>100 Views
March 16, 25
スライド概要
2024年6月22日よりスタートした「四万十町地域ビジネススタートアッププログラム」の第2回の様子をまとめたビジュアルレポート
2024年7月 2024年度 地域ビジネススタートアッププログラムin四万十町 Day2 高知大学 ビジュアルレポート 地域協働学部 コミュニティデザイン研究室
構成 1.プログラム概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・p.2 2.キーノートスピーチ:鷲谷 恭子氏(株式会社ケイリーパートナーズ 代表取締役/2hours 代表) ・・・・・・p.14 3.インプット:顧客設定の重要性・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・p.21 ①ペルソナ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・p.22 ②顧客の見つけ方 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・p.26 ③インサイト ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ p.33 ④共感を軸に顧客を理解する・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・p.44 4.実施風景 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ p.55 ①チェックイン・アイスブレイクの様子 ②キーノートスピーチ:鷲谷氏の講演の様子 ③インプットの様子 ④ワーク:ペルソナ再設計ワーク ⑤ワーク:インサイト抽出トレーニング ⑥ワーク:「なぜ、あなたは、その商品/サービスを選択したの?」 Copyright © 2024 Jun SUTO All Rights Reserved. 1
1.プログラム概要 Copyright © 2024 Jun SUTO All Rights Reserved.
プログラム概要 名称: 地域ビジネススタートアッププログラム in四万十町 回数: 全9回 -6回目以降は、モチベーションとアクションの状況を踏まえて選定予定 期間: 2024年6月22日~2025年3月22日 主催・運営: 主催:四万十町 運営:高知大学地域協働学部コミュニティデザイン研究室(須藤順研究室) Copyright © 2024 Jun SUTO All Rights Reserved. 3
スケジュール 講座回 実施概要 第1回 6/22:地域ビジネス概論&当事者意識の掘り起こし(自分のWill/Why&事業のWhy) 第2回 7/27:顧客の抱える課題を見つけるための観察・リサーチの方法 第3回 8/31:アイデアの生み出し方&コンセプトの作り方 第4回 10/5:試作品・モデルの制作&検証方法 第5回 11/9:デモデイ(アイデア発表・体験イベント) 第6回 12/14 :地域プロモーション&ファンマーケティングの考え方 第7回 1/11 :ビジネスモデル(リーンキャンバス)の設計&ビジネスプランの作り方 第8回 2/1 :ストーリーテリング&クラウドファンディング(資金調達&テストマーケティング)の進め方 第9回 3/22 :最終報告会 Copyright © 2024 Jun SUTO All Rights Reserved. 4
プログラム構造 ダイアログ インプット アクション 受講生同士が 気づきを深める ゲスト&講師からの インプット アクションの 繰り返し 近況&アクションの共有 経験談&手法の習得 アクションを通じて学ぶ アクションの結果やそこでの 学び、事業アイデア自体のブ ラッシュアップを目的に、受 講生同士が対話を繰り返し、 相互に支え合う関係づくりを 行います。 地域ビジネスの経験豊富なゲ ストの経験談に加え、地域ビ ジネスを形にするための基本 的な手法をワークショップ形 式で学びます。 頭で考えるのではなく、とに かく小さくアクション(行動 )を行い、そこから学びや気 づきをフィードバックしてい きます。 Copyright © 2024 Jun SUTO All Rights Reserved. 5
プログラムポイント ①自分らしい地域ビジネスの構築 ②経験豊富なメンター陣によるサポート ③アイデア創造からビジネスモデル構築まで一貫サポート ④学び合う・支え合うコミュニティの形成 ⑤学生による伴走型サポート Copyright © 2024 Jun SUTO All Rights Reserved. 6
プログラムゴール 自分の強みや得意なこと、 好きを活かしながら、 自分が心からやりたいと思える 事業を創り出していく 自分・身の回りの人を幸せにする事業創り Copyright © 2024 Jun SUTO All Rights Reserved. 7
ゲスト&メンター 守時 健さん 鷲谷 恭子さん 町田 美紀さん 丑田 俊輔さん 株式会社パンクチュアル 代表取締役 株式会社ケイリーパートナーズ 代表取締役/2hours 代表 株式会社VISIONECT 代表取締役 / 株式会社and. 取締役 シェアビレッジ株式会社 / ハバタク株式会社 代表取締役 浅野 聡子さん 瀬戸口 信也さん 須子 善彦さん 原 亮さん 株式会社StoryCrew 代表取締役共同経営者 合同会社 高知カンパーニュブルワリー 代表取締役 マイプロジェクト株式会社 代表取締役 エイチタス株式会社 代表取締役 Copyright © 2024 Jun SUTO All Rights Reserved. 8
学生メンター 柳原 伊吹 西上 一成 杉田珠夢 高知大学大学院 総合人間自然科 学研究科 地域協働学専攻 2年 高知大学大学院 総合人間自然科 学研究科 地域協働学専攻 1年 高知大学 地域協働学部 地域協働学科 4年 田村 敢 奈良 可南子 小池 乙歌 高知大学 地域協働学部 地域協働学科 4年 高知大学 地域協働学部 地域協働学科 3年 高知大学 人文社会科学部 人文社会科学科 2年 Copyright © 2024 Jun SUTO All Rights Reserved. 9
学生メンター 松原 彩耶香 竹中 楓 宮田 華菜 高知大学 地域協働学部 地域協働学科 2年 高知大学 地域協働学部 地域協働学科 1年 高知大学 地域協働学部 地域協働学科 1年 Copyright © 2024 Jun SUTO All Rights Reserved. 10
支援内容 ①個別メンタリング/集団メンタリング 活動を進める中での悩みや不安、事業化に向けての課題、事業内容について経験豊富なメンター陣からのサポート が受けられます。 ②プレゼンテーション機会の提供 プログラム内はもちろん、様々なプレゼンテーション機会を提供し、自らのアイデアへのフィードバックや協力者 集めの機会を提供します。 ③地域との関係づくりに向けたコーディネート支援 事業化に向けて地域内の事業者や関係部署を紹介し、事業の現実に向けたコーディネートを行います。 ④活動サポート 高知大学コミュニティデザイン研究室所属の学生が受講生の取り組みをサポートします。 ⑤試作品・モデルの実証実験経費の一部補助 試作品の開発や実証実験に係る経費の一部を補助します。 ⑥オリジナルテキスト『地域ビジネススタートガイドブック』の提供 地域ビジネスに取り組む際に必要となる視点や考え方、アイデアを形にするための各種フレームワークをまとめた オリジナルテキストを無料で提供します。 Copyright © 2024 Jun SUTO All Rights Reserved. 11
大切にしてほしいこと=講座全体を通してのルール ①安心・安全の場をみんなで創ろう ②ありのままの自分を素直に出そう ③仲間・プロジェクトを評価しない ④プロジェクトは変わってOK! ⑤お互いが最大の応援者になる Copyright © 2024 Jun SUTO All Rights Reserved. 12
Day2の目標・ゴール 顧客の抱える課題を見つけるための 観察・リサーチの方法 Copyright © 2024 Jun SUTO All Rights Reserved. 13
3.キーノートスピーチ 鷲谷 恭子 氏 (株式会社ケイリーパートナーズ代表取締役/2hours 代表 ) Copyright © 2024 Jun SUTO All Rights Reserved.
