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title: 20260924 行政DXの本質と未来
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author: [Toroy1913705](https://docswell.com/user/5751015680)
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description: 政府DX 化の本質と未来について提言したい
published: September 27, 26
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行政 DX の本質と未来
―AI 時代への人生フォルダが開く未来―
2026 年 9 月 25 日
堀 越 政 美
本書は、行政 DX の現状と課題を明らかにし、真に人に寄り添うデジタル行政の実
現に向けた道筋を示すものです。
全体は八つの章で構成されています。第 1 章では「利用率 84.3%」の数値の裏側に
ある実態を解き明かし、DX の本質と進めるべき順番を示します。第 2 章では「紙の
デジタルコピー」やデータの分断といった構造的な課題を整理し、第 3 章では「一度
提出した情報は再提出しない」という原則を軸に、事務を根本から簡素化する方法を
述べます。第 4 章ではエストニアやシンガポールなど諸外国の成功と失敗の事例
から学ぶべき教訓をまとめ、第 5 章では AI を「人を支える道具」として活用する行
政の姿を描きます。第 6 章では公的年金制度の見える化と自動化による信頼回復
を提案し、第 7 章では長期的な実行計画と役割分担を示します。第 8 章では本書
の核心となる「人生フォルダ」の構想を詳しく説き、国が「預かる」のではなく本人が
「管理する」情報の新しい仕組みを提言します。
技術はすでに実現可能です。変革の鍵は技術ではなく発想の転換です。本書を通
じ、「数字のための DX」から「人のための DX」へと歩みを進めるきっかけとなれば
幸いです。併存させ格差を防ぎます。技術は実現可能であり、鍵は発想の転換
です。一人ひとりの負担を減らす —— その積み重ねが未来をつくりま
目次
まえがき
第 1 章 政府 DX の誤解と本質
第 2 章 日本の行政が抱える構造的課題
第 3 章 事務制度を根本から簡素化する
第 4 章 諸外国の事例 ―成功と失敗に学ぶ
第 5 章 AI 時代の行政 ―再設計から未来へ
第 6 章 公的年金制度の DX ―生活の基盤を支える仕組みの再設計
第 7 章 実行計画と推進体制
第 8 章 人生フォルダ ―自分らしさと絆を守る、永遠の宝箱
むすび
参考資料料・


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まえがき
本書は、行政のデジタル化 DX が目指すべき本当の姿を描くものです。
「オンライン利用率 84.3%」――デジタル庁が令和 6 年 7 月に公表した 2024 年度実績の
数値です。この数字を聞いて、皆さんは日本の DX が順調に進んでいると感じるでしょうか。
報道や行政の発表ではこの率が強調され、着実な成果を示しているかのように伝えられてい
ます。けれど、その内訳を詳しく見ると、実態は大きく異なります。
この高い数値を押し上げているのは、
図表 1 行政手続きのオンライン化と利用状況
全事務処理数 43 億件のうち、国の専
用システム（NACCS、e-Tax、e-Gov、
ポータルサイト等）や電子メールの件
数が入っているためです。
では、私たちが日常的に接する手続
はどうでしょうか。引っ越しの届出、出
生・死亡届、住民票や証明書の交
付、児童手当や各種福祉給付の申
請、こうした最も生活に密着した手続
に限ると、オンライン利用率はわずか
30.0%にとどまります。10 件のうち 7 件は今でも紙で、窓口で、または郵送で行われている
のが現実です。
「オンラインで申請できる」ことと「実際に使われる」ことは全く違います。選択肢は用意されて
いても、不便が多ければ意味がありません。送信しても後から書類の郵送を求められ、入力
項目が多く分かりにくく、スマートフォンでは操作しにくい、そうした小さな不便が積み重なり、
「結局窓口の方が確実だ」と人々に判断させています。特に高齢者やデジタル機器に不慣れ
な人にとっては、今でも市区町村の窓口が、分からないことを尋ねながら手続を進められる唯
一の安心できる場所なのです。
本書が描くのは、こうした「数字のための DX」を「人のための DX」へ転換する道です。同じ
情報を何度も書かされることがなくなり、自分の年金記録がいつでも確認でき、困ったときに
は必ず人が相談に応じてくれる社会、それが本来目指すべき姿です。技術が先にあるのでは
なく、一人ひとりの暮らしが先にあるべきです。
核となるのは「人生フォルダ」の構想です。出生から老後までの自分の情報を自分が管理し、
必要なときに必要な範囲だけ共有します。国が独占するのではなく「預かる」にとどめ、本人
の同意なしに情報が利用されることのないようにします。窓口での対面支援も併存させ、誰一
人取り残されることのない社会を目指します。
この仕組みは決して絵空事ではありません。技術的にはすでに実現可能であり、エストニア
やシンガポールなど世界の先進的な事例がそれを示しています。実現できないとしたら、それ
は技術の問題ではなく、発想の転換がまだ十分でないだけです。
「何のために変えるのか」の原点に立ち返り、小さく始め、一歩ずつ改善していくことが重要で
す。一人ひとりの負担を減らし、「ここに住んでいてよかった」と思える暮らしを作る必要があり
ます。その積み重ねが、これからの日本の未来を形作っていくと信じています。


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第 1 章 政府 DX の誤解と本質
1.1 広まる三つの誤解
「政府 DX」という言葉は、今や行政のあらゆる場面で使われるようになりました。各省庁の方
針、予算案、ニュース報道等、どこを見ても DX という言葉が登場します。しかしその意味はし
ばしば誤って理解され、表面的な取り組みだけが先行し、本当に必要な改革が置き去りにさ
れているのが実情です。最も多い誤解は三つに整理することができます。
第一の誤解は、DX が単なる電子化であるというものです。紙の申請書をスキャンして PDF
に変換する、ウェブサイトに入力フォームを設ける。こうした作業が DX だと思われていま
す。けれどこれらは電子化であって、DX の本質ではありません。従来から長年続いてきた業
務の流れを変えることなく、媒体だけを紙からデジタルに置き換えても、根本的な改善は生ま
れません。記入しなければならない項目の数も、添付しなければならない書類の種類も、窓
口で確認を受ける手順も、何も変わらないのであれば、利用者にとって負担が減るはずがな
いのです。職員側でも、届いたデータを印刷して目視で確認し、別のシステムに手で打ち込み
直すという作業が続けば、かえって手間が増えたと感じることさえあります。「紙より早く簡単
になった」という実感できて初めて、意味のある変革と言えるのです。
第二の誤解は、DX がシステムの新規導入であるという考え方です。最新のクラウド技術を
採用し、高性能なサーバーを導入し、最先端のソフトウェアを使う。それが DX の成否を決め
ると思われがちです。もちろん技術基盤を整えることは重要です。けれどシステムというもの
は、結局のところ業務の内容を映し出す鏡のようなものです。複雑で例外だらけの手順をそ
のまま新しいシステムに組み込めば、複雑なシステムが出来上がるだけです。技術が古いか
らレガシーなのではなく、整理されていない業務がそのままシステムに載せられるから、保守
が難しく、改修に莫大な費用がかかる「レガシーシステム」になってしまうのです。多くの現場
がこの根本的な事実に気づかず、技術の更新だけを繰り返しています。
第三の誤解は、DX の目的が職員の業務効率化にあるというものです。長時間の単純作業
から職員を解放し、働きやすい職場にすることは重要な目標です。しかしそれ自体が目的で
はありません。職員の負担が減った結果、その時間と能力が、国民一人に向き合う時間に充
てられて初めて意味があるのです。「職員が楽になる」という視点だけでシステムが設計され
ると、利用者にとって不便な手続が当たり前になり、「行政は自分たちのことを分かってくれな
い」という不信感が募ることになります。DX の真の目的は、サービスを受ける側の体験を良く
すること、その一点に尽きます。
1.2 政府 DX の本質とは何か
では、政府 DX の真の姿とは何でしょうか。一言で言えば、「紙の書類を前提として設計され
た制度全体を、デジタル情報を前提とした仕組みへ根本的に作り替える」ことです。
日本の行政制度は、明治以来およそ 150 年にわたって、紙による確認、押印、保管を基本に
築かれてきました。申請者が書類に記入し、署名または押印をして窓口に提出します。職員
が内容を確認し、上司が決裁します。承認された書類は保管庫に収められ、長年保存され
る。この一連の流れが、法令、通達、事務手引き、組織体制、そしてシステムのすべてに染み


