総合病院精神科×医療DX: リアルワールド・エビデンスを飛躍的に創出する研究基盤の可能性

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November 18, 23

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一般社団法人臨床疫学研究推進機構

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1.

ダウンロード用QRコード https://x.gd/MvCcI 総合病院精神科×医療DX: リアルワールド・エビデンスを飛躍的 に創出する研究基盤の可能性 奥村泰之 一般社団法人臨床疫学研究推進機構 代表理事 第36回日本総合病院精神医学会 教育講演1 2023/11/18 (土) 12:30~13:30

2.

発表の構成 ◼ はじめに ◼ 既存のRWDの活用可能性 ◆ 既存RWDの活用例 ◆ NDBを活用した精神医療モニタリングに関する研究 ①精神科外来の医療提供 ②精神病床の医療提供 ③一般病床の医療提供 ◼ RWDによる新たな研究スキーム構築の可能性 ◼ 医療DX推進による将来の研究基盤の可能性 3

3.

(伝統的)臨床試験の限界 臨床試験における患者や臨床家は,実臨床と乖離しがち 高齢者や併存症を有する患者は,実臨床より少なくなる 臨床試験にあまり含まれていない患者層では,検出力が低い 患者の利益と乖離した代替エンドポイントを使いがち 頻度の低い有害事象などを検出する能力が低い Booth CM, Tannock IF: Br J Cancer. 2014 Feb 4;110(3):551-5. 4

4.

抗認知症薬の臨床試験と実臨床の乖離 要因 臨床試験の課題 年齢層 85歳未満が中心 併存症 実臨床より少ない アウトカム 短期 (6か月時点) の認知機能障害 Winblad B et al: Lancet Neurol. 2016 Apr;15(5):455-532. 5

5.

リアルワールド・エビデンスへの関心 実臨床から蓄積されるデータ(real-world data) 電子カルテ レセプト 症例レジストリ スマートデバイス ソーシャルメディア 気象データ 国勢調査 社会経済的データ 研究法に係わらず,実臨床のデータから 強く実践を志向した研究(real-world evidence) Jarow JP et al: JAMA. 2017 Aug 22;318(8):703-704. 6

6.

医療情報のデータベース化 厚生労働省: https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/000682917.pdf 7

7.

(伝統的)臨床試験とRWDの架け橋 RWDに 臨床試験を組み込む 臨床試験の結果を RWDに当てはめる RWDでランダム化を模倣する 統計手法を活用する Pencina MJ et al: Ann Intern Med. 2018 Sep 18;169(6):401-402. 8

8.

RWDに臨床試験を組み込む 候補となる患者の 抽出 同意取得と ランダム化 評価項目の測定 Jones WS et al: J Am Coll Cardiol. 2016 Oct 25;68(17):1898-1907 9

9.

臨床試験の結果をRWDに当てはめる RWDの 患者背景 臨床試験の 患者背景 RWDで良くみられる患 者を高く重み付け Berkowitz SA et al: J Am Coll Cardiol. 2018 Sep 11;72(11):1214-1223. 効果の推定 10

10.

RWDでランダム化を模倣する統計手法を活 用する Mansournia MA et al: BMJ. 2017 Oct 16;359:j4587. 11

11.

既存のRWDの活用可能性 既存RWDの活用例 12

12.

様々なRWDの整備 日本薬剤疫学会 薬剤疫学とデータベースTF (https://sites.google.com/view/jspe-database-ja2020/) 13

13.

3類型のRWD ◼医療機関ベース ◆MDV (DPCデータ) ◆RWD-DB (電子カルテ + α) ◼保険者ベース ◆JMDC (被用者保険のレセプト) ◆NDB (全レセプト) ◼調剤薬局ベース ◆日本調剤 (処方せん) 14

14.

3類型のRWDの特徴 類型 患者追跡性 患者情報の粒度 医療機関ベース ✕ ○ 保険者ベース ○ △ 処方せんベース ✕ ✕ 15

15.

急性期病院で認知症を有する人は, 術後オピオイドの処方期間が短い Sakata N, Okumura Y, Ogawa A: Drugs Aging. 2022 Apr;39(4):305-311. 16

16.

