文字の見た目が記憶に及ぼす影響

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September 08, 20

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The effect of the appearance of letter on memory

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明治大学 総合数理学部 先端メディアサイエンス学科 中村聡史研究室

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各ページのテキスト
1.

⽂字の⾒た⽬が記憶に及ぼす影響 ⼭﨑郁未 澤佳達(明治⼤学3年) 伊藤理紗 濱野花莉 中村聡史(明治⼤学) 掛晃幸 ⽯丸築 (株式会社ワコム)

2.

はじめに 学習において、基本的に何を活⽤しているか︖ 教科書や⼿書きのノート、コンピュータ上の テキストファイルなどを利⽤して記憶することが⼀般的

3.

はじめに 使う媒体によって⽂字の種類は異なる 教科書︓明朝体、ゴシック体、教科書体 ノート︓⼿書き⽂字 テキストファイル︓PCのエディタで使⽤するフォント 様々なフォントや⼿書き⽂字が使われている

4.

はじめに 他にも・・・ ユニバーサルデザインフォント ディスレクシア(読み書き障害)の⼈のためのフォント 読みやすさの向上と誤読の防⽌

5.

はじめに ⼿書きの⽂字、ユニバーサルデザインのような フォントは⾒やすさや印象を重視している しかし・・・ 記憶のしやすさについては 明らかになっていないことが多い

6.

はじめに ⼿書きの⽂字、ユニバーサルデザインのような フォントは⾒やすさや印象を考慮している 学習において、どのような⽂字が 記憶に残りやすいのだろうか? しかし・・・ 記憶のしやすさについては 明らかになっていないことが多い

7.

はじめに 記憶に残りやすい⽂字が判明すれば ユーザーの⽂字を記憶に 残りやすい⽂字に変換 記憶を拡張するノートの実現

8.

平均⼿書きノート(⼜吉ら 2017) ユーザの⼿書き⽂字を⾃⾝の過去の⼿書き⽂字と 平均化することによって、⼿書きをより良いものとする⼿法を提案

9.

関連研究:過去の研究 我々は過去の研究で・・・ ⼿書き⽂字とフォントの両⽅を⽤いて架空の物事 の特徴を覚えてもらう特徴記憶実験を⾏った 読みにくい⽂字、⾃分の⼿書き⽂字に似ている ⽂字が覚えやすいことを明らかにした

10.

関連研究:過去の研究 ⼀⽅で・・・ ⼥性のスコアが⾼かった 実験で使⽤されている⼿書き⽂字は⼥性のみで 男性の⼿書き⽂字は使⽤していない 書き⼿の性別による差について考慮しておらず、 結果に偏りが⽣じた可能性がある

11.

関連研究:⼿書き⽂字の性差 ⼿書き⽂字には性差があり、筆跡で書き⼿の 性別をある程度正しく推測できる [Hamid 1996] 男性と⼥性でそれぞれ⽂字の特徴がある

12.

関連研究:⼿書き⽂字の性差 書き⼿の性別 ? 読み⼿の性別 読み⼿・書き⼿の性別が同じ場合と 違う場合とでは、⽂字の読みやすさも異なり、 記憶容易性も異なるのでは︖

13.

関連研究︓読みにくさと記憶の関係性 • ⽂字⾊を薄くしてフォントを読みにくくすると記憶に 残りやすい [Oppenheimer 2011] • 180度回転させ、読みにくくしたものを提⽰したほうが 記憶に残りやすい [Sungkhasttee 2011] 読みにくい⽂字は記憶しやすい →字形が均⼀なフォントより形状の違いが⼤きい ⼿書き⽂字の⽅が覚えやすい︖

14.

研究⽬的 フォントと男性の⼿書き⽂字、 ⼥性の⼿書き⽂字を⽐較 記憶を中⼼とした学習⽀援を⽬指し、 記憶容易性を向上させる⽂字形状を追求

15.

仮説 • フォントの⽂字を使⽤するより、⼿書き⽂字の⽅が 覚えやすい • 書き⼿の性差や字形の違いによって記憶容易性 に差が⽣じる フォントと⼿書き⽂字の特徴記憶実験を⾏う

16.

実験 特徴記憶実験 • 6つのテーマ (パン、キャラクター、本、 スポーツ、飲み物、建物) • 固有名詞3つ×7つの特徴 実験協⼒者 ⼤学⽣38⼈ (男性23⼈、⼥性15⼈)

17.

実験︓⽂字について フォント・⼿書き⽂字 ・MS明朝 あ ・MSゴシック あ

18.

実験︓⽂字について フォント・⼿書き⽂字 ・⼿書きA -⼥性の⼿書き⽂字 -丸⽂字 -1画ずつ離して書かれている ・⼿書きB -⼥性の⼿書き⽂字 -縦に⻑い -つなげて書かれている

19.

