万冊を配布。世界年間出⽣数1.4億⼈の14%が活⽤ Ø 利⽤国のニーズに合わせた開発・普及を⽀援し、各国の⺟⼦継続ケアの質向上及び⺟親のエンパワメントに貢献 インドネシア 東ティモール ガーナ 開 発 ⽀ 援 1 段 階 ベトナム (検討段階を含む) アンゴラ 南スーダン シエラレオネ ホンジュラス アフガニスタン モザンビーク タジキスタン 計画 アドボカシー, ドナー連携, プレテスト ⼀部地域 での試⾏ 研修, モニタリング評価 全国展開 マニュアル作成, 研修, 保健⼤⾂のコミット パレスチナ パレスチナ 難⺠向け タイ ケニア 制度化 研修システム, ⺠間との連携, 国家計画 改訂 電⼦化 電⼦版の 作成 ⼦化 能) 電 の ン機 能 ーショ 的機のコミュニケ ⾜ 補 能・ 丸紅による⺟親 機 ⺠間による⺟⼦⼿帳・⺟⼦ ⼀部ドネシアでの ン ︓イ (例 保健アプリ開発 セネガル 普及の段階 16

17.

JICAの⺟⼦⼿帳電⼦化事例 パレスチナ難⺠向けにUNRWA(国際連合パレスチナ難⺠救済事業機関)と共同で⺟⼦⼿帳の スマホアプリを開発・普及 電⼦化の背景 パレスチナ⾃治政府保健庁とJICA が紙版⺟⼦健康⼿帳を共同開発・ 導⼊ UNRWA保健センターでの電⼦カル テ導⼊ 協⼒内容 UNRWAとスマホアプリを開発 - UNRWAの電⼦カルテと連携 2017年4⽉より、ヨルダン国内の UNRWAパレスチナ難⺠キャンプで 普及 紙版⺟⼦健康⼿帳と ⼿帳アプリ 事業のポイント 医療の技術の向上 保健医療情報や記録を持ち運ぶこ とが可能 医療の質の向上 受診予約のリマインダーにより、定期 健診や予防接種率向上を期待 成果と今後の普及の課題 社会的アクセスの解消に貢献 - 難⺠キャンプ2万の登録ユーザー - すべてのUNRWA保健センターで普 及 Ø COVID-19関連の情報共有ツー ルとしても活⽤ 利⽤者の認知・理解・動機付けが 課題 Ø

18.

ヨルダンにおけるパレスチナ難⺠向け電⼦⺟⼦健康⼿帳アプリ トップページ メニュー画面 (上段)産後ケア・妊娠ケア (中段)家族計画 ・ ラボ (下段)受診・ヘルスチェック 子供の情報 受診リマインダー機能

19.

ネパールでの⺠間企業アプリ事例(Amakomaya社)(1) 妊婦・⺟親向け「Amakomaya App」は医療従事者とのコミュニケーション、医療記録の閲覧、健康教育教 材へのアクセスなど電⼦⺟⼦⼿帳としての機能を網羅している。 Name Name

20.

ネパールでの⺠間企業アプリ事例(Amakomaya社)(2) Amakomaya社が提供する⺟⼦⼿帳アプリは全体の中の⼀部であり、現地のヘルスシステム、診療プロセス の中に根差した“エコシステム”を⽬指している。 産前健診 分娩 産後健診 ⼦どものケア (予防接種、成⻑モニタリング等) EMR * 導⼊している施設のみ DHIS2 / HMIS * 導⼊している施設のみ 医療記録 (紙版) 医療施設 A ★Amakomaya Care 登録 ★Vial-to-Child 承認 医療記録⼊⼒ FCHVs B 登録 Amakomaya Pvt. Ltd. コールセンターからの定期的な電話 確認 C 妊婦・⺟親 予防接種記録の⼊⼒ ★Amakomaya App コールセンターへ質問(あれば) 登録 健康教育教材の閲覧(⾳声・映像含む) 医療記録の閲覧 ※受診した医療施設がAmakomaya Careを導⼊している場合のみ ANCカード(紙版) PNCカード 予防接種カード etc.