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込んでいます。DX とは、この根本的な前提そのものを転換する取り組みなのです。
この大きな転換を実現するためには、三つの層で改革が同時に進まなければなりません。最
も基礎となるのは法令の改正です。「紙の原本を提出しなければならない」「本人が来庁しな
ければならない」といった規定を一つひとつ見直し、デジタル情報で確認できる仕組みへと置
き換えていかなければなりません。次に業務手順の再設計です。紙の書類を処理するために
設けられた確認ルートや承認段階を見直し、デジタル情報の流れに併せた合理的な手順へ
と組み替えます。そして三つ目がデータ構造の統一です。氏名、住所、生年月日といった基
本的な情報の定義と表記ルールを全国で統一し、どのシステムでも同じ情報を同じ形で扱え
るようにします。これがそろって初めて、真の意味でデジタル化された行政が実現するので
す。
1.3 改革の順番が最も重要
三つの層の改革には、絶対に守るべき順番があります。
事務制度の見直し → 業務の標準化 → データの統一 → システム構築
「事務制度の見直し → 業務の標準化 → データの統一 → システム構築」
この順番を逆にしては絶対になりません。先にシステムを作ってしまい、後から業務をシステ
ムに合わせようとすると、不自然で複雑な手順が生まれ、例外処理が無限に増えていきま
す。「このケースはどうするのか」「前例と少し違う場合はどう対応するのか」という、 そうした
個別の事情をすべてシステムに詰め込もうとすると、費用は膨張し、操作性は低下し、結局
誰も使わないシステムが出来上がります。
まず事務の流れを整理し、共通のルールを定め、データの形を整える。そうして初めて「シス
テムに何を載せるべきか」が明確になるのです。過去の多くの大規模プロジェクトがこの順番
を間違え、「とにかく早くシステムを作ろう」とした結果、莫大な費用を投じながら使いにくいシ
ステムを生み出してきました。急がば回れ、この原則は大きな改革ほど重要になります。
1.4 数値の構成を正しく理解する
デジタル庁が公表する行政手続のオンライン利用率 84.3% の背後には、数値の構成に関す
る明確な実態が存在します。この数値には、NACCS（貿易関連手続）、e-Tax（税務申告）、eGov（各種届出・許認可）といった企業・事業者向けの大規模システムによる処理件数が含ま
れており、さらに府省ごとに運用される数千種類にのぼる個別システムの実績も合算されて
います。加えて、「オンライン」の集計区分にはメールによる提出分も含まれていることから、
84.3% がすべてシステムを利用した完全デジタル手続ではない点に留意が必要です。
一方、住民に身近な市区町村レベルの状況は大きく異なります。自治体における行政手続の
オンライン化率・利用率はいずれも約 30% にとどまっており、その進展は依然として限定的
です。しかも、「オンライン化済み」とされる手続の多くが、実際には電子メール送付に対応し
ているだけで、専用フォーム、データ自動処理、他システム連携などは整備されていません。
実質的なデジタル化は国よりもさらに遅れています。しかも、電子メールは、体育館、会議
室、公民館、グラウンド、図書館、福祉施設…の予約がほとんどです。


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図表 3 行政事務手続きオンライン化の実態
その結果、自治体手続の大半は「入
口だけデジタル化され、中身は紙の
時代と変わらない」状態に留まって
おり、職員による手作業転記、紙原
本確認、システム連携の欠如など、
構造的な非効率が解消されていま
せん。
図表 2 役所の擬似オンライン
1 自治体当たりの手続件数は規模
によって 500 件から 2,000 件の幅
があり、全国 1,741 の自治体を合
計すると 100 万件から 300 万件にのぼる計算となります。
私たちが日常生活の中で直接利用する転居届、戸籍証明書の交付、各種給付の申請といっ
た手続は、これら全国の手続総件数のわずか 4.4% を占めるに過ぎません。この住民向け
手続の利用率が 30% であっても、84.3% という全体の平均値に対する影響は極めて小さく、
高い数値を押し上げているのは、実質的に企業や事業者向けに構築された大規模システム
であるのが現状です。
こうした構造から、「自分の周りでは DX の進展が実感できない」という声が聞かれるのは決
して不自然ではありません。国民一人ひとりが「自分事」として接する手続が、統計全体の中
では極めて小さな割合を占めているに過ぎないからです。この実感と統計との構造的な乖離
を隠すのではなく率直に示すことこそが、真の改革の第一歩です。数値を飾ることに力を注ぐ
のではなく、真に改善が必要な分野、すなわち住民に直結する行政手続のデジタル化に焦点
を定めることができれば、日本の DX は確実に前進します。


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第 2 章 日本の行政が抱える構造的な課題
2.1 「紙のデジタルコピー」現象
オンライン申請が始まったからといって、内部の仕事が変わったわけではありません。それが
最も多く見られる実情です。オンラインで届いたデータを職員が印刷し、紙の書類と同じよう
に確認し、承認を得て、最後にまた紙に出力して保管庫に収める。これでは電子化のメリット
が生まれるはずがありません。申請者は自宅から送信できるだけで、求められる情報の量も
種類も以前と変わらず、職員の作業負担はむしろ増えているのです。
問題は技術ではなく、仕事の進め方、頭の使い方です。デジタル情報は画面上で処理し、画
面上で完結させること、そうした業務の流れが定着して初めて、真の効率化が始まります。
「紙の方が確実だ」という安心感は分かります。けれどその安心感が、新しい仕組みを育てる
ことを阻んでいるのであれば、少しずつでも変えていかなければなりません。
2.2 分断されたデータ
最も根深い課題の一つがデータの分断です。同じ「住所」という情報でも、住民基本台帳では
「1 丁目 2 番 3 号」と記載され、税情報では「一丁目二番三号」、年金記録では「1-2-3」と
なっている。そうした微妙な違いが日常的に発生しています。表記のルールが統一されてい
ないため、コンピューターは同じものと認識できず、職員が目で見て一つひとつ確認しなけれ
ばなりません。
この結果、私たちは同じ情報を何度も何度も記入させられます。引っ越し一つを取っても、転
入届、転出届、世帯変更届、児童手当の住所変更、介護保険の手続、水道・ガスの届出、
それぞれに住所と氏名を書かなければなりません。役所の側でも、膨大な時間をかけて書類
を突き合わせ、確認し、時には不整合が見つかって手続が差し戻される。これらすべてが、デ
ータの定義が統一されていないことから生まれているのです。
データを連携させることは技術の問題ではありません。「同じ意味を持つ言葉を同じ形で使う」
という、ただそれだけのことができないのです。長年の慣行と縦割りの組織の壁のために、実
現できていないのです。定義をそろえることが先決で、それができていなければ、どれほど高
度な技術を導入しても正しく情報がつながることはありません。
2.3 レガシーは時間ではなく複雑さから生まれる
「レガシーシステム」と聞くと、古いプログラミング言語や旧式のコンピューターを想像されるか
もしれません。もちろんそれも問題の一つですが、本当の問題は別のところにあります。レガ
シーシステムの最大の特徴は「仕様が誰にも分からなくなっている」ことです。
制度改正のたびに例外処理が上書きされ、「この場合は A、そうでなければ B、ただし～の
場合は C」という条件分岐が無数に積み重ねられ、いつ、なぜ、そうなったのか、元の設計が
見えなくなっているのです。これは古いから生まれるのではなく、複雑な業務を整理しないま
まシステムに載せ続けてきたから生まれるのです。
政府全体の基幹系業務システムの刷新には、今後 10 年間で約 10 兆円規模の費用が必
要になるとの試算が複数の調査から出されています。公的年金のシステムだけを見ても、構
築に数千億円、年間の維持費に約 500 億円が費やされています。クラウド化が進められて
も、根本的に業務の流れを見直すことが伴わなければ、この費用構造が大きく変わる見込み