実験︓⽂字について フォント・⼿書き⽂字 ・⼿書きC -男性⽂字 -⾓ばっている -⽂字が正⽅形の形 ・⼿書きD -男性⽂字 -丸⽂字 -縦につぶれている

20.

実験︓⽂字について MS明朝 MSゴシック ⼿書きA ⼿書きB ⼿書きC ⼿書きD

21.

実験︓⼿順について 実験⼿順 1. ⼿書きやフォントを90秒間 ⾒て覚える 2. 約15分間の動画を⾒て 休憩 3. テストを⾏う 4. 1〜3を6テーマ分⾏う

22.

実験︓アンケート アンケートを実施 ・普段のノートの取り⽅ ・6種類の⼿書き⽂字とフォントの読みやすさ ・それぞれの⽂字が男性的であるか⼥性的であるか ・実験協⼒者本⼈の⽂字は4つの⼿書き⽂字に似ているか ・⼿書き⽂字を⾒る頻度 ・実験についての感想

23.

結果︓⽂字の種類ごと 100 90 80 70 60 50 40 30 20 10 0 明朝 ゴシック ⼿書きA • ⼿書きBのスコアが最も⾼い • 有意差は認められなかった ⼿書きB ⼿書きC ⼿書きD N = 34

24.

結果︓テーマごと * 100 90 80 70 60 50 40 30 20 10 0 パン キャラ 本 スポーツ 飲み物 建物 N = 34 *:p<0.05 → 本とスポーツの間に有意差があった

25.

結果︓テーマごと テストのテーマ間に有意差があった →普段の⽣活で関わることが多い テーマのスコアが⾼い 例えば・・・ • スポーツは関わらない⼈もいるため低くなった • 本は学校や⽇常⽣活で⾒る機会が多く⾼くなった

26.

結果︓テーマごと テーマによって覚えやすさが違ったため ⽂字の種類ごとに差が出なかったのでは︖ 偏りのあるテーマ(本・スポーツ)を 除外して⽂字の種類ごとに分析

27.

結果︓本・スポーツ除外 100 90 80 70 60 50 40 30 20 10 0 明朝 ゴシック ⼿書きA • ⼿書きBのスコアが最も⾼い • 有意差は認められなかった ⼿書きB ⼿書きC ⼿書きD N = 34

28.

結果︓本・スポーツ除外 有意差が⽣じなかった理由として考えられること • テスト問題の難易度がテーマによって異なった • 個⼈差が⼤きかった • テストカテゴリごとの分析 • アンケート結果とテスト結果の⽐較

29.

結果︓本・スポーツ除外 有意差が⽣じなかった理由として考えられること • テスト問題の難易度がテーマによって異なった 問題で項⽬数が多かったもの • 個⼈差が⼤きかった 「国または地域」「⾊」 「数値(値段、年代、⼈数)」 「抽象的に表現された場所」 • テストカテゴリごとの分析 • アンケート結果とテスト結果の⽐較

30.

分析︓テストカテゴリごと 国 正解率 0.66 ⾊ 0.84 数値 0.71 場所 0.78

31.

分析︓テストカテゴリごと 国 正解率 0.66 ⾊ 0.84 数値 0.71 場所 0.78 • スポーツのテストにおける問題 →地域や国を問う問題が10問中4問含まれていた • 本のテストにおける問題 →⾊や場所を問う問題が多く含まれていた

32.

分析︓テストカテゴリごと テストカテゴリにおいてもテーマと同様の傾向・・・︖ • 「⾊」は⽇常⽣活で関わることが多いため、 正解率が⾼かった • 「地域を含めた国」は⽇常⽣活で関わることは 少ないため、正解率が低かった

33.

アンケートとテスト結果の⽐較 読みやすい・読みにくいと回答した評価⼈数 MS明朝 MSゴシック ⼿書きA ⼿書きB ⼿書きC ⼿書きD 読みやすい 34 32 33 13 34 26 読みにくい →⼿書きBで読みにくいと答えた⼈数が多い 0 2 1 21 0 8

34.

アンケートとテスト結果の⽐較 読みやすい・読みにくいと回答した評価⼈数 MS明朝 MSゴシック ⼿書きA ⼿書きB ⼿書きC ⼿書きD 読みやすい 34 32 33 13 34 26 読みにくい 0 2 1 21 0 8 スコア平均 →⼿書きBで読みにくいと答えた⼈数が多い 読みやすい︓79.0,読みにくい︓81.4

35.

