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May 24, 22
スライド概要
過量服薬の再発予防に向けた臨床疫学研究 奥村泰之 一般財団法人 医療経済研究・社会保険福祉協会 医療経済研究機構 研究部 主任研究員 未遂者支援中部モデル会議 2017/4/17 (月) 16:00~ 川崎市高津区役所
発表の構成 ◼はじめに ◼過量服薬の再発リスク要因 2
過量服薬 (overdose) ◼身体あるいは精神に有害な影響を急性に 生み出す量の薬剤を使用すること World Health Organization (http://www.who.int/substance_abuse/terminology/who_lexicon/en/) 3
20~40歳代の自殺未遂による入院, 過量服薬が主要な手段 Nakanishi M, Endo K, Ando S: Int J Environ Res Public Health. 2017 Jan 21;14(1). pii: E104. 4
緊急入院トップ100傷病での特殊性, 最後の砦,救命救急センターで1泊2日 救急医療資源の高い消費 • 三次対応率 = 37.8% (1位) • 救急搬送率 = 74.1% (2位) 良好な経過 • 入院日数 = 2日 (100位) • 手術率 = 1.7% (91位) • 死亡率 = 0.3% (74位) Okumura Y, Shimizu S, Ishikawa KB, Matsuda S, Fushimi K, Ito H: BMJ Open 2(6): e001857, 2012. 5
全国の入院医療費,年77億円 女性 >= 50 16% 男性 12-19 男性 20-29 3% 8% 男性 30-39 8% 男性 40-49 女性 40-49 4% 男性 >= 50 11% 4% 女性 12-19 6% 女性 30-39 20% 女性 20-29 20% Okumura Y, Shimizu S, Ishikawa KB, Matsuda S, Fushimi K, Ito H: Gen Hosp Psychiatry 34 (6): 681-685, 2012. 6
科研費,若手 (B) 7
研究班の目的 発生予防 重症化予防 再発予防 8
6編の研究成果 [1] Okumura Y, Tachimori H, Matsumoto T, Nishi D: Exposure to psychotropic medications prior to overdose: A case-control study. Psychopharmacology 232 (16): 3101-3109, 2015. [2] Okumura Y, Shimizu S, Matsumoto T: Prevalence, prescribed quantities, and trajectory of multiple prescriber episodes for benzodiazepines: A 2-year cohort study. Drug and Alcohol Dependence 158: 118-125, 2016. [3] 引地和歌子, 奥村泰之, 松本俊彦, 谷藤隆信, 鈴木秀人, 竹島正, 福永龍繁: 過量服薬による致死性の高い精神科治療薬の同定: 東京都監察医務院事例と処方データを用いた症例対照 研究. 精神神経学雑誌 118: 3-13, 2016. [4] Ichikura K, Okumura Y (corresponding author), Takeuchi T: Associations of adverse clinical course and ingested substances among patients with delib erate drug-poisoning: a cohort study from an intensive care unit in Japan. PLOS ONE 11(8): e0161996, 2016. [5] Okumura Y, Sakata N, Takahashi K, Nishi D, Tachimori H: Epidemiology of overdose episodes from the period prior to hospitalization for drug poisoning until discharge in Japan: an exploratory descriptive study using a nationwide claims database. Journal of Epidemiology. in press. [6] Okumura Y, Nishi D: Risk of recurrent overdose associated with prescribing patterns of psychotropic medications after nonfatal overdose. Neuropsychiatric Disease and Treatment 13:653-665, 2017. 9
過量服薬の再発リスク要因 Okumura Y, Nishi D: Risk of recurrent overdose associated with prescribing patterns of psychotropic medications after nonfatal overdose. Neuropsychiatric Disease and Treatment 13:653-665, 2017. 10
自殺未遂者ガイドライン, 専門家による全例アセスメントを推奨 All people who have self-harmed should be offered an assessment of needs, which should be comprehensive and include evaluation of the social, psychological and motivational factors specific to the act of self-harm, current suicidal intent and hopelessness, as well as a full mental health and social needs assessment. People attending hospital after an episode of self-harm should all receive a biopsychosocial assessment, done in accordance with the NICE guideline, by a clinician with adequate skill and experience. [1] National Institute for Health and Clinical Excellence: Self-harm: the Short-term Physical and Psychological Management and Secondary Prevention of Self-harm in Primary and Secondary Care. 2004. [2] Royal College of Psychiatrists: Self-harm, Suicide and Risk: Helping People who Self-harm. 2010. 11