21.

⺟⼦継続ケア強化に資するデジタルソリューション 開発途上国において、⺟⼦継続ケア強化を⽬的に導⼊されているデジタルヘルスソリューションの事例を網羅 的に調査し、類型化を試みた。 介⼊の対象 妊婦・⺟親、 家族、 コミュニティ等 教育 コミュニケーション 教育コンテンツ配信 受診リマインダー・アラート 遠隔医療 多⾔語対応の教育コンテンツを ⾳声・動画・テキストメッセージで配信 SMSや⾳声で 受診を促すメッセージを配信 医療従事者との遠隔コミュニケーション、健診 予約・オンライン問診 記録 医療従事者 教育ツール 妊産婦指導⽀援ツール、e-learning 意思決定・診療⽀援システム 情報の統合管理 産前産後健診等の診療⽀援ツール 電⼦カルテや保健情報システム とのデータ連携 (診療ナビゲーション、記録ビジュアル化等) (出所) JICA調査団作成

22.

デジタルソリューションおよび電⼦化によって⽣み出される付加価値 アナログ⼿段・介⼊では実現できない、あるいは実現が⾮常に難しいと思われるデジタルソリューションならでは のメリット、付加価値は、下記のようなものが考えられる。 (出所) JICA調査団作成

23.

デジタルソリューション導⼊にかかる留意事項 現場のオペレーション、データ・システムの相互運⽤性、デジタルデバイド、脆弱層への価値提供など包括的な視点で保健 システム全体の中で機能し得るソリューションを検討する必要がある。 (出所) JICA調査団作成

24.

短期的に検討できるデジタルソリューションの⼀例 包括的なデジタルソリューションの導⼊に取り組むためには相応のリソースとコミットメントが求められるため多くの場合ハード ルが⾼い。⼀⽅で短期的に紙の⺟⼦⼿帳ともシナジーがあり効果が⾒込めるソリューションは、様々な環境下の国や地域 において広く導⼊可能性がある。 (出所) JICA調査団作成

25.

JICAの取り組みの⽅向性(⺟⼦継続ケア強化に関連するデジタルアーキテクチャ) 対象国のデジタルアーキテクチャおよび先⽅政府のガバナンス・リーダーシップ体制、政策・戦略、法規制、データセキュリティ 対策状況等を把握し、各層における対象国の現状を踏まえてJICAの役割を検討する。 (出所) JICA調査団作成

26.

JICAの取り組みの⽅向性(国際潮流を踏まえた標準化およびOSS・DPG化) これまでの取り組み成果、調査結果も踏まえつつ、⺟⼦保健分野を中⼼としたデジタル公共財(DPG)への貢献を⽬指す。 OSS・DPGとしての登録・活⽤ 3 標準的に活⽤すべき ソリューション群について実証 関連ガイドラインに沿った 電⼦⺟⼦⼿帳の標準化 2 1 § ⺟⼦保健に関わる家庭⽤保健記録WHOガイ ドライン等に沿った電⼦⺟⼦⼿帳(⺟⼦継続 ケアに関するデジタルソリューションの集合体 も 想定)の標準化 § オスロ⼤学がWHOとともにこれまで取り組んでき たDHIS2・トラッカーの標準化プロセスも参考 § 標準化に必要な各種⽂書をWHO、オスロ⼤ 学、UNICEF 、その他関係機関と⼗分な調整 を⾏いながら整備 § 標準的に活⽤すべきと考えられるデジタルソ リューション群について、WHO等による各種 ガイドライン及びオープンソース・オープンデー タ・オープンコンテント・オープンAIシステムの 原則に沿ったソリューション群のプロトタイプ を作成し、対象国で実証。 § 実証の結果をフィードバックしたプロダク トについて、オープンソースとして、導⼊ を希望する国、あるいは⺠間企業が活 ⽤できる形で公開。 § Digital Public Goods Alliance (DGPA)が定める条件を満たしたも のを⽬指し、DPGAからDPG認定を受 けるための必要なプロセスを踏む。

27.

ありがとうございました︕