キーノートスピーチ:鷲谷 恭子氏 (株式会社ケイリーパートナーズ 代表取締役/2hours 代表) プロフィール 株式会社ケイリーパートナーズ 代表取締役/2hours 代表 鷲谷 恭子氏 福島県生まれ。大学卒業後、JR東日本で商品企画、CRMなどを担当。第1子の育児をきっかけに専業主婦となり 福島県へUターン、東日本大震災以降はボランティア活動を行う。2019年5月、女性のセカンドキャリアを支援する 『2hours』を開業、同年10月にはバックオフィスやデジタル活用のアウトソーシングサービスを展開する『株式会 社ケイリーパートナーズ』を設立した。短時間、子連れ、在宅など自由度の高い勤務体系を自社で実践しながら、地 域企業の働き方改革も支援している。 Copyright © 2024 Jun SUTO All Rights Reserved. 15
キーノートスピーチ:鷲谷 恭子氏 (株式会社ケイリーパートナーズ 代表取締役/2hours 代表) ①株式会社ケイリーパートナーズの紹介 鷲谷氏の企業では「地域課題解決という『社会性』と 企業としての利益追求である『経済性』をトレードオフ にしない事業展開を行っている」と話されました。 社会性は「誰もが活躍できる環境をどのようにつくる か」を重視し、子育て女性を中心(現在、社員の9割が 子育て世代)に展開し、ワークシェアリングを導入する ことで短時間でも仕事が可能なシステムを構築している と言います。 一方の経済性は、「企業において手をかけられない・ 手間の多い経理や総務などの業務をアウトソーシングサ ービス」を展開し、地元企業がコストや手間をかけきれ ない領域を仕事として切り出すことで、収益を生み出す 仕組みづくりを行っているそうです。 事業は大きく “ささえる事業” と “ひろげる事業” の2つ の領域に分けられ、前者は、経理等の業務を支援する 「バックオフィス支援」、SNSでの情報発信やウェブサ イトの支援を行う「デジタルクリエイティブ事業」が展 開されています。 後者は、地域の労働参加率を上げるために行われてい る事業として、働き方に関する啓発・啓蒙を目的とした 講演・セミナーの実施や、地元企業・自治体と協働した 就労支援や採用支援に取り組んでいると言います。 Copyright © 2024 Jun SUTO All Rights Reserved. 16
キーノートスピーチ:鷲谷 恭子氏 (株式会社ケイリーパートナーズ 代表取締役/2hours 代表) ②子育て女性が働きやすい職場づくり ケイリーパートナーズでは、「1日2時間」の短時間で働 ける仕組みづくりを行い、子育てや家事などの都合でフル タイムで働くことのできない女性に、柔軟な働き方を選択 できるようにし、さらに、「社会とのつながり」を持つこ とができる職場づくりに取り組んでいると言います。 ③自身のマイストーリー 鷲谷さん自身がこうした事業に取り組んむきっかけは、 東日本大震災でのボランティア活動だと言います。 様々な組織でボランティア活動に参加したことで、「ど んなチームが個人の能力を最大限発揮できるか」と考える ようになり、「心理的安全性」の存在に関心を抱くように なりました。 その時の経験や考え方が、現在の事業の根底にはあると いい、「心身のバランスが取れた働き方を望む人達に、働 きやすさも働きがいも諦めない選択肢を届ける」というこ とをブランドコンセプトに、事業に取り組んでいると言い ます。 Copyright © 2024 Jun SUTO All Rights Reserved. 17
キーノートスピーチ:鷲谷 恭子氏 (株式会社ケイリーパートナーズ 代表取締役/2hours 代表) ④顧客を理解する 当時の福島県の転出超過による人口減少の課題から、 「出産・育児で、一度仕事を手放した女性のセカンドキ ャリア形成支援」を目的に事業を進められました。 まず、「働き続けたいと思う女性の声」を調べたとこ ろ「短時間で働ける」ことを求めていた。しかし、ハロ ーワークで紹介される職務は1日4時間が多く、日々の家 事などを考えると難しいことがわかったそうです。 そこから、顧客理解のために「4Cストーリー (顧客ニ ーズ/顧客の悩み/自社の強み/事業の意味づけ)」を組み立 て、「短時間で働きたいが、1日4時間働く職場が多いた め、自社は1日2時間から働ける」というコンセプトを作 り上げたと話されました。 一方、中小企業経営者は人材不足といった人に関する 課題が多かったと言います。ここから、「人手が足りな い部分を外注したいというニーズがある」ことに注目さ れました。しかし、地方の企業経営者のなかには、フリ ーランスに対する抵抗感が強かったとのこと。 そこから「人手を外注したいが、フリーランスに抵抗 感を抱く方々に向けて、企業によるアウトソーシングを 行う」というコンセプトを作り上げたと話されました。 Copyright © 2024 Jun SUTO All Rights Reserved. 18
