589 Views
November 30, 20
スライド概要
近年は入学者の状況が大きく変化しており、それに対応すべく新しい試みとしてUnityを採用。日本電子専門学校 ゲーム制作研究科(3年制学科)が、授業にUnityを採用して4年が経過しました。その活用事例と結果を紹介致します。
【こんな人におすすめ】
・Unityの導入を検討している方
・Unityの授業運用にお悩みの方
【得られる知見】
・Unityの授業運用と注意点
リアルタイム3Dコンテンツを制作・運用するための世界的にリードするプラットフォームである「Unity」の日本国内における販売、サポート、コミュニティ活動、研究開発、教育支援を行っています。ゲーム開発者からアーティスト、建築家、自動車デザイナー、映画製作者など、さまざまなクリエイターがUnityを使い想像力を発揮しています。
Unityを使用した授業の活用事例と結果 Unity道場教育スペシャル2 日本電子専門学校 伊藤靖彦
◆本日のお話 1.Unityを使用した学生作品 ●学生作品の一部をご紹介 2.当学科・対象学生の環境と直面していた課題 ●学習量の多さ、挫折する学生の多さ、時代の変化の対応。 3.Unity導入後の授業運用 ●ゲーム制作を優先する運用。 4.Unity採用後の結果 ●Unityの採用後、どの様な変化があったか。
Unityを使用した学生作品 ゲーム制作研究科(3年制の作品)
◆Unityで開発したゲーム(一部) 【ゲーム作品】 Unityを利用して、学生はどこまでゲームが作れるのか。 当学科の学生が、Unityで制作した作品を紹介します。
学科・対象学生の環境と直面していた課題 なぜUnityを採用したのか
◆学科の説明 【学科】 日本電子専門学校 ゲーム制作研究科(3年課程) プログラム / デザイン / プランニングを学習する学科。 コース分けではなく、すべての項目を学習する。 2015年から1年生が100名を超える状況に変化(現在も) 入学者は「意欲的な学生」ばかりではない事が現状。
【従来の学習の流れ(大まかな流れ)】 学年 学習内容 1年生 C言語、2DCG、デッサン、Officeなど基礎学習。ゲーム はDirectXによる2Dゲーム作成。 2年生 C++言語、3DCGなど1年次の応用が中心。 ゲームはDirectXによる3Dゲーム作成。 3年生 ゼミ形式のゲーム開発。
◆1年生 前期授業の一部 【プログラム授業】 C言語 授業回数15回 1回270分(実習180分 / 講義90分) ゲーム開発 授業回数15回 1回270分(実習180分 / 講義90分) 【デザイン授業】 CGデザイン 授業回数15回 1回270分(実習180分 / 講義90分) デッサン 授業回数15回 1回90分 (実技90分) この他にも、ハードウェア学習やOffice学習など、様々な授業があります。
◆学科の環境と直面していた課題 【当時の課題 / 対象は1年生】 学習量の多さ、挫折する学生の多さ etc... C言語 + DirectXの開発環境では、形にするのに時間が掛かる。 デザインやプランニングの学習もあるため、学習量も多い。 コンピュータを触った事のない学生も多くなり、 結果が出る前に、挫折してしまう学生が一定数いた。
◆Unity採用の理由 【採用の理由】 ゲームエンジンを採用して「 ゲームを作る楽しさ / 面白さ 」の 「経験 = 成功体験」を優先する授業内容へ変更。
◆Unityを利用した授業運用 - 前期 【対象科目と実施期間】 ゲームプログラミングという授業で実施。 4月 ~ 9月 授業回数15回 1回270分(実習180分 / 講義90分) 【前期の目標】 全員がゲームを完成させる = 成功体験をしてもらう。 ※ちなみにUnityを学習する授業は、1年生だけです。
◆Unityを利用した授業運用 - 前期 【前期の課題】 Unityを使用してゲームを2本制作 ・シューティングゲーム 第1週 ~ 第8週 ・アクションゲーム 第9週 ~ 第15週 両課題ともに、 オリジナルゲームの制作まで行う。
◆Unityを利用した授業運用 - 前期 【課題のポイント1】 ColliderやRigidbody、Triggerなど、Unityで用意されている コンポーネントを利用してゲームを完成させる(完成しちゃう) 本来、開発に必要な難しい処理や計算式等は置いておく。 「 ゲームを作る / 作りこむ 」ことに集中させる。
◆Unityを利用した授業運用 - 前期 【課題のポイント2】 UnityEditorの操作は、ハンズオン形式で一緒に行い 操作で遅れる学生を減らす(0にはなりません) どうしても遅れてしまう学生は、サブ教員がフォロー。 PC操作に慣れていない学生が複数いる場合は、 座席を近くにして対応。
◆Unityを利用した授業運用 - 前期 【課題のポイント3】 プログラムは、ほぼ写経。 入力すれば動作するモノを教科書で配布(コピペ防止) ※自分で考える課題もあります。 理解度向上のため、ソースコードには大量のコメント。 (ほとんど説明文)