2008年,救命救急入院料に加算新設 2 注1に規定する保険医療機関において、自殺企図等による 重篤な患者であって、精神疾患を有する患者又はその家族等か らの情報等に基づいて、当該保険医療機関の精神保健及び精神 障害者福祉に関する法律第18条第1項に規定する精神保健指 定医(以下この表において「精神保健指定医」という。)が、 当該患者の精神疾患にかかわる診断治療等を行った場合は、当 該精神保健指定医による最初の診療時に限り、所定点数に 3,000点を加算する。 入院精神療法 (360点) より高く評価 12
2012年,算定要件の緩和 2 当該保険医療機関において、自殺企図等による重篤な患者 であって精神疾患を有するもの又はその家族等からの情報等に 基づいて、当該保険医療機関の精神保健及び精神障害者福祉に 関する法律第18条第1項に規定する精神保健指定医(以下こ の表において「精神保健指定医」という。)又は精神科の医師 が、当該患者の精神疾患にかかわる診断治療等を行った場合は、 当該精神保健指定医等による最初の診療時に限り、所定点数に 3,000点を加算する。 13
目的,過量服薬の再発リスク要因の検討 入院前 入院中 精神科治療歴 あり 精神科コンサル あり 精神科治療歴 なし 精神科コンサル なし 自宅退院後 向精神 薬の処 方パ ターン 再発あり 再発なし 14
データ源,ナショナルデータベース National Database of Health Insurance Claim Information and Specified Medical Checkups (NDB) レセプト データ レセプト 請求 年度 2012年度 2013年度 厚生労働省: 医療ビッグデータの利活用について (http://www.jsn.or.jp/news/150606_ch0.pdf) 提供 NDB レセプト件数 16億8千万 17億3千万 15
流れ図 不適格 (n = 6998) ・18歳以下: 1596 ・65歳以上: 5402 不適格 (n = 2462) ・初日精神病床: 1378 ・転院: 988 ・精神科転棟: 247 ・複合: 29 不適格 (n = 283) ・院内死亡: 122 ・2013.9以降退院: 165 急性薬物中毒 (T360~T509) で 2012.10~2013.9に初回入院 (n = 21663) 適格可能性 (n = 14665) 適格可能性 (n = 12023) 解析対象 (n = 11740) 精神科治療歴あり (n =6790) 精神科治療なし (n =4950) 16
主要アウトカム,再発までの日数* *退院後,初の過量服薬による入院または外来受診 退院同日/翌日は転院と再発を区分不 能であるため転院とみなす 観察打ち切り 死亡打ち切り 再発 再発 退院日 退院365日時 17
副次アウトカム,継続受診中断までの日数* *通院精神療法を28日以内ごとに算定 (猶予期間14日) 退院28日以内に精神科治療なし 観察打ち切り 中断 中断 退院日 退院28日時 退院365日時 18
時間固定共変量,入院中の精神科コンサル* *入院精神療法あるいは加算の算定 入院中にコンサルなし 入院中に2回コンサル 入院日 退院日 19
時間依存共変量,退院後の処方パターン* * 日ごとの精神科治療薬の用量 患者ID 退院後日数 ベンゾジア バルビツー 抗精神病薬 抗うつ薬 ゼピン ル 1 14 高用量 なし なし なし なし 1 28 高用量 なし なし 通常量 なし 1 42 高用量 なし なし 通常量 なし 1 56 通常量 なし なし 通常量 なし 1 70 通常量 なし なし 通常量 なし 365 なし なし なし 通常量 なし 気分安定薬 ・ ・ 1 20
その他の時間固定共変量 (入院前・入院中) ◼年齢区分 ◼性別 ◼入院前の慢性身体疾患の診断数 ◼入院前の過量服薬 ◼入院前の境界性パーソナリティ障害 ◼入院前の物質使用障害 ◼入院前の精神科治療薬の処方パターン ◼在院日数 21
入院中コンサル,再発リスク低下に寄与せず 精神科治療歴あり (n =6790) 28.7% 71.3% 15.3% 15.3% 精神科治療歴なし (n =4950) 23.6% 76.4% 6.5% 5.8% 22
ベンゾジアゼピン*,退院一定後も処方 *ジアゼパム換算用量,>30 mg≒4剤 精神科治療歴あり (n =6790) 精神科治療歴なし (n =4950) 100 100 > 30 mg 16-30 mg 1-15 mg 0 mg 19.9 80 17.3 80 20.5 13.4 > 30 mg 16-30 mg 1-15 mg 0 mg 2.6 3.8 2.9 4.6 2.5 4.1 25.5 28.5 71.1 66.9 64.9 入院前60日 退院後31-90日 退院後91-365日 22.5 22.3 60 60 26.6 40 42.3 40 40.5 20 19.9 24.4 退院後31-90日 退院後91-365日 6.2 0 0 20 46.7 入院前60日 23
退院後ベンゾジアゼピン, 再発リスク増大と用量反応関係 精神科治療歴あり (n =6790) 精神科治療歴なし (n =4950) 27.7% 24.3% 22.0% 15.3% 7.6% 18.0% 9.0% 4.1% 24
入院中の精神科コンサル, 精神科への継続受診向上に限定的効果 精神科治療歴あり (n =6790) 87.3% 85.6% 精神科治療歴なし (n =4950) 28.7% 71.3% 36.9% 23.6% 76.4% 20.9% 4.2% 32.6% 31.9% 2.3% 25
結論 ◼入院中コンサルの有用性は限定的 ◆再発リスクの改善効果なし ◆精神科治療歴のない人ではアクセス向上 ◆ただし,1年後の継続受診率は僅か4% 継続受診向上施策の立案が必要 26
結論 ◼退院後ベンゾジアゼピンが再発に寄与 ◆処方量1~15 mgと比較し,30 mg超の患者の再 発リスクは,1.6~1.8倍高い ベンゾジアゼピン 減薬・休薬法の普及が必要 27
未遂者支援の政策的課題 精神疾患診断治療初回加算 (3000点) ➡救命救急センター以外の未遂者は? 入院精神療法 (360点) ➡妥当な値付け? 入院 退院 救急患者精神科継続支援料 (135点) ➡高機能病院に継続支援の責任? かかりつけ精神科医の 継続受診/再発予防を促す インセンティブは? 自宅 28
未遂者モニタリングの課題 ◼救急搬送人員データベース ◆救急車搬送の症例に限定/医療情報の不足 ◼DPCデータベース ◆急性期病院の入院症例に限定 救急受診から再企図まで追跡できる 未遂者モニタリングシステムの構築が必要 29