急性期病院の肺がん死亡者のうち,認知症を 有する人は死亡前の緩和ケア実施割合が低い Hirooka K, Okumura Y, Matsumoto S, Fukahori H, Ogawa A: J Pain Symptom Manage. 2022 Jul;64(1):1-7. 17

17.

急性期病院の入院患者のうち,せん妄を有す る人は入院医療費が高い Igarashi M et al: BMJ Open. 2022 Dec 15;12(12):e062141. 18

18.

慢性身体疾患を有する患者のうち,精神疾患 を併存する人は,年間医療費が高い Kishi Y, Kathol RG, Okumura Y: Am J Manag Care. 2020 Jun;26(6):256-261. 19

19.

過量服薬入院患者のうち,入院中に精神科医 師の関与がある人は,再入院率に差がない Okumura Y, Nishi D: Neuropsychiatr Dis Treat. 2017 Mar 2:13:653-665. 20

20.

精神科における高用量のベンゾジアゼピン, 診療報酬による規制前から減少トレンド 奥村泰之, 稲田健, 松本俊彦, 清水沙友里: 臨床精神薬理 18(9):1173-1188, 2015. 21

21.

既存のRWDの活用可能性 NDBを活用した精神医療モニタ リングに関する研究 22

22.

公開場所 クリック 精神保健福祉資料 (https://www.ncnp.go.jp/nimh/seisaku/data/) 23

23.

公開場所 通年データの集計表 クリック 精神保健福祉資料 (https://www.ncnp.go.jp/nimh/seisaku/data/) 24

24.

レセプト情報・特定健診等情報データベース National Database of Health Insurance Claims and Specific Health Checkups of Japan (NDB) 紙レセプトと保険外診療*を除く *(公費単独),自費,治験等 レセプト 請求 厚生労働省: 医療ビッグデータの利活用について (http://www.jsn.or.jp/news/150606_ch0.pdf) 電子レセプト 提供 NDB 25

25.

レセプトは,保険医療機関からの請求書 誰に 何したので お金下さい 26

26.

背景・病名・診療行為・医薬品情報が 詳細に記録 医療機関情報 ✓ 都道府県 ✓ 医療機関コード 傷病名情報 ✓ ✓ ✓ ✓ ✓ 傷病名コード 診療開始日 転機区分 修飾語コード 主傷病 レセプト共通 ✓ ✓ ✓ ✓ 氏名 (患者ID) 性別 年齢 入院年月日 診療行為情報 ✓ ✓ ✓ ✓ 診療行為コード 数量 回数 実施日 医薬品情報 ✓ ✓ ✓ ✓ 医薬品コード 数量 回数 実施日 27

27.

レセプトのDB化(2009年度~) 特定健診・特定保健指導のDB化(2008年度~) 匿名レセプト情報等の第三者提供の現状について (https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001101485.pdf) 28

28.

NDBデータ提供の推移 担当者: 大正大学髙瀨顕功先生 2019年度 データ 2020年度 データ 診療年月 2013年1月 2013年1月 ~2020年3月 ~2021年5月 申出日 2020/7/28 2021/7/30 データ受領日 2021/5/31 2023/1/13 集計公開日 2023/5/12 2021/9/14 29

29.

提供依頼したデータ ◼2013年1月~2021年5月診療分 ◼医科・DPC・調剤レセプト ◼精神科医療に関するコードのある全患者 30

30.

既存のRWDの活用可能性 NDBを活用した精神医療モニタ リングに関する研究①精神科外来 31

31.

爆増する精神科外来患者, 502万➡625万に増加 32

32.

2013 vs 2020年度の年間外来患者延数,未成年 の顕著な増分比,45~59歳の増分差が圧倒 年齢区分 0~9歳 10~14歳 15~19歳 20~24歳 25~29歳 30~34歳 35~39歳 40~44歳 45~49歳 50~54歳 55~59歳 60~64歳 65~69歳 70~74歳 75~79歳 80~84歳 85歳以上 2013年度 378,672 558,155 997,210 1,780,520 2,931,303 3,586,665 4,487,061 5,058,121 4,403,335 3,592,327 2,887,784 2,732,370 2,514,873 2,386,460 2,192,431 1,843,361 1,668,543 2020年度 596,792 966,136 1,526,607 2,413,139 3,334,166 3,637,326 4,130,036 4,751,147 5,607,594 4,949,663 4,009,989 2,876,539 2,434,060 2,799,441 2,206,353 1,912,743 2,108,837 増分比 増分差 1.6 1.7 1.5 1.4 1.1 1.0 0.9 0.9 1.3 1.4 1.4 1.1 1.0 1.2 1.0 1.0 1.3 218,120 407,981 529,397 632,619 402,863 50,661 -357,025 -306,974 1,204,259 1,357,336 1,122,205 144,169 -80,813 412,981 13,922 69,382 440,294 33

33.