キーノートスピーチ:鷲谷 恭子氏 (株式会社ケイリーパートナーズ 代表取締役/2hours 代表) ⑤インサイト(隠れた欲求)の探求 事業をスタートする際、多くの子育て女性の声を聴く中で 語られる「短時間で働きたい」という声の背景にある本音は 何なのかを探ることに意識を向けたと言います。 子育て女性からは、「子どもと一緒にいたい」、「自由な 時間がほしい」などのニーズが語られるが、「だけど…」と いう矛盾や葛藤を声にするケースも多かったようです。 「スキルを身につけたい」、「収入はしっかり得たい」と いう希望はあるものの、「短時間で働きたい」と言ったとた ん、選択肢が限られ、言葉にすらできない状況に陥ってしま う、そんな状況が明らかになったそうです。 加えて、アンケートを取ってみると、 「子育てをしなが ら働くことへの理解と環境支援」を求めていることが明らか になり、子育てをしながら働くことを願う女性たちの本当の 声、インサイトが見えてきたと言います。 Copyright © 2024 Jun SUTO All Rights Reserved. 19
キーノートスピーチ:鷲谷 恭子氏 (株式会社ケイリーパートナーズ 代表取締役/2hours 代表) Q:事業における「トライ・アンド・エラー」の姿勢はどの ようなきっかけで行っているのか。 A:自分自身がそういった事業を行いたいと思った原体験が 突き動かしている。また、事業を始める頃には、批判的な意 見が多くあった。そのなかで、その人たちを説得できるだけ のモノや情報を得ないといけないと思った。 Q:ゼロベースからの事業スタートのなかで、どんな人に助 けられたか。 A:自分たちの活動に対して、共感してくれる子育て女性や企 業の方々が沸々と集まったということがある。創業時のなか で、そういった人たちの力で一歩一歩実績を積み上げられた ので、そこでの支援は大きかったと感じる。 Copyright © 2024 Jun SUTO All Rights Reserved. 20
2.インプット:顧客設定の重要性 Copyright © 2024 Jun SUTO All Rights Reserved.
①ペルソナ Copyright © 2024 Jun SUTO All Rights Reserved.
ペルソナ/ペルソナ・マーケティングとは ペルソナは、スイスの心理学者カール・ユングが提唱した概念で、「社会的な仮面」と定義され、個人が社会的な環 境内で期待される役割を果たすために用いる自己の一面であると説明している。 この考え方はマーケティングに応用され、「ペルソナ・マーケティング」として発展している。ペルソナ・マーケテ ィングは、ターゲット顧客群を代表する具体的な個人像を設定し、この像に基づいて製品やサービスの開発を行う手法 である。このアプローチにより、マーケティング活動はより焦点を絞られ、顧客のニーズに効果的に対応することが可 能となる。 顧客視点で意思決定が容易になる - ペルソナを定義することで、企業は顧客の視点から意思決定を容易に行えるようになる。 - これにより、顧客のニーズや期待に応じた製品やサービスを提供できるようになる。 共感を呼ぶポイントが明確化される - ペルソナの使用により、顧客がどの点に共感するかが明確になる。 - これによって、マーケティングメッセージや広告のターゲティングが効果的になり、顧客の関心を引きやすくなる。 具体的なシミュレーションが可能になる - ペルソナに基づくシミュレーションを行うことで、製品やサービスが実際の状況でどのように使用されるかを事前に把握できる。 - このアプローチにより、市場投入前のリスクを軽減し、製品開発の方向性を具体的に決定できる。 チームでの共通の理解を促進する - ペルソナをチーム内で共有することにより、メンバー間での共通認識が形成されやすくなる。 - 結果として、開発プロセスがスムーズに進み、製品やサービスの品質が一貫して維持されやすくなる。 Copyright © 2024 Jun SUTO All Rights Reserved. 23
イノベーションは実在の1人から生まれる 近年、具体的な一人の経験から洞察を得ることで、イノベーションが生まれるということへの理解が広がりつつあ る。以前は広範囲のアンケートを利用して多くの人々のニーズや課題を解決するアプローチが一般的であった。しか し、社会が進化し個々の要求が多様化する中、従来の方法では全てのニーズを把握しきれなくなっている。 そのため現在では、個人の実際の経験に基づいて深い洞察を得ることが、新たな価値創造への鍵とされており、実 際に人々と対話を重ねることでその声を直接聞く取り組みが行われている。 Copyright © 2024 Jun SUTO All Rights Reserved. 24
ターゲットを絞り込む利点 大規模な対象者に対するデータ収集や調査は、数千人分のデータが必要になり、その聞き取りや検証作業はほぼ不 可能になる。大企業であれば、資金や時間の余裕があるため、内容の変更も可能である。しかし、地域ビジネスでは 資金や時間などのコストが限られているため、ターゲットへの聞き取りやアイデアの検証を効率よく進めることが重 要となる。 そのため、対象を具体的に絞り込み、少数の対象者だけに焦点を当てることで、確認作業やアイデアの修正が容易 になる。 狭いターゲットへの集中 集中ゆえの成功 成功への波及効果 ターゲット以外の場所での成功 Copyright © 2024 Jun SUTO All Rights Reserved. アドマノ株式会社(2024) (https://www.switchitmaker2.com/marketing/concentration-marketing/#toc-11)を参考. 25
②顧客の見つけ方 Copyright © 2024 Jun SUTO All Rights Reserved.