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は薄いままです。
図表 4
レガシー問題の主要指標
2.4 マイナンバーカードの現状 — 普及率と利用のギャップ
総務省の 2026 年 1 月現在の発表によると、マイナンバーカードの普及率は全国平均で約
80%に達しています。多くの人が取得し、身分証明書として使えるようになりました。その結
果、マイナ保険証の利用 68%（厚生労働省 2026 年 4 月発表）や e-Tax での利用約 80%（国
税庁 2026 年 3 月発表）が急速に伸びています。しかし、その他の日常生活に関する事務手
続での活用はまだまだの状態です。
カードを持っていても、暗証番号が分からない、使う機会がない、という人が少なくありませ
ん。「カードがあればすべて済む」と聞いていたのに、実際に窓口に行くと別の証明書を求め
られたという声が今でも多く聞かれます。保険証との一体化は進められていますが、資格確
認書を利用する人が 30%以上もいます。つまり配布の目標は達成されつつあっても、情報を
つなぎ手続を簡単にするという本来の目的が、まだ人々の実感に届いていないのです。
2.5 自治体ごとの「個別最適」が生む非効率
全国には 1,741 の市区町村があり、それぞれの地域の実情に併せて事務を運用していま
す。その多様性は日本の強みの一つです。けれど、共通化できる部分まですべて個別に作っ
ていては、全体の負担は膨大になります。
たとえば同じ「転入届」一つを取っても、記入する項目の順番、確認する書類の種類、処理に
かかる時間が、それぞれの自治体で少しずつ異なっています。これらの事務を支えるシステ
ムも別々に開発され、別々に保守されているため、全国で同じような機能が数千回繰り返し
作られているのです。
地域の自主性を尊重することと、無駄な重複を続けることは違います。共通で使える基盤を
整え、それを活用しながら地域ごとの特色を活かす、そうしたバランスの取れた仕組みが求
められています。浮いた予算は、直接住民に接するサービスの質を高めるために使われるべ
きです。
2.6 デジタル化が進むほど広がる格差


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オンライン中心の社会が進むにつれ、スマートフォンの操作に不慣れな高齢者、インターネッ
ト回線が安定していない地域、端末を持つことが経済的に難しい人々、 いわゆる「デジタル
デバイド」の問題が深刻になっています。
総務省の調査によると、65 歳以上のインターネット利用率は約 75% にとどまり、75 歳以上
ではさらに低くなります。年齢が上がるにつれて、利用できる人の割合が下がっていくので
す。また人口減少が続く地域では、光回線の整備が遅れ、携帯電話の電波が届きにくい場所
も少なくありません。
行政が「オンラインで手続を済ませてください」と案内するようになると、それができない人は
「自分だけが取り残されている」と感じ、行政との距離がますます遠くなってしまいます。窓口
が縮小され、電話がつながりにくくなる、そのような姿は、公平な社会とは言えません。
デジタルデバイドへの対応は、後から付け加える「副次的な課題」ではありません。最初の設
計段階から一体的に考えるべき、本質的な要件です。オンラインでもオフラインでも、同じよう
にサービスが受けられる、その両方の道を同時に整備していくことが、持続可能な社会の基
盤となります。
第 3 章 事務制度を根本から簡素化する
3.1 Once-Only：一度提出した情報は再利用する
世界中の先進的なデジタル行政で採用されているのが「Once-Only」です。一度提出した情
報は、二度と提出しなくてもよいという原則です。現在の日本では、引っ越し一つを取っても、
同じ住所や氏名を何十回も書かなければなりません。それらはすべて、どこかの機関がすで
に把握している情報ばかりです。
Once-Only の仕組みでは、住所や氏名、
図表 5 Once Only の原則
生年月日といった基本情報を共通のデー
タ基盤で管理します。どれか一つの手続で
情報を届け出ると、関連する他の手続にも
自動的に反映されるのです。引っ越しの届
出をするだけで、年金、健康保険、介護保
険、児童手当、水道・ガスの住所変更がす
べて済む —— それが当たり前になる世界
です。
もちろん「それではプライバシーが心配」という声が上がるでしょう。その不安に応えるために
は、情報を扱うルールを厳格に定める必要があります。誰がどの情報にアクセスできるかを
明確にし、目的外の利用を禁止し、いつ誰が情報を見たのかの履歴を本人が確認できるよう
にすることも大事です。こうした仕組みが整って初めて、人々は安心して情報を預けることが
できます。
また重要なのは、すべての情報を一箇所に集めるのではないということです。それぞれの機
関が情報を保有しながら、必要なときに安全に参照し合う仕組みが必要です。エストニアなど
で実践されているこの方式では、「集積」と「共有」が明確に分けられています。情報を一つに


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集めることが安心につながるわけではなく、ルールに基づいて適切に管理されることが安心
につながるのです。
3.2 「紙原本」から「デジタル原本」への転換
デジタル化を阻む大きな壁の一つが「紙の原本でなければならない」という固定観念です。確
かに長い間、紙に署名や押印をしたものが最も確かな証拠とされてきました。けれど今は、電
子署名やタイムスタンプを使うことで、デジタルデータにも改ざんされていないことを証明する
仕組みが十分に成り立っています。
鍵となるのは、書類をスキャンして画像にするのではなく、「最初からデジタル情報として発行
し、それを正式な原本として扱う」ことです。戸籍の証明書、税の証明書、各種資格の証明書
等、これらをデジタルで発行し、それをそのまま他の手続で使えるようになれば、役所に証明
書を取りに行く手間も、受け取った書類を確認する手間も一気になくなります。これを実現す
るためには、紙原本主義を前提とした法令や運用を一つひとつ見直していく必要があります。
3.3 共通 ID で本人確認を一本化する
今は行政のサービスごとに違う ID やパスワードを求められます。年金の記録を見るための
ID、税金の手続をするための ID、子育て支援の手続をするための ID 等、それぞれ別々で、
覚えるだけでも大変です。これを一つの共通 ID にまとめることができれば、利用者にとっても
行政にとっても大きな負担軽減になります。
日本ではマイナンバーカードと公的個人認証が、その共通 ID の基盤となるものです。これを
徹底的に活用することで、一度ログインすれば複数のサービスが利用でき、氏名や住所とい
った基本情報は自動的に表示され、改めて記入する必要がなくなります。保険証や免許証を
別々に提示することなく、本人確認が完了するようになります。各省庁がそれぞれ認証システ
ムを作る必要がなくなるため、国全体の費用も大幅に削減されます。
シンガポールの Singpass は、まさにこの仕組みを国全体で実現した例です。一つの ID で
ほぼすべての行政サービスにアクセスでき、基本情報は自動表示されます。それが当たり前
になっています。日本でも同じように、共通の鍵ですべてのサービスにアクセスできる世界を
目指すべきです。
3.4 API 連携で「入力」を最小限にする
API（Application Program Interface） とは、システム同士が直接データを受け渡す仕組みの
ことです。たとえば転居の手続で新しい住
図表 5 API 連携基盤
所を一度入力すると、その情報が年金、
健康保険、介護保険、児童手当のそれぞ
れのシステムに自動的に伝わる、これが
API 連携です。
目的はシステム同士がつながること自体
ではなく、人が同じ情報を何度も打ち込ま