アンケートとテスト結果の⽐較 テーマ パン キャラ 本 スポーツ 飲み物 建物 平均点 スコア 6 2 9 7 8 7 6.5 似ている or 似ていない ○ × ○ × ○ × 似ている︓○ 似ていない︓× 平均点を超えている 4つのデータを使⽤

36.

アンケートとテスト結果の⽐較 テーマ パン キャラ 本 スポーツ 飲み物 建物 平均点 スコア 6 2 9 7 8 7 6.5 似ている or 似ていない ○ × ○ × ○ × 似ている︓○ 似ていない︓× 平均点を超えている 4つのデータを使⽤

37.

アンケートとテスト結果の⽐較 テーマ 本 スポーツ 飲み物 建物 スコア 9 7 8 7 似ている or 似ていない ○ × ○ × 似ている︓○ 似ていない︓×

38.

アンケートとテスト結果の⽐較 テーマ 本 スポーツ 飲み物 建物 スコア 9 7 8 7 似ている or 似ていない ○ × ○ × 似ている︓○ 似ていない︓× 似ていると回答 似ていないと回答

39.

アンケートとテスト結果の⽐較 テーマ 本 スポーツ 飲み物 建物 スコア 9 7 8 7 似ている or 似ていない ○ × ○ × 似ている︓○ 似ていない︓× 似ていると回答 +2 似ていないと回答

40.

アンケートとテスト結果の⽐較 テーマ 本 スポーツ 飲み物 建物 スコア 9 7 8 7 似ている or 似ていない ○ × ○ × 似ている︓○ 似ていない︓× 似ていると回答 +2 似ていないと回答 +2

41.

アンケートとテスト結果の⽐較 個数 似ていると回答、⾃⾝の平均点上回る 13 似ていないと回答、⾃⾝の平均点上回る 29 • 本⼈の筆跡と似ていない⽅が記憶に残りやすい • 過去の研究と異なる結果

42.

考察︓結果や分析からわかったこと • 読みにくいと回答した⽂字の時にスコアが⾼くなった →過去の研究と同様の結果 • 本⼈の筆跡と似ていない⼿書き⽂字の時に スコアが⾼くなった • MS明朝よりMSゴシックの⽅がスコアが⾼くなった →過去の研究と異なる結果

43.

考察︓結果や分析からわかったこと • 読みにくいと回答した⽂字の時にスコアが⾼くなった 似ていない⼿書き⽂字は,実験協⼒者 →過去の研究と同様の結果 にとって読みにくいと感じる⽂字だった︖ • 本⼈の筆跡と似ていない⼿書き⽂字の時に スコアが⾼くなった • MS明朝よりMSゴシックの⽅がスコアが⾼くなった →過去の研究と異なる結果 読みにくいと答える⼈数 MS明朝<MSゴシック

44.

考察︓男性的・⼥性的の評価 男性的か⼥性的かを回答してもらった⼈数 男性的 ⼥性的 MS明朝 MSゴシック ⼿書きA 15 21 1 19 13 33 ⼿書きB ⼿書きC 24 13 10 21 ⼿書きD 5 29 →MSゴシックと⼿書きBで男性的と答える⼈が多い

45.

考察 • ⼿書きBが最もスコアが⾼くなった • MSゴシックがMS明朝よりもスコアが⾼くなった • 読みにくい⽂字だった • 男性的な⽂字であった ⼿書きB

46.

考察︓男⼥でスコア⽐較 • 男⼥で記憶に残りやすい⽂字が異なっている • 実験協⼒者の男⼥の⼈数が揃っていない

47.

記憶タスク設計 設計時に注意しなければいけない点 • ⽇常⽣活における関わりの有無を考える • テーマ間でのテストカテゴリの難易度を均⼀にする

48.

記憶タスク設計 設計時に注意しなければいけない点 • ⽇常⽣活における関わりの有無を考える • テーマ間でのテストカテゴリの難易度を均⼀にする より精度の⾼い字形と記憶の関連についての 結果が得られるのではないか

49.

展望 • 実験協⼒者の⼈数を増やして実験を⾏う その際には男⼥の⼈数を揃える • 記憶タスク設計 ⽇常⽣活における関わりの有無を考える • 記憶に適切な字形を⾒つけることで効率の良い学習 ⽅法、記憶を拡張するノートの実現を⽬指す

50.

まとめ • 背景 記憶を中⼼とした学習を⽀援したい • ⽬的 フォントと⼿書き⽂字の⽐較により記憶容易性を 向上させる⽂字形状の追求 • 実験 フォント2種類,⼿書き⽂字4種類で⽐較を⾏った • 結果 男性的な⼿書き⽂字、読みにくい⽂字という条件が 揃うと記憶に残りやすい可能性が⽰唆された