顧客設定の視点 : アーリーアダプター 新たな製品・サービスの市場における普及率を示す概念として、エベレット・M・ロジャースによる「イノベータ ー理論」がある。イノベーター理論では、主に5つのステージに分かれて普及していくことが指摘されている。 イノベーター(革新的採用者): 冒険的で、最初にイノベーションを採用する。 アーリーアダプター(初期採用者): 自ら情報を集め、判断を行う。多数採用者から尊敬を受ける。 アーリーマジョリティ(初期多数採用者): 比較的慎重で追随的な採用行動を行う。 レイトマジョリティ(後期多数採用者): うたぐり深く、世の中の普及状況を見て模倣的に採用する。 ラガード(採用遅滞者): 最も保守的・伝統的で、最後に採用する。 商品・サービス開発における顧客設定の視点としては、「アーリーアダプター」に注目することが重要である。 具体的には次のような特徴を持つ顧客を想定することが求められる。 ❶製品・サービスをリリース後、比較的早い時期に使うユーザー ❷何かしらの課題、不満、苦情を今現在抱えている人 ❸あなたの考える理想的な人 ❹すぐに使ってくれそうな人 Copyright © 2024 Jun SUTO All Rights Reserved. エベレット・ロジャーズ (2007)『イノベーションの普及』翔泳社. UTokyo Innovation Platform (2022) (https://www.utokyo-ipc.co.jp/column/innovation-theory/)を参考 27
顧客設定の視点 : エクストリームユーザー 顧客設定の視点として重要な要素の2つ目が「エクスト リームユーザー」である。これは、サービス開発におい てターゲットを明確にするために非常に有効な方法であ る。 エクストリームユーザーとは、極端な性格や行動特性 を持つユーザーのことで、プロフェッショナル層やマニ ア層などがこれに該当する。エクストリームユーザーを 具体化する際には、中間層を考慮するのではなく、以下 のような極端な対比を持つユーザーを考えることが重要 である。 具体例: 子ども vs 高齢者 発展途上国 vs SF/未来 新人 vs 達人 両極にある顧客像や外れ値に位置する極端な顧客像を 想定することで、例えば、子ども向けの製品を開発する 際には、簡単な操作性が求められ、高齢者向けの場合は 安全性や使いやすさが重要であるなど、より特徴的な二 ーズや抱える課題が確認しやすくなるといったメリット が生まれる。 Copyright © 2024 Jun SUTO All Rights Reserved. イトーキフィス総合研究所監修 (2013)『デザイン思考ファシリテーションガイドブック』を参考. 28
アーリーアダプター/エクストリームユーザーの特徴 特性 アーリーアダプター リ(ードユーザー ) • トレンドの先を行く • 時間とリソースを費やす 意思がある • 経験豊富で人脈が広い エクストリームユーザー エクストリーム • 若者/高齢者 • 貧困者/富裕層 違い • 常連/低頻度ユーザー • エキスパート/アマチュア 複雑性 見つけにくい 見つけやすい 成果 通常は非常に 優れた洞察 有益な追加情報 手順 1. 2. 3. 4. トレンドを特定する ユーザーを特定する ユーザーと共創する 結果を振り返り、問 題を整理する 1. 2. ユーザーを特定する 観察とインタビュー を行う ペルソナを設計し、 問題を整理する 3. マイケルーリューリック・パトリックリンク・ラリーライファー『デザインシンキング・ツールボックス』翔泳社. Copyright © 2024 Jun SUTO All Rights Reserved. 29
より現実的な想定顧客の見つけ方 オーソドックスな顧客の想定では、アーリーアダプターやエクストリームユーザーを考えることが有効であるが、 より現実的に考えていく際には以下の要素から選択することが推奨される。 ❶自分自身 - 自分自身が課題を抱えている場合(圧倒的な当事者意識がある場合) - 自分がどんなニーズや困っていることを抱えているか - 過去の自分がどんな不満や課題を持っていたか - データは容易に集めることができるが、客観性が担保できない ❷身近な誰か - 自分が大切にしている誰か - 親・親友・クラスメイトなどの顔見知りの人 - その他、自分自身がこれまでに関わったことのある人 ❸第三者 - 全く関係ない第三者 - 高い客観性のあるデータが集められる - 他と比べて、その対象に関して調べる量・質が求められる Copyright © 2024 Jun SUTO All Rights Reserved. 30
顧客と利用者の違い 顧客(クライアント)と利用者(ユーザー)は、違う概念であることを理解する必要がある。顧客や利用者以外に も「意思決定関与者(DMU)」と呼ばれる人が別に存在する場合もある。製品・サービスを考えていく際は、利用 者・顧客・意思決定関与者が同じなのか、分離して存在しているのかに注視して考えていくことが重要である。 利用者(ユーザー) - 製品・サービスを実際に使用する人 顧客(クライアント) - 実際にお金を払う人 - 例えば、子ども向けのサービスは、利用者は子どもだが、顧客は親・教員・祖父母にあたる 意思決定関与者(DMU: Decision Making Unit) - 購入・利用の意思決定に大きな影響を与える人 - 顧客の間に存在しており、購入・利用の最終決定に影響を与える人 - 意思決定関与者に対して安心・納得できる情報を発信する、または、インセンティブが生じるような 製品・サービス設計をする必要がある Copyright © 2024 Jun SUTO All Rights Reserved. 31
ペルソナ再設計ワーク 目的・ねらい 受講生が現状考える顧客(ペルソナ)を確認し、再設計する事を通して、より詳細に顧客を具現化させていく。 ワークプロセス・時間 Step❶ ペルソナ質問シートの各設問を書き出す(20分) Step❷ ペルソナシートに再整理する(10分) Step❸ テーブル内で共有&フィードバック 使用フレーム ペルソナ質問シート ペルソナシート Copyright © 2024 Jun SUTO All Rights Reserved. 32
③インサイト Copyright © 2024 Jun SUTO All Rights Reserved.