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なくて済むようにすることです。安全に情報を受け渡すためのルール作りが先決で、どのシス
テムがどの情報を参照できるのか、アクセスした履歴をどう記録するのか、不具合が起きた
場合の責任はどこにあるのか。こうした枠組みを先に定めてから技術的な接続を進めること
が、長く安心して使える仕組みを作る秘訣です。
3.5 例外を「標準のパターン」に整理する
「うちの場合は特別なケースだから」「前
例とは少し違う」、 こうした例外が積み重
なると、事務はどんどん複雑になり、担当
者の経験だけに頼る運用になってしまい
ます。けれど、一つひとつの例外をよく見
ていくと、似たようなケースがたくさん集ま
っているだけのことが多いのです。
図表 6 例外処理の標準化
本人が手続に来られない場合、書類に不備があった場合、状況が途中で変わった場合等、
それぞれの代表的なパターンを整理し、それぞれに必要な手順と確認事項を定めておけば、
「どうするんだっけ」と迷う時間は大幅に減ります。経験の浅い職員でも一定の水準で事務が
できるようになり、AI による支援もしやすくなります。
例外が多いから標準化は無理だと諦めるのではなく、例外をパターンに整理する —— その
作業こそが、事務を根本的に簡素化する第一歩です。
第 4 章 諸外国の事例 ―成功と失敗に学ぶ
4.1 エストニア：「つなぐ」仕組みから始めた国家
行政 DX の成功例として常に引き合いに出されるエストニアですが、最初から完璧なシステ
ムがあったわけではありません。同国が最も先に作ったのは、巨大な中央データベースでは
なく、分散したデータベース同士を安全につなぐための共通ルールと基盤でした。
それが X-Road と呼ばれるデータ交換基盤です。各機関がそれぞれ情報を管理しながら、
必要なときに必要な情報だけを安全に取り出して利用できるようにしました。この仕組みによ
って、一気に全国のシステムを作り替え
図表 7 X-Road（エストニア）
ることなく、段階的にデジタル化を進める
ことができました。
現在では行政手続の 99% がオンライン
で完結し、国の試算によると年間約
1,345 人年相当の事務時間が節約され
ています。住民票の取得、法人の設立、
不動産の売買、選挙の投票まで、スマー
トフォン一つで済ませることができます。
特筆すべきは出生後の自動手続で、子供が生まれると出生登録と同時に各種手当の手続が
自動的に行われ、親が何度も申請に行く必要がありません。「行政が人に併せて動く」、それ
が当たり前になっているのです。


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教訓は明確です。技術よりも先にルールと基盤を作る。情報をどう保管し、誰がアクセスし、
履歴をどう記録するか —— この土台がしっかりしているからこそ、新しいサービスを次々に追
加していくことができます。
4.2 シンガポール：共通 ID が変えた体験
シンガポールでは、Singpass という一つ
の ID がすべての行政サービスの入り口
になっています。さらに MyInfo という仕
組みにより、氏名、住所、家族構成といっ
た基本情報が申請画面に自動的に表示
され、利用者は変更があった部分を確認
するだけで済むようになっています。同じ
情報を何度も書く負担が根本的になくな
り、申請の手間は劇的に減少しました。
図表 8
基盤デジタル機構（シンガポール）
公的積立型年金制度 CPF も特徴的です。給与の約 37% が本人と雇用主から積み立てら
れ、老後の生活資金だけでなく、住宅購入や医療費にも利用できます。自分の口座に積まれ
た金額が常に可視化されており、「自分の資産」としての実感が強い仕組みになっています。
Singpass や MyInfo が一朝一夕にできたわけではありません。長い時間をかけて信頼を築
き、少しずつ利用範囲を広げてきた結果が今日の姿です。最初から完璧を目指さず、使いな
がら改善していく、その姿勢が長く愛されるサービスを育てるのです。
4.3 デンマーク：「デジタルが当たり前」の社会
デンマークでは 2010 年代初頭から国家的なデジタル戦略を進め、現在では住民の 8 割以
上が Digital Post を通じて行政からの連絡を受け取り、各種手続をオンラインで完了させて
います。特徴的なのは段階的な義務化で、最初は任意利用から始め、徐々に範囲を広げて
いきました。現在では原則として行政からの通知はデジタルで行われますが、高齢者や障が
い者など利用が難しい人には個別の支援体制を並行して整備し、誰一人取り残さない配慮
が徹底されています。
4.4 米国 Healthcare.gov：制度が固まらないまま作られたシステム
先進国の DX 事例の中で、最も広く教訓として引き合いに出されるのが米国の医療保険サ
イト Healthcare.gov の失敗です。
Healthcare.gov は、オバマ政権が推進した医療保険改革（Affordable Care Act：ACA）の中核
として 2010～2023 年かけて構築されました、国民がオンラインで保険加入・補助金計算・所
得判定を行うための全国ポータルです。目的は、複雑な保険制度を国民が直接扱えるように
し、未加入者を減らし、保険市場を活性化することにありました。制度上は、連邦政府と州政
府が役割を分担し、所得情報・税情報・保険会社データを横断的に連携する必要があり、極
めて複雑な事務制度をデジタルうえで統合する巨大プロジェクトでした。


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米国の医療保米国の医療保険制度は、民間保険と公的保険が併存する世界でも
最も複雑な仕組みで、国民皆保険制度を持たないことが最大の特徴です。これは、
民間保険（雇用主提供・個人加入）と、公的保険（Medicare・Medicaid など）が組み
合わさった混合型制度です。保険料、税金、自己負担（out-of-pocket）など複数の
財源で成り立ち、国民の多くは複数の制度を跨いで医療を利用しています。
しかし、2013 年 10 月の公開初日、Healthcare.gov は事実上「崩壊」しました。アクセス集中で
はなく、想定よりはるかに低いアクセス数でもシステムが耐えられず、ログイン不能、画面表
示不能、応答遅延、エラー連発が全国で発生しました。原因は技術的な不具合ではなく、制
度要件の未整理、仕様変更の連続、統合管理の欠如、テスト工程の省略、未完成機能の強
行公開など、プロジェクト管理の構造的失
図表 9 医療保険ポータルサイト
敗にありました。複雑な制度を整理しない
まま巨大システムを構築した結果、制度
の複雑さがそのまま技術的負荷となり、
公開初日に破綻したのです。
混乱は数週間続き、国民は保険加入がで
きなくなり、政治的にも大きな批判を浴び
ました。政府は緊急対応として Google を
中心に Oracle、Red Hat、Mozilla 等のシリ
コンバレーの技術者を外部専門家チームとして投入し、システムの全面的な再構築を実施し
ました。結果として、追加費用は総額 20～30 億ドル規模に膨らみ、米国政府の IT ガバナン
スの弱さと、制度設計を置き去りにしたデジタル化の危険性が明確に露呈しました。
それでも、最終的に Healthcare.gov は改善され、現在は安定稼働しています。しかし、この成
功は「最初から正しく作った」結果ではなく、公開後の大規模な修復と再設計によってようやく
機能したに過ぎません。つまり、制度の複雑さを整理せずにシステム化を急ぐと、国家規模の
IT 投資でも簡単に破綻するという事実を示す象徴的な事例となりました。
なぜこれほどまでに深刻な問題が生じたのか。調査の結果、最も根本的な原因は「制度の詳
細が決まらないままシステム開発が先行した」ことでした。法律は成立していたものの、保険
料の計算方法、補助金の支給ルール、データを受け渡す連携先の仕様 等、これらの詳細が
開発期間中に次々と変更され、そのたびにシステムの根本部分を作り直す事態になりまし
た。また、複数の業者が同時に開発を進めていたこともあり、連携部分で不具合が多発し、
全体の動作が不安定になったのです。
米国政府監査院（GAO）は、以下の点を問題として指摘しています。
・要件が十分に確定していない段階で契約を進めた
・要件変更が多かった
・監督・ガバナンスが不十分