精神外来患者数, うつ・躁うつ病*: 139万➡171万に増加 *主傷病に制限 発達障害: 23万➡66万に増加 34

34.

認知症専門診断管理料, 1.5万➡2.5万に増加 (頭打ち?) 35

35.

①精神科外来の医療提供 ◼精神科外来患者が爆増 ◼児童・思春期の伸びが大きい ◼中高年の増分差が圧倒 ◼うつ・躁うつ病と発達障害の増加が中心 ◼認知症の鑑別診断数は頭打ち 36

36.

既存のRWDの活用可能性 NDBを活用した精神医療モニタ リングに関する研究②精神病床 37

37.

精神病床における1日平均在院患者, 23.9万➡22.3万に減少 38

38.

85歳以上の入院患者, 2.8万➡3.9万に増加 39

39.

慢性期の入院患者, 認知症なし: 12.7万➡10.6万に減少 認知症あり: 3.9万➡4.5万に増加 40

40.

超高齢者で占める急性期入院受療率* *人口10万対1日平均在院患者数 (在院日数1~90日) 出典: 付表3.3.精神病床在院患者延数 (年齢×在院日数×認知症) 41

41.

認知症の超高齢者で占める慢性期入院受療率* *人口10万対1日平均在院患者数 (在院日数366日以上) 42

42.

精神病床における身体合併症*,4万人を推移 *精神科救急・合併症入院料または精神科身体合併症管理料 43

43.

年齢から推察する超高齢の受療率の説明 超高齢者になって初めて精神病床入院を経験する 患者が相当に占めていないか 指標 55~64歳 65~74歳 75~84歳 85歳以上 1日平均在院患者数 33,194人 56,531人 51,174人 38,697人 受療率 (人口10万対 1日平均在院患者数) 220 334 424 647 医療保険適用者数 15,078,511人 16,933,901人 12,057,393人 5,981,778人 44

44.

②精神病床の医療提供 ◼精神病床入院全体は減少トレンド ◼75歳以上は増加トレンド ◼超高齢認知症の慢性期で占める ◼身体合併症の医療提供・評価は課題か 45

45.

既存のRWDの活用可能性 NDBを活用した精神医療モニタ リングに関する研究③一般病床 46

46.

認知症を有する一般病床入院患者, 64.2万➡94.2万に増加 47

47.

認知症ケア加算, 28.2万➡92.5万に増加 48

48.

一般病床における入院精神療法, 10.5万➡14.6万に増加 49

49.

精神科リエゾンチーム加算, 0.6万➡3.5万に増加 50

50.

精神疾患診断治療初回加算, 4000人前後を推移 51

51.

救急患者精神科継続支援料, 200人前後を推移 52

52.

一般病床における身体合併症*,1.5万人を推移 *精神疾患診療体制加算または精神科疾患患者等受入加算 53

53.

③一般病床の医療提供 ◼認知症の医療提供が激増 ◼看護師によるケア体制の整備が促進中 ◼精神科医師に関与の余地はある? ◼高度化の指標は。。。 ◼精神病床と同様,身体合併症の医療提 供・評価は課題か 54

54.

RWDによる新たな研究スキーム の可能性 55

55.

多様な患者レジストリ 國土典宏: CIN構想の加速・推進を目指したレジストリ情報統合拠点の構築 (https://www.amed.go.jp/content/000037339.pdf) 56

56.

好例は循環器疾患診療実態調査 (JROAD) 特徴 詳細 実施主体 日本循環器学会 対象施設 循環器専門医研修施設・研修関連 施設 約1300 医療機関数 対象者 循環器疾患診療実態調査の対象施 設に循環器疾患で入院した全患者 収集する情報 DPCデータとレセプト,施設調査票 会員利用 あり (費用負担あり) 論文数 70以上 一般社団法人日本循環器学会 (https://www.j-circ.or.jp/jittai_chosa/for-researcher/about/) 57

57.