地域ビジネスの要件とポイント 課題解決の手法は、「問題定義」と「アイデア創造」の二つのプロセスに分けられる。 最初のステップは「問題定義」である。この段階で、解決すべき問題を特定し、明確に定義する。このプロセスを 通じて、具体的な行動や目標に焦点を絞ることができる。 次に、「アイデア創造」のプロセスが続く。ここでは、定義された問題に対する具体的な解決策を創出する。課題 解決においては、問題を正確に定義することが極めて重要である。 正確な問題定義により、解決策の選択が明確になり、効果的な行動が容易に想像できるようになる。一方で、問題 定義が不適切であると、その後のアイデア創造や行動が効果をもたらさない可能性が高くなる。 Copyright © 2024 Jun SUTO All Rights Reserved. 34
インサイトを見つける 解くべき課題や顧客の痛みのことを、インサイトと呼ぶ。 インサイトとは、「洞察、物事を見抜く力、本質的な解のこと」である。これは、顧客自身も気づいていない無意 識の心理や認識が行動を起こすきっかけとなるものとされている。つまり、顧客の潜在的な心理や行動の背後にある 深層的な動機や理由を理解することである。 インサイトと似た言葉に「潜在的なニーズ」がある。潜在的なニーズとは、顧客が「欲求があるがそれに気づいて いない状態」のことを指す。一方、インサイトは「欲求さえまだない状態」であり、あくまで潜在的な欲求である。 ポイントになるのは、インサイトは、顧客が自ら気づかない限り、偶然に見つかるものではなく、深く探求するこ とで初めて発見される点にある。 顧客がまだ認識していない潜在的な欲求を見つけ出し、それを 顕在化させることで、顧客にとって新たな価値を提供することが 可能となる。 インサイトを基にしたアプローチは、単に顧客の表面的な ニーズに応えるだけでなく、深層的な動機や期待に応えるもので あり、競争優位性を高める重要な要素となる。 Copyright © 2024 Jun SUTO All Rights Reserved. 35
インサイトのイメージ インサイトは以下のような図でイメージができる。 本当の課題は何か、顧客が声に出来ていない・感じ取れていない問題や課題は何か、その製品・サービスを通じて 何を得ようとしているのかという奥底の想いを探り、定義づけていくことが求められる。 Copyright © 2024 Jun SUTO All Rights Reserved. 出所)ITと新社会デザインフォーラム (2013) 『ITプロフェッショナルは社会価値イノベーションを巻き起こせ:社会価値を創造す る“デザイン型人材"の時代へ』日経BP社. 36
インサイトを基にした製品例 カップヌードルプロ 多くの人は、インスタントラーメンを健康に悪いもの と認識しているが、その一方で「ジャンクフードを食べ たい」という気持ちを持っている人もいる。そのため、 インスタントラーメンだが健康に良いというものを提供 できたら良いのではないかという流れで誕生している。 近年、誕生してきている「ヘルシースナック」も同様 の流れのなかで、誕生されてきている。 写真) https://www.nissin.com/jp/ ハーゲンダッツ 発売当時は、「アイスクリームは子どものもの」とい う認識が根強かった。しかし、大人のなかでも「甘いも のを食べたいが、子ども向けのものは買いづらい」とい う想いがあった。そこで、より高級路線で質の高いアイ スクリームとして誕生したことで、一気に拡大をした。 この流れと近いものとして、SUNTORYの「プレミア ムモルツ」がある。これも、ビールから離れていた人た ちに高級路線で提案することで、拡大している。 写真) https://www.haagen-dazs.co.jp/ Copyright © 2024 Jun SUTO All Rights Reserved. 37
顕在ニーズ・潜在ニーズ・インサイト 顧客のニーズは3つに分類される。 まず、「顕在ニーズ」である。これは、顧客自身も把握しているニーズであり、アンケートを行えば理解すること が可能である。 次の「潜在ニーズ」は、顧客自身も把握できていないニーズであり、アンケートをするだけではわからない。その ため、行動観察やインタビューが必要となるが、手間や労力が多くかかり、その解釈も多様にできる。 最後は「インサイト」である。これは、顧客自身も気づけておらず、言語化もできない本音や感情・願いである。 顧客自身は自覚しておらず、製品・サービスの開発者などの他者が提案をしない限り認識できない。 Copyright © 2024 Jun SUTO All Rights Reserved. 38
機能的価値・情緒的価値・経験価値 製品・サービス開発を考える際、機能的価値・情緒的価値・経験価値という観点から検討することも重要となる。 機能的価値 商品やサービスが持つ具体的な機能や性能によって提供される価 値を指す。例えば、スマートフォンの場合、バッテリー寿命、カメ ラの画質、パソコンの処理速度など、 物理的な性能や効率に関連す る要素が該当し、主に数値で比較できるものとなる。 消費者は、製 品の機能が自身のニーズをどれだけ満たすかを基に判断することに なる。 情緒的価値 商品やサービスが消費者に対して提供する心理的・感情的な満足 や喜び、安心感などを指す。例えば、高級ブランドのバッグの場合 は、提供するステータス感やデザイン・ブランドへの共感、所有す ることによって得られる喜びなどが該当する。消費者は、製品やサ ービスを通じて得られる感情的な満足感に重きを置く。 経験価値 使う(購入)ことで起こる経験や 価値観の変化 情緒的価値 デザイン、ブランド、イメージ、 経験価値 商品やサービスを利用すること自体で得られる価値を指す。消費 者が製品やサービスを使用する過程で得られる全体的な体験や、使 用後の感想、社会的なつながりなどがこれに該当する。例えば、テ ーマパークでの楽しい時間や、農家民泊での地域住民との交流など が該当する。 Copyright © 2024 Jun SUTO All Rights Reserved. 世界観、利便性、感動、共感など 機能的価値 提供する基本機能、性能、材料、素 材、価格、品質、安心安全など 39
インサイト(=根源的欲求)の構造 機能的価値と情緒的価値とは分けられたものではなく、繋がっている。実際の行動の背景には直接的理由(機能的 価値)が隠れており、その背景には価値観・Being(情緒的価値)が隠れている。こうした要素を特定できる必要性 がある。 下の図を例にすると、実際の行動として「子どもに対するイライラ」があったとする。そして、その理由として、 子どもが帰宅すると部屋に戻ってゲームばかりしているからであり、それによって学校であったことを聞きたいがそ れができないという課題や、家族の時間が失われていることに対する不満感がある。つまり、「学校であったことを もっと聞きたい」「家族の時間がほしい」というのが、その人のインサイトとなる。 Copyright © 2024 Jun SUTO All Rights Reserved. 40