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・公開直前まで準備状況の検証が不十分
数値をみると、
・FFM の義務額：2011 年 9 月の 5,600 万ドル → 2014 年 2 月には 2 億 900 万ドル超
・データハブ：3,000 万ドル → 8,500 万ドル近く
・2014 年 3 月時点の関連システム開発義務額：約 8 億 4,000 万ドル
となっており、「大幅なコスト増と再開発を招いた代表的事例」となりました。
Healthcare.gov の失敗と再建は、行政 DX において最も重要な教訓を示しています。
制度を先に簡素化し、事務制度を再設計し、業務とデータを標準化した後にシステムを作る、
という順番を誤れば、どれほど巨額の予算を投じて
図表 10 オバマケアの成功と失敗
も、行政サービスは国民に届きません。
この失敗から私たちが学ぶ教訓は極めて明確で
す。「何を作るのか」が定まらないうちに技術的な構
築を始めてはなりません。仕様が頻繁に変わる状
況では、どれほど優れた技術者が関わっても、安定
したシステムは生まれません。制度と業務の整理が
先、システムは最後という、この順番を守ることが、
どれほど重要かがよく分かります。
技術より先に、「要件・責任・ガバナンスを固めなけ
ればならない」ということです。
制度を先に簡素化し、事務制度を再設計し、業務と
データを標準化した後にシステムを作る、という順
番を誤れば、どれほど巨額の予算を投じても、行政サービスは国民に届きません。
4.5 イギリス NPfIT：巨大プロジェクトが頓挫した理由
イギリスの National Programme for IT in the NHS（NPfIT）は、2002 年に開始された、世界最
大規模の医療情報システム改革です。目的は、国民保健サービス（NHS）全体で電子カル
テ、予約、処方、検査結果などを統合し、全国どこでも同じ医療情報を参照できる「共通インフ
ラ」を構築することでした。医療の質向上、業務効率化、患者安全の強化を目指し、中央政府
が強力に主導する形で、全国共通の電子カルテ（Care Records Service）を中心とした複数の
基幹システムを一括整備する計画が立てられました。当時は「ヨーロッパ最大の IT プロジェ
クト」と宣伝され、最終的には 127 億ポンド（当時のレートで約 1.7 兆円）を超える費用が投じ
られました。けれど結果的に多くのシステムが予定通りに導入されることなく、2011 年には事
実上の中断が発表されました。
本プロジェクトは早期から深刻な遅延と混乱に直面しました。
失敗の要因は複数重なっていました。全国一律の仕様を強引に押し付けようとしたため、各
地の病院や医師会から強い反対がありました。現場の実情を反映した設計が行われなかっ
たことで、実際に使う人の理解と協力が得られなかったのです。また、複数の大手企業に業
務を分割発注した結果、責任の所在が曖昧になり、進捗の遅れや不具合が生じても速やか


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に対応できない体制になっていました。
図表 11 NPfIT の失敗（イギリス）
電子カルテ関連システムは当初のスケジ
ュール達成が困難となり、イギリス議会や
監査機関は、完成が 2014～15 年度まで
ずれ込む可能性を指摘しました。これは、
当初計画から 10 年以上の遅延を意味
し、プロジェクトの実現可能性そのものが
疑問視される事態となりました。さらに、複
数の大手ベンダーとの契約が破綻し、現
場の医療機関では導入が進まない地域
が続出しました。
NPfIT の失敗は、技術的課題ではなく、制度設計とガバナンスの構造的欠陥に起因していま
した。制度・業務の標準化が不十分な段階で全国統合を強行した結果、病院ごとに異なる業
務プロセスやデータ構造を吸収できないで、要件は際限なく膨張しました。現場の医師・看護
師との合意形成も不十分で、導入されたシステムの多くが利用されないまま放置されました。
さらに、巨大な包括契約によって柔軟性が失われ、中央集権的なガバナンスは現場の多様
性と乖離し続けました。非現実的なスケジュールが維持されたことで、プロジェクトは制度・現
場・技術の複雑性に耐えられず破綻したのです。
イギリス政府の公式報告書（NAO：会計検査院）によれば、 NPfIT は最終的に 127 億ポンド
（約 1.7 兆円） を失いました。これは単なる予算超過ではなく、 事務制度の標準化を行わず
に全国共通システムを作ろうとした結果、国家規模で破綻した事例です。
失敗の原因は「事務制度の標準化を行わずにシステムを作ったこと」です。
イギリスの医療制度は、
・地域ごとに異なる医療提供体制
・病院ごとに異なる事務制度
・診療情報の形式がバラバラ
・医療記録の運用が属人化
・データ項目が統一されていない
という構造的な複雑さを抱えていました。しかし政府は、 事務制度の統一を行わずに、全国
共通システムを先に作ろうとしました。結果として、病院ごとに業務が違うため、システムが適
合しませんでした。しかも、データ形式が違うため、連携できない、例外処理が膨大で、開発
が破綻、現場が使わず、導入が進まない、その結果、予算だけが膨らみ続けるという状態に
なりました。
この事例から学ぶべき核心は、全国共通化そのものが悪いのではないという点です。問題
は、巨大な構想を一括で実装しようとすると、制度・現場・ベンダー・スケジュール・ガバナンス
を同時に制御する必要が生じ、複雑性が急激に増大することです。行政 DX においては、制
度→業務→データ→システムの順序を守り、段階的に標準化と導入を進めることが不可欠で


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す。NPfIT は、構想の大きさと実装方式の不整合が国家規模の失敗につながることを示す象
徴的な事例です。
「大きなプロジェクトを一気に進める」ことが常に最善とは限りません。小さく始め、試行し、改
善を重ねながら広げていく、アジャイル型の進め方が今日重視されるのは、こうした巨大プロ
ジェクトの失敗が繰り返されたからです。現場の声を聞き、使う人の理解を得ながら進めるこ
とが、何よりも確実な道です。
4.6 各国の経験から導かれる共通点
エストニアやシンガポールが成功し、米国やイギリスが苦労した背景には、一貫して同じ法則
が見えてきます。成功した国はいずれも「ルールと基盤を先に作り、技術はそれに従う」順番
を守っていました。一方で頓挫した国は「技術を先に走らせ、後から仕組みを合わせよう」とし
た結果、莫大な費用と時間を費やしながら人々の役に立つものを生み出せませんでした。
また、成功した国では「誰のためのシステムか」が常に明確でした。国民が使いやすいか、負
担が減るか、安心して利用できるか、その一点が設計の出発点になっています。逆に失敗し
た事例では、国や事業者の都合、組織の論理、技術的な見栄えが優先され、利用者の視点
が後回しにされる傾向が強く見られました。これらの教訓は、これから日本が DX を進める
上で決して忘れてはならないものです。
図表 12 諸外国の DX 化取組状況
図表 13 諸外国 DX 化の成功・失敗事例の教訓
成功した国
・制度・ルールを先に作る
・共通基盤を整えてから
サービスを追加
・段階的に範囲を広げる
・利用者の体験を中心に設計
・実際の利用状況を見て改善
失敗した国
・システム開発を先に始める
・個別システムをそれぞれ開発
・一気に全国展開を目指す
・内部の都合を優先して設計
・計画通りに進めることを優先