◆Unityを利用した授業運用 - 前期 【課題のポイント3】 馬鹿げていますが、授業に追いつけない学生には効果的。 欠席した学生でも、コメントを読めば 授業に追いつけるため、フォローが減ります(0にはなりません) もちろん別ページに、処理の説明を記載。かなり効果的です。 何よりフォローが減ります(残念ですが、0にはなりません)
◆Unityを利用した授業運用 - 前期 【課題のポイント3】 プログラムの入力は時間で管理 / 調整。 入力および動作確認が終わった学生は、処理内容や動作状況を テキストに図や絵・自分の言葉で書き込む。これも課題です。 後でチェックします。これが地獄です、ご注意を。 ※時間内にできない学生は、放課後は居残り。
◆以上の運用で・・・ 【前期の結果】 9割以上の学生が、課題だけではなく、 カスタマイズしたオリジナルゲームを提出できた。 また、グラフィックスも自作をした学生が8割以上だった。 ※CGデザインの授業と一部連携。
◆後期の授業運用 【期間】 10月 ~ 2月 授業回数15回 1回270分(実習180分 / 講義90分) 【後期の目標】 前期に利用したUnityのコンポーネントの一部を作成していく。 オリジナルゲームの作成。
◆後期の授業運用 【後期の課題】 ゲームを2本作成(ドットイートゲーム / アクションゲーム) 【課題のポイント】 前期に利用したColliderやRigidbody、Triggerなど、 Unityで用意されているコンポーネントを使用せず、 同様の機能を作成していく。
◆授業内容を一部抜粋 AB間の距離 < (Aの幅の半分) + (Bの幅の半分) Bool IsHitRect( Rect a, Rect b ) { return Mathf.Abs( a.x – b.x ) < ( a.width / 2 + b.width / 2 ) && Mathf.Abs( a.y – b.y ) < ( a.height / 2 + b.height / 2 ); } 高さ height Y X a 幅 width b
◆後期の授業運用 【後期の結果】 前期の復習になるため、ある程度イメージができている状況。 学生の理解度は、従来よりも高いものになった。 オリジナルゲームも従来以上に、出来上がる学生が多かった。 特にプログラムが苦手なデザイン志望の学生も形にできた事は 非常に大きい(従来はプログラムに苦戦して完成が難しい)
◆以上の学習内容を踏まえ・・・ 【ゲームエンジンの利用による効果】 本来ゲーム開発に必要な知識を有していなくても、 ゲームを作成 / 完成させる経験ができる = 成功体験 成功体験による「やればできる」という学習のキッカケができる。
◆以上の学習内容を踏まえ・・・ 【ゲームエンジンの利用による効果】 キッカケができた学生は、学習に対しても向き合いやすい。 授業だけではなく「独習」をする様になる。 ここまで意識付けができれば、授業理解度も向上。 より高度なことまで意欲的に勉強するようになってくれる。
◆授業運用の考え方 【今まで優先していた項目】【後回しになっていた項目】 ゲーム制作経験 必要な知識 作る楽しさを知る イメージを持つ
◆授業運用の考え方 【現在の優先している項目】【その上で必須・教えたい項目】 ゲーム制作経験 作る楽しさを知る イメージを持つ 必要な知識
◆授業運用の考え方 【ゲームエンジンの利用による効果】 何より「諦めさせてしまう要素」を減らせている。 現状、1年次の導入としては「及第点」 学習の導入としては、非常に最適だと感じる。 ただし、他の科目との連携が重要です。
Unity採用後の結果 就職状況や作品状況
◆ Unity採用後の結果 【今までの状況】 ・成績が良い学生 = 大半がゲーム会社に採用。 ・成績が普通の学生 = 採用されたり / されなかったり。 ・成績が悪い学生 = ほぼ採用されない。
◆ Unity採用後の結果 【ここ3年間の状況】 ・成績が良い学生 = 大半がゲーム会社に採用。 ・成績が普通の学生 = 採用される割合が増えた。 ・成績が悪い学生 = 採用されたり / されなかったり。 ※中間層の採用される数が、非常に増えた。 成績の悪い学生でも、ゲームを形にできる状況が増えたため 採用に繋がっている。
◆ 成績の悪い子たちでも・・・。 ・東京ゲームショウ2018で出展「”面白くない”の雨あられ」 技術不足による「涙と嗚咽の4日間」 しかし、形にしたからこそ「得られた評価」 成績が悪い子達でも「経験できる環境」になった。 ここから奮起にして、コンテスト受賞まで頑張れた事は大きい。 「想いが技術を越えた瞬間」非常に面白い結果が出ました。
◆まとめ 今後は、より一層、時代に合わせた教育を検討する必要がある。 ただし「時代の流れは理解はするが、すべてを容認はしない」 必須項目を「どの様に伝えていくか」を改めて検討しなければ ならないと感じた4年間でした。 その最初の導入として、Unityを用いた 「成功体験を優先する教育」は、概ね成功だったと思います。
ご清聴ありがとうございました