インサイト深堀観点 インサイトを深掘る観点では、以下の4つのポイントが重要である。これらのポイントを意識して深掘りすること で、顧客の潜在的なニーズや欲求を明らかにし、より価値のある製品やサービスの開発につなげることができる。 1.意識の奥に追いやられた不快要素は何か? 対象者の日常の中で繰り返される些細な不快要素について考える。これらは、解決するより慣れてしまった方が早 いと無意識に思い、特に改善しようとしていないことが多い。これを見逃さずに掘り下げることで、新たなインサイ トが得られる。 2.本人も忘れている「本当はこうしたい」は何か? 対象者が本当はこうしたいと感じているが、常識や大勢に合わせた方が楽なために無意識に考えないようにしてし まっていることを探る。これにより、顕在化していない潜在的なニーズを発見することができる。 3.その商品やサービスがない世界では何が困るのか? 対象者にとって当たり前に存在している商品やサービスがない世界を想像し、その際に浮き彫りになる「その商品 やサービスが提供する本質的な価値」について考える。これにより、その商品やサービスの真の価値を理解すること ができる。 4.大きなトレードオフがないか? 何かの目的を達成するために使用しているモノやサービスが、他の面で大きな犠牲を伴っていないかを考える。対 象者が「仕方がない」と思い込んで、疑問を持っていない要素に注目することで、改善の余地を見つけられる。 Copyright © 2024 Jun SUTO All Rights Reserved. 41
インサイト導出のポイント 顧客のインサイトを導出する際には、次の4つの要素を意識することがポイントである。これらの要素を意識する ことで、顧客の深層的なニーズや欲求を明らかにし、より価値のある製品やサービスの開発に繋げることができる。 1.目の前の人を徹底的に理解する 特に「この人は本当にそう思うのだろうか?」「きれいごとを言っているだけではないか?」という疑いの目を持 つことが重要である。顧客の言葉や行動の背後にある本音や真意を見極めるためには、深く掘り下げて理解する姿勢 が求められる。 2. 上位目的を限界まで問い続ける 実際の行動の背景に隠れている情緒的価値(感情のつながりや意図)を探るために、「何のために?」と問い続け ることが必要である。「なぜを5回」ほど繰り返し質問することで、表面的な回答の背後にある真の目的や動機を明 らかにすることができる。 3. 常識を捨てる 「もしこうだったらどうなる?」という前提では考えられない内容を検討することも一つの方法である。既成概念 にとらわれず、柔軟な発想で様々な可能性を探ることで、新しい視点やアイデアが生まれる。 4.願望を排除する 「こうあったらいいな」という思い込みや願望を排除し、現実に起こっていることを客観的に捉えることが重要 である。顧客の実際の行動や発言に基づいてリアルに想像し、偏見なく事実を理解する姿勢が求められる。 Copyright © 2024 Jun SUTO All Rights Reserved. 42
インサイト抽出トレーニング 目的・ねらい 実際の製品・サービスを、実際の行動・機能的価値・情緒的価値の構造をもとに分析し、インサイト抽出の方法を 体感してみる ワークプロセス・時間 Step❶ 製品・サービスを見て、実際の行動・機能的価値・情緒的価値を書き出す(3分) Step❷ チーム内でシートを共有する(1分) ※Step❶❷を、事例を変えて3回繰り返した 使用フレーム インサイト発見シート Copyright © 2024 Jun SUTO All Rights Reserved. 43
④共感を軸に顧客を理解する Copyright © 2024 Jun SUTO All Rights Reserved.
共感を通じた課題定義 共感を通じた課題定義とは、現場やユーザー・顧客の行動のありのままを観察し、彼ら自身が気づいていない不安 や悩み、課題を見つけ出し、インサイトを探り出して課題を特定する方法である。 共感には「Sympathize」と「Empathize」の2つの種類がある。 「Sympathize」は、実体験から相手に共感して、相手の感情を感じとる共感の方法である。この共感の方法は、 受動的なアプローチとなる。 「Empathize」は、実体験の有無に関わらず、想像の中で誰かに自分を重ね合わせる、(当事者になりきって)相 手の状況を深く理解する共感の方法である。この共感の方法は、能動的なアプローチとなる。 Copyright © 2024 Jun SUTO All Rights Reserved. 出所)イトーキオフィス総合研究所監修『デザイン思考ファシリテーションガイドブック』ほか. 45
共感フェーズで行うべきこと=デザイン思考における最重要事項 共感を通じた課題定義を行う上では、「テーマの確認/ユーザー定義」と「観察」を行う必要がある。 まず、「テーマの確認/ユーザー定義」の段階では、取り扱いたいテーマを設定し、具体的なユーザーや顧客、地 域を選定して調査対象を明確にする。 次に、「観察」の段階では選定した対象の行動や状況について詳しく調査する。エスノグラフィー(行動観察)、 フィールドワーク、グループインタビュー、ペアインタビューなどの方法を用いることで、多角的な視点からユーザ ーの実際の行動や問題を深く理解することができる。 共感を通じた課題定義は、ユーザーや顧客が直面する問題や不満を深く理解し、その根底にあるニーズを見つけ出 すことを目的としている。この手法により、ユーザー中心の製品やサービス開発が可能となり、最終的には高い顧客 満足度を実現することができる。 テーマの確認/ユーザー定義 観察の実施 Copyright © 2024 Jun SUTO All Rights Reserved. イトーキオフィス総合研究所監修『デザイン思考ファシリテーションガイドブック https://qiita.com/tsubasa_tanaka283/items/a9034f995c7bc8d75e23 46
行動観察とは 行動を可視化する手法として用いられるのが「行動観察」である。行動観察とは、新たな仮説を導出するための定 性調査手法であり、対象となる体験が発生している現場に実際に足を運び、そこで起きていることをありのままに観 察する方法である。 なぜ行動観察が必要となるのか。人はひとつひとつの動作を意識して行っているわけではなく、無意識のうちに行 動している。そのため、行動を観察してユーザーのありのままを理解し、対象者自身が気づいていない・声にならな い不安、悩み、不満、課題を見つけ出すためには、行動を可視化することが重要だからである。 この手法では、言葉だけでなく動作やその環境を実際に観察することが重視される。行動観察の目的は、人々の行 動の背後にある潜在的な心理を知ることである。これにより、ユーザーが日常的に直面している問題や不便さを深く 理解し、それに基づいた製品やサービスの改善が可能となる。 このように、行動観察はユーザーの潜在的なニーズを明らかにし、より良い製品・サービスの開発を支援するため の重要な手法として理解されている。 Copyright © 2024 Jun SUTO All Rights Reserved. 47