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第 5 章 AI 時代の行政 ―再設計から未来へ
5.1 AI は「仕事を奪うもの」ではなく「手助けするもの」
人工知能 AI が急速に進化し、私たちの暮らしのあらゆる場面に広がり始めています。行政
の分野でも「AI が職員の仕事を代わりにする」「職員が不要になる」といった論じられ方をす
ることがあります。けれど、それは AI の本当の使い方ではありません。AI が担うべきなの
は、定型的な確認作業、大量の情報の整理、過去の事例の参照といった「人が時間を取られ
がちな作業」です。それによって職員が、一人ひとりの話を聞き、相談に応じ、個別の事情に
寄り添う、本来人にしかできない仕事に、より多くの時間を注げるようになります。それが AI
との正しい付き合い方です。
たとえば申請書の内容を確認する作業は、項目が多く似たようなケースが続くため、どうして
も単調な作業になりがちです。AI はこうした情報を瞬時に読み取り、記入漏れや不整合がな
いかを確認し、必要な書類が整っているかをチェックすることができます。その結果、職員は
データとにらめっこする時間を減らし、手続に迷っている人に丁寧に説明する時間を増やすこ
とができるのです。AI は「人の代わりに働く」のではなく「人の背中を押す存在」、そう位置づ
けることができれば、技術への不安は大きく減少します。
5.2 「分からない」を「分かる」に変える案内役
行政の手続が難しいと感じる理由の一つは、「自分が何をすればよいのか」が分かりにくいこ
とです。引っ越し一つを取っても、関係する手続は十数種類に上り、それぞれ期限や必要書
類が異なります。ウェブサイトを見ても情報が多すぎて、自分にどの項目が当てはまるのかを
探すだけで一苦労です。そうした経験のある方は多いのではないでしょうか。
AI は、一人ひとりの状況に併せて必要な情報を整理し、案内する「賢い相談役」になることが
できます。たとえば「子供が生まれました」と入力すると、出生届の提出先と期限、児童手当
や健康保険の手続、医療費助成の申請、その人に必要な手続だけが順番に表示され、それ
ぞれ何を準備すればよいのかが分かりやすく示してくれます。「共働きですか」「転勤で引っ越
してきたばかりですか」といった質問に答えていくと、個別の事情に併せて案内が自動的に調
整されます。それが AI による対話型の案内です。
もちろん「AI の説明だけでは不安」という人もいるでしょう。その場合には「人に相談したい」と
いうボタン一つで、窓口の職員と直接話ができるようになっていれば安心です。AI が案内の
下書きを作り、人が最終的に確認し補足します。この組み合わせが最も効果的で、かつ温か
みのあるサービスを生み出します。
5.3 「待たされない」「探さない」行政へ
AI の活用によって、手続の処理速度も大きく変わる可能性があります。現在は「申請してか
ら 1 週間後に結果が届く」「書類に不備があったらまた来てください」といった対応が常態化
しています。これは、提出された書類を職員が一枚ずつ確認し、関連する情報を別のシステ
ムで探し、上司の決裁を受ける、という作業が順番に行われているためです。
Once-Only の原則で情報がつながり、AI が確認作業を支援するようになると、この流れが


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根本的に変わります。必要な情報がそろっていれば、申請を受けたその場で確認が行われ、
許可や決定が短時間で下されます。「その日に結果が分かる」手続が増えていきます。不備
がある場合も、AI がその場で指摘し、どこを直せばよいのかを示してくれるため、何度も足を
運ぶ必要がなくなります。
これは単に「早くなる」というだけの話ではありません。手続を終えた後も「本当に受理されて
いるのだろうか」「何か連絡が来るのだろうか」と待ち続ける不安、そうした心配をなくすことの
方が、暮らしに与える影響ははるかに大きいのです。
5.4 「例外に強い」仕組みを育てる
AI に対する不安の一つに「機械的な対応になるのではないか」「個別の事情を分か
ってもらえないのではないか」という点があります。確かに定型的な手続は AI が得
意とするところですが、人生の節目には「どちらにも当てはまらないケース」「複雑な事
情が重なっている状況」が少なからず生じます。
だからこそ、AI は「できるところまでを担い、人が必要な場面では速やかに引き継ぐ」仕組み
にしておかなければなりません。AI が「このケースは人による判断が必要です」と判断した
ら、その時点で担当の職員に引き
図表 14 AI の役割
継がれ、詳しく話を聞いた上で対応
が検討できます。過去の類似事例
の情報だけを AI が提示し、判断
は人が行う、そうした役割分担を明
確にすることで、「冷たい機械的な
対応」を防ぐことができます。
また、AI の判断基準がブラックボ
ックスにならないようにすることも極
めて重要です。「なぜこの結果にな
ったのか」を問われたときに、理由を説明できる仕組み、説明可能な AI を採用し、誰が見て
も納得できる根拠に基づいて処理が行われるようにしなければなりません。
5.5 技術の進化に追いつかない仕組みを作る
AI 技術は今後も急速に進化していきます。今日当たり前に使われている技術が、数年後に
はさらに高度なものに置き換わることも十分に考えられます。そのときに「システムを全部作り
直さなければならない」のでは、費用も時間もいくらあっても足りません。
必要なのは「技術が変わっても、基盤となるルールは変わらない」仕組みです。情報の定義、
共有のルール、本人確認の基盤 —— これらをしっかりと定めておけば、AI が進化しても新し
い技術を追加するだけで対応できます。古いものを壊して新しいものを作るのではなく、基盤
を守りながら、その上に新しい機能を重ねていくことです。そうした持続可能な設計が、長く安
心して使える行政の基盤になります。
第 6 章 公的年金制度の DX ―生活の基盤を支える仕組みの再設計
6.1 「分からない」不安を解消する


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公的年金は、老後や障害、遺族となったときに生活を支える、私たちにとって最も重要な社会
基盤の一つです。しかし現状では、「自分はいくら受け取れるのか分からない」「記録が正しい
のか不安だ」「手続が複雑で覚えられない」といった声が後を絶ちません。制度の仕組みが
人々の目に触れないところで動いているため、安心感が生まれにくい状況です。
厚生年金関連のシステムにはこれまで数千億円が投じられ、維持費として毎年約 500 億円
が費やされています。クラウド化や基盤刷新が進んでも、「分からない」という根本課題が解
消されなければ、投資額だけが増え、利用者の実感は伴いません。システム更新そのものが
目的化し、利用者の不安に応えるという本来の目的が置き去りになっているのが現在の姿で
す。
年金制度の DX は、この「分からない」という構造的な不安を取り除くことから始まります。制
度の複雑さを前提にするのではなく、利用者が自分の状況を理解し、納得し、安心できるよう
にすることが、最初の一歩です。
6.2 「自分の年金」が見える仕組みへ
目指すべきは「通知が来て初めて知る」仕組みから、「いつでも自分から確認できる」仕組み
への転換です。マイナンバーカードなどで本人確認を行うと、自分の加入状況、納付実績、標
準的な受給見込額が一目で分かる画面が開かれます。転職や退職、結婚や配偶者の就業
状況の変化、そうしたライフイベントが、将来の年金額にどのように影響するのかを、リアルタ
イムで試算できるようにする必要があります。
繰上げ受給と繰下げ受給では受給額がどれだけ違うのか、何歳まで働いたらどう変わるの
か、グラフで視覚的に比較できれば、選択に対する不安は大きく減少します。
老齢年金だけでなく、障害年金や遺族年金の基準と見込額も併せて確認できるようになれ
ば、「もしものとき」への備えも具体的になります。こうした情報が、医療や介護の見通しと一
体的に把握できる人生フォルダの一部としてつながっていくことで、年金は単なる給付制度で
はなく、人生全体を支える基盤として機能するようになります。ここに真の価値が生まれます。
6.3 手続を「忘れた頃にやる」ものから「自動的につながる」ものへ
現在の年金関連手続は、離職票を提出したり、住所変更を届出したり、受給開始の手続をし
たり、それぞれのタイミングで改めて書類を提出しなければなりません。中には手続を忘れて
いたために受給が遅れたり、記録の不整合に気づくのが遅れたりするケースも少なくありま
せん。
Once-Only の原則と共通 ID を活用すれば、こうした重複手続は根本的になくすことができ
ます。勤務先が変わったとき、住所が変わったとき、その情報が関連するシステム間で自動
的に共有され、年金記録にも反映されます。受給開始年齢が近づいたら、誕生日の数か月
前から段階的に案内が届き、オンラインで手続を進めることができます。年金以外の公的給
付との重複調整もシステム間で自動的に処理され、別途届け出る必要がなくなります。