データは学術目的等に活用 岩永善高:わが国最大の循環器診療ビッグデータ,JROAD・JROAD-DPC データベースの現状とその利活用 (https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjcsc/31/0/31_55/_pdf/-char/ja) 58

58.

データは会員がアクセス可能 一般社団法人日本循環器学会 (https://www.j-circ.or.jp/jittai_chosa/for-researcher/about/) 59

59.

DPCデータは,DPC対象病院が必ず収集 している標準化データ 株式会社健康保険医療情報総合研究所 (https://www.prism.com/newscolumns/1017/) 60

60.

様式1,多様な患者情報 2023年度「DPC導入の影響評価に係る調査」実施説明資料 (https://www01.prrism.com/dpc/2023/file/setumei_20230403.pdf) 61

61.

EFファイル,日毎のレセプト電算コード が包括評価でも記録 2023年度「DPC導入の影響評価に係る調査」実施説明資料 (https://www01.prrism.com/dpc/2023/file/setumei_20230403.pdf) 62

62.

Hファイル,日毎の看護必要度 2023年度「DPC導入の影響評価に係る調査」実施説明資料 (https://www01.prrism.com/dpc/2023/file/setumei_20230403.pdf) 63

63.

DPCデータと他情報との突合がポイント ◼施設調査票と突合 一般社団法人日本循環器学会 (https://www.j-circ.or.jp/jittai_chosa/for-researcher/about/) 64

64.

JROADの施設調査票 一般社団法人日本循環器学会 (https://www.j-circ.or.jp/jittai_chosa/for-researcher/about/) 65

65.

DPCデータは患者単位データとの突合も可能 看護記録等 DPCデータ Ogawa A et al: Support Care Cancer. 2019 Feb;27(2):557-565. doi: 10.1007/s00520-018-4341-8. 66

66.

RWDによる新たな研究スキームの可能性 ◼DPCデータ+αによる患者レジストリ構築を ◼JROADは好例 ◼他情報との突合がポイント ◼新機軸によるデータ取得の負担低減を 69

67.

医療DX推進による将来の研究基 盤の可能性 70

68.

骨太方針2022, 医療DXの推進が閣議決定 (社会保障分野における経済・財政一体改革の強化・推進) ◼ 医療・介護費の適正化を進めるとともに、医療・介護分 野でのDX を含む技術革新を通じたサービスの効率化・ 質の向上を図るため、デジタルヘルスの活性化に向けた 関連サービスの認証制度や評価指針による質の見える化 やイノベーション等を進め、同時にデータヘルス改革に 関する工程表にのっとりPHRの推進等改革を着実に実 行する。 内閣府 (https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/cabinet/honebuto/2022/decision0607.html) 71

69.

医療DXにより実現される社会 内閣府 (https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/iryou_dx_suishin/pdf/siryou4.pdf) 72

70.

医療DXのメリット 内閣府 (https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/iryou_dx_suishin/dai2/siryou4.pdf) 73

71.

全国医療情報プラットフォーム 内閣府 (https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001027753.pdf) 74

72.

リアルタイムな情報連携の強化 内閣府 (https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001140173.pdf) 75

73.

二次利用の推進 76

74.

2030年までに完全電子カルテ化 内閣府 (https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001140172.pdf) 77

75.

電子カルテで共有される情報が検討予定 内閣府 (https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001140174.pdf) 78

76.

将来の研究基盤の可能性 ◼アクセスできるRWDの質・量が増大 する ◼多施設の電子カルテ情報の利用と, 他情報との突合も安価にできるよう になる 79

77.

将来ありうる障壁 ◼RWDを活用した臨床に役立つリサーチ・ クエスチョンが思い浮かばない ◼電子カルテに重要な項目を追加できない ◼RWDを分析できる人材がいない 既にアクセスできるRWDを使って RWEを創出できるチームの育成を 80

78.

Take-home Messages ◼様々なRWDが既に整備されている ◼RWDにより総合病院精神科に役立つRWE は創出できる ◼JROADに倣い,DPCデータ+αから構成さ れた総合病院精神科の患者レジストリを 構築してはどうか ◼医療DX推進による,RWDの質・量増大に 備え,人材育成が急務である ダウンロード用QRコード https://x.gd/MvCcI 81