行動観察のメリット/デメリット 行動観察のメリットとデメリットは以下のようなものが挙げられる。 【メリット】 思いがけない発見ができる コンテクストの中で発見ができる 場と空間を共有することで共感が生まれやすい 【デメリット】 解釈に主観が混在する 時間と手間がかかる 協力者を見つけにくい ●思いがけない発見が できる ●コンテクストの中で 発見ができる ●場と空間を共有するこ ●解釈に主観が混在する ●時間と手間がかかる ●協力者を見つけにくい とで共感が生まれやすい Copyright © 2024 Jun SUTO All Rights Reserved. 48
行動観察の事例 AJINOMOTOの冷凍餃子 これまでのAJINOMOTOの冷凍餃子は、分量や作り方 が細かく書かれていたが、各家庭では作り方をほとんど 見ずに作られていることがわかった。そのため、水など を入れずに作れるような簡単なものにした結果、水や油 を入れなくても作れる冷凍餃子が誕生した。 写真) https://www.ffa.ajinomoto.com/) IKEA 本国のIKEAで行われていたもので、男性は目的の物だ けを見に行き、女性は様々な場所を周りながら買い物を するといった、男女によって買い物に対する向き合い方 が違うことがわかった。また、旦那さん(男性)は、会 計所で重い荷物を運ぶ要員やお金を払う要員としている こともわかった。そこで、旦那さんのための待合所を設 け、買い物をしている家族が会計所に着くとリモコンで 待合所で待っている旦那さんを呼ぶことが出来るシステ ムをつくったことで、お互いが気持ちよく買い物が出来 るように工夫がなされた。 写真) https://www.ikea.com/jp/ja/ Copyright © 2024 Jun SUTO All Rights Reserved. 49
行動観察の事例 大戸屋 これまでの大戸屋では、女性は1人で定食屋に入ること に抵抗感があったため、男性の顧客率が異常に高いこと がわかった。そこで、大戸屋は2階や地下に入口を置くこ とで「女性が1人で定食屋に入る瞬間」を見えないよう にした。これにより、女性の顧客率を高めることが可能 になった。 写真) ) https://www.ootoya.com/ NANOX これまでの洗濯洗剤は汚れをいかに落とすかに注力し ていたが、実際の顧客の行動を分析してみると、多くの 顧客は、汚れ落ち以上に、臭いを気にしていることが明 らかになった。 汗などの臭いだけでなく、室内干しした際に残る臭い などの無臭化にポイントを置いた開発を行ったことで、 顧客の満足度を高めることにつながった。 写真) https://nanox.lion.co.jp/ Copyright © 2024 Jun SUTO All Rights Reserved. 50
行動観察を行う前提 行動観察を行う上では、以下の4つの前提を意識して取り組むことが求められる。 ①先入観・固定観念は捨て、全体を俯瞰して事実を捉える 観察を行う際には、自分の先入観や固定観念を排除し、客観的に全体像を捉えることが重要である。 これにより、偏りのない純粋な観察結果を得ることができる。 ②複数の仮説を持つ 事前にいくつかの仮説を立てておくことで、観察の焦点を明確にし、多角的な視点からデータを収集できる。 また、仮説があることで、観察中に得られるデータの意味をより深く理解できる。 ③適切なターゲットを被験者にする 観察対象とする被験者は、研究の目的に適した人物を選ぶこと が重要である。対象者の選定が不適切だと、得られるデータの 信頼性が低くなるため、注意が必要である。 ④複数人で実施し、観察結果の振り返りと検証を繰り返す 観察に対する解釈はその人によって違うため、1人で観察する と主観的な解釈に寄ってしまう。そのため、複数人で行い、 結果を振り返りながら検証を重ねることで、主観的な解釈を避 け、より信頼性の高いデータを得ることができる。 Copyright © 2024 Jun SUTO All Rights Reserved. 51
何人に聞けば良いのか? なお、ユーザビリティ工学の観点では、「5人にインタビューすればユーザービリティ問題の85%が発見できる」 とされている。最低でも5人、理想的には12人ほどにインタビューや観察を行うことが推奨されている。 ターゲットが多い場合は、その観察も多く行うことになるため、可能な限りターゲットを絞ることが必要となる。 加えて、たった1人だけを設定したとしてもそのデータの有用性は低い。そのため、ある程度、比較できる人数で共 通点を見出していくことが重要となる。 Copyright © 2024 Jun SUTO All Rights Reserved. Jakob Nielsen (2000)「Why You Only Need to Test with 5 Users」 52
ジョブという考え方 なぜその顧客がその製品・サービスを購入するのか、それを通して何を得ようとしているのかについて深掘る時の 考え方のポイントの1つがジョブ理論である。 ジョブ理論では、顧客はある特定の商品を購入するのではなく、進歩するために、それらを生活に引き入れるとい うように捉える。この『進歩』のことを、顧客が片付けるべき『ジョブ』と呼び、ジョブを解決するために顧客は商 品を『雇用』すると理解する。 ジョブとは、顧客が「やらないといけない」ことや「やりたい」ことである。 製品・サービスを考えていく上で は、「自社の製品が他社と比べて優れているから/うちの製品じゃないとやりたいことができないから/トレンドだ から」などの視点も重要だが、「製品・サービスの特徴やスペックではなく、ユーザーが本質的にやりたいところ( Jobs to be done)、今やりたいことではなく、本質的にやりたいこと」などを考えていくことが重要になる。 J O B S Job ジョブ Objectives 目的 Barriers 障害 Solutions 代替解決策 顧客が「やらないと いけない」「やりた い」こと 「採用基準」を決定 づけるジョブの機能 的・感情的・社会的 な目的 ジョブを片づけるこ とを困難にする要因 現状の解決策として 用いている製品・サ ービスや「使いこな し」 Copyright © 2024 Jun SUTO All Rights Reserved. クリストン・Mクリステンセン他(2017)『ジョブ理論 イノベーションを予測可能にする消費のメカニズム (ハーパーコリンズ・ノン フィクション) 』ハーパーコリンズ・ジャパン 53
ワーク : 「なぜ、あなたは、その商品/サービスを選択したの?」 目的・ねらい 実際のある人が購入した製品・サービスを基に、その人がなぜ購入したのかを深堀りして聞き出してみることで、 相手の深層心理にある購入した理由を引き出してみる ワークプロセス・時間 Step❶ 最近、購入した製品・サービスどちらか1つ思い出し、それを買った理由を5つ書き出す(7分) Step❷ チーム内で1人がその製品・サービスを紹介し、他の人がそれを購入した 最も本質的な理由を書き出す(10分) ※受講生はインタビューを行う側になることがルールとして共有された 使用フレーム ジョブ発見シート Copyright © 2024 Jun SUTO All Rights Reserved. 54
5.実施風景 Copyright © 2024 Jun SUTO All Rights Reserved.