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これは単に手続が簡単になるというだけの話ではありません。「制度が一人ひとりに併せて動
いてくれる」という実感を生むことができます。自分の生活に寄り添い、必要なときに必要な情
報が届き、煩雑な作業を自動的に肩代わりしてくれる。こうした体験こそが、行政への信頼を
最も強く育てるのです。
6.4 「見える化」が信頼になる
年金制度の最大の課題の一つは、「将来にわたって本当に維持できるのか」という国民の不
安です。少子高齢化が進み、働く人の数が減っていく中で、今の水準が守られるのか、誰も
が心配しています。この不安に応えるためには、制度の状況を常に「見える化」し続けること
が何よりも必要です。
一人ひとりの記録が正確に管理されていること、年金全体の収支がどうなっているのか、見
直しが行われるときにはその理由と影響が丁寧に説明されることが重要です。こうした積み
重ねが、「この制度は自分のものだ」という信頼につながります。数値目標を掲げるよりも、一
人ひとりの毎日の確かな体験、「確認できる」「相談できる」「手続が難しくない」といった積み
重ねこそが、年金制度の最大の説得力になります。
シンガポールの CPF のように「自分の口座に積まれた資産」として実感できる仕組みを、日
本の年金制度でも実現することが求められます。その当たり前を形にすることが、DX の真の
目的です。
図表 15 年金受給ダッシュボード


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第 7 章 実行計画と推進体制
7.1 「何を変えるのか」の全体地図
行政 DX は単発のプロジェクトの集まりではありません。長期的な目標を定め、段階的に実
現する全体計画が必要です。変革は一朝一夕には進みませんが、だからといって手をこまね
いていては何も変わりません。10 年から 20 年先の社会を見据え、着実に歩みを進める全体
の道筋を示します。
最初の 2 年間
土台固めの期間です。まず氏名、住所、生年月日といった基本データ項目の定義を全国で統
一します。同じ意味を持つ情報が同じ形で扱われるようになることが、すべての始まりです。
併せて、紙原本提出や来庁を義務付けている法令を洗い出し、デジタルで代替できるよう改
正を進めます。重複している手続を一覧にし、削減できるものから順次整理を始めます。
続く 2 年目から 5 年目
仕組みを動かす期間です。Once-Only の基盤を試行的に運用し、引っ越しや出生届といっ
た複数部署にまたがる手続から実際に導入していきます。API 連携のルールを定め、各シス
テムが安全に情報を受け渡しできる環境を整えます。人生フォルダの試験運用を開始し、参
加者の声を反映して使い勝手を改善していきます。
5 年目から 10 年目
全国に定着させる期間です。デジタル前提への法令の全面的な移行を進め、AI による相談
支援体制を全国の自治体で展開します。地域によるサービスの格差が生じないよう共通基盤
を充実させ、どの地域に住んでいても同じように支援が受けられる体制を築きます。窓口とオ
ンラインの連携を密にし、デジタルに不慣れな人への支援も一体的に行えるようにします。
10 年以降
持続可能な姿を維持する期間です。技術の進化に併せて基盤を更新しつつ、根本のルール
は変えることなく、長期的に安心して利用できる仕組みを守り続けます。国際的な動向にも対
応しながら、日本の経験を諸外国と共有し、共に発展する姿も目指します。
図表 16
行政 DX かの将来イメージ


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7.2 「小さく始めて、確実に広げる」
過去の巨大プロジェクトが繰り返し失敗した方法、全国一斉に新システムを導入するという方
法は取りません。共通のルールだけは先行して定め、個別のサービスは段階的に実装して
いきます。
最初に選ぶのは、最も多くの人が利用し、負担が大きい手続です。引っ越しの際の届出、出
生届や死亡届、これらは複数の部署に関係し、何度も同じ情報を記入する必要があるため、
改善の効果が最も早く実感できます。数箇所のモデル自治体で試行し、実際に利用した人の
声を聞き、不具合や使いにくい点を修正してから全国に展開します。
完璧を目指して時間をかけるのではなく、「動きながら育てる」姿勢が重要です。最初は簡単
な機能から始め、利用状況を見ながら順次機能を追加していく。その都度改善を重ねること
で、実際に使う人のニーズに応じた仕組みに育っていきます。
7.3 国・自治体・民間 — 役割を分けて重複をなくす
現在の最大の無駄は「同じようなシステムをそれぞれが別々に作っている」ことです。国、都
道府県、市区町村、それぞれが似た機能を開発し、別々に保守していては、いくら予算があっ
ても足りません。役割を明確に分け、重複投資を根本的になくします。
国は制度の枠組みと共通ルールを定め、全国で情報をつなぐ基盤を整備します。データの形
式、本人確認の方法、情報共有のルール、これらを全国一律に定めることで、どの自治体で
も同じ仕組みを活用できるようにします。進捗状況を全体で把握し、遅れている部分があれ
ば支援や調整を行うのも国の役割です。
都道府県は国と市区町村の間に立ち、広域的な連携を支えます。複数の市区町村にまたが
るサービスの調整や、近隣の自治体同士の情報共有を支援します。困難な課題が生じた場
合には市区町村を支援し、地域全体の水準を維持する役割を担います。
市区町村は実際に住民に接する最前線として、地域の実情に合ったサービスを提供します。
共通基盤を活用することでシステム開発の負担を減らし、その分を窓口での対応、高齢者へ
の訪問支援、地域の特性に応じた取り組みに振り向けることができます。利用者の声を直接
受け止め、共通基盤の改善につなげる、その役割も大きく期待されています。
民間事業者は国の定めた基準に従い、利用者向けの支援ツールや関連サービスを開発しま
す。共通の基盤があるからこそ、民間の創意工夫によって多様なサービスが生まれる土壌が
できます。「土台は共通、上は自由」—— この発想で、官民がそれぞれの強みを活かせる体
制を築きます。
7.4 コストの見直し — 「守り」から「攻め」へ
今後 10 年間で基幹系システムの刷新に約 10 兆円規模の費用が必要との試算が複数出
されています。けれど「ただ更新する」のではなく「仕組みを根本から変える」ことで、長期的に
はこれをはるかに上回る効果が生まれます。


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重複するシステムを統合し、全国共通の基盤を活用することで、開発費と保守費用は大幅に
圧縮されます。Once-Only が定着して同じ情報を何度も確認する作業がなくなれば、職員の
時間が住民への支援に振り向けられ、サービスの質が上がると同時に長期的な人件費の効
率化にもつながります。
オンライン利用率が高まれば、窓口の待ち時間が短縮され、郵送費や印刷費といった経費も
減少します。年金や医療の記録が正確に共有されることで、手続の差し戻しや誤処理が減少
し、事務全体の信頼性が高まります。
「今まで通りを維持する」ことこそが、実は最も高くつく選択なのです。現在の維持費を未来へ
の投資に転換するという、予算の使い方そのものを DX の対象とします。
7.5 推進体制 — 「縦割り」を超える責任の所在
省庁ごとに、部署ごとに個別にシステムを発注し、それぞれの都合で業務を進めるという、こ
れまでの進め方では根本的な解決は望めません。全体を貫く司令塔機能を強化し、「誰が責
任を持つのか」を明確にします。
デジタル庁を中心に、制度の見直し、データ基準の統一、セキュリティルールの策定を一体
的に進めます。各省庁や自治体の責任者を横断的に配置し、手続の見直し状況を定期的に
共有し、進捗が遅れている部分には速やかに支援を派遣します。
外部の専門家や利用者代表を含めた委員会を設置し、進捗を公的に検証します。「前例踏
襲」を評価しないことです。「利用者の負担が減ったか」「分かりやすくなったか」を指標として
改善を進める評価基準を導入します。自分の部署だけ良くなればよい、そうした発想を許さな
い体制こそが、何よりも必要な改革です。
第 8 章 人生フォルダ ―自分らしさと絆を守る、永遠の宝箱―
8.1 「自分の情報は自分が持つ」
本書全体を貫くコンセプト「人生フォルダ」があります。それは単なるデータベースの名前では
ありません。誕生してから死亡するまでの記録を本人が中心となって管理する、その新しい社
会の仕組みそのものです。
現在は、それぞれの機関が情報を管理し、必要なときに本人が取りに行くという、それが当た
り前でした。役所に行って申請書を書き、証明書を受け取り、他の役所にそれを提出します。
情報は常に「向こう側」にあり、自分はただ取りに行く存在でした。それが長年続いた関係で
す。
人生フォルダでは、その関係が逆転します。情報の所有者はあくまで本人です。国や自治体
は預かり役に過ぎません。本人が許可したときにだけ、必要な範囲で情報が共有されるので
す。「自分の人生の記録は自分が持つ」、それが根本にある考え方です。
8.2 何が入っているのか
人生フォルダには、一人ひとりの人生の節目に関わる情報が整理されます。生まれ
たときの出生記録から始まり、氏名や住所、家族構成といった基本情報、学歴や資
格、就職や転職の記録、納税や年金の記録、健康診断や予防接種、医療の記録等、
これらが一つの画面から確認できるようになります。


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もちろん、これらはすべて最
初から行政が詰め込むので
はありません。それぞれの手
続を行う中で自然に記録が
積まれていきます。自分で追
加したいメモや記録（大切な
日の思い出、子供の成長の
記録、家族との約束等）を自
由に書き加えることもできま
す。手続に必要な情報だけで
なく、その人の歩みそのもの
を残せる場所であってほしい
と願っています。
図表 17 人生フォルダ
8.3 管理の仕組み — 「預かる」のは国、「管理する」のは本人
誤解されがちな点を明確にします。人生フォルダは国がすべての情報を一箇所に集めて管
理する中央データベースではありません。情報はそれぞれの機関が保有し、必要なときに本
人の許可を得て参照されるのです。その仕組みは、先に述べたエストニアの X-Road に似
ています。
どの情報を誰に見せるか、それは常に本人が決めます。医療情報をかかりつけの医師に見
せるとき、年金の情報を家族と共有するとき、それぞれ必要な部分だけを選んで許可すること
ができます。いつ誰が情報にアクセスしたか、その履歴は改ざんできない形で記録され、いつ
でも本人が確認できます。許可を取り消すこともいつでも可能です。
国が勝手に情報を集めたり利用したりすることは決してありません。「預かる」のは国の役割
ですが、「管理する」のは常に本人です。この線引きがあって初めて、安心して情報を預ける
ことができるのです。
8.4 家族とつながる安心
人生フォルダは個人のものであると同時に、家族の絆を支える道具にもなります。親が高齢
になったとき、本人の同意を得た上で、子供が健康状態や介護の計画を確認できます。万が
一のときに必要な情報が家族にスムーズに引き継がれ、手続の負担が減ります。そうした備
えが、いつもの日常の延長線上にあることが理想です。
子供の成長記録を親が共有し、適切な時期に本人に引き継ぐ、そんな使い方もできます。プ
ライバシーを守ることと、家族で助け合うことは本来矛盾するものではありません。本人が選
んだ範囲で情報がつながるのです。その仕組みがあって初めて、両立することができます。
8.5 年を取っても、困ったときも
DX が進むと「年を取ったら使えなくなる」「デジタルが苦手な人は取り残される」、そうした不
安が生まれます。人生フォルダはその逆を目指します。年を重ねるほど、困ったときほど役に
立つ道具でなければなりません。


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文字の大きさ、表示の色、操作の順番、それぞれ自分の使いやすいように調整できます。操
作に迷ったときは、AI がゆっくりと分かりやすく案内してくれ、それでも難しいときは家族や支
援者が代理で確認することもできます。最終的には全国の窓口で対面による支援を受けられ
る体制を維持し、どれほど技術が進歩しても「人に相談できる」という最後の砦を決して失くし
ません。
「デジタルができる人だけが得をする社会にしない」、これは決して付け加えられた配慮では
なく、この仕組みの設計全体に一貫して組み込むべき基本原則です。
8.6 永遠の宝箱
手続に必要な情報だけが人生フォルダの中身ではありません。初めて歩いた日の記録、卒
業証書のデジタル版、結婚や出産の記録、大切な人からの手紙等、自分が歩んできた道の
りのすべてが残ります。
これらは行政が管理するものではなく、自分自身が受け継ぎ、未来につないでいくものです。
技術はいつか廃れるかもしれません。けれど「自分の人生の記録は自分が持つ」という想い
は変わりません。どれほど時代が進んでも、自分らしさを守り、大切な人たちとの絆をつない
でいくことができます。そのための器が「人生フォルダ」なのです。
むすび
本書の最初に示した「84.3%」という数字決して嘘ではありません。でも真実でもありません。本
当の数字はその中身です。一人ひとりの手続が簡単になったか、不安が減ったか、「自分もこ
の社会の一員だ」と思えるようになったか、これらの数字は統計には現れません。けれど、こ
れからの日本にとって最も大切な数字です。
技術はすでにそこにあります。エストニアやシンガポールが実現していることは、特別な国だ
からできるのではなく、「人のために作る」という原点に忠実であったから実現できたのです。
日本にできないはずがありません。明治以来、困難なときに何度も立ち上がってきた力がこ
の国にはあります。その力を「新しいものを追う」ことではなく、「当たり前のことを当たり前に
する」ことに使うのです。そのときが今なのです。
同じ名前を何度も書かなくて済む。知りたいことがすぐに分かる。困ったときには誰かがつな
がってくれる。自分の人生は自分が守れる、そう思える、そんな当たり前の社会を私たちはこ
れからの世代に引き渡さなければなりません。
小さな一歩から始めましょう。目の前の一人の負担を減らすことから始めましょう。その積み
重ねがやがて国の形を変え、未来を変えていきます。「人生フォルダ」が開くその日まで、共
に歩んでいきましょう。
【行政 DX 成功の五原則】
・法律制度の複雑さと事務制度の複雑さを分けて考える。
・事務制度を最優先で再設計し、国民の負担を最小化する。
・業務と例外処理を標準化し、データを共通化する。
・最後にシステムを刷新し、クラウドや AI を目的ではなく手段として活用する。
・AI 時代には、人間による統制と職員の判断・支援を組み込み、行政を継続的
に進化させる。


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【参考資料・出典】
米 1 デジタル庁「行政手続等の調査結果概要」
米 2 デジタル庁「行政手続のオンライン化」
米 3 デジタル庁「成果と進捗：生活者・事業者・職員にやさしいサービスの提供」
米 4 経済産業省「レガシーシステムの維持・更新に関する試算」
米 5 総務省「マイナンバーカード普及状況」各年
米 6 厚生労働省「公的年金システムの現状と課題」
米 7 厚生労働省「厚生年金保険・国民年金事業の現状」2025 年度
米 8 e-Estonia「e-Governance」「X-Road」※4
米 9 Gov Tech 「Singpass」公式サイト https://www.singpass.gov.sg 米 5
米 10 Danish Agency for Digital Government「Numbers and statistics」「Digital Post UserData」
米 11 U.S. Government Accountability Office, GAO-14-694 / GAO-14-824T※7
米 12 UK National Audit Office「The National Programme for IT in the NHS: Progress since
2006」
米 13 その他各種公的統計・報告書を参照