チェックイン・アイスブレイクの様子 はじめに、四万十町役場人材育成推進センター所 の吉村より本日の講座の期待が共有された チェックインでは、「名前、所属、今の気持ち、本 日の期待」を1人ずつ共有した アイスブレイクは、チームでパスタ麺・紐・テープ 等の物を使って高いタワーを作るワークが行われた 受講生はチームで協力して7分間で作成し、作戦会 議を5分間行った後、もう一度作成した 作戦会議では、土台をどのようにつくるか、高く するにはどうするか等を議論していた 講師からは、「とにかく形にすることが、実際の事 業においても重要になる」ことが共有された Copyright © 2024 Jun SUTO All Rights Reserved. 56
キーノートスピーチ:鷲谷氏の講演の様子 講演は、鷲谷氏の事業に関する動画を見るところか らスタートした 鷲谷氏からは事業の紹介や、その事業における自分 軸について、顧客のニーズの見つけ方が語られた 受講生は、鷲谷氏の事業のストーリーや詳細なイン サイトの発見の仕方について集中して聞いていた 受講生および学生メンターから質問があり、活動 における具体的な話が聞き出された 鷲谷氏は、「地域の声を聞き出そうとする理由」 「支えとなった人の存在」について語られた 講師との対話も行われ、“丁寧な地域への理解の重 要性”についてなどが語られた Copyright © 2024 Jun SUTO All Rights Reserved. 57
インプットの様子 インプットは、テーブルでグループをつくり2時間 程度行った インプットのなかでは、30分程度の簡単なワーク も挟んで行われた 内容は、ペルソナやインサイト、行動観察の方法な どについて、事例や最新理論を混じえて伝えられた また、各受講生が調べてきた・想定しているペル ソナに関する資料も配布された 受講生は、持参したノート等に書き込みながら、 熱心に聞いているところが印象的であった 学生メンターと受講生が、一緒のテーブルでインプ ットを聞く様子 Copyright © 2024 Jun SUTO All Rights Reserved. 58
ワーク:ペルソナ再設計ワーク 受講生は、自身の調べた・想定しているペルソナ についてチーム内で共有した。 聞き手の学生メンターは、シートに受講生のペルソ ナについてまとめていった 受講生のペルソナの共有を聞く受講生と学生メンタ ーの様子 学生メンターは、必要に応じて質問や確認を行いな がら対話を行った 受講生が学生メンターとの対話のなかで、ペルソ ナについて深く考えている場面が印象的であった 終わったチームでは、再度受講生のペルソナをシー トに落とし込む作業が行われた Copyright © 2024 Jun SUTO All Rights Reserved. 59
ワーク:インサイト抽出トレーニング ここでは、具体的な製品・サービスを基に、イン サイトを想像するワークが行われた 受講生と学生メンターは、機能的/情緒的価値・価 値観を用紙にまとめていった 各要素をシートにまとめていく学生メンターと受講 生の様子 最終的には、チーム内でお互いの考えやそれぞれの 内容を確認した 他の人のシートを見てみることで、様々な観点か ら多角的に想像することができた様子であった なかには、同じような内容を書く受講生や学生メン ターもおり、その際には笑みがこぼれていた Copyright © 2024 Jun SUTO All Rights Reserved. 60
ワーク : 「なぜ、あなたは、その商品/サービスを選択したの?」 受講生と学生メンターは最近買った製品・サービ スを思い出し、購入した理由をシートにまとめた シートには、直近で買ったお菓子や飲み物、利用し た公共機関などについて書かれていた 製品・サービスを購入または利用した理由をシート にまとめていく学生メンターと受講生の様子 インタビューでは、学生が製品・サービスの購入理 由についてその時の状況などを踏まえて語っていた 受講生は「なぜそれでないとダメだったのか?」 「その時の心情は?」などの質問が行われた 短い時間ではあったが、その人が思ってもいなかっ た本質に迫る理由や背景が引き出されているところ が印象的であった Copyright © 2024 Jun SUTO All Rights Reserved. 61
問い合わせ先 四万十町役場人材育成推進センター 担当:中井智之・吉村愛 〒786-0008 高知県高岡郡四万十町榊山町3番7号 E-mail:103060@town.shimanto.lg.jp TEL:0880-22-3163 FAX:0880-22-3345 高知大学地域協働学部コミュニティデザイン研究室(須藤順研究室) 担当:准教授 〒780-8520 須藤順 高知県高知市曙町2-5-1総合研究棟1階 Web:https://www.communitydesign-kochi.jp/ E-mail:j.suto@kochi-u.ac.jp TEL:088-888-8077 FAX:088-888-8043 ※本講座に関する問い合わせは上記までお願いいたします。 ※本資料の無断での配布、外部組織や個人への配布・閲覧、及び二次使用は、固く禁止させて頂きます。 Copyright © 2024 Jun SUTO All Rights Reserved. 62